ストローで帽子が作れたのだから、違うアイテムも作れると思う。
サンダルやカバン、マスクもかわいいと思う。
ストローで全身作ってみたい。ストローならできる。
いや、流石に服は難しいかもしれない。直線的なのでガンダムみたいになりそうだ。
でも、いつか作る日が来たら、また見守ってください。
散歩に行くと、日差しが熱いなと感じる季節、春がやってきた。
家を出て2分くらいで「帽子を持ってくれば良かった。」と後悔する。
春も来たことだし、麦わら帽子が欲しい。
自粛で時間はあるので自分で編むのもいいかもしれない。
ところで、麦わら帽子は英語でストローハットという。ミートスパゲッティがミートのスパゲッティであるように、ストローハットもストローのハットでなくては話が違う。
もともと英語でストローは藁という意味だが、今や日本では飲むストローが一般的なのだ。
このままでは藁だと知らない人が、混乱してしまう。大変だ。
飲む方のストローでも帽子を作っておかなければいけない。
早速、200本入りで100円の曲がるストローを買ってきた。コスパがすごい。
私はストローを信頼している。
子供の頃、工作にはよくストローを使っていた。
セロテープがしっかりくっつくし、水に濡れてもしおれない。曲がる部分もあれば曲がらない部分もある。
立体的で見栄えが良いし、潰そうと思えば平くもなる。形が安定していて壊れにくい。
ストローは工作に万能なのだ。
きっと耐水で汚れに強い、形態安定した帽子が作れるだろう。
ストローには飲む以外の分野でも活躍してほしい。もちろん帽子になることだ。
ストローもそうなることを望んでいると思う。
今回はストローの弁護士になったつもりで、この異議申し立てを支えたいたいと思う。
とはいえ、私は帽子を作ったことがない。今のところ使えない弁護士だ。
だが、作ったことがなくてもできると思う。
ストローハットの完成図は見えないが、自信はある。
例えるなら、イタリア料理屋で「サーモンとセルバチコのポモドーロ」というメニューを見て、何がなんだかわからないけどサーモンって書いてあるから美味しいに違いない、という自信、あれと似ている。
それから1週間後。
ストローはやはり万能だった。私は完璧な、正真正銘のストローハットを作ることができた。
きっとストローも喜んでいることでしょう。
私も光栄です。
あまりに良くできたので、もっと似合う人にもっと似合う服で着てほしい。
そんなデザイナー心まで生まれた。
ストローハットは縫ったらできた。
制作の途中までストローは縫えないと思っていたが、やってみたらあっさり縫えた。ストローの対応力がすごい。
まずは頭頂部の丸い円盤を作っていく。
ストローに切り込みを入れてカーブを作り、潰しながら縫っていく。カーブはカクカクになるが縫い重ねていき、円に近づける。
本物のストローハットも同じようにつむじから円形に縫っていくので、素材だけストローになったイメージだ。出来上がりに期待が持てる。
ちなみに、透明のミシン糸を使って縫い目は目立たないようにしている。
頭の大きさになるまで円を広げていく。
縫幅は約2ミリ。糸が落ちないように慎重に縫っていく。これが縫えればミシンが上達すると思う。
次は側面部を作っていく。
側面は板状のものを作り、一つにつなげてから筒にする。
頭頂部の円と繋げていく。
縫うのがやはり正解だったと思わせるスムーズさ。
できた!
蛇腹の曲がる部分は柔軟なのでカーブの手助けをしてくれる。曲がらない部分が直線的で張っているがそのうち慣れるだろう。
今のところ、ちょっとオペ中にしか見えないのだが、私は知っている。
帽子の見た目で大事なのは装飾、つまりロゴだということを。まだ慌てる段階じゃない。
筒のまま、つばのピンクを足していく。
まち針の刺さっている部分7箇所に切り込みを入れて、つばが広がるようにストローを足していく。
短い板状に縫ったストローを裏に当てて縫い付ける。
質感と色からプールを連想したので、海のロゴマークをつけた。
できたー!完成!
帽子のつばから伸びているストローは、いざというときに飲むために刺した。いいアクセントになっている。
このストローハットは、だいたい100本くらいで作れた。ということは50円でできてしまったのだ。驚きの安さである。
さて、試着。
頭のサイズもちょうど良くできた。形も申し分のない、誰がどうみても帽子だ。
見事なまでの勝訴である!
ストローでできたストローハットは、晴れの日はもちろん雨の日もかぶれる。
突き刺したストローの端は、意外にも視界に入らず気にならないので、安心してください。この帽子に死角はありません。
頭頂部が固いので浮いたように見えるが、帽子を少し後ろめにかぶると自然だ。
刺してあるストローを取れば、全然普通の帽子である。
ストローハットをかぶっていれば、ドリンクをテイクアウトした時にストローがなくても大丈夫。
この刺してあるストローの出番である。
ストローを外して、
刺す。
それほどストローではなく、帽子の一部という認識になっているのだ。
飲める!
そりゃストローだから飲めるのだが、なぜか感動!
これが正真正銘のストローハットだ。
ストローでできていて、飲むこともできるストローハット。
絶対に適さない素材でファッションを作ると楽しい。思いがけない味が出た。
ポリエチレンでできたこんな質感の帽子は見たことがない。
ロゴマークの、ストローを生かした立体感もおもしろい。曲がる蛇腹の部分を利用したカーブが、この帽子に遊び心をもたらしている。
常識という名のつばに突き刺したストローは、自由に伸び、新しいイメージを湧かせる。
アンテナのようにも、煙突のようにも、スキューバダイビングのゴーグルについている水抜きにも見える。
機会があればプールでかぶってみたい。あと、雨の日にも。
ストローハットができるまで、実は結構試行錯誤をしていた。
最初はストローを編んでみようと思った。
これを軸として、長く繋げたストローを巻きつけながら編んでいく。
ストローが全然しなやかじゃない。
しなやか度2くらいしかない。ほんの少しならしなるのだが、ある点を超えると拍子抜けたようにぽきっと折れてしまい、綺麗に編めない。
これでは、帽子にあるまじきスキマが開いてしまう。
次に、カーブを作るには、温めて成形したらいいんじゃないの、と思ってコンロにかざしたら一瞬で溶けた。
コンロは強すぎた。そりゃ、限度はある。ストローもびっくりしたと思う。少し熱めの電球でやってみよう。
私の指紋だらけの帽子は、誰もかぶりたくないと思う。私でさえ嫌だ。
さて、どうしようかと悩みながら一旦細かく切り刻んでみた。
そんなこともありながら、私はストローのポテンシャルを信じて、縫うにたどり着いたのであった。
ストローで帽子が作れたのだから、違うアイテムも作れると思う。
サンダルやカバン、マスクもかわいいと思う。
ストローで全身作ってみたい。ストローならできる。
いや、流石に服は難しいかもしれない。直線的なのでガンダムみたいになりそうだ。
でも、いつか作る日が来たら、また見守ってください。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |