特集 2023年6月30日

渋谷、街中に意味のないものはあるのか?

家の中には、必ずなぜそこにあるのか意味の分からないものがある(うちだけじゃないことを祈る)。

しかし、緻密に設計された都市には意味のないものなんてないのではないか?

道端に置かれているものは、きっと誰かがなにかの用途で設置したものに違いない。

歩きながら判定していくことにした。
 

1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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きっと街には意味のないものなんてない

街に意味のないものなんてない。きっと誰かが意図を持ってそこに設置したからだ。

そうした憶測に従って渋谷を歩いてみたいと思う。

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今回のメンバー、編集部古賀、林、安藤、そして棒立ち男の藤原である

ちなみに持っている旗は最終的に使ったり使わなかったりだったので触れないことにする。いきなりの無意味。

さっそく歩いていこう。と、まず見つけたのがこちら。

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あまどいのこの部分

歩道橋から繋がっているこのパイプを伝って雨が流れてくるのだが、不自然に連結されているパーツがある。

これはなんだろう。ぱっと見では意味がなさそうに思える。

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この出っ張ったパイプが意味か無意味か審議中

話し合った結果、もしそうしないことが可能ならそうしないだろうし、あえてやっているのだろうと判断して意味はあるということになった。

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この並びは意味あるかな。なんかありそうだな。少なくともしばらく除草がされてない証なので意味ありそうだ。
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この建物の丸くへこんだ部分の意味は?
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そういうデザインだからあり!
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この電柱に巻かれたチョバム・アーマーみたいな鉄板は? たぶん張り紙をされないように巻かれたものだから意味あり。KGBと書いてあるのはかっこいいから。これも意味あり。

予想通り渋谷にはそうそう意味のないものは見当たらない。意味のないものを見つけられたらわれわれペデストリアン4人はたいへん喜ぶというのに。

意味と無意味のあいだ

意味がないものは本当にないのか……。我々は意味のジャングルに迷い込んだのかと思いかけたところ、こんなものがあった。

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繋がってない塩ビ管

もともと繋がっていたけど今は繋がっていない塩ビ管(?)と思われるものだ。

今はたぶん廃棄されずにただ底に残っているだけのようす。つまりゴミ。捨てるにしても、茂みの中にあるから入るのはちょっと面倒だ。

ゴミだから意味が無い、としてもいいだろうか。「目にうつる全てのことは メッセージ」と昔の偉い人は言っていなかっただろうか。保留にしたい。

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ちょっと左にカーブしてる道。意味を見出すことはできないが、歴史的な何かを考慮すると意味がありそう。
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消火栓の下の広告枠。「空」状態だが役割として意味あり。
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朽ちかけた三角コーン。意味はなくなりつつあるが、まだ健在。
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日焼けして色が落ちた標識。かろうじて見えるので意味あり。
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不法投棄のイメージがうさぎのフンなのは……部分的に意味ないように思える

意味とは、あるなしのデジタルではなく、濃淡のあるスペクトラムなのかもしれない。

意味がないもの発見!

「果たして意味とは?」と分からなくなりながら、そうこうして見つけたこちらの段差プレート。

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置き方が気になりません?

そう、段差プレートの先が花壇になっていて、車が通過したりできないのである。

これは意味がないと言えるのではないか。段差プレートの意味をなくしたい人の設置方法である。

満を持して全員一致の意味なし!

そして歩いていると、意味がないものを続けざまに発見する。

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植木を囲う鉄パイプがあるが……植木がなくなってる。意味なし!
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ガードレールの切れ端(そんなものがあるのか!)。意味なし!
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このビルの下に置かれた岩、これは意味なさそうだが……
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看板の土台になっていた。意味ありですね。
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と思ったら、その裏に岩。これは意味無し。

こうして意味のないものを見かけると目がキラキラと輝くのを感じる。意味はないからこそ、そこに価値を感じ始めたところである。チューリップの球根を売られたら買う勢いだ。

(このように意味のないものに価値を感じ始めると、ものが捨てられなくて部屋がごちゃごちゃになる。)

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意味がないところに物語を感じ始める

引き続き渋谷川沿いを歩いていると、こんな景色を目にした。

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渋谷川沿いのビルの裏側
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出入り口がある

これ、意味があるのだろうか? ここから出ても渋谷川に落ちるだけである。法律上必要なのだろうか。

ビルが火事のときここから脱出する人々の様子をじーっと想像する。見えてきた……気がする。

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こちらのコンクリートブロック。重りのようなのだが、看板を移動するために外されている

このブロック、意味ない状態にあると言えばあるのだが、禁煙の看板を移動するために取り外されている。

その様子を想像すると、端的に「意味なし」と判断することはできない気がしてきた。これも想像の力である。

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このクスノキの凹み、意味あるだろうか

意味はないかもしれない。ただそこに木の支えがあったという物語を想像させる。

その横には歩道橋の工事現場があって、いい景色だった。

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歩道橋のスロープが途中で切られている
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上から見るとこう
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真ん中のレールはなにかに使うのだろうか

こうした工事途中の状態の歩道橋に対して、意味があるかどうこう言うことはできないだろう。

前述した通り意味はスペクトラムな形で存在するのだ。時の流れの中に偏在するものであり、物語的存在とも言える。

そして我々を待ち受けていたもの

そして我々の意味を巡る視察の最後に迎えていたのがこちら。

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なんだこれは!?
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郵便ポストの上に厚底のスニーカーだ!!

郵便ポストの上に厚底スニーカーがあるのと遭遇すると、意味と価値でもなく、その背景にやはり物語を感じられる。

片方だけの靴で帰ったのか、誰が乗せたのか、となりのブローチのようなものは何なのか……。

意味に思いを馳せると物語が生まれる。


渋谷にも意味のないものはあるし、物語もある

渋谷の街に意味がないものは少なかったが物語を感じさせるものは多かった。

やはり自然にそうなったのではなく、誰かがそうしたからだろう。そこに意味はなくても意図は感じられる。

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とあるところには「謎」と……
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「答え」もあった
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