特集 2024年3月19日

戦前戦後のチャレンジングな麺料理メニュー満載「幻の麺料理 再現100品」

デイリーポータルZのライター、関係者が愛読している本を語ります。

今回はライターのスズキナオさん。レコメンドは「幻の麺料理: 再現100品」(青弓社) 

聞き手はパリッコ、石川です。

ではスズキナオさん、お願いします。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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スズキナオ:
魚柄仁之助さんっていう、食文化を研究してる方の本です。日本食の歴史みたいな、先前戦後の食文化の変遷とかに特に詳しい方です。
まず表紙のこれがおいしそうでしょ。

「幻の麺料理: 再現100品」魚柄 仁之助 (著)、青弓社 表紙(以下、引用は全て同書)

パリッコ:
「食べられることの喜び」みたいな写真。

石川:
ははは。この写真はなんなんですか。

スズキナオ:
この本は戦前戦後の婦人雑誌とかに、掲載されていた麺料理のレシピをひもといていって、その中で、ちょっと変わったものを再現したりしてる本なんです。
なので、そういう当時の写真の1つなんですかね。

そもそも、いまの麺料理って家で作るのでも選択肢がいっぱいあるじゃないですか。ラーメン、パスタ、うどん、そばとか。こんなに食卓の麺が多様化したのは、大正から昭和初期にかけてのことなんですって。婦人向けの家庭雑誌でレシピが紹介され出したことで麺料理に幅が生まれていったそうです。

パリッコ:
なるほど。

スズキナオ:
あと、関東大震災後に都市ガスが急速に普及して火を起こす手間がなくなったから、家で気軽に麺を茹でられるようになった。

石川:
その前は?

スズキナオ:
その前は炭です。火を起こすのが手間。

あと、味の素が発売され、旨味出汁をとるための技術なしで、美味しい料理が作れるようになった。

そういう3つの軸があって、家庭で簡単にいろんな麺のアレンジができるようになったそうです。

パリッコ:
はいはいはい。

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ナポリタンがうどんだった時代

スズキナオ:
だから戦前戦後のレシピにはそもそも今のようには麺の種類が多くないんです。
これ見てください。1937年の「婦人之友」っていう雑誌で、「スパゲテ ナポリタン」。

20~21ページ

 

パリッコ:
(笑)

石川:
「スパゲテ」。かわいい

スズキナオ:
このレシピに「麺はうどんを使う」って書いてあるそうです。うどんをラードで炒めてトマトベースのソースをかけて食べる。
それを著者の魚柄さんが作って食べてみるんですけど、やっぱりパスタと全然違うみたいで。

パリッコ:
手に入るものが当時は全然違ったから、その制約の中のレシピということか。

スズキナオ:
そうなんです。調味料とかもね、なかなか貴重だったはず。

石川:
今だと、むしろ地方のB級グルメでありそうですよね。うどんナポリタン。

スズキナオ:
居酒屋でナポリタン頼むと、うどんだったりとかして(笑)

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ざるそばみたいなパスタ

スズキナオ:
当時はいろんな西洋料理を、食卓の中でどうアレンジするかっていうことに雑誌が取り組んでいたみたいで。
これは、うなスパです。

82~83ページ

 

パリッコ:
なにスパ?

スズキナオ:
うな。うなぎの「うな」です。
これはうなぎの蒲焼きを醤油とかみりんとかで煮込んだつけだれに、パスタをつけて食べる、ざるそばみたいな料理。

パリッコ:
そんなのあるの!

スズキナオ:
パスタをつゆで食べたことないじゃないですか。

パリッコ:
ないなー。

スズキナオ:
それからこの、お新香スパゲッティーってやつ。1973年の婦人誌に紹介されて、たくあん25グラムとキュウリは4分の1本を千切りにして、スパゲッティと混ぜ合わせる、

パリッコ:
ちょっとおいしそう

スズキナオ:
かなりたくあん使ってるっぽくて……調味料は他にないか。

石川:
あ、調味料ないんだ。

スズキナオ:
ゴマ油ちょこっとかけてるぐらい。たくあんの塩気で持っていく料理。
あと面白いレシピが、酢味噌スパゲッティ。

パリッコ:
酢味噌…。

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初期だからこそのぶっ飛んだアレンジ

スズキナオ:
あと、今のインスタントラーメンみたいな、即席めん。1968年時点ではまだまだ珍しかったので、それゆえの不思議なアレンジも多くて。だからそれを1回伸ばして、また油で揚げて、おこしにする。

パリッコ:
ははは!もともとほぼおこし状態なのに。

スズキナオ:
茹でて、もう1回揚げて、糖蜜と絡めて、ラーメンおこし。

パリッコ:
あ、おやつにしちゃう。

スズキナオ:
そうみたいです。インスタントラーメンができ始めた頃だからこその、ぶっ飛んだアレンジ。

石川:
今ちょっと奇をてらって「こんなことしちゃったりして」みたいな感じとちょっと違いますよね。
無邪気というか、本当にピュアに色々広げてる。

スズキナオ:
確かに。新しい食文化が入ってきて、家庭の中でそれにチャレンジしやすくなった喜びみたいな。アイデアで生活をちょっとでも彩ろう、っていう。

パリッコ:
奇をてらってない分、だいぶぶっ飛んじゃってますね(笑)

石川:
「普通こうする」みたいな感覚がまだ薄いんでしょうね。
常識が確立してないというか。

スズキナオ:
だからこそ生まれた面白いアイデアがたくさん。

石川:
100個あるんですか?

スズキナオ:
100個あるのかな。もっといっぱいかも。

パリッコ:
いいですよ。読んでて楽しそう。

スズキナオ:
麺料理が手軽に食べられるっていうのも、なるほど、これは今だからなんだなって思いました。日本の食文化の歴史の一面を見た感じ。

パリッコ:
ナオさん、なんか作ってみたりしました?

スズキナオ:
いや、全然してない(笑)
おいしそう!って感じじゃないんですよね。だって、
どれも「うーん」みたいな、「美味しいか美味しくなかったかは書かないでおこう」とか書いてあって。(笑)

パリッコ:
美味しくなかったのかな。

石川:
でも、逆に言うと、読んでるだけでも面白いという。

スズキナオ:
そうですそうです。たまらなく面白い。麺好きの方は特に面白いと思いますよ。

幻の麺料理 再現100品

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