読んだよ 2024年3月14日

おつまみは、料理にあらず。娯楽なり~おつまみ本の極み「23時のおつまみ研究所」

デイリーポータルZのライター、関係者が愛読している本を語ります。

今回はライターのパリッコさん。レコメンドは「23時のおつまみ研究所 」(ポプラ社) 

聞き手はスズキナオ、石川です。

ではパリッコさん、お願いします。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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パリッコ:
おつまみレシピ本なんですけど、これはその中でも極まってる本なんです。
小田真規子先生というレシピを作りに作って、100冊以上も本を出してる料理研究家の人が書いてます。

スズキナオ:
100冊以上。すごい。

パリッコ:
だから、知見が積み重なっていて、おつまみとはこういうものだっていう真髄みたいなものがまず書かれてるんです。そこから始まる。

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おつまみの神髄

パリッコ:
冒頭、マンガで、山ノ内テツローさんという61歳男性がですね、奥さんがしばらく留守にするので30何年ぶりの1人暮らしが始まるんです。このマンガもスケラッコさんっていう漫画家さんが描いていて、絵がすごく可愛いんです。

で、スーパーの惣菜もいいけど、なんか自分でも作ってみようかな……って野菜スティックを作ってみるんですけど、 なんかイマイチ。でもそのあとたまたま入った飲み屋で、キュウリのおつまみを食べたらすごく美味しくて。

石川:
へー

パリッコ:
それで店主に「野菜スティックなんて簡単なもんだと思ってたのに、なんかうまくないんだよね。自分で作ったら」つったら、その店主が狐に変身してですね、 実はここが23時のおつまみ研究所だった……っていう設定。
で、そこに書いてあるのがこのフレーズ。

「23時のおつまみ研究所」小田 真規子 (著)、ポプラ社 8~9ページより(以下、引用は全て同書)

パリッコ:
「おつまみは、料理にあらず。娯楽なり」。

石川:
これはどういうことなんですか。

パリッコ:
え。どういうことなんだろ。

スズキナオ、石川:
(笑)

パリッコ:
書いてあるのは、おにぎりと焼きおにぎりがあって、みんなに「どっちを食べたいですか?」って言ったら、多くの人はおにぎりを取るだろうと。
でも、キンキンになった生ビールがあったら、 焼きおにぎりの方を取る人が増えるんじゃないかって。つまり、お酒と合わせる楽しさ。

スズキナオ:
なんならその、おにぎり焼く工程自体も、楽しい、みたいな。

パリッコ:
わさびがちょんと乗っていたりとかね。そういう、単に「このご飯は美味しいね」って食べるのと違う、遊び要素みたいなものが含まれたものなんじゃないかっていう。

スズキナオ:
いいっすね、まさにパリッコさんの記事の感じにも近い。ちょっとやってみる、みたいな。効率的にうまいものが食べられるとかじゃなくて、ちょっとチャレンジしてみる。

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レシピだけじゃない、実験のページ

パリッコ:
そうそう、まさに。僕すごく共感してしまったのが、僕がデイリーでやってるようなことも、すごいやってるんですよ。例えば、こういう、実験のページがたまに出てくるんです。

50~51ページより

パリッコ:
同じ料理をニンニクチューブと生ニンニクすりおろしとガーリックパウダーで作り比べて、どれがおいしいかと。でね、最高なのが、結果、「全部美味しい」なんです。

石川:
(笑)

パリッコ:
だけど、それぞれ感じ方が違うってこともすごく詳しく書いてあるんです。あーなるほど、これやってみたいなって思う。

石川:
それまさに、デイリーの記事のネタでパリッコさんが出してきてくれて、「それぜひやってください!」っていう感じのネタですよね。

パリッコ:
他にかまぼこの厚みは何センチが美味しいかとか。
もう、知見がたっぷりある方なのに、改めて実験して、「結論は生なら2センチ、焼くなら1センチ!」とかって。すごい信頼できるんですよね。

ナオさんが好きそうなページ見つけましたよ。平日キノコバターつって、月から金までキノコ。

30~31ページより

スズキナオ:
はははは

パリッコ:
ブラックペッパーえのき、しめじめんつゆバター、しいたけ醤油バターとか。

今週は毎日ちがうキノコで飲むか。みたいに過ごすの、楽しいじゃないですか。

スズキナオ:
めっちゃわかります。自分でテーマを設けてみるの。

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おつまみ6つの軸

パリッコ:
もちろん、美味しそうなレシピもいっぱい載っていて。こうやってパッと開いても、「紅生姜にんじん」とか、「オニオンスライス塩こんぶラー油」、「長ねぎナムル」……

スズキナオ:
真似できるレシピもあり。

パリッコ:
で、もう1点。伝えておきたいこととしては、すごい大事なことが最初に書いてあるんですね。「おつまみは6つの軸でできている」。

18~19ページより

パリッコ:
その6つの軸というのが、塩気、香り、食感、旨味、温度、刺激。
このうち1つでも強くすれば、どんな食材でも即つまみ化しますって。

スズキナオ:
なるほどなー。

パリッコ:
「最小限の労力でレパートリーが増えて、残りの人生、全つまみが美味しくなるのです」って。

スズキナオ:
どっか際立つポイントがあるから先が進む。推進力っていうか。

石川:
6つ要素があって、そのバランスなんですよ~みたいな難しい話じゃなくって、どれか1個あればオッケーなんだ。それは最高ですね。

スズキナオ:
ね。普段食べてるものにちょっとスパイス入れたら刺激でつまみになる、みたいな。

パリッコ:
そうなんです。

石川:
いいですね。これはめちゃめちゃいい本ですね。

パリッコ:
いいんです。なんか、編集者さんとかデザイナーさんとか、スケラッコさんも作者さんもそうなんですけど、 みんなめちゃくちゃ本気になってる感じがなんか紙面から伝わってくる。

石川:
タイトルもいいですよ。23時の。

パリッコ:
そうですね。忙しい人が残業して帰ってきて、それで、さっきの、6項目から、香りだけ立たせたつまみを作るとか。

石川:
はいはいはい。

パリッコ:
手抜きというとなんですけど、ぱぱっと簡単に作れるものが多くて、あまり難しいレシピはあんま載ってないんですよね。

スズキナオ:
だからほんと晩酌。寝るちょっと前に、いっぱいね。飲みたい時に。

パリッコ:
酒飲みには本当になんか、発見と驚きと、なるほど、が詰まった本でしたね。

23時のおつまみ研究所

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