特集 2021年1月11日

私の密かな楽しみ「味わいあつめ」

リサイクルショップの片隅のワゴンなどに詰め込まれた、世間的にはあまり価値がないのかもれないグッズのなかに、まるで僕だけに向けて光をはなつかのように輝いて見えるものがあります。その妙な味わいにハマってしまい、いつしか細々とコレクションするようになっていました。

気づけばけっこうたまっていたそんな「味わい」たちを、今日は紹介させてください。

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:八街はわかりやすさとわかりにくさ半々の街 ~難読駅へいってらっしゃい


きっかけは「ベンケイ」

百聞は一見にしかずということで、まずはこちらの写真をみてもらえますでしょうか。

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「ベンケイ」

数年前にとある街で時間つぶしに入ったリサイクルショップで見つけた、ベンケイ。二頭身の丸っこいフォルムなくせにキリッとした表情がたまらなくかわいくないですか? 額に書かれた文字も見れば見るほど味がある。もはや存在自体が「味わい」の極地と言っても過言ではないでしょう。

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後ろ姿もキュート

このベンケイ、実際何者なのかというと、もはや外れてどこかに行ってしまったんですが、買った当時はおしりのところに小さな鉛筆削りがついていました。つまり文房具。

見つけた時、決して鉛筆削りなど欲していなかったし、そもそも鉛筆なんて小学生時代以来使ったこともなかったんですが、そんなことはどうでもよくて、どうしてもこいつを家に連れ帰りたくなってしまった。

それ以来僕、こういう、一体いつどこの誰が作ったのかわからないような、しかも特に歴史的価値があるわけでもなく、たいてい100円から高くても数百円くらいで手に入る、骨董ともいえないアイテムが、やたらと気になりだしてしまったんです。

その行為こそが、僕が勝手にそう呼んでいる「味わいあつめ」というわけで、今日はぜひ、これまでにちまちまと集めてきた「味わい」をここで自慢させてください。

その前に、味わいあつめの基本

大前提として、味わいはどんなところに眠っているのか?

  • 大型リサイクルショップ
  • 個人経営のリサイクルショップ
  • 謎の個人商店
  • 道端の「ご自由にお持ちください」の段ボール
  • フリーマーケット
  • 骨董屋

だいたいこのような感じになります。

「大型リサイクルショップ」とはいわゆる

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こういうお店

誰もが欲しがるリユース商品が棚に整然と並んでいる一方で、肝心の味わいたちは、店の片隅に分類不能って感じで追いやられていたり、「雑貨」と書かれたケースに無尽蔵に押しこまれたりしています。まさに「エサ箱」。まさに「ディグ」。時間がいくらあっても足りません。

それとは別に、もっと規模の小さい「個人経営のリサイクルショップ」も味わいの宝庫。一期一会の出会いを求めるという意味において、僕は大型店よりもむしろ好きだったりします。

さらに、そこだけチェックしておけばいいというわけではないのが味わい集めの奥深さ。「謎の個人商店」、例えばこんな

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昔ながらの商店

日用品をなんでも扱っている、今でいうコンビニのようなお店が、たま〜に街なかに残っていたりしますよね。そんなお店をふと覗くと、

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いつからあるのかわからないデッドストックっぽい食器

が売られていたりするので、街歩きは気が抜けません。ちなみに上の写真の左下に写っている200円のマグカップは、僕が連れ帰ったのであとできちんとご紹介します。

また、個人宅で出た不用品を「道端の『ご自由にお持ちください』の段ボール」に入れて置いてあるパターンもけっこう目にすることがあると思います。あれなんか僕にしてみたら、街が与えてくれたごほうび! 恥も外聞もなくしゃがみこみ、ゆっくりじっくり、隅から隅までチェックしちゃいますね。

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喜び勇んで近づいていったら、中身がほぼ松ぼっくりだったパターンも

「フリーマーケット」はいわば、巨大な「ご自由にお持ちください」の段ボール。もちろん有料ではありますが、味わいを集めるのにあんなに楽しい場所もそうそうないでしょう。

その他、ちゃんとした「骨董屋」にも、古いけれどそんなに価値はないような食器類なんかが、店頭に格安で出ていたりします。忘れずにチェックしておきたいところ。

民芸品

さて、ここからはもう、これまで僕が集めてきた味わいたちをだーっと紹介していきます。もちろん小難しい説明なんて一切なし! だってそもそも、買った僕自身、そのアイテムがなんなのかよくわかってないようなもんばっかだからね。

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「入浴おじさん人形」

なんとも気持ちの良さそうな顔でお風呂に入り、お酒まで飲んでいるおじさん。サイズは親指の先よりひと回り大きいくらいで、机の片隅にちょこんと置いておくとなごみます。

僕は勝手に「入浴おじさん人形」と呼んでいたんですが、以前SNSに写真をアップしたところ、福島県の民謡「会津磐梯山」に出てくる「小原庄助さん」ではないか? との情報が。「朝寝 朝酒 朝湯が大好きで」っていうあれですね。

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「〇〇(?)ごろう作」とある

どこの誰かは存じませんが、ごろうさん、素敵な味わいをありがとうございます!

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「鵜飼いの人形」

たぶん。人も鵜も非常にいい顔、いいポーズ。

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「ぶどう娘」

手に入れたときはぼろぼろの台座とぶどうの木を模した枝もセットだったのですが、取れてしまったので人形だけ保護。確か「山梨」と書いてあったはず。

なんとも言えない表情と立ち姿、そして、艶っぽいぶどうの質感がたまりません。

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こんなふうに撮ってみたら

電気グルーヴのニューアルバムのジャケットと言われても信じそうなかっこよさ!

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「立山の鳥」

雷鳥かな? リサイクルショップってたいてい民芸品コーナーがあって、こけしとかアイヌのニポポ人形なんかは定番なんですが、そんななかにちょっと珍しい、個人的に心の琴線に触れるようなものを見つけたときの喜びといったらありません。

この木彫りの鳥も、丸っこさと台座の荒々しさ、そしてビビッドな色で書かれた「立山」の文字のバランスが最高。

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顔や胴体のフォルムが完璧にかわいい!
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「謎の動物の小物入れ」

味のある民芸品は、日本のものに限りません。こちらは、見れば見るほどなんだかわからないけどかわいい動物が描かれた、大理石っぽい質感が重厚な小物入れ。

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手のひらサイズなので、ほとんど何も入らない
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この情報からなにかわかる方います?

食器 / 皿

さて、ここまで民芸品や小物を紹介してきましたが、僕の最大の趣味はお酒。つまり、味わい深い食器や酒器には何より目がありません。というか、僕の味わいあつめのメインはむしろそっち。

というわけでここから先は、食器や酒器オンリーになります。

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「南部鉄器」と書かれた箱に入っていたのは
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「雪ん子栓抜き」

眺めていると雪深い山奥の村が思いおこされるようなノスタルジックさがたまりません。

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「5色のたぬき箸置き」

こんなにかわいい箸置きってある?

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「なまずの箸置き」

妙にリアルな質感とフォルム。なぜこれを作ろうと思った?

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「納税表彰の小皿」

こういう自分とは縁もゆかりもない記念小皿や酒器なんかは、特に大好物。先述した骨董屋の店頭なんかに並んでいることが多いです。が、僕のような変わり者しか興味を示さないのでしょう。江戸時代とかかなり古いものでも数百円で手に入ったりして、ロマンがありますね。

今ちょっと調べてみたところ、漢字は違うのですが「一条村」という村が昭和29年まで山形県にあったようで、そこのものなのかしら?

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「きっと鳥の小皿」

平べったくてかなり用途の限られそうな小皿。そのデザインもさることながら、

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強いていえば鳥が飛んでいる絵?

に見えなくもない、けれどもよく見ると何にも見えない、絶妙な味わいが最高です。

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「折鶴の皿」

ありそうでなかなかない、思い切ったデザインの皿。

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裏面に「Jonathan's」とあるけど

あのファミレスのジョナサンなのかな? バブル期くらいのノベルティ商品だったのかもしれませんね。

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「各種金銀盃」

酒飲みならばひとつは持っていたい、金盃、銀盃。リサイクルショップならば数百円で手に入れることも可能。金盃の裏面には「24kgp」と刻印があり、つまりメッキではあるんですが、高級感はすごい。

しかも小さめのほうの金銀一対の盃には、

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「EXPO'75」

のマークが。1975年に沖縄返還を記念して行われた「沖縄国際海洋博覧会」のグッズのようですね。

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「高見盛の皿」

僕は相撲にはそこまで興味がなく、このお皿のデザインもそこまで惹かれるものではありません。じゃあなんで買ってしまったかというと、

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手形が実物大じゃないから

お相撲さんの手って大きくてなんぼみたいなイメージを勝手に持ってしまってたので、このミニチュア感はすごくかわいい。

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酒器

ここからが僕の味わい集めの本当のメイン!

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「犬のおちょこ」

写真ではちょっとわかりづらいですが、金色の塗料で塗られたなんともいい佇まいのワンちゃんが描かれたおちょこ。それだけでも最高なのに、

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裏側に「TAKASHIMAYA TIMES SQUARE」

このミスマッチさが最高。

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「精肉店のおちょこ」

京都の骨董屋にて購入。無学な僕には判読できないのですが、精肉店の記念品でしょうか?

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「鳥のおちょこ」

同じ店で購入。ぼんやりとしたタッチで描かれた、幻のような存在感の鳥は白サギかな? 妙に酒がうまく感じるおちょこです。

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「五円のおちょこ」

このデザイン、かなり珍しくないですか? 5円だけにいかにもご縁がありそうな感じがお気に入り。

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どこかの焼肉屋のオリジナルなのなか?
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「名主 ごん助のおちょこ」
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裏側

道端段ボールで出会ったと記憶しているのですが、検索してみると高尾山のほうにそういうお店があるようですね。どう経由して僕の元まで来たのかを想像するのも楽しいです。

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「ふるさとのおちょこ」
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裏側

ぼんやりとした「ふるさと」という文字がなんとも味わい深いおちょこ。さすがにこれだけの情報だと出所はわかりませんが、これまた想像を膨らませながら飲むのが楽しい。

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「たぬきのぐい呑み」

これは今回の記事で最高級品かもしれません。確か、中野の骨董屋で800円くらいだったかな。でも僕、「たぬきもの」にはとりわけ目がないんですよね。おちょこを縦に伸ばしたような小ぶりのサイズもあいまって、めちゃくちゃかわいくないですか? これ。

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側面
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裏面

群馬県館林市にある「茂林寺」は、あの「分福茶釜」で有名なお寺だそうで、たぬきグッズもたくさん展示されているのだとか。いつか行ってみたいな〜。

湯飲み / マグカップ / コップ

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「たぬきの湯飲み」

これまた独特なタッチのたぬきが描かれた湯飲み。

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難解すぎて判読できません……
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中央の文字は「狸」かな?
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「ミレニアム桃太郎すし湯飲み」

これはわかりやすい。

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「おこしにつけたにぎりずし」!
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動物たちのかわいさよ
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「HOTAKA KOGEN マグカップ」

山下メロさんの提唱する「ファンシー絵みやげ」的なグッズがしれっと棚に並んでいたりするのもリサイクルショップの楽しいところ。1980〜90年頃にジャスト子供時代を過ごした僕にとって、この世界観には胸が締めつけられるようでもあり、それでいてふるさとのような安心感もあり、とにかくたまりません。

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とりあえずなんにでも観光地の名前を入れておく時代だった
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「FARM HOUSE ANNE」

同じ頃に隆盛を極めた「ペンション」のオリジナルグッズだったりするんでしょうか?

これがあれです。冒頭で紹介した謎の商店のデッドストックマグカップ。

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裏面まで凝ったデザインで豪華
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「ミロのマグカップ」
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説明不要の良さ
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「いかしたコップ」

そうとしか表現できません。

ところで今回、この記事を書くにあたり、「せっかくだから軽く、街で味わいをディグっておくか」と、用事で出かけた先の街を徘徊しながらリサイクルショップを探してみてたんですね。そしたらなんと、味わいの神からのプレゼントとしか言えない出会いがありまして。

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お、あそこきっとそうだ

と、リサイクルショップらしきお店を発見し、近寄っていってみると、

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なんと、閉店間際の大放出期間

街から一軒リサイクルショップがなくなってしまうのは大変悲しいことですが、ものすごくギリギリのタイミングで出会え、最後に一度でも寄れたことは幸運だったといえるでしょう。

しかもしかも!

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こんなにもかわいらしいコップを発見!
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「skateborard」って書いてある!

さらにそれだけじゃありません。

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「baseball」と「tennis」まで!

これだから味わいあつめはやめられないんだよなぁ……。


世間的には特に価値がなくても、その味わいに僕だけがときめいてしまうグッズたち。街のいたるところにひっそりとあって、縁があれば出会えるかもしれないそれらの品々を探すことは、僕にとってまさに宝探し。部屋はどんどん狭くなっていくけれど、一生の趣味として続けていこうと思います。

最後に、もしよければみなさんの家にある味わいグッズたちを見せてはもらえませんでしょうか? もちろんジャンルは上に紹介しただけじゃなく自由!

ハッシュタグ「#味わいあつめ」をつけて、SNSなどに投稿いただければ幸いです〜!

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