よくわからない液体だと思っていた
……というわけでまずはじめに、そもそもお酢とは何ぞや? というところから始めたい。
お酢がどうやってできているのか。何でできているのか。多くの人はもうすでに、知っていることなのかもしれない。
だけどわたしは全くわかってなかったのだ。去年の春先までは。
すごくふんわりと「極度にすっぱくて、静かな狂気を持った謎の液体」だと思っていたのである。
たまに買う。たまに使う。だけど実態がよくわからない。時々見かけるけど名前は知らない、隣のクラスの同級生くらいの認識のまま、思考が止まっていたのである。
とはいえ、知っていることが多少増えた今でもなお、なんで? どうして? って不思議に思うことだらけだ。
まずにおい。独特だ。大量にこぼしたら、ほぼ間違いなく異臭騒ぎが起きるだろうと感じる。というか実際に起こしたことがある。
味もはげしい。なにをどうやっても、原液のまま飲んではいけない味だ。そのままだと、胃が「お願いやめて!」と悲鳴をあげそうなものが多い。この世のすっぱさというすっぱさを寄せ集めてぎゅっと凝縮したような味わい。そのはげしさは時に暴力的とすら感じる。
多少薄めても、荒々しい冬の日本海のように、幾度となく責め立ててくるので、耐えきれなくなって結構な頻度でむせる。ほんとうに体内に吸収される気あるのかな?って疑念を感じることすらある。
だけどお酢は、ごく一般的な調味料として、たくさんの家庭に置かれ、いい感じに馴染んでいる。なんなら世界規模で愛されているし、ちゃんと使えばしっかりおいしい。煮物に加えればぐんと旨みが増す。お寿司だって、お酢あってこその食べ物だ。
あと、さっき「むせる」と書いたけど、お酢との戯れを繰り返しているうちに、むせることを食体験の感動のひとつとして捉えるようになった。むせるのも含めてお酢。むしろ、むせてこそお酢。
家のなかに、日に日にお酢の瓶が増えていくばかりなんである。
お酢ってそもそも何からできているのか
……と、そうだった。うっかり話がそれそうになっているが、まずはお酢とはそもそも何ぞ? という話がしたいんだった。
まずは原材料の話からはじめよう。たとえば穀物酢の原材料がこちらだ。ものすごく身近である。
初めて知ったとき、初めて知った感じがしなくて逆に戸惑った。ちなみにお酢の原材料の共通点は「糖質を含んでいる」ことである。
で、原材料からお酒をつくり、そこに酢酸菌という菌を加えて発酵させるとお酢ができるというのが、基本的なお酢のつくり方だ。
……けれど、大量生産するために、原材料からお酒をつくる工程を省き、アルコールを添加していることも多い。上の写真のように、原材料名に「アルコール」と書かれている場合は後者だ。
その場合、お酒からつくる場合より旨みが少ない。だが、お手頃価格で買えるし、個性が強くないぶん何にでも合わせやすいなどのメリットもある。なんだか洋服の選び方にも通じそうな話である。
お酢、紀元前にはもう存在していた
次に歴史についても触れておきたい。
お酢の歴史は古い。とんでもなく古い。諸説あるが、紀元前5000年前にバビロニア(メソポタミア南部)でつくられていたことについては、記録も残っているという。壮大な話である。
日本でつくられ始めたのは4〜5世紀くらい。中国から伝わった。あの『万葉集』には、お酢料理への思いを詠んだ歌が綴られている。
つまり鎌倉幕府ができたころには、もうあったはずなのだ。とはいえ、広く浸透したのは江戸時代といわれている。NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を観ながら、この人たちはお酢を知ってたのかな、知らなかったのかななんて思いをはせてしまう。
お酢を名乗っているけどお酢じゃない奴らもいる
ところで。製造工程を知ると、気がつくことがある。
お酢と名乗りながらもお酢じゃない。そんな液体がこの世界にはけっこうあるのだ。UMA(ネッシー)を名乗りながらも、1ミリもUMA(ネッシー)ではない自分的には、親近感でいっぱいだ。
まず梅酢。実態は、梅干しの製造工程で生まれる汁である。
そして、高知県を中心に親しまれているゆず酢もだ。お酢じゃない。
原材料はなんとゆずの果汁100%。発酵は特にしておらず、ただシンプルに絞ったゆずの汁なんである。
あとはもろみ酢。上の2つと比べると見分けがつきにくいのだけど、厳密にはお酢じゃない。泡盛の蒸留過程でできる、もろみ粕「かしじぇー」を搾ってつくられる「飲料」なのだという。
この世にはいろんなお酢がある
……というわけで、お酢じゃない者たちについてお知らせしたところで、続いては本物の「お酢の種類」について解説したい。
どれもみんなすっぱいけど、すっぱさがちょっと尖っていたり、丸みを帯びていたり、おのおのに個性がある。 買い集めているうちに、あっさり10瓶を超えそうになるくらいにはたっぷりあるのである。
なお、ここ数年、あらかじめ砂糖やだしなどが調合されている調味酢(カンタン酢)の人気がすさまじいけど、今回は、食酢以外の調味料がいっさい混ざっていない「醸造酢」にしぼって紹介したい。
じゃぶじゃぶ使える穀物酢
まずはじめに、おなじみのこちらから。小麦、コーン、米などを原料に作られている穀物酢である。
穀物酢の特徴はまず、なんといっても安いことだ。ペットボトル飲料とさほど値段が変わらない。手に入りやすく、コンビニに売っていることもしばしばある。生活のすぐそばにあるお酢だ。
味は、パッケージに「味わいすっきり」と書いてあるとおり、とにかくすっきりとしている。旨みはほとんどないけど、そのぶん何色にでも染まれる伸びしろがある。とりあえず迷ったらこれ使っとけ! みたいな頼もしさも持ち合わせていて、気がつくと1日おきに履いているユニクロのストレッチパンツのような安定感がある。
じゃぶじゃぶ景気良く使えるから、ピクルスを作る時とかにもいい。
米酢はお米との相性がいい
次に米酢である。穀物酢より旨みのあるお酢を欲していたり、少し丸みのある酸味を求めているならばこれだ。名前のとおり主原料が米。米のみが原料の場合は純米酢と呼ばれる。
穀物酢よりは割高なものの、ものによってはお店で飲むコーヒー一杯よりも安い(熱狂的ファンを多く持つ村山造酢の千鳥酢などは、もうちょっとお高いけれども)。
米が原料なだけあって米との相性がいい。酢めし作りに使うのにぴったりなお酢である。とはいえ基本何にでも合う。
まろやかな黒酢はスープに入れるの向き
そして、さらに旨みやコクが深いのが黒酢。酸味がまんまるい。穀物酢と比べると、ずいぶんまるくなったなぁ! と感じる。
あらゆる料理……特に煮物に向いているし、炒め物やフライにじゃぶじゃぶかけてもおいしい。でも、ほかのお酢で代用しちゃだめ? と聞かれると、ほかのお酢でもまあ、ダメじゃないよなっても思う。特段こだわりのない人間(わたし)の場合の話だけども。
「黒酢がいちばん合う」と熱烈に思うのは何か、と聞かれたら一押しはスープに入れることだ。コーンスープ、トマトスープ、卵スープなどなど、あらゆるスープとの相性がいい。
りんご酢はドリンクにぶっこむの向き
りんご酢。名前のとおり原材料がりんごだから、ちょっと甘みがあるのかなと思って安心してかかると、やっぱり君もお酢なんだね! ってしみじみ感じ入るような、強気の酸味を持ちあわせている。
おすすめは梅シロップに加えること。
あらゆるジュースに加えてみるのもいい。
寝ぼけていても瞬時に目が覚める。酸味に酸味を掛け合わせるなんてもう、お酢好きにとって最高の娯楽だ。そこまでお酢に溺れていないぞって人でも、レモンサワーにレモンをどさどさ入れるなどの傾向があるなら、親和性があると思うのでぜひ試してみてほしい。
ただかけるだけでもおいしいバルサミコ酢
次はバルサミコ酢。酸味がまろやかでほのかに甘い。遠くのほうにぎゅっと濃縮されたぶどうの味を感じる。いざ使い始めてみたら万能なことに驚いた。
そのほか、カレーにかけてもうまいし、塩こうじとバルサミコ酢をまぜた液体にきゅうりやトマトを浸しておいてもうまい。酢めし用のお酢として使えば、ややピンク色をしたお米が爆誕する。
手の込んだ料理を作らない人目線でも、けっこう用途があるのだ。
洋食向きかもワインビネガー
続いてはワインビネガー。バルサミコ酢より熟成期間が短くて、かすかにフレッシュなぶどうの香りがする。マリネやドレッシング作る時とかに向いている。
洋食を作る機会が少ない我が家ではいちばん減りが遅いお酢でもある。だけど基本何にでも合う……んだと思うんだ。使い方を決めすぎずに、いろんなところで使ってみてもいいんだと思う。
フィッシュアンドチップスのお供、モルトビネガー
さてここからは、スーパーにはあまり売っていない、おもに海外で活躍中のお酢を紹介していきたい。まず、フィッシュ&チップスにかけるお酢としておなじみのモルトビネガーから。
出会いは約20年前にさかのぼる。イギリスのパブでフィッシュ&チップスを頼んだとき、一緒に運ばれてきたのだ。何者だろうと思いながらおそるおそるかけた記憶がある。強烈な出会いだった。
揚げ物にお酢をかけるの最高じゃん! と感激して日常に取り入れようと意気込んで、帰国後に買ったのがなぜか中国黒酢だった記憶もある。なんでそうなったのかはわからないけど、中国黒酢もおいしい。
ホワイトビネガー
続いては無色透明なお酢、アメリカ製のホワイトビネガー。油絵具を溶く油(ペインティングオイル)みたいな見た目である。
穀物酢以上にさっぱり感が強い。 粘着質な雰囲気とは対極にありそうな、底抜けのさわやかっぷりだ。君に届けの風早くんを思い出す。
とにかくフルーティーなみかん酢
そして最後を飾るのはみかん酢である。いろいろ調べているうちに見つけて興味本位で購入した。堂々の愛媛生まれである。
味も香りも、りんご酢以上にフルーティーな印象だ。 酸味はそこまでがつがつしていない。
……というわけで、お酢はからあげと合うというのが少しでも伝わっていたら幸いである。だけどお酢の土俵はもちろんそれだけじゃない。ここからは、これぞお酢のためのコンビニ飯だと信仰しているトップ2について言及したい。
24時間いつでも楽しめてありがとう、冷凍五目焼きそば
まず、ごりごりに愛しているのが、冷凍の五目あんかけ焼きそばにどばっとお酢をかけることだ。
あんかけ焼きそばとお酢の相性の良さは、お酢ラバーの間では周知の事実と思うのだが、それを24時間味わえるようにしてくれているのが街のコンビニ達である。
コンビニトップ3(セブン、ファミマ、ローソン)にはいずれも、冷凍の五目あんかけ焼きそばが置かれている。
ざっくりいうとこの3者、ちょっとずつ味が違うのだが、パッケージを開けた瞬間に見える景色はよく似ている。それもそのはず、製造元はすべてマルハニチロである。
レンジで数分あたためるだけであっという間に完成するが、そのわりに味がしっかりしていて満足度が高い。おいしさへの距離が近すぎて、体感的には駅から自転車で30秒って感じだ。
野菜の量もたっぷり。ちゃんとバランスの良い食事をとっているな自分……って気分になりたい夜にもうってつけの見た目である。
「途中でお酢をかけると味変が楽しめる」という話も聞くのだが、わたしはつい最初からお酢をばっしゃーとかけちゃうことが多い。
だって。最初から最後までずっとお酢とともにありたいのだ。
一番好みの量は焼きそば一皿に対して大さじ2くらい。でも、その倍の大さじ4くらいかけて「お酢の味が強い! 強すぎるかもしれない!」と目を細めながら食べるのも大好きだ。
そして食べるたびに思う。これはきっとお酢を味わうための食べ物に違いないと。お酢は脇役なんかじゃなく真の主役なんだろう、と。
醤油を味わうためにお寿司を食べるとか、マヨネーズを味わうために茹でブロッコリーを食べるとかと聞くたびに、それでいいの? 本当に? という思いが少なからずあったのだが今ならわかる。
ワインにとってのチーズであり、日本酒にとっての酒盗でもある。五目あんかけ焼きそばは、液体を口にするための固体なのだ。
ちなみにお酢に合うコンビニの麺類は他にもたくさんあって、冷凍担担麺、焼うどん、ソース焼きそばにかけるのもお気に入りだ。そばやそうめんのつゆに加えてみるのもいい。
それからそれから。スパゲティにかけてもうまいし(種類によるところもあるが、うそじゃない)、もちろんラーメンにかけてもうまい。インスタントもそうじゃないやつも、どっちもだいたいいける。
……って、これだともう「なんにでも合う!!」って言っているようなもんだろう。お前の味覚は大丈夫かと真顔で聞かれそうなことを書いている自覚はある。だけど、麺類とお酢の相性があまりにも良いので、こう記すしかないのである。合うものが、多すぎるのだ。
そしてそのなかでも、冷凍五目あんかけ焼きそばとの相性のよさと手に入りやすさは最高なんだと声を高らかに叫びたいのである。
煮たまごは汁ごとタッパーに入れてお酢を加えて漬けるとうまい
さて。そろそろ次の話にうつろう。煮たまごである。
ゆでたまごって、ゆでればいいだけなんだから作るの簡単じゃん! と思う人もいるのかもしれない。だけど、手間をかけずに絶妙な塩梅のを食べたい人(わたし)にとってはアウトソーシングに頼りたい加工品部門、20年連続のダントツ1位だったりする。
そんなゆでたまご(半熟)がいい感じに煮込まれている、コンビニたまご加工品界隈のエース的存在が「煮たまご」だ。
コンビニトップ3全部に置いてあって、半熟度合いが微妙に違う。
で、本題なのだが、買ってきた半熟たまごをだな……
計量せずざっくり作れるのがポイントだ。
お酢の種類はなんでもいい。
穀物酢だとさっぱり味になる。米酢だとほんのり旨みを感じ、黒酢だとさらに感じる。
「飲むお酢」として売られているような果実のお酢とも相性がいい。
ピクルスよりも酸味がやさしく、しょうゆ味よりも複雑な味わいが楽しめる。 賞味期限が切れそうだから、お酢をたくさん使いたいんだよな〜って時などにぜひ試してみてほしい。
お酢好きの味覚は大丈夫なのか問題
ところで、お酢を好きになり日々かける量が増えていくと、だんだんと不安が募っていく。わたしの味覚、大丈夫だろうかと。
何にかけても「おいしい!」ってしか思わなくなっている可能性、ないだろうか。心配なので、ここから3品は編集担当の橋田さんにも試してもらった。
牛乳にお酢を入れるとにわかにヨーグルト
まずはこれからいこう。牛乳にお酢を入れる。
合わせるお酢は、できればりんご酢などの果実から作られたお酢がいい。なぜならば、酸味の質がちょっと丸いのだ。果実由来のさわやかさもあって、ドリンクとして飲むのに向いている。
……とさらさら書いてみたのだが、なかには「へっ? 牛乳にお酢?」と思った人もいるのではなかろうか。もしそうだったとしても、どうか引かずに読み進めてもらえるとうれしい。わたしも最初は驚いた。
初めて知ったのは去年の今頃。どうやら、お酢フリークにとっては既に定番の楽しみ方で、なんら異質な合わせ方でもないらしい。
だけどそれはもう、驚いた。
牛乳にそんなことしていいの? 本当に? ごくごく一部の選ばれし味覚を持つ者のみが楽しめる特殊な合わせ方なんじゃ?
……と思っていた。
でも、先人達が熱く薦めてくれているとりあえずは試してみようじゃん! と決意を固めた。
知ってから半年以上が経った冬の朝のことだった。
本物のヨーグルトと比べると、違うといえば違っていた。飲むヨーグルトとは、なんというか貫禄が違うのだ。飲むヨーグルトには、「俺、本物!」っていう揺るぎない強さがある。
でも牛乳+お酢は、これはこれとしておいしい。味を具体的に言い表すとすると、「ヨーグルトっぽい。ヨーグルトになりたがっている(でも完全になれているわけではない)牛の乳」といった感じで、元も子もないんだが、味はそんなにへっぽこではないのである。
これはこれでひとつの選択肢であろう、という味がする。
ちなみに「ブルガリアヨーグルトプレーンにはまって食べていた時期がある。酸っぱいヨーグルトが好きなので、嫌いじゃないと思う!」という橋田さんにりんご酢で試してもらったところ……
予想を上回る大絶賛だった。
橋田さんは、牛乳とお酢の組み合わせに対しては何ら疑問はなく、「牛乳に酢を入れると分離するだろうという予備知識があったので、分離したのを見られたらいいな」と思っていたそうだ。
そうそう。そうだった。お酢と牛乳の組み合わせは、調理の仕方次第では、カッテージチーズも作れる。あたためた牛乳にお酢を投入し、分離がすすんだら、その塊をキッチンペーパーなどで包み、水気をきるとポロポロのチーズができあがる。
そしてカッテージチーズにするつもりがなくても、冷たい牛乳にお酢を入れるだけで、ドロッとした感じになることがある。
橋田さん曰く「牛乳100mlにお酢大さじ1杯くらいを入れると、ドロッとした感じになった!」とのこと。
ただ、お酢の種類を穀物酢にするのは、よろしくなかったらしい。
納豆+お酢=ふわふわ!
続いておすすめしたいのが納豆に入れること。
もしも「えっ??」と思った人がいたとしたらお伝えしたい。この組み合わせ、よくよく考えてみると、納豆に味ぽんや酢じょうゆをかける感じに近い。そこまで異質感はない組み合わせなのである。
ポイントは納豆がふわふわになることだ。ふわふわの納豆って少しだけ……いや、かなり気分がいい。味にもさっぱり感があって気分がいい。朝から絶好調になれる納豆だ。もちろん朝以外に食べてもいい。
こちらも橋田さんに試してもらった。
なんと、今回初めて知ったのだが、「納豆は好きじゃないけど、身体に良いと聞くので無理して食べるようにしている」という橋田さん。
そ、そうなのか!
「短時間でささっと食べるようにしていて、ごはんにもかけない。皿にもいれたくないのでパックのまま食べて捨てる。酢を入れることで嫌いな気持ちが改善されるといいなと期待しています。」
相当強い思いがあるようだが果たして。
さらに穀物酢でやってみたところ「納豆自体がかなり強烈な味のはずなのに、穀物酢は負けじと主張してきました!」とのこと。
穀物酢、強い。
穀物酢とりんご酢だったら、りんご酢で試すのがおすすめだが、米酢や黒酢などで試してもおいしいのでぜひトライしてみてほしい。
酒を控えておきたい夜にはお酢を炭酸で割れ
橋田さんチャレンジ、3つめに紹介したいのはお酢と炭酸水で作る、チューハイもどきである。お酢を水分で薄めて飲むと、カーッと喉奥が熱くなるような感じがある。これがどうにもお酒っぽいのである。
ここで大切なのは、本物と同時に飲んで味を比べないことだ。細かい違いに気がついてしまうから。お酢サワーだけ飲もう。それで、飲んでいる気分に浸りきるのだ。
お酒とは、気分なのである(と書いてみたが個人差はあると思う)。
さて。橋田さんにも試してもらおう。試す前の印象を聞いたら、「これは、普通においしいでしょう」と力強い。
当サイト内の「買ってよかったもの」のコーナーで、ウェブマスター林さんが勧めていた「ビネガークラフトワークス 桜色ベリー295ml(ビネガードリンク)(飲むお酢)」(現在は在庫切れのよう)を飲んだことがあって、それがおいしかったので、味の想像がしやすかったという。
休肝日を設けたい人、ぜひお酢に頼ってみてほしい。そしてその際には、飲んでも飲んでも酔わないな、おかしいな……と我に返らないことがなにより大切だ。
なお、そのほかにおすすめなのは
・お茶漬けに入れる
過去に書いた記事でも少し取り上げている。さっぱり味で朝の起き抜けにも食べやすい。これからの季節にいいと思う。
・カレーに入れる&かける
本気でスパイスとお酢の調和を楽しみたい場合には、ポークビンダルー(「ポークビンダルー」「レシピ」で検索して好みのレシピを探していただければ……)を作るのがおすすめだけど、めんどくさいよ〜っていう場合には、出来合いのカレーに混ぜてみるのもあり。ルーじゃなくて、ごはんに寿司酢を混ぜるのもうまい。
・揚げ物にかける
からあげ以外の揚げ物にも合う。レモンだと思って適量ふりかけるといい。りんご酢のほか、黒酢、米酢あたりが旨みがあっておすすめ。
あたりである。
それ以上手の込んだ料理については、料理家さんの作ったレシピ(特に自ら「お酢が好き!」と公言している人のレシピが超おすすめ)やお酢メーカーの公式レシピを物色するのが吉である。
汝、ティラミスにもお酢を入れてよし
お酢メーカー各自が出している公式レシピはすさまじい。自社製品を熟知した彼らは、時に狂おしいまでの熱情で、あらゆる手をつくしまくり、いろんなものにお酢を入れようと日々励んでいる。
なかでもびっくりしたのがデザートだ。チーズケーキひとつとってもこんなにある。
これは氷山の一角だ。ほかにも、スイートポテトやスコーン、フルーツサンド、チョコレート菓子などなど、あらゆるデザートレシピが公式サイト内に存在している。
なかでもわたしが特に気になったのがティラミスだ。同じイタリア生まれのバルサミコ酢を使うでもなく、黒酢を使おうという強気なレシピがキユーピー醸造株式会社のサイトにのっていたのである。
作ってみたい!
入れた途端、我こそは黒酢である! といわんばかり、とがった香りが漂ってきた。 なかなか強烈だ。いいにおいかと聞かれたら悩む。ふだんお菓子作りの途中でこの匂いがしてきたら、たちまちに不安になる香りである。
思いのほか、味へのお酢の影響はさりげないものだった。遠くで聞こえる汽笛のように、静かに心地よく、黒酢の声が響いてくるのだ。
さっぱりとした味わいで、ヨーグルトっぽくもある。このまえサイゼリアで食べたティラミスの味とは全然違うんだけど、これはこれで、しっかり満足感のある味わいだ。甘さひかえめなのにもぐっとくる。
そのほかにもこんなのを作ってみたよ報告
せっかくなのでそのほかにも、気になって作ってみて衝撃をうけたメニューを2品ほど紹介したい。
まずは海苔の佃煮である。千鳥酢(成城石井とかで売ってる良いお酢)を製造している老舗・村山造酢の公式HPで見つけた。
海苔の佃煮って自作できるのか。しかもお酢を入れていいのか!
……といそいそと作ってみたところ、ものすごーく簡単だった。
味は、ふだん食べ慣れている海苔の佃煮と比べると、ちょっとすっぱいなぁという感じ。でも、それがなんだかいい。朝ごはんにこれを食べたら、しゃきっと目が覚めそうな気がする。
「グラニテとはなんぞや……?」と思いつつ作ってみた「甘酒のグラニテ」も、かけた労力の少なさに見合わないおいしさだった。
グラニテとは、主に果汁とシロップを混ぜてシャリシャリに凍らせた、フランス発祥の氷のお菓子らしい。
それでも湧き上がる疑念
……とここまで読んでくださったみなさん、今更そんなこと言うなよって思われるかもしれないのですが、あえて伺わせていただきたいことがございます。
うすうす思っていないでしょうか。
これらのメニューって実はみんな、お酢を入れなかったとしても、おいしいんじゃないだろうか? と。
……ごめんなさい。正直にいうと私は少し思っています。
でも同時に、もしそうだったとしても、それはそれでいいんじゃないかとも思っているんです。
だって、お酢を入れることで、入れてない時とは別ベクトルのおいしさに出会えてるはずだから。お酢メーカーのお酢レシピからは、その一歩を踏み出すための勇気をたくさんもらっている気がします。
そしてお酢の旅は続く
というわけで、小出し記事として、5回にわけて公開してもらっていた記事を1本にまとめてみた。結構な長さになってしまったなぁと自覚している。でも正直なところ、全然まだまだ言い切れていない。
タイトルに「語り尽くしたい」と書いたが、語り尽くすには、100年あっても足りないのではないだろうか。大いに不安だ。
たぶんこの世界には、知られざる「この食べ物にお酢をかける(入れる)とおいしい」がまだまだあるに違いない。これから先、どれだけ出会うことができるんだ。そう考えると、もっとたくさんのお酢を摂らねばという思いにかられる。
あと、お酢って本当は開封後は冷蔵庫に入れるのがいいと聞いたのだが、あまりにお酢の種類が増えすぎて、冷蔵庫に入りきっていないことも心配だ。お酢達を守るためにも、でかい冷蔵庫がほしい。