特集 2017年11月5日

車両基地めぐり(デジタルリマスター版)

車両基地の魅力を凝縮した一枚
車両基地の魅力を凝縮した一枚
自分はけっこう鉄道好きだと思っていますが、その中でも特に車両基地が好きだ、ということが最近わかりました。

線路が次々に枝分かれしていたり、電車が整然と並んでいたり、隅の方に古くて錆びた車両が放置されていたりするのが見えると、なんだかもう、いてもたってもいられなくなります。

そんなわけで、1日まるまる車両基地だけをめぐってきました。

※2008年5月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:注意書きを集めて安全にする

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基地探しブーム

車両基地をめぐろうと思っても、まずはどこにあるのかを知らなくてはなりません。

そこで、ネットの地図サービスを使って車両基地を探したのですが、やっぱり便利なのはグーグルマップ(@nifty地図担当の方、すみません)。

線路上をスクロールしながらずっと辿って行ったのですが、面白いのは、ある縮尺を越えると、何もなかったところにいきなり大量の線路の描写がぐわっと現れること。これが楽しくなって、基地を探すのに何時間も没頭してしまいました。

以下にいくつか実例を挙げてみたので、皆さんも一段階拡大させて(地図左上の「+」ボタンをクリック)、車両基地が出現する様子を見てみてください。
仙台にある東北新幹線の車両基地
関東車両基地の聖地と呼ばれている(というか僕が勝手に呼んでいる)尾久
どうですか、楽しくないですか?

こうして、東京近辺の車両基地をたくさんリストアップ。それから、よく見ると車両基地の上に橋が架かっていたり、すぐ近くに踏切があったりすることもあるので、そういうところを中心に1日でまわれそうなルートを考えました。せっかく行っても全部金網に囲まれていたら楽しくないですからね。

というわけで、基地だけを見る旅に出発しました。

まずは海老名へ

小田急線に乗って、海老名にやってきました。

来る途中の相模大野にもかなり大きな基地があったのですが、地図で見る限り、じっくり眺められそうな場所がありませんでした。

海老名も、基地の周囲は相鉄線と相模線に挟まれているのですが、ホームの先端から近いので、駅を出ずに眺められそうです。

これもいわゆる「エキナカ」でしょうか。
エキナカで鑑賞できる海老名(ぜひまた拡大してお楽しみください)
相模大野もかなり大きな基地 (走行中の車内から撮影)
相模大野もかなり大きな基地 (走行中の車内から撮影)
海老名駅ホームの先端から
海老名駅ホームの先端から
残念ながら地図を見て想像したより実際は遠くて、写真に撮るとイマイチなのですが、どんどん線路が分岐しているのはホームからもよく見えるので興奮してきます。どうやら僕は電車よりも線路のほうが好きなのかも知れません。

ここでの見どころは、ホームのすぐ脇にある2つ連続したダブルクロス(両渡り線)。ごちゃごちゃしていてパッと見は何がなんだかですが、じっくり見ていると、ピシッと一本の道筋が見えてきて、その瞬間、思わず身震いが出てきます(僕だけだと思います)。

車両基地鑑賞という観点からすると少し距離があるのが残念ですが、時間のない通勤の途中、そして一日の仕事を終えて帰宅する途中、はたまた「駅から歩くのはちょっと…。」というライトユーザーにはお勧めの基地と言えます。雨にも濡れないですし。
ホームのすぐ脇にある連続ダブルクロス
ホームのすぐ脇にある連続ダブルクロス
分岐をたどって歩いて行きたい
分岐をたどって歩いて行きたい

続いて長津田へ

いったん町田まで戻り、横浜線に乗り換えて長津田で降りました。

ここには東急田園都市線の巨大な車両基地があります。駅から少し歩かなくてはならないのですが、基地のすぐ脇を道路が通っていて、さらに上には橋が架かっているので、横からも上からも接近できそうです。

ところでこの駅名、「ながつた」が正しいんですね。僕はずっと「ながつだ」だと思っていました。
拡大して左端、橋が架かっているのに注目
駅を降りて、10分ほど歩くと基地の脇を通る道に出ました。本線上はひっきりなしに電車が通過していますが、こちら基地の中は、車内清掃が行なわれている以外は静かな時間が流れています。

途中、ちょうど基地を跨ぐように架けられた橋があって、その上に立つと巨大な基地を一望できます。ただ金網がけっこう高いのは残念。思いきって展望台、ということにしちゃえばいいのに。

あと上から見たときに、電車が多く停まっていると屋根しか見えなくて面白くないし、架線がけっこう邪魔、ということが分かりました。
さっき説明しなかったけどダブルクロスはこれです
さっき説明しなかったけどダブルクロスはこれです
正式名称は検車区というらしい
正式名称は検車区というらしい
どんどん分岐してるところが遠いのは減点対象
どんどん分岐してるところが遠いのは減点対象
基地の真上に架かる橋
基地の真上に架かる橋
すぐ下で車内清掃が行なわれていた
すぐ下で車内清掃が行なわれていた
上からだと電車が多すぎても面白くないことが判明
上からだと電車が多すぎても面白くないことが判明
橋を降りて、今度は基地沿いの道を先に進みました。

いちばん端まで来ると、たくさんの電車が横一線に並んでいるところを間近に見ることができます。これぞ車両基地!という光景で、この近くの人が羨ましいです。

ここは電車にすごく接近できるうえ、橋の上から眺めたり脇の道路から眺めたり、見どころも多いので初心者から玄人までオールマイティーに楽しめる基地だと思います。個人的には、あとポイント群が間近に見られれば完璧でした。
いっそのこと公園にしたらどうだろう
いっそのこと公園にしたらどうだろう
解体だか整備だか行なっているのも間近に見える
解体だか整備だか行なっているのも間近に見える
ふつうの道路のすぐ脇に電車が停まっている風景
ふつうの道路のすぐ脇に電車が停まっている風景
こういう光景があたりまえの人もいるわけですよね
こういう光景があたりまえの人もいるわけですよね
かっこいい台車も撮り放題
かっこいい台車も撮り放題
でもやっぱり電車より線路が並んでいる方が興奮する
でもやっぱり電車より線路が並んでいる方が興奮する

今度は新木場

1時間ほど電車に揺られて、今度は東京湾岸の新木場に着きました。

東京メトロの有楽町線はここが終点ですが、線路はこの先も伸びていて、埋め立て地に車両基地があるようです。

地図で見ると駅からかなりの距離ですが、がんばって歩いてみました。
何もない埋め立て地を拡大すると車両基地が
新木場はその名の通り貯木場があって、木材の問屋がずらりと立ち並んでいます。そんなウッディーな香りの中を歩くこと約30分、ようやく基地にたどり着きました。かなり敷地を広めにとってあって、周囲から眺めるのは不可能なのですが、ここも基地の上に歩道橋が架かっていて、その上からのみ鑑賞できます。ただ、ちょうど線路の上はフェンスが高く、あまりいい写真は撮れませんでした。
線路は続く~よ~車両基地まで~♪
線路は続く~よ~車両基地まで~♪
周辺に立ち並ぶ木材問屋さん
海沿いの公園に行くための橋が基地を跨ぐ
それなら「基地と海の橋」にすべきではないか
それなら「基地と海の橋」にすべきではないか
もうすぐ線路の上というところで高くなるフェンス
もうすぐ線路の上というところで高くなるフェンス
あたりまえだけど電車が有楽町線だけなのも残念
あたりまえだけど電車が有楽町線だけなのも残念
敷地は広いのですが、基地の規模自体は海老名や長津田ほど大きくないので、分岐もそれほどなくやや物足りない印象。でも海が近くて空が広く気持ちいいので、家族連れでお弁当を持って基地鑑賞したい、という人にはいいと思います。
ポイントはそれほど多くない
ポイントはそれほど多くない
車庫には解体中か整備中の電車がたくさんあった
車庫には解体中か整備中の電車がたくさんあった
よく見ると椅子も取り払われていて、解体されてしまうのだろうか
よく見ると椅子も取り払われていて、解体されてしまうのだろうか
すぐ脇は荒川の河口
すぐ脇は荒川の河口

徐々に日も傾いてきましたが、続いては京浜急行に乗って一路、南へ。車両基地と車両工場が隣接する夢のような場所へ向かいます。
いったん広告です

禁断の楽園、金沢文庫

京浜急行に乗って、前から来てみたかった金沢文庫に到着。

ここは京浜急行の車両基地と、なぜか東急の車両工場が隣接して建っているという、基地と工場好きには堪らない場所です。しかも隣駅の金沢八景まで複々線が続いていて、ダイナミックな構図の線路ワークが見られます。
これだけ見ると基地も工場も複々線も分からないのだが、拡大すると…!
基地の少し手前に架かる歩道橋から眺めると、ちょっと架線の柱が邪魔ですが、赤い芋虫が大量に蠢いているのが見えます。さらに背後には巨大な団地が建っていて、団地好きのニーズにもがっちり応えています。

線路沿いの柵も低く、複々線が緩やかにカーブしている姿が間近に見られるのは、線路好きにとって感涙もの。
ホームの先端から見えるポイント群
ホームの先端から見えるポイント群
歩道橋から見た基地の全景
歩道橋から見た基地の全景
電車好きな団地マニアなら躊躇なく買うんじゃないか
電車好きな団地マニアなら躊躇なく買うんじゃないか
基地の外側をゆるやかにカーブする複々線、最高
基地の外側をゆるやかにカーブする複々線、最高
こういうスペシャリティの高い車両がいるのもいい
こういうスペシャリティの高い車両がいるのもいい
頭とお尻以外ぶった切られてしまったような車両
頭とお尻以外ぶった切られてしまったような車両
少し歩くと右手には巨大な東急の工場が立ち並び、その中から完成した車両を送り出す引き込み線が出てきて、京急の線路に接続されています。面白いのは、京急の線路幅は新幹線などと同じ広さなのですが、東急やJRの在来線はそれより少し狭いので、どちらの広さの車両も走れるように線路が3本になっているところでしょう。

その先には踏切があって、この線路天国を中から見ることができます。もっとも、電車の往来が激しいので、じっくり味わうほどの時間はないのですが。
工場の中にちらっと見えた車両
工場の中にちらっと見えた車両
と思ったら工場や中の車両は撮影禁止だって
と思ったら工場や中の車両は撮影禁止だって
工場の中に伸びる引き込み線
工場の中に伸びる引き込み線
工場から外に出る唯一の場所
工場から外に出る唯一の場所
踏切が開いた一瞬しか味わえない景色
踏切が開いた一瞬しか味わえない景色
踏切から基地もよく見える
踏切から基地もよく見える
さて、お腹が減ったので食事をしていたら完全に日が暮れました。

かなり疲れたのでどうしようか迷いましたが、東京方面に戻る京浜急行を途中の立会川で降りることにしました。そこから大井埠頭の方に向かって2kmくらい歩くと、東海道新幹線とJR貨物の基地があるのです。

大井埠頭は最高の夜景

今日一日、重い三脚を持ち歩いたのも夜景を撮るため。基地が見られる保証はありませんでしたが、立会川で降りて、トラックが行き交う人通りのまったくない道をとぼとぼ歩いて行きました。
交通の便は最悪だが拡大したときの線路配置に引き寄せられた
どのくらい歩いたのか、時計を見る気力もなくなっていましたが、新幹線と貨物の基地を跨ぐ橋の上に何とかたどり着きました。

しかし、新幹線の基地は高いフェンスが立ちはだかっているうえ、その外側に鉄板が張りめぐらされ、まったく見ることができませんでした。ああ、やっぱり高速鉄道というのは対テロ対策がしてあるのかな、と疲れた頭でぼんやり考えました。
高速道路の上を渡る
高速道路の上を渡る
新幹線の基地は横からちらっと見えるだけ
新幹線の基地は横からちらっと見えるだけ
その隣の貨物基地の方はフェンスもなく、遠くまで見渡すことができますが、いかんせん広いのと照明が少ないので暗く、目の前にオレンジ色のディーゼル機関車が1台停まっているのがぼんやりと見える程度です。

とりあえず全体の様子を見るために三脚を組み立て、露出をかなり明るめに調整してシャッターを押してみました。

十数秒間露光してシャッターが戻り、出来上がった画像が小さな液晶モニターに表示された瞬間、僕は小さく声を上げました。
東京でも1、2を争う夜景ではないだろうか
東京でも1、2を争う夜景ではないだろうか
肉眼ではほとんど見えないものの、目の前には複雑に入り組んだ線路が広がり、その上には何台もの機関車が停まっていたのです。

しかも、背後には高層ビル群、そして東京タワーもかすかに映っています。これほどの夜景はちょっとないのではないでしょうか。

僕は疲れもすっかり忘れ、夢中でシャッターを切り続けました。
ぜんぜん見えないけどこんなに機関車が停まっていたのか
ぜんぜん見えないけどこんなに機関車が停まっていたのか
ぜんぜん見えないけどこんなに複雑に線路が敷かれていたのか
ぜんぜん見えないけどこんなに複雑に線路が敷かれていたのか
ぜんぜん見えないけど貨車にコンテナを積み込むホームだった
ぜんぜん見えないけど貨車にコンテナを積み込むホームだった
ぜんぜん見えないけど貨車にコンテナを積み込んでいるところだった
ぜんぜん見えないけど貨車にコンテナを積み込んでいるところだった
画像だとかなり明るいですが、ここは橋から遠く、かなりの望遠で撮っているので、本当に肉眼では何も見えませんでした。

長距離の列車に乗っているとよく見かけるコンテナ貨物列車は、毎日こういう人目につかない場所で組成されていたのです。

考えてみればあたりまえなのですが、何だか秘密の作業を覗いてしまったようで、大人なのに胸が高鳴りました。

しばらく見ている間にも次々と貨物列車が到着したり出発したりしていて飽きません。しかしそろそろ終電の時間なので、後ろ髪引かれる思いで大井埠頭を後にしました。

朝から一日車両基地めぐりをして、見たことのなかった光景の連続で大満足なのですが、一箇所だけ方向が違って行きそびれた場所がありました。そこは、車両基地に向かって線路が分岐している途中に踏切があるのです。

最終電車で何とか帰宅したものの、行ってみたい気持ちが収まらず、結局、車に乗って出かけてしまいました。
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深夜は保谷が熱い

日付が変わってからからだいぶ経ったころ、西武線の保谷駅に到着しました。

西武線の車両基地と言うと、何と言っても小手指と新所沢の先に2大エースの基地があって、保谷と言えば「7回くらいに登場する、ワンポイントの中継ぎピッチャー」くらいの位置づけなイメージだったのですが、グーグルマップで見た瞬間、僕の中では影のエースに昇格しました。
線路が分岐している中に踏切が渡っているのが見逃せない
もう終電も終わっている時間なので、踏切の中に立って思う存分撮影できるかも知れません。車を近くのコインパーキングに入れて、カメラと三脚を持って駅前の踏切の上に立ちました。
踏切の目の前に車庫…!
踏切の目の前に車庫…!
間近にダブルクロス
間近にダブルクロス
予想通り、踏切は車両基地に向かって線路がどんどん分岐している中に渡っていました。

踏切の真ん中に立つと、どこを向いても線路とポイントだらけです。しかも電車はもう終わっているので踏切が鳴りません!

人通りもほとんどない踏切の上で、ひとしきり撮影に没頭しました。
すぐ目の前にこれだけの電車がお出迎え、ひょっとして歓迎されているのか
すぐ目の前にこれだけの電車がお出迎え、ひょっとして歓迎されているのか
少なくとも西東京市では屈指の夜景だと思う
少なくとも西東京市では屈指の夜景だと思う
撮りたかったダブルスリップポイントも最後にようやくゲット
撮りたかったダブルスリップポイントも最後にようやくゲット
今日一日でわかったこと。

やっぱり僕は線路が好きなのでした。複雑に分岐したり交差したりする線路があれば満足なので、どこかに車両が何も停まっていない広大な車両基地があったらいいなと思いました。

それは車両基地ではないけれど。

線路だけ撮りたい

確かに朝の時点では車両基地に停まっている電車にも興味があったのです。でも、長い一日の中で自分の中に大きな、そして確かな変化があったことに気づきました。やっぱり線路だよ線路。

でも線路マニアなんんているのかと思って調べたところ、何とタモリさんも線路マニアらしいので、いつかじっくりお話を伺ってみたいと思います。あ、ダムもだ。

気が合うなあ、タモリさん。
まったく時間がなかったけど、実は東上線の森林公園にも行きたかった
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