特集 2017年10月27日

注意書きを集めて安全にする

この世のすべてのものは使い方を誤ると死ぬ
この世のすべてのものは使い方を誤ると死ぬ
最近買った小さな電気製品の取説を見ていた。

すると、いちばん最初に「安全上のご注意」という項目があり、そこには「警告」として「死亡や重症を負うおそれが大きい内容」が書いてあった。

こんな小さな、ひとつの目的しかない電気製品でも、使い方を誤ると死亡したり重症を負ったりする可能性があるのだ。怖い!
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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電池で死ぬ状況が想像できない

見ていた取説はエネループ充電器のものである。コンセントに差し込み、対応した電池をセットすれば充電が開始され、フル充電されたら自動的に充電が止まり、満タンをキープしてくれる。非常に便利で、身の回りの電池で動くものの大半に僕はエネループを使っている。
しかし取説に不穏な表記が
しかし取説に不穏な表記が
だけど、電池の分解や改造をしたり、指定以外の電池を使用したり、火の中に捨てたり加熱したり、端子を金属などに接触させたり、ネックレスやヘアピンなどと一緒に持ち運んだり保管したりすると、液漏れ、発熱、破裂が起こり、「死亡したり重症を負うおそれがある」と取説が言っている。
電池の使い方を間違えるとたいへんなことに
電池の使い方を間違えるとたいへんなことに
電池を分解したり改造する意味が分からないし、そのほかも可能性としてはそうとう小さい。そして、仮にそれが起こったとしても、発生するのは液漏れ、発熱、破裂である。液漏れした電池を抱えて8時間寝るとか、携帯が通じない場所にひとりの状況で破裂した電池が顔や両足を直撃、みたいな状況でないとさすがに死亡までは至らないだろう。

しかし、そういったことが起こり得る以上は取説に記しておかなければならないのだろうか。運悪すぎである。

それなら、死に至らないまでも、可能性があることはできるだけ注意書きをしておくべきではないか。そう思って、いろいろなものの取説やパッケージを見て注意書きを探した。これを「拡大解釈」とか「揚げ足取り」などと言う。

助六寿司に起こり得ることへの注意

唐突だが、いま目の前にあるのは僕の昼食で、コンビニで買ったお寿司である。太巻きといなり寿司が入っている、いわゆる「助六寿司」というやつだ。
何を食べようか迷ったときに買いがち
何を食べようか迷ったときに買いがち
今回はこの助六寿司に追加できそうな注意書きを探すことにした。こんな平和の象徴のようなお寿司も、たとえばすべてを一気に丸呑みしたら喉に詰まって最悪の場合死に至るかも知れない。注意しなければ!
しかしパッケージにはしょうゆの飛びはねに対する注意喚起のみ
しかしパッケージにはしょうゆの飛びはねに対する注意喚起のみ
しょうゆの飛びはねは確かに怖い。新品のシャツが一瞬でお釈迦である。しかしそれ以上に恐ろしいこともあるだろう。想像力を働かせて、それを未然に防ぐのだ。

部屋の中にあるさまざまな取説やパッケージを見て、助六寿司にも当てはめられそうな注意書きを探した。

電化製品の注意書きは食品への応用が困難

この小見出し何なんですかね。
家にある電化製品の取説をめくってみたところ、ひとつ傾向があることに気がついた。
ウォシュレットの取説に載っていた警告
ウォシュレットの取説に載っていた警告
これは「警告」なので「死亡や重症を負う恐れがある」内容だ。感電はともかく、便座に長時間座るのは意外と高リスクらしい。

続いてはキッチンで使っているオーブンレンジの注意書き。
10年選手だけどオーブンは5回くらいしか使ったことないかも
10年選手だけどオーブンは5回くらいしか使ったことないかも
発火、やけど、破裂、電波もれなど死に至りそうな内容
発火、やけど、破裂、電波もれなど死に至りそうな内容
ヒーター加熱中、庫内、ドア、電波出口など細かく書いてあるのでどう解釈しても助六寿司には応用できそうもない。

次のも電化製品(何だったか忘れた)の取説に載っていたものだ。
食品業界に「修理技術者」って肩書きの人いない
食品業界に「修理技術者」って肩書きの人いない
専門用語が食品ではない。つまりこれも助六寿司には使えない。いなり寿司を分解改造して発火させたり感電させることはできるかも知れないけど。

つまり、電化製品は電源プラグや便座やドアなどのハードウエアの名称、そして加熱とか電波といった処理の名称が使われているので食品への応用が難しかった。

そんな中、この注意書きで僕は一筋の光明を見出した。
何も具体的な名称が出てこない!
何も具体的な名称が出てこない!

助六寿司に起こり得る危険行為

これは本当は照明機器の取説なのだが、取り付けに関する注意だけで機器側について言及がないため、これだけ読むとややぼんやりしている。

そしてそのぼんやりした霧の中から助六寿司が現れた。つまり、補強のない薄い場所や傾斜した場所に助六寿司を取り付けると落下の恐れがあり、上から助六寿司が降ってきて負傷する可能性があるのだ!

また、がたついたり破損していたり、斜めだったり配線だけだったり、電源端子露出タイプだったりといった配線器具に助六寿司を取り付けると、そもそも助六寿司は取り付けに対応していないから、火災、感電、落下によるケガのおそれがある。

これは危険だ!注意書きしておかなければ。

少し苦しいが、これも使えるのではないか。
エアコンの取説だったと思う
エアコンの取説だったと思う
いなり寿司や太巻きを、工具を使って分解掃除したり、改造や内部の洗浄をするのは危険だ。いなり寿司の水分が抜けてパッサパサになってしまったり油揚げが破れたり、太巻きが復元できなくなったり、工具によっては発煙や発火もあり得るだろう。最悪の場合死に至る。工具を使っての分解、改造は禁止である。

続いてはかなり変化球だが(この記事自体かなりの変化球だが)、注意書きという意味では完璧なものだ。
ガス漏れの場合の対処法
ガス漏れの場合の対処法
給湯器の取説にあったもので、ガス漏れに気づいた場合の対処が書いてある。もちろん助六寿司はガス機器ではないけれど、助六寿司を食べている時にガスが漏れないとも限らない。というわけで注意書きしてあっても役に立たないことはない。

このノリで続けても疲れるので、電化製品はこのくらいにして、食品やその他のものから探してみる。
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使いやすい食品の注意書き

冷蔵庫を開けて食品のパッケージを片っ端から確認した。
ヨーグルトのパッケージにはどんな注意書きが
ヨーグルトのパッケージにはどんな注意書きが
ヨーグルト、複雑な構造してんなー
ヨーグルト、複雑な構造してんなー
ヨーグルトは凍って解凍すると液状になるらしい。助六寿司は凍って解凍してもおそらく液状にはならなそうなのでこれは使えないかな。倒しても乳清も出てこないだろうし。
切れてるチーズと助六に共通点はあるか
切れてるチーズと助六に共通点はあるか
共通点あった…、食品なら避けて通れない運命
共通点あった…、食品なら避けて通れない運命
食品なので、賞味期限にかかわらず場合によってカビが生えるのは宿命だろう。そのため保存する場合は密封し、早めに食べるのは間違いない。

コーラやインスタントコーヒーのラベルを見ていたら、そこまで必要なの、という注意書きを見つけたのでご紹介したい。
そりゃそうだろうよ
そりゃそうだろうよ
 そりゃそうだろうよ
そりゃそうだろうよ
ビンが割れものなのも炭酸飲料のフタを開ける音が大きいのも、わざわざ書かなければならない情報だろうか。もしかしてクレーム来たりしたのか。会議中にこっそりコーラを飲もうとして「プシュ!」なんてバレたり。それでクレームとかかっこわるすぎである(想像上のマヌケな人を批判)。

カップ麺の注意書きを見たところ、助六寿司にも応用できそうなったので採集した。
ここでも発火及び発煙
ここでも発火及び発煙
なぜ入れるかはともかく、助六寿司も熱湯を入れたら熱くて持てないので注意喚起
なぜ入れるかはともかく、助六寿司も熱湯を入れたら熱くて持てないので注意喚起
おっとっとに高級品があったとは
おっとっとに高級品があったとは
助六寿司もいろいろな形があるので採用
助六寿司もいろいろな形があるので採用
たまたまポケットに入っていたミントタブレットの注意書きも独特、かつほかの食品にも応用できるものだった。
助六寿司も多量に食べたら体質によっては腹を壊すかも
助六寿司も多量に食べたら体質によっては腹を壊すかも
冷凍庫を開けたらアイスが入っていたので、食べる前にさっそく注意書きを確認したところ、これがなかなか味のあるものだった。
目の前で大量に買い物かごに入れるおじさんを目撃して釣られて買ってしまった
目の前で大量に買い物かごに入れるおじさんを目撃して釣られて買ってしまった
分かりましたムリに吸わずやわからかくして楽しみます!
分かりましたムリに吸わずやわからかくして楽しみます!
「お召し上がりの際に、強く吸いすぎてけがをしないようご注意ください。」「手でもんで、にぎれるやわらかさが食べごろです。」などと、おもて面と裏面であまり強引に吸いすぎないように再三注意を受ける。みんなそんなにがっついて強く吸ってしまうのだろうか。気をつけようぜ!

それにしても、このアイスの注意書き声に出して読みたいものばかりだ。

食品の最後に、いまこの原稿を書きながら飲んでいる栄養ドリンクの注意書きを見てみた。
なぜか実家から大量に送られてくる
なぜか実家から大量に送られてくる
これ見た瞬間、助六寿司の原材料にビタミンB2が入っていないか目を皿のようにして探した
これ見た瞬間、助六寿司の原材料にビタミンB2が入っていないか目を皿のようにして探した
残念ながら助六寿司にはビタミンB2は添加されていなかった。のでこれは使えない、と思ったけど、調べたらかんぴょうにビタミンB2が入っているので堂々と使えることになった。食べ過ぎると尿が黄色くなることがあります。

目に入ったときはすぐに洗い流す

いいかげん飽きられていると思うので、最後に洗面所にあったものの容器をいくつか見てみた。まずは歯磨き粉。
助六寿司持って来た人がいたら医者驚くだろうなあ
助六寿司持って来た人がいたら医者驚くだろうなあ
ハンドソープの注意書きは最後にふさわしいものだった。
助六寿司も目に入ったらすぐに洗い流してください
助六寿司も目に入ったらすぐに洗い流してください
というわけで、長々と拡大解釈&揚げ足取りをやってきたけれど、かなりの量の注意書きが出揃った。これをあの助六寿司に表示していこうと思う。
集めた注意書きを印刷した
集めた注意書きを印刷した
注意書きをひとつひとつ切って…
注意書きをひとつひとつ切って…
糊付けして…
糊付けして…
目につくところに貼っていく
目につくところに貼っていく
採用した注意書きを切り取って助六寿司のパケージ表面に貼っていく。見た目はあまりよろしくないが、助六寿司を買う人の安全のためなので仕方がないのだ。壁に取り付けたり、分解や改造したりしないでください、熱湯を入れたら熱いので気をつけてください、目に入ったらすぐに洗い流してくださいなど、あらゆるジャンルの注意が網羅してある。ガス漏れの際の対処法もバッチリだ。

ちまちました作業を続けて、ようやく安全な助六寿司が出来上がった。
これが安全な助六寿司だ
これが安全な助六寿司だ
助六というより芳一
助六というより芳一
これが店頭に並んでいたら…まあ、買わないよね。

注意書きそのものが面白かった

注意書きって大げさだったり慎重すぎたり、そんな細かいの本当に書く必要あるのかな、などと思っていたけれど、改めて注意書きそのものに注目したら、いろいろな思惑が見えたり表記に苦労の跡が見えたりして(ムリに吸わず、とか)面白かった。
面白かったんだけど、企業の人たちはいろいろ大変なんだなと思った。
こんなことしてたら消費期限ギリギリになってしまった
こんなことしてたら消費期限ギリギリになってしまった

車両基地カレンダー発売します

以前デイリーポータルZで書いた「車両基地めぐり」という記事をきっかけに、車両基地の写真集を出版したりしたのですが、このたび東急ハンズ限定で「車両基地カレンダー」を発売することになりました。しかも壁掛け型と卓上型の2種類!これまでに撮影したものに加え、今回のカレンダーのために新規撮影した写真もあります。車両基地とは言っても車両よりレールや分岐の美しさにこだわったので、興味のある方はぜひお部屋に飾ってください!11月6日発売予定です。
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