特集 2016年5月21日

中国の「道徳と社会」の教科書を見せてもらった

小学3年生版。日本と同じように教科書は無料なんだそうだ。
小学3年生版。日本と同じように教科書は無料なんだそうだ。
ひょんなことから、中国の小学校の教科書を見る機会があった。

中国の小学生というのは、なかなか大変らしく、低学年から中国語、算数に加え、英語もやっていて、宿題ががっつりでるらしい。そこに「労働」とかいう授業や、パソコンの授業や、「品徳与社会」という授業があるらしい。品徳与社会というのは、「道徳と社会」のことらしい。でもって、だいたい授業時間が足りない国語や算数や英語に代わってしまって、時間割通りに授業がいかないらしい。

そんな品徳与社会は、教科書を見てみれば、なかなか興味深かった。ここでその魅力を紹介したい。
変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

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まずは身近なところから

何章かにわかれているが、最初のほうは、ざっくりいえば「家や学校の周囲を見てみましょう」という内容だ。

「友達の李さんは近所に住んでいます。李さんのお父さんは警察です。おじいさんおばあさんも住んでいます。お隣さんとは会話したことはありません。」

そんなことが書かれていた。それが道徳と社会の第一歩。
中国の子供たちは気軽にアパートの敷地外には出られない。 まずは近所を知ることが大事なのだ。
中国の子供たちは気軽にアパートの敷地外には出られない。
まずは近所を知ることが大事なのだ。
「ニーハオ」「シェシェ」など普段から知っている人とは、ちゃんと挨拶をしましょう。 有事の際には、知らない人同士助け合いましょう、という内容だ。
「ニーハオ」「シェシェ」など普段から知っている人とは、ちゃんと挨拶をしましょう。
有事の際には、知らない人同士助け合いましょう、という内容だ。
「アパートの敷地には噴水や草地があります。綺麗です」 「家の近くにはゴミだまりがあります。ひどいです!」 「わたしたちの村の家は新しくて綺麗ですが、道が未舗装です」
「アパートの敷地には噴水や草地があります。綺麗です」
「家の近くにはゴミだまりがあります。ひどいです!」
「わたしたちの村の家は新しくて綺麗ですが、道が未舗装です」
「学校の様子は昔と比べてこんなに変わりました」これも道徳。 カエルさんはこの本のナビゲーターらしく、よく出てくる。 具志堅さんみたいなのが校長だろうか、一回しか出てこない。
「学校の様子は昔と比べてこんなに変わりました」これも道徳。
カエルさんはこの本のナビゲーターらしく、よく出てくる。
具志堅さんみたいなのが校長だろうか、一回しか出てこない。
「ぼくの村には水がないです。遠くから水を汲んできます」 「わたしのアパートはいいのですが、自転車放置がひどいです」 都市と農村の格差を理解させつつ、問題提起する道徳&社会本なのだ。
「ぼくの村には水がないです。遠くから水を汲んできます」
「わたしのアパートはいいのですが、自転車放置がひどいです」
都市と農村の格差を理解させつつ、問題提起する道徳&社会本なのだ。
老人にやさしくしましょう。中国にいると「老人を大切にしているなあ」と感じるところ。 変化が激しい中国で、老人の感覚や行動は昔のままであるのはしかたないけど、そこはみなでフォローする。学校でも教えるのだ。
老人にやさしくしましょう。中国にいると「老人を大切にしているなあ」と感じるところ。
変化が激しい中国で、老人の感覚や行動は昔のままであるのはしかたないけど、そこはみなでフォローする。学校でも教えるのだ。
老人は、病院で優先的に診られ、映画は半額、バスは無料だということを教える。老人に温かい社会なのだ。
老人は、病院で優先的に診られ、映画は半額、バスは無料だということを教える。老人に温かい社会なのだ。
「工場で働く人がものをつくり、農民がごはんを作り、軍人が国を守り、医者が病気をなおします」 軍人の大切さも説いている。
「工場で働く人がものをつくり、農民がごはんを作り、軍人が国を守り、医者が病気をなおします」
軍人の大切さも説いている。
「いろんな商品があり、病院があり、郵便局があり、交通があり、公園があります。わたしたちの生活はすごく便利になってますね」便利とは何かを説く。
「いろんな商品があり、病院があり、郵便局があり、交通があり、公園があります。わたしたちの生活はすごく便利になってますね」便利とは何かを説く。

カオスな社会にさよならを!

いい人ばかりなら問題はおきないのだけれど、中国には日本では見られないびっくり事件が結構ある。想像できないニュースまではカバーできないけれど、事件が起きたらどうするかというケーススタディが、3年生の下冊だけでも結構かかれていた。子供はいけないことをちゃんと学んでいるのだ。
子「ママ!下のデブが僕をなぐった!」 母「家に文句言いにいくわ!」 父「諦めろ!こどものけんかはすぐ終わる!」
子「ママ!下のデブが僕をなぐった!」
母「家に文句言いにいくわ!」
父「諦めろ!こどものけんかはすぐ終わる!」
泥棒が家に入り、あなたが発見したら、あなたはどうしますか?方法を4つ考えよ。
泥棒が家に入り、あなたが発見したら、あなたはどうしますか?方法を4つ考えよ。
「僕は家に帰った子供を演じるよ」「僕は泥棒を演じるよ」 「金を出せ」
「僕は家に帰った子供を演じるよ」「僕は泥棒を演じるよ」
「金を出せ」
交通事故、たとえばひき逃げの車を見たら、わたしたちはどうすればいいでしょう?
交通事故、たとえばひき逃げの車を見たら、わたしたちはどうすればいいでしょう?

これはやってはいけません

中国の小学生はアクティブすぎるのだろうか。リスキーなことに対して、「こういうことはしてはいけませんよ」と様々なケースを紹介している。ちょっと危険どころではなく、大けがや、大事故につながるものまで様々だ。日本の子供たちもこんなことやってはだめだぞ!
全部あぶない。あぶなさは甲乙つけがたい。 笑顔のカエルさん「生活の中で、他にどんな安全上の問題がありますか?」
全部あぶない。あぶなさは甲乙つけがたい。
笑顔のカエルさん「生活の中で、他にどんな安全上の問題がありますか?」
再び上機嫌のカエルさん「図の中でどんな危険が発生しますか?」爆竹ネタもある。
再び上機嫌のカエルさん「図の中でどんな危険が発生しますか?」爆竹ネタもある。
「手の中で爆発するわけがないよ」という死亡フラグ。
「手の中で爆発するわけがないよ」という死亡フラグ。
「山火事にならないか?」と止める熱血漢。
「山火事にならないか?」と止める熱血漢。
中国の小学生は心臓の強すぎるチャレンジャーばかりなのか。
中国の小学生は心臓の強すぎるチャレンジャーばかりなのか。
「道徳を守らなかったらどうなるかな?」カオスです。…カオスです(大事なことなので2回) でもしばしば見る光景です…
「道徳を守らなかったらどうなるかな?」カオスです。…カオスです(大事なことなので2回)
でもしばしば見る光景です…
公衆電話壊したり、電線盗んだり、電灯壊したり、芝生を痛めちゃあだめだぞ!
公衆電話壊したり、電線盗んだり、電灯壊したり、芝生を痛めちゃあだめだぞ!

道徳で教えることは国によっていろいろ

中国には13億の人がいて、金持ちもいれば貧しい人もいる。ヒルズ族みたいな人もいれば、静かな農村に住む人もいる。いろんな人がいる中で、公約数的に作られたのが、この教科書なのだろう。あまりに様々な状況が考えられる中で、出している危険やNGはほんの一部でしかない。

日本の道徳では差別はいけない、的な内容が多かったような気がするけれど、中国がまずは教えようとする道徳は違った。でも老人を大切にしようとか、近所づきあいを考えるとか、いいと思う。

中国はいろいろ変わっている。人も変わっていきそうだ。そうしたら時代にあわせて道徳で教えることも変わっていき、教科書も変わっていく。そのときはこの記事は時代を描いた記録となるのかな。なるといいな。
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