最初に意識したのは新宿
山手線に乗っている人なら1度は見たことがあるんじゃないかと思う。新宿駅の近くで中央線の上を越えるとき、眼下に保線用の小さな車両がいくつも停まった、賑やかな基地があるのを。
いつ通っても何やら作業が行われている気がする
よく見ると色違いが並んでてかわいい
貨車の荷台には線路に敷く砂利がいっぱいに積まれているけど、この車両たちが山手線などの線路を走っているのを見たことがない。きっと終電が行ったあとが彼らの仕事時間なのだろう。
また、ここは周りを線路に囲まれていて近づくことができないので、車窓から見えるこの一瞬だけが鑑賞ポイントだ。そういう意味では孤高の保線基地と言えるだろう。文明との接触がない少数民族の集落を遠くから覗き見している気分である。
鑑賞しやすい田端
新宿で保線基地の存在を「再発見」して、そういえばと思い出したのが田端駅だ。山手線、京浜東北線と東北新幹線の間に、保線関係の車両が停まった、それらしいスペースがあったはず。
さっそく行ってみると、ホームの真横に門型のクレーンが並んでいるのが見えた。どうやら交換用のレールを持ち上げて、貨車に載せるためのもののようだ。
実際の作業を見たいなあ
「とうきょうかんほぎせ」と読むのだろうか
アビーロードのジャケットを彷彿とさせる
調べたところ「幹保技セ」は新幹線保線技術センターというらしい。ということは、ここは新幹線の保線基地ということか。ここから隣の高架の上まで線路が繋がっているのだろうか。
その先には、運転台らしきスペースのついた、何台かの機関車のような車両が停まっていた。形も大きさもさまざまで、新しいデザインのものや、いかにも業務用というものもある。自分だったらどれに乗るか、これの乗るのはあいつだ、などと考えると楽しい。
いろいろ停まっている
左の2階建てっぽいのはかっこいいけど、右の背が低くてエアコンの室外機が先頭についてるのもいい!
あり合わせの材料で造りました的な車両
もっとよく見える場所はないかと探して改札を出ると、陸橋の一部分だけ柵が低く、透明な板になっていた。そこから見えるのはほぼ保線基地。保線ファンの約束の地である。
保線ファンはここに集合
僕はこういうレールが地面に埋め込まれている部分が大好きだ
目の前の車庫の中はシャッターが閉まっていて見えなかったけど、中に何が入っているのかすごく気になる。見たこともない保線車両(ほとんど全部そうだけど)がしまわれているかも知れない。
池袋にモンスターがいた
実は、新宿から田端に向かうとき、途中の池袋でものすごいものを目撃していた。急いで池袋に戻り、保線車両が近くで見られそうな埼京線ホームに向かった。
池袋にも保線基地があった
これはこれでいい味出してる保線軍団
狭い運転台と、やっぱりその外に搭載されたエアコン室外機のミスマッチ感
あの有名重機メーカーの製品らしい!
こういう保線車両、何から何までいままで見たことのある電車たちとかけ離れてておもしろい。どことなくのんびりした面持ちと不釣り合いな屋根上の回転灯もいい。何十年も事件のない田舎の駐在さん、といった雰囲気である。
そのままホームの端まで歩いて行くと、田端に行くときチラッと見えたモンスターが息をひそめていた。
あれはなんだ
全身濃い青で、ものすごく巨大。そして全体が前後に傾いている。まったく何に使うものなのか分からないけど、本当にこれが線路の上を走るのだろうか。
息を呑む存在感
森へ帰った方がいいんじゃないかと思う系車両
これを引っ張る機関車?も樽型の運転台つきでものすごくでかい
さらにその隣には、青いモンスターとは打って変わって、やたらかっこいい保線車両も停まっていた。遠くてよく見えないけどかなり新しそうで、モスグリーンの車体に赤いラインが鮮やかだ。保線界のレッドアローである。
そこらの新型特急よりかっこいい
山手線の窓から慌てて撮ったけど指を入れてしまう失態
池袋はJR、私鉄にとってのターミナルなだけでなく、保線界でも巨大ステーションと言えた。
京王の保線チームは出張中?
続いて向かったのは京王線。よく乗るので保線車両が停まっている場所は何となく把握している。明大前駅の近くと、八幡山駅の脇。でもこの日はどちらにも保線車両はいなかった。きっと八王子の方で作業する期間なのだろう(てきとうです)。
その先のつつじヶ丘駅にも保線車両が停まっていた。でもホームからは遠く、ぼんやり見える程度だった。
典型的沿線開発ネーム駅
車庫の傍らにそっと佇む
そのまま進むと、東府中駅にもう1両、休んでいるのが見えた。スペースはあるのに、なぜか屋根の下には入れてもらえず。
競馬場に行く路線が分岐する駅
車庫のような建物があるのに
唯一の作業車は雨ざらし
運転台に引き出しがついててかわいい
ひょっとして幽閉されているのか
新百合ケ丘から歩く
次に京王線の南を走る、小田急線の保線基地を観に行った。事前調査で唯一見つけられたのは、新百合ケ丘駅の先にある基地。地図で見ると駅から1kmくらいの距離だ。
新百合ケ丘駅から歩く
周辺案内に保線基地情報なし
しばらく歩くと多摩センター方面に行く高架をくぐる
15分ほど歩くと、Y字に分岐した線路の間に小さな基地が見えた。門は閉まっているものの、すぐ目の前に停まっている保線用の車両が、不審者を見るような目でこちらを見ていた。
番犬のような表情でこちらを睨む
しかし見られる場所はこの1ヶ所だけ。しばらく佇んでも特に動きはなく、ふたたび歩いて新百合ケ丘駅に戻った。
同じ会社だけど部署が違うから挨拶を交わしたことがない2人
保線車両の宝石箱、梶ヶ谷
今回最後に向かったのは東急線の基地2ヶ所。まずは田園都市線の梶が谷駅だ。ホームに降り立つと、すぐ目の前の車庫から何やらかっこいい保線車両が顔を出していた。
さっそく下の方に何か見える
新旧保線車両揃い踏み?
車庫の反対側には、何に使われるのか分からない、姿も形も違う保線車両が連なって停まっていた。何だここ、グルメレポーターなら思わず定番のフレーズを繰り出すところだ!
ものすごい目力
運転席が横向きについてる!
クリーニング屋でこういうの見たことある
見た目的にここのエース
エース、ものすごい武器を隠し持っている
改札を出て少し歩くと、ホームと反対側の駐車場からも保線基地を眺めることができる。
どうしてデコが張り出すデザインなんだろう
小さいのにものすごいデコの張り出し
さらに歩くと上からも眺められた
ここは保線車両も眺められる場所も多く、初心者にも自信を持ってお勧めできる保線基地である。
専用展望台から眺める新丸子
東急線を乗り継いで、最後に向かったのは新丸子駅。この少し先に、かなり大きな保線基地があるのをグーグルマップで見つけていたのだ。
初めて降りた
先の方に基地が見える!
高架の線路沿いを歩いて行くと、先の方で高架が張り出しているのが見えてきた。何やら黄色い屋根が見え隠れしていて期待が高まる。
何か停まってる!
これは電車ではなく明らかに保線車両だ
そのまま歩いて行くと、高架の線路がちょうど多摩川の橋に差しかかるところで張り出し部分が途切れていた。
線路はそのまま多摩川を渡って行くが
張り出し部分はぶっつり途切れている
高架なので下からは基地の様子が見えないけど、ちょうど展望台のような位置に歩道橋が架かっているので登ってみた。
そういえば今回初めてちゃんと看板を見た
高架部分を覗くように歩道橋が
敷地の奥には下からベルトコンベアーが伸びている
ベルトコンベアーの手前には穴が開いているようだ
丁寧にザルに分けられた砂利もあった
きっと、あのベルトコンベアーは線路で使う砂利用で、トラックで搬入された砂利をあの穴の中に落として、ベルトコンベアーで上に運んで貨車に載せるのだろう。
トミカとかのおもちゃである「工事現場セット」みたいなやつのリアル版だ。
歩道橋からの眺めは思ったほどよくないけど、ほとんど同じ目線で保線車両と基地の中を見ることができて楽しい。ここはすべての車両が黄色に統一されていて、いかにもな基地っぽさである。作業開始で出発していく夜中に、また見に来たい場所だ。
歩道橋の上から基地の中を覗ける
全員が黄色一色で真面目な雰囲気の基地
保線用車両がかっこいい
というわけで、いくつかの保線基地をめぐってみた。正直に言って、それぞれが具体的にどんな仕事をしているのか全然知らないけど、色や形が普段見る電車とまったく違って、しかも種類が豊富でとても楽しかった。
実際の作業を見てみたいとも思うけど、それ以上にいつか乗ってみたいと思う。