特集 2015年12月22日

世界の珍奇植物・キイレツチトリモチをついに見た

惹きつけられる言葉散りばむ看板。
惹きつけられる言葉散りばむ看板。
キイレツチトリモチという大変珍しい植物を見に行った話を書こう。
長崎より九州のローカルネタを中心にリポートしてます。1971年生まれ。茨城県つくば市出身。2001年より長崎在住。ベルマークを捨てると罵声を浴びせられるという大変厳しい家庭環境で暮らしています。

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出会い

私がキイレツチトリモチの存在を知ったのは今からおよそ15年前。インターネット地図のマップ・ファンを見ていた時のことだ。当時はまだグーグルマップが無かった。

地図の中に、「キテレツ大百科」みたいな見慣れぬ文字列があるのが目に止まった。よく読むとそれは「キイレツチトリモチ」と書いてあった。
今も載ってた! (地図)
今も載ってた! (地図)
驚いたことに久しぶりにマップ・ファンを覗いてみると、15年前とまったく変わらずそれが確認できた。

これが私とキイレツチトリモチの最初の出会いだった。

で、
「この呪文みたいな言葉何だろう?句読点すらわからない。」
と検索してみると、「世にも珍しい植物」とのことだった。
長崎は伊王島へ。
長崎は伊王島へ。

群生地

それからしばらくの間、キイレツチトリモチのことは忘れていたが、ある時、それがたくさん生えている場所があることを知った。

長崎は伊王島である。
キイレツチトリモチがたくさん生える島。
しかし時期があり、11月から2月の間にしか見られない。伊王島には何度か訪れているが、シーズン中に来たことがない。
「あ、そういえばキイレツチトリモチ…」
と、まるで忘却の呪いでも掛けられたかのように、思い出した時はいつもシーズンオフだった。

それが先日ついに呪いが解け、ちゃんとシーズン中に思い出すことができた。
こんな看板がある。
こんな看板がある。
キノコだな。
キノコだな。
鹿児島県喜入町で初めて発見された。
句読点を入れると、キイレ・ツチトリモチ。
漢字表記すると「喜入土鳥黐」だ。
これを理解することでようやく脳内が「キテレツ…」から開放される。
ここに生えてるんだって。
ここに生えてるんだって。
さあ、ついに見られるぞ!

…と思いきや、ところが。
どこ??
どこ??
看板の場所から見ても、
どこにあるかサッパリわからない。

どこ?

どれがそう?
こりゃ、予想以上に難易度高いなぁ…。
こりゃ、予想以上に難易度高いなぁ…。
まるで見つかる気がしない。
まるで見つかる気がしない。
「ん?」
「ん?」

詳しい人登場

途方に暮れていたところ、箒ではわいている人がいらしたので尋ねてみた。

すると、先ほど見ていた看板の場所には無く、ちょうどすぐそこに見えるのがあると教えてくれた。
あれか!
あれか!
これがキイレツチトリモチだ! (説明看板の写真とは色がちょっと違うけど)
これがキイレツチトリモチだ! (説明看板の写真とは色がちょっと違うけど)
伊王島灯台記念館の管理人・向井進さん。
伊王島灯台記念館の管理人・向井進さん。
教えてくれたのは伊王島灯台記念館の管理人・向井進さん。私が記事に写真を掲載したいと伝えると、着替えて来てくださった。(着替え前との相違がわかりづらいが)
「奥の方にもっとあるのでどうぞ」
「奥の方にもっとあるのでどうぞ」
さらに林の奥にあるやつも見せてくださった。
実物を見て納得したが、これは熟知してないと知らずに踏んづけてしまいそう。そのため一般の人は中に入ってはいけないことになっている。
看板の写真と同じ色合いのを発見。かわいい!
看板の写真と同じ色合いのを発見。かわいい!
大きさは5cmほど。群生地とはいえ、ウジャウジャ生えているわけではない。
大きさは5cmほど。群生地とはいえ、ウジャウジャ生えているわけではない。
生え始めはクリーム色に茶色の斑点。それが、日数が経つと徐々に濃い茶色へと変化していくという。
こちらは別の場所。赤いタオルの付近にもある。
こちらは別の場所。赤いタオルの付近にもある。
これか。土そっくりだ。
これか。土そっくりだ。
ここにも。言われないと見落としてしまうだろう。
ここにも。言われないと見落としてしまうだろう。

キノコじゃない

ところで、このキイレツチトリモチ。
「世界の珍奇植物」と言われている植物だが、どの辺が「珍奇」か分かっただろうか?

答えは、キノコではなく被子植物。
てっきりキノコと思って見てたがそうではない。学校を卒業して何年も経ち、
「被子植物って何だったっけ?」
という状態の人も多いと思うので(私がそうだ)復習すると、被子植物とは花~果実~タネを作るタイプの植物。キノコみたいに見える部分はざっくり言うと「花」らしい。(正確には、けっこうややこしいので自分で調べてみてください)
このルックスでキノコじゃない。
このルックスでキノコじゃない。
でもって寄生植物。トベラという木の根に、土の中で芋みたいにくっついているのが本体。それでトリモチ(=鳥を捕まえるためのネバネバしたもの)が作れるらしい。

灯台記念館

せっかくなので、すぐそばの灯台記念館にも立ち寄った。入場無料。
向井さんイチオシのアングルから撮ってもらった。 (写真撮ると3枚中2枚は目をつむってる私)
向井さんイチオシのアングルから撮ってもらった。 (写真撮ると3枚中2枚は目をつむってる私)
明治10年に灯台守の宿舎として作られた西洋風の建物。平屋建て浅瓦葺き、壁は日本最古の無筋コンクリート造。
明治時代の灯台のレンズなどがある。(フランス製)
明治時代の灯台のレンズなどがある。(フランス製)
今でも動く。
旧吏員退息所便所棟。
旧吏員退息所便所棟。

珍しいトイレ

こちらは県の文化財に指定されているという珍しいトイレもある。
中はこんな感じで、
中はこんな感じで、
灯台長専用便器は、高級感溢れる模様入り(!)の陶器。
灯台長専用便器は、高級感溢れる模様入り(!)の陶器。
シャア専用(ガンダム)みたいだ。
シャア専用(ガンダム)みたいだ。
一般職員用は模様なし。
一般職員用は模様なし。
専用便器があるのが面白い。
役職に対する敬意が感じられる。
いやはや、貴重な良いものを見させて頂いた。

メリー・クリスマス!

ということで、いろいろ面白かったです。
キイレツチトリモチが見られるのは11月~2月まで。
全国八灯台のひとつという由緒ある灯台。
全国八灯台のひとつという由緒ある灯台。
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