出会い
私がキイレツチトリモチの存在を知ったのは今からおよそ15年前。インターネット地図の
マップ・ファンを見ていた時のことだ。当時はまだグーグルマップが無かった。
地図の中に、「キテレツ大百科」みたいな見慣れぬ文字列があるのが目に止まった。よく読むとそれは「キイレツチトリモチ」と書いてあった。
驚いたことに久しぶりにマップ・ファンを覗いてみると、15年前とまったく変わらずそれが確認できた。
これが私とキイレツチトリモチの最初の出会いだった。
で、
「この呪文みたいな言葉何だろう?句読点すらわからない。」
と検索してみると、「世にも珍しい植物」とのことだった。
長崎は伊王島へ。
群生地
それからしばらくの間、キイレツチトリモチのことは忘れていたが、ある時、それがたくさん生えている場所があることを知った。
長崎は伊王島である。
しかし時期があり、11月から2月の間にしか見られない。伊王島には何度か訪れているが、シーズン中に来たことがない。
「あ、そういえばキイレツチトリモチ…」
と、まるで忘却の呪いでも掛けられたかのように、思い出した時はいつもシーズンオフだった。
それが先日ついに呪いが解け、ちゃんとシーズン中に思い出すことができた。
こんな看板がある。
キノコだな。
鹿児島県喜入町で初めて発見された。
句読点を入れると、キイレ・ツチトリモチ。
漢字表記すると「喜入土鳥黐」だ。
これを理解することでようやく脳内が「キテレツ…」から開放される。
ここに生えてるんだって。
さあ、ついに見られるぞ!
…と思いきや、ところが。
どこ??
看板の場所から見ても、
どこにあるかサッパリわからない。
どこ?
どれがそう?
こりゃ、予想以上に難易度高いなぁ…。
まるで見つかる気がしない。
「ん?」
詳しい人登場
途方に暮れていたところ、箒ではわいている人がいらしたので尋ねてみた。
すると、先ほど見ていた看板の場所には無く、ちょうどすぐそこに見えるのがあると教えてくれた。
あれか!
これがキイレツチトリモチだ! (説明看板の写真とは色がちょっと違うけど)
伊王島灯台記念館の管理人・向井進さん。
教えてくれたのは伊王島灯台記念館の管理人・向井進さん。私が記事に写真を掲載したいと伝えると、着替えて来てくださった。(着替え前との相違がわかりづらいが)
「奥の方にもっとあるのでどうぞ」
さらに林の奥にあるやつも見せてくださった。
実物を見て納得したが、これは熟知してないと知らずに踏んづけてしまいそう。そのため一般の人は中に入ってはいけないことになっている。
看板の写真と同じ色合いのを発見。かわいい!
大きさは5cmほど。群生地とはいえ、ウジャウジャ生えているわけではない。
生え始めはクリーム色に茶色の斑点。それが、日数が経つと徐々に濃い茶色へと変化していくという。
こちらは別の場所。赤いタオルの付近にもある。
これか。土そっくりだ。
ここにも。言われないと見落としてしまうだろう。
キノコじゃない
ところで、このキイレツチトリモチ。
「世界の珍奇植物」と言われている植物だが、どの辺が「珍奇」か分かっただろうか?
答えは、キノコではなく被子植物。
てっきりキノコと思って見てたがそうではない。学校を卒業して何年も経ち、
「被子植物って何だったっけ?」
という状態の人も多いと思うので(私がそうだ)復習すると、被子植物とは花~果実~タネを作るタイプの植物。キノコみたいに見える部分はざっくり言うと「花」らしい。(正確には、けっこうややこしいので自分で調べてみてください)
このルックスでキノコじゃない。
でもって寄生植物。トベラという木の根に、土の中で芋みたいにくっついているのが本体。それでトリモチ(=鳥を捕まえるためのネバネバしたもの)が作れるらしい。
灯台記念館
せっかくなので、すぐそばの灯台記念館にも立ち寄った。入場無料。
向井さんイチオシのアングルから撮ってもらった。 (写真撮ると3枚中2枚は目をつむってる私)
明治10年に灯台守の宿舎として作られた西洋風の建物。平屋建て浅瓦葺き、壁は日本最古の無筋コンクリート造。
明治時代の灯台のレンズなどがある。(フランス製)
旧吏員退息所便所棟。
珍しいトイレ
こちらは県の文化財に指定されているという珍しいトイレもある。
中はこんな感じで、
灯台長専用便器は、高級感溢れる模様入り(!)の陶器。
シャア専用(ガンダム)みたいだ。
一般職員用は模様なし。
専用便器があるのが面白い。
役職に対する敬意が感じられる。
いやはや、貴重な良いものを見させて頂いた。
メリー・クリスマス!
ということで、いろいろ面白かったです。
キイレツチトリモチが見られるのは11月~2月まで。