しょうがない、お父さんが作った仮装で行け
イベントは仮装した子供限定で、ビル内の店舗を回ってお菓子を貰う。というものだが、すでに10月30日の夜9時。もう、仮装グッズなんか買いに行く時間などない。
今、お父さんが作ってる仮装でいいなら、あした貸してやるけど、それでもいいかと聞いてみたところ、しぶしぶ「それでもいい」という。
ちょうど、
地味な仮装のハロウィンパーティーに参加するための仮装を作っているところだったのだ。
いま作ってるやつで行くなら貸してやるけど
ぼくが作っている仮装は「本」である。特に意味は無くて、たまたま目についたので作った。としか言えない。
しいて言えば、
概念の仮装が許されるなら、本でもいいだろうと思ったのだ。
紀伊國屋書店のブックカバー
本というか、紀伊國屋書店のブックカバーといったほうがいいかもしれない。
紀伊國屋書店は日本各地にあるので、このブックカバーに見覚えのある方は多いと思う。
改めてブックカバーの絵を見てみると、不思議な雰囲気のイラストである。下の「紀伊國屋書店」の明朝体も、なんだか手書きっぽさを感じる。
なんか手書きっぽいな
まんなかの本に書いてある文字も、格言かなにかと思ったら、店名と所在地がローマ字で書いてあるだけで、さらに左のページは改行が変だ。
結局手書きで再現することに
この、絵と文字をどうやって描き写すのか。手で描き写すしかない。
かなり面倒くさい作業だったが、やったらやったで没頭してしまう。美術のレタリングの授業が好きだったことを思い出した。
途中、睡眠をはさんで、12時間で完成
この違和感すごい
うっかりできのいいものが完成してしまった。ただ、できはいいけれど、違和感もすごい。
途中、何度も「これおもしろいのかな?」という冷静さの沼に引きずり込まれそうになった。
工作をやってるとよくあるやつである。しかし、こういう時は何も考えずに作りきったほうがいい。
息子が起きてきて、完成した本をみての第一声が「あーっ、ほんとにできてる!」であった。きのうはあまり乗り気ではなかったものの、現物をみると気が変わったようで、がぜん乗り気になってきてくれた。
友達と一緒に行くことになった
しばらくすると、息子の友人のすばるくんが家に遊びにやってきた。すばるくんも、息子の仮装をみて、じぶんも仮装してハロウィンイベントに参加したいと言い出した。
すばるくん(右)も一緒にハロウィンイベントに行くことに
しかし、彼もまた仮装の準備してないので、仮装グッズを近所の100円ショップまで買いに行くという。
いちおう念のため保護者としてついていくことにした。
違和感
仮装グッズを買いに行く途中、公園で息子の同級生たちと出会った。
なにこれ! なにこれ!
子供たちは一様に「本だ!」と、興味は示すものの、紀伊國屋書店のブックカバーというのがよくわからないらしい。たしかに、コロコロコミックにはブックカバーつけてくれないもんな。
ただ、男子の反応は素直だ。「え! これ太郎が作ったの? ちがうの? お父さん? すげー」といいながらまわりをグルグル走りはじめる。非日常性のある異形のオブジェに、興奮していることだけはわかる。
こいつら、そのうちバターになっちゃうんじゃないかと思ってたら、その興奮が息子とすばるくんにも伝わったのか、みんなで公園を走りまわりはじめた。
異形のオブジェ、走る
へんなのー
一方、女子は冷静だ。男子みたいに走り回ったりはしない。「え、これ本じゃん。魔女とかのかっこうするんだよ! 服もそのままじゃん!」と、手厳しい。彼女たちのなかには仮装=服で変装。というレギュレーションがあるらしい。
確かに本のカバーをとれば息子は普段着である。この仮装は、ヤドカリみたいなもので、あくまで本体は質素なのだ。そのへんは勘弁してやってほしい。
信号待ちする本
ちょっとまってよー
遠くからでもハッキリ本とわかるな
すれ違いざまにギョッとなる人が多数いたが「あぁ、本か」って胸をなでおろせるぶん、ゾンビや悪魔の仮装でギョッとさせるよりましだろう。
ハロウィングッズは終了していた
100円ショップに到着すると、さっそくハロウィングッズを物色するすばるくん。
しかし、10月31日の100円ショップでは、すでにハロウィンのグッズはきれいに撤去され、店のよそおいは早くもクリスマス一色であった。
サンタしか選択肢がなくて困るすばるくん
「もう、これは仕方ないよ、サンタの格好で行くしかないんじゃない?」と、すばるくんにアドバイスすると、そうするという。
サンタ帽は別売りであった
じゃーん、サンタクロースです
本とサンタ。もう、わけがわからない。なんなんだこれは。
サンタクロース、おしりが破けて穴が開いたらしい
異形のものを受け入れる土壌があるまち
近所のビルのハロウィンイベントは、スタンプラリー形式でスタンプを集め、1階の受付に持って行くと、お菓子がもらえる。という仕組みになっているらしい。
とりあえず「すごいねー」とは言われる
子供に魔女やお姫様の格好させているママたちからは「え?本? 斬新……」とお褒めの言葉を頂いた。
ゾンビと本
ハッピーハロウィン
戦利品のお菓子
家に帰る途中、ハロウィンの仮装行列をしていたので、しれっと混ざってみた。
違和感ないな、いやあるのか? どっちだ
突然まぎれこんだ本に、戸惑いつつも行列にいれてくれた人たち。みんなやさしいなあ。
そう、このあたりは、新参者、異形の者たちにも優しい町なんです。
でも、あんまりウケなかった
息子にやってもらった本の仮装は、近所のハロウィンイベントではウケていたけれど、地味なハロウィンパーティーではあまりウケなかった。
よのなか難しい。
紀伊國屋書店のご担当者さま、もしこのでかいブックカバーが必要でしたらご連絡ください。差しあげます。