「炭」がご当地グルメってどういうこと!?
「B-1グランプリ」などが大流行の昨今。町おこし、村おこしの手段として「ゆるキャラ」とならんで「ご当地グルメ」が注目されている。
いまいちパッとしない町や村でも、人気のゆるキャラかご当地グルメさえ生み出せば、一躍人気の観光スポットになれる可能性が!? ……ということで、古くからその土地で愛されてきた郷土料理から、現地の人すら食べたことのないようなムリヤリ感のあるB級グルメまで、色んな「ご当地グルメ」が各地でやったらめったら生み出されているのだ。
……みたいな会議が各地の商工会などで行われているんじゃないかなぁ!?
そんなご時世に、群馬県の南牧村が繰り出したご当地グルメは「炭」! ……炭ってあの炭っすか!?
炭火で作る料理なのかなぁ? でも、そんな料理、全国どこにでもあるじゃないか。……と思いきや、さにあらず。「炭」そのものを食べる料理らしいのだ。なにそれ? どういうことなの!?
「炭まんじゅう」の味は……フツー!
……というわけでやって来た群馬県の南牧村(なんもくむら)。山がちな群馬県の中でもひときわ山奥! ほとんど長野県といった場所にある村だ。さらに長野県にも南牧村(みなみまきむら)があるのが色々とややこしい。
お世辞にもアクセスがいいとはいえない土地だし、パッとした名物というのもなさそうだ……。
「火とぼし」っていうスゴイ祭りもあるんだけど、期間限定なんでねぇ
一応、「こんにゃく芋」の栽培が盛んだったたしいけど、現在ではお隣の下仁田町に完全にお株を奪われているし、その他の名物も「砥石」……地味だよねぇ。
突出した特徴としては「老齢人口割合日本一」「幼少人口割合が日本一低い」ということ。要はメチャクチャ高齢化が進んでいる村ってこと。
うーん、売りになんないよなぁ、それじゃ。
一応「きれいな水と澄みきった空気」推しのようですが……
「きれいな水と澄みきった空気」みたいな自然もいいけど、それ、田舎だったらだいたい当てはまるもん。
他にもうちょっとパッとした名物を……と考えたのかどうかは知りませんが、そこで生み出されたのが「食べる炭」ということらしい。
……なぜ!?
とにかく食べに行ってみようじゃないの。
まずはこちらのお菓子屋さん「信濃屋嘉助」
「みそまんじゅう」「ごぼう葉餅」あたりも気になりますが
お目当てはこちらの「お炭つきまんじゅう」!
もう、名前からしてそのまんま「炭」という文字が入っている炭グルメ! しかし、おまんじゅうに炭が入ってるって、どういう状態なんだろうか?
あ、見た目は意外と普通
「炭まん」なる焼き印が……
見て分かるように、おまんじゅうの「皮」部分が思いっきり灰色! 黒糖などを練り込んだ茶色のまんじゅうはよくあるけど、灰色のまんじゅうって、ありそうでないカラーリングだ。
なんでも、炭を細かく砕いた「粉炭」という粉を皮に練り込んでいるらしい。そこが「炭」なんですなぁ。
でも、炭の粉が練り込まれているって……。なんだか苦くてジャリジャリしていそうなイメージがあるけど。
ん……普通
なんというか、フツーにおいしいまんじゅう。
色が灰色なこと以外には、特に炭っぽい味も食感もしないよなぁ……と思ったものの、よく考えてみれば炭なんて食べたことないから、味もクソも分かるわけナシ!
実は炭ってこういう味なのかもしれない!?
甘さ控えめな「あん」と「栗」が中に入っていました
「炭」に意外な効能が
南牧村には「お炭つきまんじゅう」以外にも色々と炭を使った食べ物があるらしいので、もちろんそれも食べに行くことに。
さらに山奥に向かい
やたらと傾斜がキツイ坂道を上り
ピンポイントでお店に用がある人しか入らない道を行くと
こちらが目的の「ビアカフェB.B.」さんです
非常に個性的な……というか、お店らしさがない外観。営業しているのかどうかも分からないといった雰囲気だけど、「営業中」って出ているからやってるんでしょう。
店内はこんな感じ
実はこちらのお店、もともと保育園だった建物を流用しているそうで、「そういわれてみれば……」という保育園感を色濃く残したお店となっている。
ちょっと「おばあちゃんち」感も……
で、シレッと炭も飾られていました
「ウチの売りは食べられる炭だぜ!」とばかりにドーンと置かれていた「炭」の置物。
変わった建物なんでそっちに気を取られちゃったけど、そうだ炭、炭……。
……てなわけで「炭入りピザ」登場!
うーん、さっきの「お炭つきまんじゅう」以上にフツーのルックス。ただ単に「ウチのピザは炭で焼いてますよ!」……ってことじゃないよねぇ?
裏返してみると……おおっ
なんと(……というかわりと予想通り)ピザの生地に炭が練り込まれているようで、結構な灰色っぷり。
どうしてもこのカラーリングを見ちゃうと「苦い」味を想像しちゃうけど……。
うん、フツーのピザ
炭以外にも地元産の食材をたくさん使った自然派のピザでおいしい!
そこで持ち上がってくるのが「炭を入れる必要あるのか問題」。まあ見た目は面白くなるけど……ということで店長さんに聞いてみた。
「もともと、南牧村では炭を粉にした『粉炭』を作っていたんですよ。畑の土壌を良くしたり、ストーブなどの燃料や、住宅用建材なんかに使うものなんですけど……」
――ええーっ、そんなのを何で食べようと!?
「実は、この辺では昔から薬代わりに粉炭を飲む習慣があって、炭が体内の有害物質を吸着して身体の外に出してくれるといわれてるんですよね。それでまあ、あまり名物もないし、炭を使った料理で村おこしをしようと……」
――炭が入っていても違和感ない味になっていますけど、「炭入りピザ」にするために味を調節してたりするんですか?
「炭って脱臭に使われるくらいだから、基本的に無味無臭なんですよ。だから料理の味にはほとんど影響ありませんね」
――あー、そういうことなんですねぇ。
「保水効果もあるので、ピザが冷めてもモチモチ感が残っている……というメリットもあります」
ほほう、そりゃあ群馬出身の「冷めたピザ」こと小渕恵三元首相も安心だ(政治ギャグ)。
炭を食べると健康になるらしいです
最大級のインパクト炭グルメ!
「炭は基本的に無味無臭」「実は身体にもいいらしい」ということが判明。
最初は「炭グルメだなんて、ゲテモノなのかなー?」……と思っていたんですが、見た目はともかく味はフツーなので、非常に安心して食べられそうです。
というわけで、続いてはこちらのお店「千歳屋」さん
ここで食べられるのは「炭ラーメン」!
一見、なんてことないフツーの塩ラーメンですが
わっ、黒い!
分かっててもインパクトあるなぁー
そばよりも、さらに黒い「炭ラーメン」。
「味はフツーなんだろうな」と思いつつも、口に運ぶのに抵抗があるルックスだ。
食べみると……やっぱり味はフツーの塩ラーメン(おいしかったです)。若干、コシが強い感じもしたけれど、それが炭の効果なのかどうかは不明。
そしてもう一個、「炭ギョーザ」なんてものも
皮に炭が練り込まれているようですが……
コレは黒い!
油で焼かれているため、ヌラヌラテラテラと表面が黒光りしていて、エナメル質のボンテージファッションを思わせるほど。
うおお……食べ物の質感じゃないよ! 今回ナンバー1のインパクト。
やっぱり中の具はフツーです
意図的に作られた「ご当地グルメ」である「炭グルメ」だけど、これだけ見た目のインパクトがあって、でも味に影響はなく、健康にもいいとは……なんて素晴らしいんだ!
炭ライスを自作してみたけれど
……ということで、自宅でも「炭」を食べられるように「粉炭」を入手。
こんな感じのパッケージ入り
かなり細かい粒子です
サラッサラ!
直接なめてみると……確かに無味!
それではごはんを炭入りにしてみたいと思うのですが
ザザーッと
水を入れると……
うわーっ! なんというか……。
食べられる炭と分かってはいるものの、お米を主食とする民族としては、かなりイケナイことをしている気分に!
炊きあがり……ギャーッ!
こ……コレは気持ち悪い!
予想以上に真っ黒になってしまった「炭ライス」。もちろん、炊きすぎて真っ黒になっちゃったわけじゃないですよ。
おいしそうな炊きたてごはんのニオイはしているものの……コレはさすがに口に入れるのに躊躇する!
「でも味はフツーのはずだから」……と口に入れてみると
うああーっ、コレはちとキツイ!
確かに味はフツーなものの、さすがに粉炭を入れすぎたのか、少々粉っぽさ&ジャリジャリ感が……。
味に影響がない「炭グルメ」っていっても、テキトーに粉炭を入れただけじゃおいしくならないんですねぇ。
テキトーに炭をいれてるわけじゃないんだね
基本的には無味無臭なので色んな食べ物や飲み物に入れてもオッケー&健康にもいい……という「粉炭」ですが、やっぱり入れすぎるとマズイですね(本来は、1日に2gくらいを上限に摂るのがいいらしいです)。
南牧村の「炭グルメ」たちは、なんだかんだでちゃんと研究して作ってるんだなぁ……と。アクセスが悪いのでなかなかいきづらい南牧村ですが、機会があったら現地で食べてみてください!
●菓心処 信濃屋嘉助
群馬県甘楽郡南牧村磐戸160
【電話番号】0274‐87―2322
【営業時間】8:00~18:00
【定休日】無休
●ビアカフェB.B.
群馬県甘楽郡南牧村大字羽沢74-2
【電話番号】 0274-87-2281
【営業時間】11:30~17:00
【定休日】月曜(祝日の場合は営業)
●千歳屋
群馬県甘楽郡南牧村磐戸141
【電話番号】0274-87-2027
【営業時間】11:30~14:30、17:00~20:00
【定休日】水曜