特集 2014年11月25日

もしも隕石が落ちてきたら

「この石が、翌日から素手で触ることもできない“お石様“となろうとは…」発見者談
「この石が、翌日から素手で触ることもできない“お石様“となろうとは…」発見者談
ラブストーリーと同じように隕石はいつだって突然である。突然であるがゆえに隕石は珍しがられる。

島根県の美保関には近くに落ちた隕石を展示するメテオミュージアムがある。

日本各地に隕石展示はあるが、ここのいいところは隕石が落ちたことをまるごと展示してる点だ。隕石が落ちた町に行く。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

鼻ばかりある地域。島根半島のリアス式海岸
鼻ばかりある地域。島根半島のリアス式海岸

島根と鳥取の上のぎざぎざ

隕石が落ちたのは島根県松江市美保関町。

鳥取の米子空港をおりて境港に向かうとそこからバスが出ている。バスは2本乗りつぐ。何もないバス停で一時間待ったりする。

あの取材一日がかりだったなという場所はたいてい半島にある。今回も島根半島。岬のように突き出た地形を鼻というが、鼻ばかりある半島である。
漁港のある美保関。観光するにはとてもいい町
漁港のある美保関。観光するにはとてもいい町

青石畳と港の街

美保関は観光するにはとてもいいところのようだ。前日に米子の飲み屋でも私はいつもここに連れてくと店員さんに教えてもらった。青石畳や古い神社、港町の雰囲気がとてもいいらしい。

訪れてみるとたしかに静かでよさがにじみ出るいい街だった。そこに隕石のでるまくはない。しかし仕方がない。落ちたのだから。
青石畳の町
青石畳の町
しめ縄太すぎ系神社もある
しめ縄太すぎ系神社もある

隕石の写真が食堂にかざられていた

昼ごはんに魚をたべようと思ったが1500円の定食しかなかった。こりゃ仕事中に食べるには浮かれているなと躊躇してると近くに丼もの出す店があるからと別の店を紹介された。たしかに丼はあったが親子丼だった。ああ、浮かれたい…。

あきらめて丼を出す店の1500円の定食を食べているとさっきの店のおばちゃんが入ってきた。おまえ結局定食食ってるじゃないかという目が気になる。

気まずい。目をそむけた先には隕石の写真がかざられていた。

きいてみると「まあ、隕石見に来たんですか? そうですかそうですか」と歓待された。その後会話はつづかない。特に何の思いもないようだ。

写真の下に何か詩のようなものが書かれている。隕石についてのものですか? ときいてみると「ちがうんですよ、母が書いたものなんです」という。読んだ。隕石についてのものだった。なぜ否定したのだ。

隕石。その突拍子のなさ。ある日突然降ってきてその突拍子になさに熱狂したものの、突拍子もないものだからこそどう距離をとっていいのか難しいのだろう。
昼食をとった店の写真。「暗いみ空の流れ星 どこへ何しにゆくのでしょう 荒野の果てのみずうみに お水を飲みにまいります」店のお母さんのお母さん作
昼食をとった店の写真。「暗いみ空の流れ星 どこへ何しにゆくのでしょう 荒野の果てのみずうみに お水を飲みにまいります」店のお母さんのお母さん作

メテオプラザへ

20年くらい前、町では温水プールやフェリーのターミナルを備えた施設を建てようとしていたそうだ。その頃ちょうど近くに隕石が落ちたので展示するようになった。

町の公共施設、メテオプラザの誕生である。その名もズバリそのままの隕石プラザ。形もすごい。隕石が建物のてっぺんに乗っかっている。

ちょうど落ちたというには、ここまでフィーチャーするかというほどに隕石である。
メテオプラザ。上部のまゆ型の建物、あれが隕石のかたちそのままなのである
メテオプラザ。上部のまゆ型の建物、あれが隕石のかたちそのままなのである
たとえばホールインワンをとった人は記念テレカを配ったりする。もし町に隕石が落ちてきたとき、私達はどれくらいはしゃいでいいものなのだろう。

この町では隕石を展示し、町の公共施設を隕石化し、そして隕石まんじゅうを作った。よく売れたそうだ。
そのルール、落ちてても有効なのか
そのルール、落ちてても有効なのか
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隕石型の部屋の中身はこれだ。ものすごく広い。パイプ椅子がぐるりととりかこむ。
隕石型の部屋の中身はこれだ。ものすごく広い。パイプ椅子がぐるりととりかこむ。

映画館独占

500円払って隕石が展示されているメテオミュージアムに入るとすぐシアターに通される。この建物のてっぺんについていた隕石型の部屋は隕石の映像を上映するシアターだった。

「まもなく上映がはじまりますので」と受付の方に声をかけられた。自分一人でスクリーンを独占。「うむ、はじめたまえ」という気分になる。
隕石がわが町に落ちたが、そもそも宇宙とはなんだという内容。隕石の名がついた建物の隕石型の映画館で隕石の映像を見るという隕石ぜいたく。
隕石がわが町に落ちたが、そもそも宇宙とはなんだという内容。隕石の名がついた建物の隕石型の映画館で隕石の映像を見るという隕石ぜいたく。
ドカーン(ビッグバン)
ドカーン(ビッグバン)
部屋にははやぶさの実物大模型もある
部屋にははやぶさの実物大模型もある
あたたかみや人の温もりをビンビン感じる
あたたかみや人の温もりをビンビン感じる

神秘的な雰囲気が満ちすぎている隕石部屋

シアターが終わると次は隕石の部屋である。この建物を外から見ると隕石の隣に塔があったのをおぼえているだろうか。その塔の中には隕石があったのだ。

中は暗く、隕石がライトアップされていて神々しい。こうした新興宗教だといわれてもなんら違和感はない。
い、い、隕石さま~!! 塔の内部で上はどこまでも高い
い、い、隕石さま~!! 塔の内部で上はどこまでも高い

隕石がしゃべる

この塔の中にくるとアナウンスが流れる。「ぼくは~~から来て~~光年もはなれて~~てたんだよ」しゃべり方をきくとどうやら隕石がキャラクター化してしゃべっているようだった。

パンフレットに載っていた発見者の松本さんの手記には石を発見したときの感想として「この石が、翌日から素手で触ることもできない“お石様“となろうとは…。」とあった。

ついには隕石をしゃべらせるまでに。
この町のシンボルとなった隕石さまがしゃべる。隕石くんみたいな感じだった
この町のシンボルとなった隕石さまがしゃべる。隕石くんみたいな感じだった

隕石もいいが落下展示がいい

このメテオミュージアムの良いところは、隕石展示(世界の隕石などもある)だけにとどまらず「隕石落ちた展示」をけっこうなボリュームで展開しているところだ。

なかでも感動したのは隕石が落ちた家のミニチュア模型。人んちのミニチュアだ!
人んちがこんなに精細に。これはいい。今も住んでいるそうである。
人んちがこんなに精細に。これはいい。今も住んでいるそうである。

落ちた松本さん家がここにある

発見した松本さんは町のためを思ってご好意で隕石を提供したそうである。

落ちました展示の部屋は真ん中に発見者松本さんの家のミニチュアがあり、周囲を発見当時の写真や隕石で破損した床板や屋根瓦がとりかこむ。

松本さん、町に捧げすぎである。ここはもうほとんど松本さん家といってもさしつかえない。
ズドーン! 落ちましたな
ズドーン! 落ちましたな
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もしも自分家に隕石が落ちてきたら?

今から22年前、1992年12月10日午後9時頃、親類とおしゃべりしてた松本さんの家に「ズン」と大きな音がした。雨が降っていたために落雷だと思ったそうだ。

天井を見ると穴が開いている。「すぐに大工さんを呼んで雨漏りをふせぐため二階にビニールシートを敷き、家中のたらい五個を用意して雨漏りに備えた」(※1)そうだ。

しかし松本さんは落雷にしては「どうしても合点がいかず、その夜は寝られなかった」(※2)という。

家の天井に原因不明の穴が開いているのである。隕石が落ちた人、その晩は寝られないものと覚悟していてほしい。
地球最初の痕跡点…人んちの屋根!
地球最初の痕跡点…人んちの屋根!
隕石が落ちた2日目の朝。「あれは隕石ではないかなあ」と松本さんは思う。

「災害保険の査定を受けなければならず、修理に手を付けるわけにいかない」らしかった。

昼前に保険の査定のため1階の部屋の畳をあげることになった。「隕石があるかな?それともトラ皮のパンツをはいたカミナリさんがいるかな」と松本さんの手記にある。隕石が落ちた人だけが言えるギャグである。

ちなみに修理は住宅総合保険の雹の項目でおりたとWikipediaに。隕石落ちるとのちにWikipediaに保険適用方法も載ることになる。

夕方、奥さんが石を発見する。「まるで漬物石のようでとてもいん石とは思いませんでした」(※1)と奥さんは思ったそうだ。奥さん、ついに言っちゃった感がある。
「落ちました」落ちましたな~
「落ちました」落ちましたな~
隕石が落ちた3日目。

地元の集落の「3分の2の人は見に来たのでは」というほど大勢見に来る。村のおばあさんは「だれがこんなこと。おそろしげだねー」というしお見舞いのお酒を持ってくる人も。(※1)隕石落ちた人には酒だ。酔っ払って忘れてもらいたい。

午後には東京の国立科学博物館が隕石を持ち帰る。この日の地元の新聞にも載る。

松本さん夫婦はグロッギー気味で、妻美恵子さん(52)は「買い物に行く間もなく、冷蔵庫の中はもう空っぽ」(※3)だったそうだ。隕石が落ちたら食料を手配しておく必要もありそうだ。
人んちの破損した床板
人んちの破損した床板
その後国立科学博物館の分析で地球上に存在しない元素が検出される。また、861年に落ちた日本最古の隕石、直方隕石と同じ隕石ではないかという双子説が持ち上がる。

家に隕石が落ちて丸一年。双子説にちなみ双子のおばあさんきんさんぎんさんが一周年記念として見に来る。

あなたの家に隕石が落ちるとこういうことになる。きんさんぎんさんが家に来るぞ。

※1 平成4年12月15日 朝日新聞
※2 平成4年12月13日 日本海新聞
※3 平成4年12月15日 読売新聞
最終的にはきんさんぎんさん(そういう双子のおばあさんがいました)が石に手をあわせるまでに…!!
最終的にはきんさんぎんさん(そういう双子のおばあさんがいました)が石に手をあわせるまでに…!!
メテオプラザから徒歩30分程度で落下地の集落につく
メテオプラザから徒歩30分程度で落下地の集落につく

実際の松本さん家にも行ける

メテオプラザから徒歩30分程度で惣津の集落につく。限界まで自分の家を展示した松本さんだが、今度は落下モニュメントの設置まで許した。そう、そこはまさに自分家にほかならない。
ぐねぐねの海岸線にそって家が並ぶ。その中に一点モニュメントがあるが…
ぐねぐねの海岸線にそって家が並ぶ。その中に一点モニュメントがあるが…
これが隕石落ちたモニュメントである
これが隕石落ちたモニュメントである
ここにもあった、あの隕石の形だ
ここにもあった、あの隕石の形だ
今は落ちた面影もない
今は落ちた面影もない

隕石は人の家に落ちたから発見された

(ほぉ~、ここに落ちたんだね…)と強く思いながら落下地点を見る。気を抜くとただの他人の家だからだ。

メテオプラザの人にあとできいてみると「松本さんはいました? いたら色々話してくれるんですけどね~」といっていた。なんとガイドまでやってくれるのか。

松本さん家の前は海である。ここにズドンと落ちたらだれも気づかなかったろう。人の家に落ちたから隕石は発見された。そして雹の保険が降りてきんさんぎんさんが家に来て自分の家が観光地化した。
数mずれて海や山に落ちたら誰も気づかなかったのだろう。人んちに隕石が落ちた。だからこそあの展示ができあがったのである
数mずれて海や山に落ちたら誰も気づかなかったのだろう。人んちに隕石が落ちた。だからこそあの展示ができあがったのである
味のある民家、味のある民家、一つ(隕石落ちた家)とばして味のある民家
味のある民家、味のある民家、一つ(隕石落ちた家)とばして味のある民家

ニッポンの熱狂を見にいく

風が吹くと桶屋がもうかるし隕石が落ちるとまんじゅうになる。

調べてみると香川県高松市でも隕石が落ちてまんじゅうを作ったそうだ。ここは音頭も作っている。まんじゅうと音頭、日本の熱狂のシンボルである。

なんせ22年前だ。ひと通りはしゃぎ終わって、20周年記念でさえ終わった状態だ。今見にいくのはよほどの隕石ファンか観光ついでの人だろう。

訪れてみるとここにはたしかに熱狂があったことがわかる。その熱狂自体をおもしろく見ているような気がした。日本にはさまざまな熱狂があったはずで、かつての熱狂を見にいくのもおもしろい。

しかしそのためには今はしゃがなければならない。まんじゅうを食らい、音頭で踊らなければならない。がんばろうニッポン!である。
最初は一人だったがお客さんもいた。自分家に落ちたら大変だなあというようなことを話していた。同感である。
最初は一人だったがお客さんもいた。自分家に落ちたら大変だなあというようなことを話していた。同感である。
メテオプラザ
http://www.mihonoseki-kankou.jp/spot/meteor_plaza/
〒690-1311 島根県松江市美保関町七類3246-1
TEL0852(72)3939
FAX0852(72)3888
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