特集 2012年10月4日

なんでもない日常を、カツカレー代3500円分で祝う

カツカレー騒動、これが俺なりの答えだ!
カツカレー騒動、これが俺なりの答えだ!
9月27日、インターネット上で突如カツカレーが異常に盛り上がりはじめた。
前日の自民党総裁選挙で、安倍新総裁が選挙の前に3500円もするホテルのカツカレーを食べたからだという。
一時、ツィッターのタイムラインではカツカレーを話題にするひとが増え、カツカレーへの賞賛、渇望、呪詛などが上から下へ流れるように現れては消えて行き、さながら煩悩の滝を眺めているようであった。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

ニューオータニに食べに行ってみた

カツカレーに3500円。たしかに高い。しかし、ホテルで注文するカレーであればそれぐらいするだろう。という値段だ。
スパイ組織の本部のような佇まい
スパイ組織の本部のような佇まい
ネット上で出回っている情報によると、ホテルニューオータニの中にある「SATSUKI」というレストランのカツカレーが3500円だという情報をキャッチしたので、とりあえず現地に出向いた。
一度、3500円のカツカレーというものがどんなものなのか食べて見たい。

どこにあるのか迷う

そもそも「ホテルニューオータニ」って、宿泊客じゃないひとが勝手に入っていいのかどうかもよくわからない。
ふざけた理由で入館すると、屈強なポーターに咎められ、つまみ出されやしないか内心ビクビクしながら入っていったけど、特に何も言われることなく入れた。(注:たぶんポーターはそういう役割ではない)
ちょっとした迷路
ちょっとした迷路
しかし、館内は複雑で、レストランがどこにあるのさっぱりかわからない。
館内地図を見てみるものの、廊下が入り組んでおり「めばえ」とか「てれびくん」に載ってる迷路ぐらいの複雑さがあった。
ズデーンと鎮座まします高級肉の数々
ズデーンと鎮座まします高級肉の数々
肉屋ではない、ホテルである。
ステーキハウスのショウウィンドウに間接照明で照らされた高級肉が置いてあった。骨董品の茶碗みたいに布で包まれており、いかにも高そうである。
いけすに魚やエビを泳がせておいて、注文が来たらとって料理する店があるけれど、それに近い事を牛肉でやるとこうなるのかと合点がいった。
店名が小さくて気づかなかった
店名が小さくて気づかなかった
ホテル内を30分ほど迷ってやっと「SATSUKI」に到着。ニューオータニでかすぎる。

壁の絵から違う

高そうな絵
高そうな絵
レストラン内はいかにも高級そうなでかい絵画が飾ってある。藤棚と八橋だろうか。
サイゼリアの壁によく描いてある肘をついた天使の絵とはなんかこう、風格が違う。これがカツカレー3500円の重みというものか。

値段が話と違う

メニューをよく見るとポークカツカレー、フィレ3200円とあった。あれ? 値段が違う! 違うレストランに来てしまったか!? と焦る。
300円安い!
300円安い!
しかし、これはサービス料別の金額だとすぐに分かった。高級レストランでよくあるやつだ。

こちらは相当な覚悟をしてきているので、高級レストランはこういう庶民の心をもてあそぶような微妙な価格トラップを仕掛けるのは慎んでいただきたいものである。

サービス料込で3500円になるであろうポークカツカレーのフィレを注文。そしてやってきたのがこちらだ。
漬物の上の白いのはドレッシングでした
漬物の上の白いのはドレッシングでした
見た目は……取り立てて言うところもない、普通のカツカレーだ。
市井のレストランであればおそらく1000円前後のものではないだろうか?

さっそく頂いてみる。
カレールー、かけてもいいんだよね……
カレールー、かけてもいいんだよね……
味は、カツカレーの王道的な安堵感のあるうまさ。普通にうまい。
カツの衣のサクサク具合も素晴らしいし、中の肉も適度な弾力とともに噛み切れる柔らかさ。
ケレン味のない味はニューオータニのレストランの真摯な姿勢が伝わってきて好感が持てた。
ちなみにツィッターでは「心臓が止まりそうなほどうまい」とか書きましたが、あれは多少大げさに書いてます
ちなみにツィッターでは「心臓が止まりそうなほどうまい」とか書きましたが、あれは多少大げさに書いてます

以上のようなことをトゥギャッターにまとめた

ということで、27日にカツカレーを食べに行った一部始終はトゥギャッターにまとめた。
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カツカレーを食べに行った話のさらに詳しい内容はそちらをご覧頂くことにして、今日のこの記事である。

カツカレー食べただけでは面白くない

ぶっちゃけた話をさせて頂くと、当初カツカレーは個人的に食べに行ってそれで終わり。という形にするつもりだった。
しかし、林さんの好意でデイリーポータルZの記事として掲載させて頂く機会を得た。
ただ「カツカレー食べに行って終わり」という記事では面白みや新鮮さがない。一体どうしたものか? と会議で話し合った。
当初、「もっと高いカツカレーを食べに行く」「ココイチで3500円分トッピングする」などのアイデアが出たものの、すでに他のサイトでやられているものばかりだ。
他に「もう一回おかわりする」「激安のカツカレーを探す」などのアイデアが出たけれど、どれもカツカレーに囚われている限り、誰かの真似っぽくなるし、真似されてしまいそうである。
会議という名の飲み会
会議という名の飲み会

3500円の方にフォーカスを絞ったらどうか

ここで、いっそのこと、カツカレーを忘れ、3500円の方に注目してみてはどうか? という事になった。

林「もっとこう、西村さんの好きなものを買うとか、そういうのでいいですよ、古地図を3500円分買うとか」
西村「3500円分かぁ、小堺さんは3500円あったら何買いますか?」
小堺「私なら……最近花を買うのが好きなので、3500円分花を買います」

以上のやり取りを踏まえた上で、以下をご覧いただければ幸いです。

なんでもない日常を3500円で祝う

カツカレーの3500円という価格は、確かに一般的なカツカレーの価格に比べるとちょっと高い。
しかし、ちょっとした贅沢。ということであれば出せない金額でもない。
高級ホテルの落ち着いた雰囲気のレストランでゆっくり食べるカツカレー。
悪くはないと思う。
そう考えると、3500円という価格はかなり絶妙な価格ではないだろうか?
3500円で他にどんな贅沢品が買えるだろう? 今まで買ったこと無いものを買ってみたい。そうだ、バラの花束を買おう。
真赤なバラ、一本350円也
真赤なバラ、一本350円也
バラの花束を買って、妻にプレゼントしようと思う。今日、10月3日は特になんの記念日でもない。しかし、なんの日でもない平和な日常こそ本当は祝うべきではないだろうか?
そんな思いを胸に花屋へ向かう。
バラ10本3500円
バラ10本3500円
ラッピングをしてもらったので、50円オーバーの3550円となってしまったけれど、まあ、いいだろう。

バラの花束を感謝の言葉としたい

思い起こせば苦労ばかりかけている……2年前、突然会社をクビになったときも何一つ文句を言わず、逆に励ましてくれさえした。
その後、ぼくがデイリーポータルZで原稿を書くようになってからは、自分の仕事があるにもかかわらず、早めに帰ってきて家事を手伝ってくれる。
しかも、奇矯な取材まで手伝ってくれたりして、とても頭があがらない。
奇矯な取材(「デカ目はどのくらいスゴイのか?」http://portal.nifty.com/2010/12/11/c/ より)
奇矯な取材(「デカ目はどのくらいスゴイのか?」 より)
そんな妻に感謝の気持ちを込めてバラの花束を渡したい。しかも、帰ってきたときに突然花束を渡してびっくりさせよう。

準備万端、あとは帰りを待つだけ

事前に買ってきてほしいものがあるからと、会社を出る前と、最寄り駅に着いた時に電話を入れるように連絡し、準備をすすめる。カメラ係は息子に任せた。
撮影係
撮影係
たむらけんじではない
たむらけんじではない
せっかく渡すバラの花束。正装で渡したいと思う。

妻が帰ってきた

玄関の鍵をあける音がする。妻が帰宅してきた。我々はスタンバイする。
え? なにしてんの?
え? なにしてんの?
え? あ? なにこれ?
え? あ? なにこれ?
妻「え、なにしてんの? なにこれ? なにこれ?」

ーーなんでもない日常を祝おうと思って

妻「あは、え、なんで?」

ーー明日の記事のネタにするから……。

妻「ははっ、あそう、ありがとう……」

リアクションは薄かったけど、喜んではくれた

本気でちょっとかっこいい写真が撮れてしまい動揺してる
本気でちょっとかっこいい写真が撮れてしまい動揺してる

突然の花束に戸惑いはしたものの、妻は概ね喜んでくれた(と思う)。
妻は「人生でバラの花束を貰ったの初めて」といっていたけれど、そりゃそうだろう、ぼくだって初めて買ったんだから……。
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