特集 2019年2月6日

ゼンマイ式でトランスフォームする中国のおもちゃがすごいので分解する

みなさん、「ゼンマイ式でトランスフォームする中国のおもちゃがすごいので分解する」をお読みいただきありがとうございます。
この記事は、ゼンマイ式でトランスフォームする中国のすごいおもちゃを分解するだけの記事です。

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

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ゼンマイ式でトランスフォームする中国のおもちゃがすごい

すごいんですよ。本当にすごい。

なんて、すごいすごい言っててもなにも伝わってこないと思いますので、さっそくおもちゃを紹介していきます。

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これです

何の変哲もない車のおもちゃです。ないですよね、変哲。念のためもう一度ご確認いただけますか。

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変哲ナシ!

 思わず指さし確認してしまいました。やっぱりないですね、変哲。一見ほんとうに普通の車です。
ところがですね、ゼンマイを巻いて走らせてみましょう。

 

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見た見た!?これ、変形するんですよ。

この、何とも言えない形の軽トラ?みたいな車が、走り出すとおもむろに足が生えて、人型ロボに……じゃなかった、

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犬!

そう、犬になるんです。このおもちゃを見た僕の感想はこうでした。

「変形!?すげえ!マジで変形するの!?うわ、変形した!車が?車が犬に??????」

最初「!?」だった感嘆符がだんだん純粋な「?」になっていくのが分かったでしょうか。とにかくすごいのですが、それにしてもこのぼんやりしたモチーフはなんなのか。犬種のよくわからない犬(ビーグル?)と、軽トラのほうはやはりコンボイを意識してのことでしょうか。普通免許で運転できるギリギリのコンボイ。

……とついつい茶化してしまいましたが、これがゼンマイじかけで動いてるんだから普通におどろきです。このおもちゃのことは会議中の雑談で編集長の林に聞いたのですが、その場で注文しました(会議中のオンラインショッピング恐縮です)。

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裏側を見ると底の部分にうるんだ瞳の犬の頭が埋まっており、味である

ゼンマイのおもちゃは数あれど、こんなに凝った動きのものは初めてです。中国の通販サイトで買ったので到着まで3週間くらいかかりましたが、思わず狂ったように遊んでしまいました。

余談ですが林が注文した分は結局とどかなかったそうです。中国通販はいつも、荷物をなくしがちな国際物流網との戦いです。

ちなみにいまはAmazonで変えるようなので、記事の末尾のリンクをどうぞ。

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壊れた

そんな我が家のコンボイですけれども、ある日、子供が「おとうさん壊れた」つって持ってきたんですね。ためしに動かしてみます。

ng.gif
あれ……

変形機能が失われ、ただの軽トラになってしまいました。 

DSC08692.jpg
足が中途半端に出ているのでくるくる回ってしまう。

分解修理ついでに、変形の仕組みを調べてみたいと思います。

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機構という快楽

タイヤを外して、ケースを開きました。

DSC08694.jpg
中はこんなことになっている

一度このままゼンマイを巻いてみましょう。

 

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ほほう……。
この段階ではまだしくみまでよくわかりませんが、とにかく「機構」という感じがします。なんと満足感の高いアニメーションでしょう。ずっと見ていられます。

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なぞの突起

さらなる調査と快感のため、もうちょっとばらしてみます。

DSC08708_1.jpg
ギアボックス

これがエンジン部分です。ゼンマイを巻くと、①と②、2つの軸が回転するようになっていました。そこにギアがついていて、③~⑤の部品がぜんぶ連動します。(おもちゃは左右対称で、それぞれの部品は裏側にも同じものがついています。)

③のシャフトはタイヤがついていたものです。車モードの時はこれで走ります。
変形機構としては、のこる④、⑤がキモのようです。

それぞれよく見てみると

DSC08708_2.jpg
書き足した矢印のところ、突起があります

2か所(裏面も合わせると4か所)、突起がついていますね。結論からいうとこれが変形の核心部分でした。この突起のことは忘れないように覚えておいていただいて、話はいったん別のパーツに。

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変形の核心

次は、カバー部分を見てみます。

aki.jpg
カバー部分

カバーは1枚板ではなくて、いくつかの板が組み合わさってできています。

ここでおもむろに、この写真に円を書き込んでみます。

aki2.jpg
円、入りまーす

察しのいい方はお気づきでしょう。さっきギアボックスの④、⑤についていた突起あるじゃないですか、あの軌道がこの円なんですね。

ではあの突起が円を通るとどうなるか、ドライバーを突起に見立てて、実験してみます。

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④の円

車が、犬に!犬が、車に!
変形の核心部分は、なんとこの単純な回転運動にあることが分かりました。

カバー部分はおおむね2枚の板でできていて、片方は頭や脚の回転軸を支えています。もう1枚の板が突起の回転で突き動かされることで、クランクの原理?で頭や脚のパーツを回転させ、犬と車を切り替えているんですね。どうやって考えたらこんなものできるんだ……。

最低限のコストでめっちゃ動くものを作ったるぞ!!という執念を感じます。そこにかける熱量と、見た目をかっこよくしようというパッションの希薄さ。このアンバランスこそがこのおもちゃの最大の魅力かもしれません。

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さらにもうひとムーブ

ところで、思い出してください。ギアボックスの突起は2つありました。もうひとつの⑤のほうの突起はなんだったのかというと……

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こう

こう、って言われても肝心なところが指で隠れて全然見えてませんでした、すみません。
逆側の方が見やすかったのでそちらを貼ります。

gear3.gif
こんどこそ、こう

こういう感じで、足を動かして歩いてるっぽくするための機構でした。
変形は確かにダイナミックですが、この犬に命を吹き込んでいるのはむしろこの足踏みのムーブでしょう。変形の一点突破で終わらない、心憎い演出です。

故障の原因

ちなみに故障の原因は何だったのかというと、

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②と書いてあるところ、突起⑤が押し上げたパーツ(紫の輪郭のところ)を押し戻すためのバネがあるのですが
bk2.jpg
こんなふうに外れてました
all1.gif
修理後の様子が、先ほど貼ったこちらです

おもちゃ侮りがたし

値段が安いのでそれほど複雑な構造じゃないだろうと思ってはいましたが、思った以上にシンプルでした。それなのにゼンマイの小さなトルクから、こんなにダイナミックな動きを生みだしているとは。
 
そしてここまですごい機構を作っておきながら、「軽トラが犬に変形する」という謎のコンセプトで商品化してしまった中国のメーカー。

その意味の分からなさに、むしろ底知れぬパワーを感じます。
 
追記:日本のトイコーというメーカーから、「へんけい!ドライブ」という名前で同様の商品が出ていたそうです。
そちらが先発なのか、逆に中国にあったものを輸入販売していたのか正確なところは不明ですが、そのあたりを追っているサイトがありました。元をたどるとアメリカのおもちゃメーカーに行きつくようです。発売年的にこれがオリジナルっぽいですね。

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