サプライズプレゼントを誰かからもらいたい。
枕元にクリスマスプレゼントを置かれるドキドキ感をまた味わいたい。
そういう気持ちを毎日のように抱えて生きている。大人になりきれない。
しかし、こういうイベントごとって自分から「サプライズプレゼントがください!!」なんて周りに張りきって言うものではないし、会社の同僚に「すいません、僕の枕元にプレゼント置いてもらっていいですか?」なんてお願いをするだけでGo To ポリスになる可能性すらある。
そんなときに玄関の前にAmazonからの商品が置いてあるのをみて「これってクリスマスの枕元に置くプレゼントみたいだなー」と思った
ネットで買い物をしたときに、ときどき何を頼んだのか忘れていて「あ、そういえばこれ注文してたわ!うれし〜!!」と得した気分になることがある。
そこで思いついたのだが「ネット通販で誰かにプレゼントを送ってもらう」「玄関前に置き配してもらう」という2つを利用すれば、気軽にサプライズプレゼント気分を味わえるのではないだろうか。
ということで「自腹を出して誰かにプレゼントを送ってもらう」という企画をやってみることにした
■ルール
・ネット通販で僕にプレゼントを送ってもらう
・Amazonなどで置き配(玄関前に置いてもらう)を指定する
・上限は2000円まで。金額以内であれば個数は自由
・お金は僕が自腹でだす
・1週間前後のどこかでそれぞれランダムに配送日を指定する(誰の商品がいつ届くのかわからなくしたいため)
「お金を払うのは自分」というのが肝だ。なぜならプレゼントは通常であれば好意によって贈るものであるが、今回は贈る側には何も気持ちがないからである。プレゼントする側には一切得がない企画だ。
しかしそんな中でも「プレゼントを選ぶだけなら楽しそう」と言って参加してくれる人たちがいて実行することができた。上記の図は善意で成り立っているサイクルなのである。なんてやさしい世界なんだろうか。このやさしいサイクルの渦に飲み込まれたまま人生を終えたい。
■プレゼントを選んでくれた人たち
①弟
②学生時代からの友人
③数回会ったことがある友人に近い人
④1回だけ会ったことがある人
⑤ネットでのみやりとりしたことがある人
⑥僕がまったく知らない人(SNSの募集で参加してくれた)
仲の良さや距離感によって選ぶプレゼントも変わってくるんじゃないだろうかと思い、いろいろな関係性の人たちに参加してもらった
1日目:初日にしてこの企画が楽しいことに気づく
それぞれ配送日を適当に決めて送ってもらっているため、いつプレゼントが届くのかわからないようになっている
玄関の横にAmazonの箱が置かれていたときのワクワク感はすさまじかった。これ、これ!!この「クリスマスの枕元プレゼント」気分を味わいたかったのだ。
ただし、よろこびもある反面でちょっとした怖さもわき上がってきた。参加者をTwtitterで募集したため、あまり知らない人もおり本当になにが送られてきているかわからないのである。緊張感のある興奮が身体の中を巡っていた。
目薬と谷口菜津子さんエッセイ漫画だ
しかし、そんな不安は箱を開けた瞬間に一気に吹っ飛んだ。そして中を見て思わず笑ってしまった。中身がわからないプレゼントをもらうのがこんなにも楽しい体験だとは思わなかったからだ。ああ、おもしろい…!!
中身を見るとその人の性格や趣味嗜好を感じられ、選んでくれた人の顔が思い浮かぶ。その人の人生の一端を見せてもらっているようで味わい深い。
そしてこれは家族やカップルで行うサプライズプレゼントとはまったく性質も違う。自分でお金を出しているため、気兼ねなくプレゼントを楽しむことができるのだ。いらないものであれば正直に「いらね〜」と言えるのである。なんて贅沢な浪費なんだろうか、貴族の遊びだ。
僕との関係性:数回会ったことがありほぼ友達
■プレゼントをくれた人
こなかわさん(20代)
■プレゼントを選んだときの感想
羽振りよくいきたいなと思ったところ、2000円以内と言われてしまったのでとにかく予算内に収めることが大変でした…!
目薬は、学生時代受験勉強などで寝不足のときに父が買ってきてくれたものです。涙を集める機能?みたいなのがあるらしく、目が乾いているときにさすとしばらく目が開けられなくなるのが衝撃的過ぎて贈りました。
谷口菜津子さんの本は、とにかく大好きな漫画なので布教用です(笑)
プレゼントを選ぶときって「相手が喜びそうなもの」を探しがちだけど、「自分が好きなものを相手に贈る」という方がサプライズ感が増して感情をより揺さぶれる。予想外のうれしさがあるという学びを得た。
もらった本に載っていた「浅漬けの素(白キムチ)」を買ってみた。漬けておけばなんでもピリ辛の漬物になるので、おかずの一品としても酒のツマミとしても最高
ああ、誰かにプレゼントを選んでもらうってこんなに気持ちがあたたかくなるのか。忘れていた感情だ。ああ、なんだろうかこの気持ちの名前は。ああ、そうか、、このあたたかい気持ちの名前は幸せなのか。
2日目:近い人間じゃないとプレゼントできないものがある
2日目は鼻毛カッターが届いた
鼻毛カッターだ。鼻毛カッターなのか。鼻毛カッターか。鼻毛カッター?なぜ……?
「プレゼントを選ぶ」という企画でなぜ鼻毛カッターを選んだのだろうか、謎である。贈り物のチョイスとしてはイマイチな部類だろう。現にうれしいよりも「なぜ鼻毛カッターなのだろう?」という疑問で頭がいっぱいになった。
しかし、送り主が誰なのかを知ったときにその疑問をすぐに解消された。それと同時に恥ずかしさでもだえた。
僕との関係性:学生時代からの友人
■プレゼントをくれた人
Tさん(30代)
■プレゼントを選んだときの感想
身だしなみを整えて、自信を持って毎日を送ってもらえますようにと祈りを込めて送りました。マスクの下で鼻毛が伸びている危険性があるので油断禁物です(笑)
親友から送られてきたとわかった瞬間にすぐに足元からぞわぞわっと羞恥心が這い上がってきた。
「お前は普段から鼻毛がでてるぞ」
という静かなる忠告である。プレゼントを利用して普段は言えないことを伝えてきたのだ、京都のぶぶ漬けみたいなものかもしれない。ありがたいやら恥ずかしいやらの感情が頭でまわり続ける。
ただ、これはこれで近しい関係でしか贈れないものなのだろう。友人だからこそ贈ることができる一品だ。前日と比べてこうもプレゼントの内容が変わってくるとは思わなかった。(このあとめちゃくちゃ鼻毛カッターした)
3日目 その1:大人の贈り物の正解がこちら
この日は一気に2つ送られてきた。よっしゃ!!!!!
1つ目は「白龍」という高級感があふれる素麺だった。素麺だと理解するのに30秒くらいかかった。箱もフォントもかっこよすぎる。
僕との関係性:1回だけ会ったことがある
■プレゼントをくれた人
きんちゃん(30代)
■プレゼントを選んだときの感想
まず、megayaさんの事をあまり存じ上げないので、アクセサリーやグッズなどよりは食品などの消えものがよかろうと思いました。
白龍にした理由は以下です。
・誰に食べてもらっても「何これすごい」と言ってもらえる
・素麺は好みの差が出にくい
・ある程度保存がきく
・個包装でご家族にも分けて頂ける(兄弟仲が非常に良いというツイートや記事を拝見していた)
2000円という枠内だと結構限られるなぁと思いました。が、そこで頭を絞るのも楽しかったです。あまり知らない人への贈り物を考えるのは大変楽しかったです!
はー、これは素晴らしい。贈り物として勉強になる。
たしかにそうめんだったら間違いなく誰でも消費できるし、嫌いな人はほぼいないはず。そしてパッケージに高級感があるから、もらった側としても「え?こんな良さそうなものを!」という驚きもある。
> 個包装でご家族にも分けて頂ける
↑この気遣いとか頭が下がる思いだ。2000円以内の贈り物として100点なんじゃないだろうか。これができる大人だ。こんな人と結婚したい。養ってほしい。素麺をゆでて欲しい。
美しい白。そして超美味。
今度誰かに軽いお礼をするときは絶対にこの素麺を使おうと誓った。もちろん「僕が前から好きな素麺です」ということにして。
3日目 その2: すぐに消費できるものは最高
2つ目は海外の高級バターだった。これも最初はなんなのか理解するまでに時間がかかった
僕との関係性:SNSでお互いを知っているだけ(現実で会ったことはない)
■プレゼントをくれた人
はっしー(30代)
■プレゼントを選んだときの感想
megayaさんがTwitterであげていたパン作りのためのバターを贈りました。自分で高級バターを買うのは躊躇するかもしれないと思ったので。
知らない人にプレゼントを送るって難しいですね。普段はその人の生活スタイルとか会話の端々から何をあげるか考えているので。
あー、これこれ!!
個人的にプレゼントとしてうれしいものの一つに「日用品のちょっと高級なもの」がある。ちょっと高いシャンプーとか、ちょっと高いドレッシングとか。自分では買わないから「あー!やっぱり高い商品は違うわー!!」って大声で言いたくなる。
もらったバターで食パン作った。あー!やっぱり高い商品は違うわー!!
しかし、よくよく考えたらあまり知らない人にプレゼント贈るのって難易度がかなり高い。相手の好き嫌いがわからないから、とにかく無難なものを贈る以外の選択肢がないもんな。
4日目:なにも届かなくて落胆する
玄関に何も置かれていなかったときに膝から崩れおちそうになった。朝から晩まで何回も玄関前を確認していた。
3日連続でプレゼントが届いたものだから、もらうことが日常になりつつあったのだ。サプライズプレゼントなしでは生きられない身体になってしまった。ああ、もっと俺にプレゼントをくれ……もっと強いやつをくれぇ……!
5日目:関係が遠い人ほど消費しやすいものを選ぶ傾向がある
麦茶だ!
僕との関係性:Twitterの募集で参加してくれた(ほぼ知らない人)
■プレゼントをくれた人
カーくん(40代前半)
■プレゼントを選んだときの感想
水分はあっても困らないだろうと思ったので。食べ物の好き嫌いとかどうしようか悩んだ挙句にいつも飲んでる麦茶9本にしました
これは地味にうれしい…!!
確実に消費できるしもらっても困らないものナンバーワンかもしれない。爆発的な喜びこそないが、結局こういうのがもらって一番うれしい。
ここまで来て一つわかったのだが「遠い関係の人ほど消費しやすいものを贈る」という傾向にあるが。当たり前のことではあるが、実際に目の当たりにすると興味深い。
最終日:弟はやっぱり好みをわかっている
エッセイと小説だ
僕との関係性:最愛の弟
■プレゼントをくれた人
弟(20代)
■プレゼントを選んだときの感想
好みと2000円以内という部分を加味して本にした。2冊選びたいと思っていたので、金額以内で面白い本を選ぶのは大変だった。
楽しかった。
当たり前であるが兄弟ともなると当たり前のように僕の趣味嗜好を理解している。
やはり兄弟だ。これが愛。プレゼントは愛なのである。そうか、愛か。プレゼントというのは愛なのだ。書いていて今気がついた。愛だ。つまり弟からの愛が贈られてきたのだ。ありがとう。僕に愛をくれて。そしてこれからも弟を愛していきます。
うーん、興味を惹かれるいいキャッチコピーだ
「30代後半より上の年齢」「関係が遠い人」だと消耗品を送る傾向がある
最後に編集部の石川さんにも2000円分のプレゼントを贈ってもらった
■プレゼントをくれた人
石川さん(40代)
■プレゼントを選んだときの感想
結局お菓子に落ち着いたのですが、その前にmegayaさんの近況をいろいろ調べて考えました。SNSを見て作業部屋を作っていたのを見たのでモニタアームを送ろうとしたのですが予算オーバーだったのでやめました。お菓子の詰め合わせならいっぱい入っているのでハッピーな感じがしますし、食べ物だからハズレはないかなと。
年齢と関係によって贈るものが変わってくる(データが少ないのであてにはならないが)
年齢が若い人ほど手もとに残るものを贈りがちな傾向があるのかもしれない。年齢があがるにつれて社会の荒波に揉まれていくので「相手をいかに不快にしないか」という気遣いが当たり前になってきて、もらってもジャマにならない消耗品を送るのだろう。相手の喜びよりも他社への気遣いが勝るのかもしれない。
そして当たり前であるが関係が近い人ほど手もとに残るものをプレゼントする傾向があるようだ。
まあ、そんな理屈は置いといて超楽しい1週間だった。自腹でお金を払ったことをすっかり忘れていた。次は「3分以内に選んだものをすぐに贈る」とかルールを作ってもおもしろいかもしれない。
おまけ1: プレゼントを送る側もやってみた
せっかくなのでお返しとして編集部の石川さんに2000円分のものをこちらから送ってみることにした。
プレゼントを選んでみてわかったのだけれど贈る側はすごく難しい。2時間くらいかかった。石川さんとの過去の会話を思い出したり、SNSを見て趣味とか家族構成を必死に調べた。こんなに大変なことをやってもらっていたのか。
金額の縛りがあるから選択肢が限られているが、相手に喜んでほしい気持ちがあるから中途半端なものは贈りたくないという気持ちもあるため脳をフル回転させる必要があった。
最終的には、お子さんと一緒に遊べる「ドブル」というカードゲームと、最近僕が気に入っている「日向夏のドレッシング」を送ることにした。
日向夏のように弾ける笑みの写真が送られてきて安心した
しかし、正直に白状すると選んだプレゼントは2000円以内で収まらずに100円ちょっとオーバーしていた「センスあるもの送ってきたな〜」とい思われたい欲に負け、自分自身で作ったルールを破ってしまったのである。申し訳ない……!
おまけ2:ただプレゼントをもらうだけになるところだった
ちなみにこの企画は去年に募集したのだけれど、なかなか記事が書けずにいた。あやうくただただプレゼントをもらうだけになってしまうところだった。申し訳ない……!