特集 2021年8月16日

俺の町の鳩よけが凶暴すぎる

オラオラ何見てんだ!?焼き鳥にしてやろうか?


千葉県の市川市にある、JR総武線の本八幡(もとやわた)という駅の近くに住んでいる。

駅前はほどよくにぎわっていて、東京の都心にも20分で出られる一方で、駅から少し離れると静かな住宅地になっていて、とても住みやすく気に入っている。

ただ、1つだけ違和感を感じていることがある。
この町の鳩よけが、凶暴すぎるのだ。

1984年岐阜県生まれ。変な設定や工作を用意して、その中でみんなでふざけてもらえるような遊びを日々考えています。嫁が世界一周旅行中。

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鳩よけが尖りすぎている

この町の鳩よけ凶暴すぎないかな?
僕がはじめてそう思ったのは、いつも利用している駅前の駐輪場でのこと。

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いかにも鳩が好きそうな街灯があるんですけど、
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その鳩よけが尖りまくっているのだ。
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即席のメジャーで長さをはかってみると、

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針の長さは14センチ。
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近所のスーパーで買った焼き鳥の串も14センチ。この町、鳩を焼き鳥にする気だ!?

この駐輪場はJRの線路の高架下にあることもあって、たしかに鳩は多く、正直その糞で汚くなっていることもある。なので、絶対に鳩を寄せつけないぞという強い気持ちは頼もしいしありがたい。

ただ一方で、その強い気持ちが鳩よけをここまで尖らせたことは面白くもある。見るたびに笑ってしまっていた。

俺の町の鳩よけ凶暴コレクション

このことに気づいて以来、鳩よけがあるとその戦闘力が気になるようになった。すると分かったのは、本八幡は凶暴な鳩よけだらけということだ。

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町内のとあるお宅。鳩に先祖代々のうらみがあるかのような釘の数で、もはや殺意すら感じる。
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こちらは週末になるといつも家族づれでにぎわうショッピングモールなのだが、
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その看板はヘビメタバンドのロゴのようなトゲトゲしさに。
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そしてそのエントランスの照明は、
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かなり戦闘力の高そうなモヒカンだ!
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俺たち、本八幡の鳩よけ四天王

とがった奴らは隣町とバトルしたい

ここでいったん、僕の中学時代の話をさせてください。

僕が通っていた中学校は、当時「県でいちばん荒れている」と言われていた。そしてその名にふさわしく、ベランダから鉄製の傘立てがふってきたり、不良グループがあき教室を占拠して、壁に赤いスプレーで大きく「死」と書いたりしていた。

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全校で1時間授業を中止して、ベランダから物を落とすのはいかに危ないかを説くビデオを見たりもした。

そんな中学だったので、ときどき聞こえてきた声がある。

「今日の夜、となりの〇〇中とケンカしにいくぞ!!」

そう、とがった奴らは、となり町とケンカをして自分たちの強さを示したいのだ。

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お前だってそうだろ?

尖りまくった本八幡の鳩よけたちもきっとそう。となり町の奴らとバトルして、自分たちの強さを示したいはずだ。

しかし、それぞれの縄張りを離れることはできないのが鳩よけの宿命。ならば僕が、近くの町の鳩よけとどっちが凶暴か代わりに調べてきてあげよう。

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バトル1:市川のメリケンサック招き猫

わが町「本八幡」の鳩よけ最強伝説を証明するため、JRの総武線に沿って、それぞれの駅の強そうな鳩よけを探していくことにした。

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まずやって来たのは、同じ市川市内の「市川駅」。

ローカルネタで恐縮だが、本八幡駅と市川駅の間には「どっちが市川市の中心か論争」が常にある。本八幡の方が駅前が栄えていて、市役所もある一方で、市川駅は総武線の各停だけでなく快速も停まるからだ。なのでここは絶対に負けられない。

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総武線の快速も停まり、4番線まであることが市川駅のステータス

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バトルの相手となるような鳩よけを探して駅前を歩いていると、「カラオケまねきねこ」の猫が「ようこそ市川駅へ」とにこやかに招いてくれていた。

と思いきや、その左手をよく見ると、

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メリケンサックだ!!

まさかのメリケンサック!いくら猫パンチとはいえ、これで殴られるのは痛すぎる。

さらにこの「メリケンサック招き猫」、右腕や頭も、針のような鳩よけで武装されている。

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すれ違う人をみんな傷つけそうな鋲打ちジャンパー
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頭と耳は何だろう?殺気がすごすぎて針が直に生えてきたのかな。

そしておまけに、右手にはマイクに見せかけた釘バットまで持っていた。

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市川市を制覇しようと乗りこんだのはこちらだが、武器ありだなんて聞いてない。

まともにやりあったら、ボコボコにされたうえに「本八幡は快速の停まらない田舎です」というタトゥーまで入れられそうだ。

ここは負けを認めておとなしく撤退しよう。

ちょっと歌いにきただけですよとカラオケに入り、相手を極力刺激しないよう、さだまさしを一曲だけ歌って帰ってきた。

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完全武装しながらの笑顔。いちばん怖い人がやることだ。

バトル2:下総中山の「ワイドモヒカン」ガスト

まずは市川市の制覇をと思っていたが、メリケンサック招き猫によりいきなり夢をくだかれてしまった。

ならば今度は、反対側の船橋市に遠征しよう。その入り口となる「下総中山」は小さい駅なので、まずはここでオラオラいわせて自信を取り戻したい。

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改札を抜けてロータリーに出ると、やはりここはそれほど大きな町ではないようだった。

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よし、これならそんなに強い奴もいないだろう。楽勝だ!そう思って後ろを振り返ると、

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!!!

現れたのはワイドモヒカンのガスト!
完全に油断していたので、思わず「うおっ」という声とともにのけぞってしまった。奇襲だ!小さい町には小さい町なりの闘い方があるということか。

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トゲの長さは10センチと短めだが、
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動物が相手を威嚇するときのように、このバサッと広げたモヒカンはかなりの威圧感がある。
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しかもこのガスト、お店の上の看板や排水管にもしっかり鳩よけがついていて、
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鉄壁のガードがされている。

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鳩たちも、「あのガストには近づかない方がいいぜ」とあきらめているようだった。

たしかに、あのワイドモヒカンと鉄壁の守りににらまれていては、そう簡単に攻めこむことはできない。本八幡の名誉のためにはもう負けるわけにはいかないのだが、ここは引き下がるしかないのだろうか。

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おかしいな、船橋市は平和宣言都市と聞いていたのに。

しかしその時、

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クルックー!

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一羽の鳩が飛びたち、ガストの軒先の赤いテントにとまった。鉄壁のガードがされているように見えたガストだったが、ここだけはトゲがなくがらあきだったのだ。

鳩がきちんとよけられていないのは、鳩よけとしては致命的。これは、われわれ本八幡の勝ちと言っていいだろう。

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そもそも勝ちとは?と思ったそこのあなた、まぁ細かいことはいいじゃないですか。

 

バトル3:船橋の鳩よけ要塞(ようさい)

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船橋市の入り口「下総中山」に勝利し、自信を取りもどすことができた本八幡。この勢いで、船橋市の本丸である「船橋駅」まで攻めあがろう。

しかしそこに待っていたのは、屋外のエスカレーターを鳩から徹底的にガードする「鳩よけ要塞(ようさい)」だった。

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まずはエントランスの案内板の上にあるトゲたちがお出迎え
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中に進むと、その側面や、
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天井のアーチまですき間なくトゲが敷きつめられている。
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もちろん、エスカレーターを昇りきった側もがっちりガード。

そしてひときわ目につくのが、この噴水のような形をしたもの。

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周りのトゲたちのような強い攻撃性は感じないが、少ない素材で確実に持ち場をブロックしている。こういう鳩よけもあるのかと、素直に感心してしまった。

そして何より、このエレガントな見ためは、要塞のインテリアとしても絶妙に調和している。

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でも下から見ると、取って食われそうな不気味さ。

だんだん「建もの探訪」のような紹介になってきてしまったが、無数のトゲと噴水鳩よけを組みあわせて、上から下までとにかくスキがない。まさに要塞だ。

 そのスキのなさ、動画でもご覧ください。

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あまりのスキのなさに、エスカレーターに侵入するチャンスを太古から狙っていた鳩たちは石像になってしまっていた。

ここまでスキのないガードを固めるには、相当なチームワークが必要なはず。

この船橋のトゲたちも、きっと最初は1本1本それぞれが町の荒くれ者として争いあっていたのだろう。そこに「伝説の総長」と呼ばれるような人が現れて、1つのチームにまとめあげたのだ。

個々でツッパリあっている本八幡では、この結束力には遠くおよばない。完敗だ。

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ここで何か「伝説の総長」みたいなものを見つけられたらきれいにオチがつくぞーと思って探したけど、見つけられたのは「伝説のすた丼」だけ。鳩よけだけでなく僕も完敗だ。

 

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もっと強い奴を知りてぇんだ

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本八幡の鳩よけたちの強さを証明してあげようと思い近くの町に乗りこんだが、結局勝てたのは下総中山だけ。市川市も船橋市も制することはできなかった。

「俺たち最強っしょ!」とイキがっていた本八幡の鳩よけたちだったが、しょせんは井の中の蛙だったということが分かってしまった。余計なことしてごめん。

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四天王とか言ってたの恥ずかしいね・・

しかしこの時、僕の心には火がついていた。もはや勝ちとか負けではなく、もっと強い奴が見たい、最凶の鳩よけが見たい。そんな「凶暴鳩よけハイ」になっていたのだ。

きっと東京には、強い奴らがゴロゴロいるに違いない。そいつらと闘いに、東京に殴りこみにいこう。

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この江戸川の向こうにいるんだろ?もっとヤバい奴。

そう決意した矢先、1つのウワサを聞きつけた。
山手線の駒込駅に、とんでもない奴らがいるらしい。

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バイク盗むのは悪いから、電車で行くぜ!

ラストバトル:駒込の「鳩よけの長城」

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ウワサを聞きつけてやってきた駒込。

大都会東京ということもあり、駅前からメンチをきられまくるかと思っていたが、降りてみると拍子抜けするぐらいにのんびりとした雰囲気だ。

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しかし一歩路地裏に入ると、
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ギャー!!

待っていたのは、これまで見たことがない鋭さの鳩よけたち。
君たちは「不良」とか「ヤンキー」のカテゴリーにはおさまらないんじゃないかな?と感じるような、圧倒的な本物感がある凶暴さだ。

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ハサミとかナイフが刃先むき出しで並んでいるよう。気安く触わると本当に手を切りそう。
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この鳩よけは、山手線の線路を守っていた。なるほど、バックに強力な資金源がいるのか。

そして何よりヤバいのは、この最恐の鳩よけ、見わたすかぎり延々とつづいているのだ。

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「おい、お前ここ通っていけよ」と誘われて中に。地獄の花道だ・・・
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途中でグリーンからシルバーにチームが変わった。なるほど、カラーギャングだったのか。
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鳩もたまらず逃げていく
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この日の気温は33℃。ちょっともう勘弁してもらってもいいですか・・・

結局この鳩よけは、駒込駅を中心に、東は田端の近く、西は巣鴨をこえたところまで、2km近くにわたって延びていた。

この長さ、もはや「鳩よけの長城」だ。こっちはタイマン(1対1)のつもりで乗りこんだのに、軍勢レベルの尖ったナイフたちに袋だたきにされてしまった。

でもこれこそが、「凶暴鳩よけハイ」になっていた僕が求めていたもの。お前たちが最強の鳩よけだ!

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ようやくたどり着いた田端駅側の終点。鉄条網と赤いペンキが怖い。

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求む!最強の挑戦者

たくさんの鳩よけを見ることで、いろいろな凶暴さがあることが分かって面白かった。

こういう記事を書くと、生活の楽しみが増えるからいい。いま最強の鳩よけは、最後に紹介した「駒込の長城」。これからも強そうな鳩よけを見つけては、勝手に戦わせて最強を更新していきたい。

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本八幡の駐輪場の鳩よけは、触ってみると意外とプニプニしていた。見た目は恐いけど、中身はやさしい奴なんです。


【イラスト協力】
七星 海咲
 

 

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