熊本で散髪紀行を書きたかった
年が明けてはじめての休日、散髪に行くことにした。私はもっぱら熊本の町中で髪を切っている。ラーメンと散髪は都会に限るからだ。
住んでいる宮崎から散髪屋までは80kmの距離があり、移動とカットの時間を合わせると5時間ほどかかる。ちょっとした遠足である。
散髪が遠足なので「往復160キロメートル散髪紀行」なる記事を書こうと決意して今回は家を出た。
ばってん、ほとんどが車移動やけん書くことがなかったたい!(雰囲気だけの熊本弁)
困り果ててSNSで熊本ネタを募集したところ、心優しい方々がいろいろとメッセージを送ってくれた。揚げ豚足、ラーメン、くまモン探し……そのなかで最もときめいたのが「ちょぼ焼き」なる食べ物である。
ちょぼ焼き。名前がかわいい。調べてみると見た目も素朴でかわいい。味の想像がつきそうでつかないミステリアスなところもかわいい。これは食べに行くしかない。行きます。かわいいは日本が誇る文化なので。
ちょぼ焼きを求めて市場へ
ちょぼ焼きがなんなのか分かっていないまま、有名店があるという市場に向かった。調べれば何でも分かる現代で、分からないことを分からないままにする快感。確定申告とか年末調整とかも正直よくわかってません。
この市場は熊本の町からすこし外れた場所にあり、競り場と商店街が一体になっているそうだ。いま調べたのをそのまま書いた。
訪れたのは日曜の夕方というタイミングで店はほとんど閉まっていたが、盛りがっている時間帯に来ればかなり活気がありそうだ(何も言ってない)。
ほどほどにキョロキョロしながら、ちょぼ焼きの店を目指す。
市場はあまり人がいなくて歩きやすい。猫がいる。からし蓮根屋さんがある。とある小さな店舗の前に店主のものとおぼしき高級車が停まっている。
無事にちょぼ焼きの店、末広にたどり着いた。営業時間や定休日も調べてなかったので赤いのぼりにホッとする。いざ入店。
店内のカウンターがキレイなので特筆します
あまり広くない店内にはカウンター席だけがいくつかあった。いかにもな下町感があって好みだ。それはさておき、このカウンターというのがびっくりするくらい綺麗なので特筆します。
特筆するぞ!
せーの、カウンターが綺麗で~す!!
テーブルに感動していると、店員さんが「マヨネーズ使いますか?置いておきますね」と声をかけてくれた。ありがとうございます。粉もんでマヨネーズを使わなかったことがないです。
これは想像に過ぎないが、特別に頼まれないときはマヨネーズをちゃんと冷蔵庫に入れているということなのではないか。QSCがちゃんとしすぎていて嬉しい。
アベックちょぼを注文
ちょぼ焼きはお好み焼きのように様々な中身を選べるようだ。メニュー表をみるとなんのかんの書いてある。一人前はだいたい600円くらい。
取捨選択をするのがどうも困難に思われたので、主要な具材が全部入っているアベックちょぼを注文した。二人前で1,000円税込みとはなかなかのコスパである。「パ」の部分はまだどうかわかんないけど。
ちょぼ焼きを食べる
ちょぼ焼きは壁を挟んだ調理場で焼いてくれるようだ。服に油の臭いがつかないのでこれも嬉しい。気づけばさっきから些細なことに幸せを見出している。
ほどなくしてちょぼ焼きがやってきた。
なるほど、熊本のちょぼ焼きとは薄い生地で肉や野菜などの具を包んだものらしい。ザ・粉もん感のある見た目なのにソースがかかっていないのは珍しい。
ちなみに、大阪にもちょぼ焼きという料理があるそうだ。当サイトの過去記事によると素朴なお好み焼きのような味がするとのこと。
さて、熊本のちょぼ焼きものはどんなものだろうか。食べてみよう。ソースがかかってないのがどうしても気になってしまうが……。
だ、だめだ!関西出身の私が今までに食べたどの粉もんよりうまい!困る!
金持ちの家の上品なお好み焼き
まず生地の話をしよう。薄く焼き上げられていて、食感はクレープのようにモチモチ。生地も具のひとつであるかのような噛み心地のよさがある。
関西のお好みと比べるとダシの味はそこまで強くないしソースもかかっていないのだが、まったく薄味じゃない。はっきりとした醤油味で、濃い味が好きな自分にもちょうどいい味付けである。
具がこれまたよくて、まずキャベツやもやしのザクザク食感がたまらない。薄い生地はすぐ焼き上がるので、野菜の火の通し具合もそれに合わせて調整しやすいのかもしれない。食べているときは気づかなかったが、ちょぼ焼きにはたくあんも入るそうだ。
イカやエビなんかはプリップリ。生地の主張がおとなしめなぶん、具の食感やうまさが際立つ。どこを食べても肉や魚介類が歯に当たって贅沢感すらある。
そうだ。熊本のちょぼ焼きには、いかにも粉食ってます!的な粉もん特有の悲壮感がないのだ。金持ちの家のお好み焼きはこんなものなのかもしれない。
ソースのクドさがないからずっとうまいのだ。夢中で食べまくった。食べ終わりそうな頃に後悔した。三人前にすればよかった。ソウルフードとして持ち上げられているものがこんなめちゃくちゃうまいことなんてあるんだ。
というわけで、熊本のちょぼ焼きレポートでした。私はひねくれ者だから真っ直ぐになにかを勧めることはあまりしないけど、これは食べといたほうがいいですよ。