特集 2025年1月7日

熊本のソウルフード「ちょぼ焼き」を食べる

熊本に「ちょぼ焼き」というソウルフードがあると聞いた。

いわゆる粉もんの一種らしいのだが、検索して出てきたものはソースもかかっておらずのぺーっとしている。そんな素朴でむき出しな姿にキュンときた。よっしゃ、食いに行こう。

1993年生まれ。京都市伏見区出身、宮崎県在住。天性の分からず屋で分かられず屋。ボードゲームと坂口安吾をこよなく愛している。

前の記事:高千穂峡のボートを素直に楽しむ

> 個人サイト もがき続けて100年生き抜くブログ

熊本で散髪紀行を書きたかった

年が明けてはじめての休日、散髪に行くことにした。私はもっぱら熊本の町中で髪を切っている。ラーメンと散髪は都会に限るからだ。

住んでいる宮崎から散髪屋までは80kmの距離があり、移動とカットの時間を合わせると5時間ほどかかる。ちょっとした遠足である。

散髪が遠足なので「往復160キロメートル散髪紀行」なる記事を書こうと決意して今回は家を出た。

image10.jpg
記事になったらいいなーと思いながら車を走らせているところ

ばってん、ほとんどが車移動やけん書くことがなかったたい!(雰囲気だけの熊本弁)

image11.png
ついぞ何も起こらずサッパリだけしたところ

困り果ててSNSで熊本ネタを募集したところ、心優しい方々がいろいろとメッセージを送ってくれた。揚げ豚足、ラーメン、くまモン探し……そのなかで最もときめいたのが「ちょぼ焼き」なる食べ物である。

ちょぼ焼き。名前がかわいい。調べてみると見た目も素朴でかわいい。味の想像がつきそうでつかないミステリアスなところもかわいい。これは食べに行くしかない。行きます。かわいいは日本が誇る文化なので。

いったん広告です

ちょぼ焼きを求めて市場へ

ちょぼ焼きがなんなのか分かっていないまま、有名店があるという市場に向かった。調べれば何でも分かる現代で、分からないことを分からないままにする快感。確定申告とか年末調整とかも正直よくわかってません。

image17.jpg
熊本の町から少し外れた場所にある田崎市場
image23.jpg
タイミングのせいか店はほとんど閉まっている

この市場は熊本の町からすこし外れた場所にあり、競り場と商店街が一体になっているそうだ。いま調べたのをそのまま書いた。

訪れたのは日曜の夕方というタイミングで店はほとんど閉まっていたが、盛りがっている時間帯に来ればかなり活気がありそうだ(何も言ってない)。

image16.jpg
世の中をよくしたいという気持ちがひしひしと伝わってくる、薬局の店先
蟹の存在そのものを広報するポスター
image29.jpg
市場といえばネコ!

ほどほどにキョロキョロしながら、ちょぼ焼きの店を目指す。

市場はあまり人がいなくて歩きやすい。猫がいる。からし蓮根屋さんがある。とある小さな店舗の前に店主のものとおぼしき高級車が停まっている。

image19.jpg
というわけで、目当ての店につきました!
image21.jpg
ちゃんと開いていて命拾い!

無事にちょぼ焼きの店、末広にたどり着いた。営業時間や定休日も調べてなかったので赤いのぼりにホッとする。いざ入店。

いったん広告です

店内のカウンターがキレイなので特筆します

あまり広くない店内にはカウンター席だけがいくつかあった。いかにもな下町感があって好みだ。それはさておき、このカウンターというのがびっくりするくらい綺麗なので特筆します。

特筆するぞ!

せーの、カウンターが綺麗で~す!!

image12.jpg
昔ながらの粉もん店のカウンターがこんなにキレイなことあるのか

テーブルに感動していると、店員さんが「マヨネーズ使いますか?置いておきますね」と声をかけてくれた。ありがとうございます。粉もんでマヨネーズを使わなかったことがないです。

これは想像に過ぎないが、特別に頼まれないときはマヨネーズをちゃんと冷蔵庫に入れているということなのではないか。QSCがちゃんとしすぎていて嬉しい。

image27.jpg
マヨネーズだいすき
image3.jpg
マヨネーズだいすき!はあはあ!の目
いったん広告です

アベックちょぼを注文

ちょぼ焼きはお好み焼きのように様々な中身を選べるようだ。メニュー表をみるとなんのかんの書いてある。一人前はだいたい600円くらい。

image6.jpg
番付表風と言い切れないデザインのメニュー表
image5.jpg
アベックでいいかな

取捨選択をするのがどうも困難に思われたので、主要な具材が全部入っているアベックちょぼを注文した。二人前で1,000円税込みとはなかなかのコスパである。「パ」の部分はまだどうかわかんないけど。

誕生月は異様なほどの値引き率(あとから気づいて失敗!)
いったん広告です

ちょぼ焼きを食べる

ちょぼ焼きは壁を挟んだ調理場で焼いてくれるようだ。服に油の臭いがつかないのでこれも嬉しい。気づけばさっきから些細なことに幸せを見出している。

ほどなくしてちょぼ焼きがやってきた。

image15.jpg
これが熊本の「ちょぼ焼き」だ!
image24.jpg
ほら!結構でかいよ!一人で食う!

なるほど、熊本のちょぼ焼きとは薄い生地で肉や野菜などの具を包んだものらしい。ザ・粉もん感のある見た目なのにソースがかかっていないのは珍しい。

ちなみに、大阪にもちょぼ焼きという料理があるそうだ。当サイトの過去記事によると素朴なお好み焼きのような味がするとのこと。

image8.jpg
安藤さんの記事「たこ焼きの元祖「ちょぼ焼き」は四角い」より

さて、熊本のちょぼ焼きものはどんなものだろうか。食べてみよう。ソースがかかってないのがどうしても気になってしまうが……。

image14.jpg
一口で食べないとバラけそう
image28.jpg
一口のデカさならwebライター界随一です
image7.jpg
あっ…!
image9.jpg
うめえ!

だ、だめだ!関西出身の私が今までに食べたどの粉もんよりうまい!困る!

いったん広告です

金持ちの家の上品なお好み焼き

まず生地の話をしよう。薄く焼き上げられていて、食感はクレープのようにモチモチ。生地も具のひとつであるかのような噛み心地のよさがある。

関西のお好みと比べるとダシの味はそこまで強くないしソースもかかっていないのだが、まったく薄味じゃない。はっきりとした醤油味で、濃い味が好きな自分にもちょうどいい味付けである。

image20.jpg
皮を剥いだ中身

具がこれまたよくて、まずキャベツやもやしのザクザク食感がたまらない。薄い生地はすぐ焼き上がるので、野菜の火の通し具合もそれに合わせて調整しやすいのかもしれない。食べているときは気づかなかったが、ちょぼ焼きにはたくあんも入るそうだ。

image25.jpg
ちゃんと食感を感じるエビ。ちゃんとエビとしてうまい

イカやエビなんかはプリップリ。生地の主張がおとなしめなぶん、具の食感やうまさが際立つ。どこを食べても肉や魚介類が歯に当たって贅沢感すらある。

そうだ。熊本のちょぼ焼きには、いかにも粉食ってます!的な粉もん特有の悲壮感がないのだ。金持ちの家のお好み焼きはこんなものなのかもしれない。

image13.jpg
半分はマヨネーズや生姜でジャンクに
image22.jpg
こんなのさあ
image18.jpg
うまいに決まってんだろ!やめさせてもらうわ!

ソースのクドさがないからずっとうまいのだ。夢中で食べまくった。食べ終わりそうな頃に後悔した。三人前にすればよかった。ソウルフードとして持ち上げられているものがこんなめちゃくちゃうまいことなんてあるんだ。

というわけで、熊本のちょぼ焼きレポートでした。私はひねくれ者だから真っ直ぐになにかを勧めることはあまりしないけど、これは食べといたほうがいいですよ。

image4.jpg
次はギャル曽根スペシャルちょぼに挑戦するぞ!!
▽デイリーポータルZトップへ
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ