方向性がみえてきた?
集めはするものの、いったいどうすればいいのか持て余していた、自治体のゴミ袋。今回こうやってみんなで持って鑑賞することによって、なにをどうすればよいかぼんやりみえてきたかもしれない。
まずは、現状手持ちのゴミ袋については、データベース化をすすめたいとおもう。
こんなことをしてなにか役に立つことがあるだろうか、という不安はあった。
数年前から、遠出するたびに自治体指定のゴミ袋を、お土産代わりに買っていたのだ。
ただ、買ったゴミ袋をどうすればよいのか、もてあましていた。
こんかい、そんなゴミ袋を鑑賞する「自治体ゴミ袋鑑賞会」をひらいてみた。
まず「わざわざゴミ袋なんか買ってどうすんの?」というところからご説明もうしあげたい。
旅に行ったときのお土産として売られているもの、例えばご当地のお菓子や食べ物、または民芸品といったものは、たいてい東京でもその県のアンテナショップに行けば手に入るし、なんならネット通販で、日本全国から買うことができる。
そんなどこでも入手できる土産物ではなく、必ず、その旅先でしか手に入らず、ご当地ならではのもので、値段も高くない、絶対的な土産物、すなわち絶対土産とはなにか考えたところ、自治体のゴミ袋がそうじゃないか? と思い至った。
ゴミ収集を有料で行っている自治体は、オリジナルのゴミ袋を作るので、ゴミ袋は、おのずとその自治体の数だけ存在することになる。
そのうえ、東京のアンテナショップでは売っていないし、ネット通販も公式にしているところはたぶんない。(フリマアプリなどで売買されている例は除く)
そう思って以来、数年前から旅行するたびに、お土産のひとつとして自治体のゴミ袋を買って帰っている。
ぼくの周りで、こんなこと(自治体のゴミ袋を集める)をしている人は、さすがに居ないだろうと思っていたところ、偶然にもデイリーポータルZライターの伊藤さんも自治体のゴミ袋を集めているということがわかった。偶然というか、必然かもしれないが。
そこで、互いにゴミ袋を持ち寄り、いちどよく鑑賞してみようということになった。
べつやく「うわー、いっぱいあるけど、沖縄多いな……」
伊藤「ハブ探しに行ったついでに買うんでこんな量になっちゃうんです」
べつやく「なにこれかわいい、ゴミ袋が浮いてるよ」
伊藤「これ、浦添市の燃えるごみですね、燃えるごみの書体も良くないですか?」
西村「毛筆は珍しいですよね、ゴシックか丸ゴシックが多いですけど……」
ゴミ袋にゴミ袋のキャラクター。焼肉屋や肉屋の看板にニッコリ笑った牛や豚の絵が描いてあるのを、ライターの大山さんは共食いキャラと命名していたけれど、ゴミ袋にゴミ自体がキャラクターとして描いてあるのもそれに近いものがある。
ゴミ自体がキャラクターになったものは他の自治体でもいくつかあったが、概ね「ごみ減量キャラクター」という名前でゴミ袋に登場している。
林「このゴミ袋のキャラ(グリーンちゃん)、ゴミの減量やリサイクルにご協力下さいってこと、思ってるだけで言ってないですね」
べつやく「言ってないね、テレパシーかな」
林「奥ゆかしいのかもしれないね」
べつやく「俺みたいなゴミごときが言ってもしょうがないって思ってるかも」
西村「そこまで卑屈にならなくてもいいんじゃないかな、おじさんそう思うな」
べつやく「でも、ちゃんと喋ってるのもいるね、象が喋ってる」
伊藤「那覇市のやつですね」
那覇市のゴミ袋は、もやさないと、もやすで、火の表情を変えるなど、デザインの芸がなかなか細かい。
べつやく「那覇市のゴミ袋は『メガネセール中は捨てちゃえ』って具体的に言ってるね」
西村「具体的すぎる」
伊藤「ゴミ収集場の看板ですけど、川崎市のもっとひどいのがあって「島根一泊二日」って書いてあるのが捨ててあるんですよ」
西村「例えだというのがわかっていても意図を勘ぐってしまう……」
林「斜里町のゴミの絵は、なんか貸本マンガみたいなんだよね、石川球太とか松本零士っぽい」
べつやく「でもまあ、松本零士先生の方が絵はうまいけどね……パンの耳は残してるのね」
林「北海道の人はパンの耳は捨てちゃうのかな」
西村「そういうわけではないと思いますよ、たまたまだと思いますけど」
べつやく「骨ってのもすごいね」
西村「大腿骨ですもんね。熊にやられたのかな、北海道らしさですよね」
べつやく「これはちょっと悲しいね」
伊藤「ぬいぐるみがボコボコになってる」
べつやく「ボールにもちょっと穴があいてて、悲しい」
伊藤「でも、こっちは全然壊れてない」
西村「これも別の意味で悲しいですね、壊れてないのに捨てられるファクシミリ」
べつやく「時代だね……」
西村「さっき、ごみ減量キャラクターけっこうありましたけど、鳥取のやつはもう、普通にゆるキャラが描いてありますね」
西村「ナシータとかニータ、二人合わせてイナバーズです」
全員「ほう……」
西村「南三陸町はどうですかこれ」
べつやく「これはかわいいね、これファンシー絵みやげじゃない?」
西村「そこはかとなくただよう80年代」
べつやく「ゴミ袋のデザインするときに、役所にいた50歳ぐらいの絵の得意な職員が描きましたみたいな経緯かな」
西村「職員がデザインしてるのかな……わからないですが」
西村「五所川原市の立佞武多(たちねぶた)ですね、これもある意味ゆるキャラですけども、今はゴミ袋のデザインが代わってしまって、“ごしょりん”という、頭がりんごというマジもんのゆるキャラが描いてあるみたいですね」
伊藤「下剋上ですね」
西村「うかうかしているとあっという間にブスリとやられますから、ゆるキャラ業界は」
べつやく「さっきから気になってたんだけど、南城市のゴミ袋、緑色のほうが「なんじぃ」っていうキャラクターで、こっちの黄色い方がなんじぃの飼ってるペットの「ヤッギー」なんだね」
西村「あぁー、そういう設定があるんだ、ヤギを飼っている理由を想像すると悲しくなりますけども」
西村「ゴミ袋って、何を買えばいいか悩みませんか?」
伊藤「あ、わかる」
北向「どういうことですか?」
西村「ゴミ袋、もえるゴミ、もえないゴミだけじゃなくて、枝入れる専用のゴミ袋とか、金属ゴミとか、種類がやたらあって、全部買うべきか、どれかひとつに絞ったほうがいいのか……悩むんですよ」
伊藤「本当は、何十枚もいらないんですけど、1枚単位じゃ売ってないから、仕方なく買うんです。でも、全部買うとけっこうかさばるんですよ」
西村「あと、重いですよね……だから、いちばん安いやつひとつだけ買っておしまいにすることが多くて、コレクションとしては不完全なんじゃないかという葛藤は常にありますね」
べつやく「もし、ゴミ袋を集める趣味がもっと一般化すれば「俺はもえるごみ専門」みたいな、鉄道趣味に乗り鉄、撮り鉄いろいろあるみたいな感じになるんじゃない?」
西村「なればいいですけどね、たぶんそんな未来はこないでしょうね……」
伊藤「沖縄で目的地に向かって車運転してると、沖縄ってじつはけっこう広くて、市町村が細かく別れているんですね、で、車で走ってて、別の自治体に入ったら、見つけたコンビニに止まって入って、ゴミ袋探して買うんです」
伊藤「これが意外と面倒くさい。車停めて、エンジン切って、鍵かけて、コンビニ入って、ゴミ袋探して、あったらあったで、もう何回も買ってるから「あるのかよ」ってうんざりするんですよ……」
伊藤「ぼくたちは旅行者だから、こういうのにご当地感を感じるけれども、例えば伊江村のゴミ袋」
伊藤「伊江村って、リリーフィールド公園とか、ゆりまつりとかやってるから、やっぱりユリの花が大きく描いてあって」
伊藤「で、ゆりの下に見えるのが伊江島のタッチューっていう山なんですよ、伊江島を横から見ると本当にそんな形してるんです、でも、こういうデザインって島の外向けじゃないですか。なんでこんな凝ったデザインしてるんだろうかと思って」
べつやく「でも、地元の人はそこにアイデンティティを感じているのかもしれないよね」
伊藤「ゴミ袋に?」
藤原(麻里菜)「いちおう、環境を守りましょうというメッセージを込めて伊江島の自然を描いたのでは?」
伊藤「そうか……、その点、富山のゴミ袋は媚びてないんですよ」
西村「あー、これは……」
伊藤「事件性を感じるというか……」
べつやく「これ、腕の一本二本入っていても別に不思議とは思わないもんね」
藤原「ここにあるゴミ袋ってたいてい、キャラクターを入れたりして、あかるく、楽しい雰囲気を出そうという方向なのに、これだけは全く逆のベクトルですね」
べつやく「情報が少なすぎるのがこわいよね、なんか無言感あるよね」
西村「あー、あのあれですよ、三洋電機の回収になった石油ファンヒーターのCM、あの怖さありません?」
伊藤「あぁー、あるね」
西村「外袋はけっこうかわいいんですよ」
西村「でも、中身をとりだすと……これにまさる怖さはないですね。今日見てきた中で、いちばん良いのはどれですかね……富山のこれですかね」
べつやく「そうだね」
西村「自治体のゴミ袋を見ていって、おもしろいとか、たのしいというのがあるのはなんとなく想像してたけど、こわいというベクトルに振れているやつがあるとは思わなかったので、この「富山地域広域圏指定ごみ袋」が優勝、グランプリということで、特に何もないですけど」
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