「相撲」と「スモウ」
翻訳小説を読んでいるときに「まるでスモウをとっているような」という一節に出会ったことがある。日本語訳なわけだから「相撲」と書いてもいいのに、あえて「スモウ」にすることで「西洋人によって曲解された日本」感を出しているのだ。
スモウ・シトラスというネーミングによってまんまと同じフィルターをかけられたらしく、デコポンがエキゾチックな食べ物に見えてきた今日この頃である。
甘さと食べやすさで人気の柑橘、デコポン。実は海外でも人気があるらしく、アメリカではその形からスモウ・シトラス(SUMO CITRUS)という名前で売られているという。
なかなかしゃれた名前である。
言われてみれば、たしかにお相撲さんに見えなくもない。
ということは、まわしや髷をつけたら似合うんではなかろうか。
デコポンとよく似た形の柑橘に「不知火(しらぬい)」というのがある。味もとてもよく似ているから「ほぼ同じものなのかな?」と思っていたのだが、調べたところなんと「ほぼ」どころかまったく同じものだそうである。
「デコポン」はJA熊本果実連が所有する商標なので、JA以外から出荷される場合は品種名の「不知火」を名乗るのだという。果物の世界でも大人の事情で名前が変わったりすることがあるのだな。
果肉が詰まった本体はまん丸で、へたのところが「凸(デコ)!ポン!」と盛り上がっている。名前の由来である。
日本人からするとまさに名が体を表すドンピシャなネーミングだが、アメリカ人には「デコ」も「ポン」もオノマトペとしてピンとこない。
代わりに「OH、このどっしりとした体にちょこんと頭がのっかった体形、まるでスモウ・レスラーでーす!」という、安直だがなかなか悪くない発想で、スモウ・シトラスとして売られているのだ。
デコポンをお相撲さんに仕立て上げるための、まわしと髷(のついたかつら)を作る。
まわしは形が単純なので割と簡単に完成させることができた。かつらは、最初デコポンの凸の部分にぴったりフィットするように作ろうかとも思ったのだが、実際にやってみるとこれがなかなか難しいので、だいたいの形を作って両面テープで貼り付けるよう路線変更。
さあ、似合うかな?
一人では相撲は取れなかろう。幸いデコポンは2つある。
ということで、黒いまわしを作ってもう一つのデコポンに装着してみた。
「東、ポンの富士~。西、デコ丸~。」
テンテンテテン・テンテンテテテテン
目論見通りうまくお相撲さんになったことに気をよくしてさらにいろいろ作ってみることに。
次は土俵入りするときにつける華美な化粧まわしと、横綱がつける紙垂(しで)だ。
ちなみに筆者は「化粧まわし」と「紙垂」のことは、物としては知っていても名前はわからなかったため、「相撲 派手 前掛け」「相撲 神社の幤みたいなやつ」などとググって調べながら書いている。
これに限らず、相撲については「ちゃんとは知らないけれどなんとなくのイメージは持っている」ことが多くて、かつてテレビでよく相撲を見ていた祖母の影響を如実に感じるのだった。
デコポン力士が本当にいたらどうだろう。
彼はずっしりとして重心が低く、おき上がりこぼしみたいに突いても突いても戻ってくるから強いだろうか?案外転がりやすくて簡単に押し出されてしまうかもしれない。
いずれにせよ、取組の場には柑橘の良い香りがたちこめるだろう。
ところで、撮影が終わって記事の文章を書きながらスモウ・シトラスについて調べていたら気になる記述を見つけた。
”てっぺんの出っ張っている部分がお相撲さんのまげのように見えることにちなんでスモウ・シトラス(SUMO CITRUS)という名前で.......”
え、ていうことは、
なんだかとんでもない勘違いをしながら最後まで製作を突っ走ってしまった気もするが、まあかわいいものができたのでよしということで。
翻訳小説を読んでいるときに「まるでスモウをとっているような」という一節に出会ったことがある。日本語訳なわけだから「相撲」と書いてもいいのに、あえて「スモウ」にすることで「西洋人によって曲解された日本」感を出しているのだ。
スモウ・シトラスというネーミングによってまんまと同じフィルターをかけられたらしく、デコポンがエキゾチックな食べ物に見えてきた今日この頃である。
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