東南アジアはビルも木ももりもり
お盆休みが終わろうとしているが7月の後半にマレーシアに行ってきた。タイの下にあってシンガポールの左上にある東南アジアの国だ。
首都であるクアラルンプールに着くと高層ビルと植生の元気さに圧倒される。
ただいま経済発展中の国
木もビルももりもりである。熱帯雨林気候の国であるし、経済も東南アジアの中では抜きん出てるそうで、近隣の国から出稼ぎに来たりするそう。とはいえ物価は日本の体感2分の1くらいなので旅行でも気兼ねなく過ごせた。
熱帯雨林気候は東京より涼しい
訪れたのは7月の後半、日中の気温は30℃を少し超えるくらいでマレーシアは東京よりも涼しかった。そしてこの温度が年中続くそうだ。
真夏に観光に来るのも真冬に行くのも暖かくて良さそうだけど、一年ずっと夏ってどんな感じなの? と思うが現地に暮らす弟は「衣替えしなくていいってこんなに楽なのかって思った」と言う。
衣替えよ、お前だったのか。私達の生活でけっこうな労力の割合をしめていたのは。
どこに行ってもシーリングファン
マレーシアでとにかくよく見たのがシーリングファン。軒先にテントを出して屋外で食べさせる飲食店が多いのだが、天井にシーリングファンがついている。もちろん住居や屋内にも多い。
室内の空気をかきまぜて一定にしてくれるものと思っていたが、体全体が風に包まれるような感じで気持ちがいい。30℃くらいの屋外だとテントのシーリングファンでもそこそこ快適だった。
ここより暑いんだから日本もどんどんシーリングファンつけてほしい。と思っていたのだが、天井の高さが違うのだろう。日本についてるとバレーボール選手あたりが巻き込まれて死ぬかもしれない。
英語がそこそこ通じる
マレー系が7割で中国系が2割。インド系が1割弱と多民族の国である。テレビでは英語のアニメが放送されていた。だからなのか流暢ではないにしろ英語を話せる人が多い。
11年ぶりの海外旅行に来てやっと思い出した。街に一人で出たときの不安さを。0.1の視力もない筆者がメガネをかけずに外に出たときの感覚に似た圧倒的な存在の弱さである。
私はバスの行き先も乗り方も分からない。街で一番弱い存在とも言える。そんな不安の沼に沈んでるときに、現地の人と英語が通じたときの喜び。通じた! 通じた! と飛び上がってしまいたいくらいの感動がある。
とはいえ、その「通じた!」とは、マクドナルドでマックナシレマッを頼んだときに「写真と違ってレッドソースがなかったんですけどあれは合ってたんですか」と尋ねて「あ、それね、サンバルっていうトッピング頼まないといけなかったのよ」と言われたときのことであった。
日本でそう言われた人が「通じた…! 通じた!」と感動してたらと考えると。外国に行くと本当にどうでもいいことで人は感動できるのだなと思う。
要素に次ぐ要素でごはんがおいしい
マレーシアは食べ物がおいしい。魚を発酵させたものがよく料理に入ってくるので、旨味が強いし醤油やかつお節がベースになってる日本人の口に合うのだと思う。
そこに肉もスパイスも甘いも辛いもどんどん入れる。しょっつるとココナッツミルクとチキンカツと青唐辛子を一緒に食べるような料理が多い。味がぶつかり合うのが好きなんだそうで、要素が過剰なのである。
なので、かは知らないが青いご飯がある。
青い食べ物は食欲がわかないので存在しないと聞いたことがあるのだが世界は広い。しっかりと存在した。ほんのりどころではなくブルーハワイくらい青い。
ご飯サラダという意味のナシクラブは野菜と混ぜてご飯を食べるものだそう。ここでは揚げ物にエビの匂いが強い発酵食品をかけココナッツ風味の煮物と混ぜて青いご飯を食べる。
エビがくさい、ココナッツ甘い、唐辛子鮮烈に辛い、などなど要素が多すぎてとっちらかって学級崩壊のような食べ物だから、青いのがどうとかもう気にならなくなってくる。
検索すると子どもの注意を引くために青くしたとか、お葬式の色から来ているという説もある。もうこの学級はすごいことになっている。
世界最大のミロ消費国
味は強くぶつかり合うのが良いのか唐辛子はしっかり辛いし甘いのはとことん甘い。マレーシアの砂糖の消費量は主要国で1位なんだそうだ。その分糖尿病の人も多くてメーカーには砂糖税というのがあるそう。
そんなマレーシアの国民飲料といえばミロ。なぜミロ。世界ちょうどいいウソ選手権があったら優勝しただろう、思いもよらない発想だ。
でも実際麦茶くらいの感覚でミロを見かける。ミロが世界で一番売れているのがマレーシアだそうだ。チョコレート風味の麦芽ドリンクであるミロも改めて味わうとしっかりと甘い。
お店で出すときはコンデンスミルクを入れて出すという話もある。映画『まぬけの殻』に出てきた斉木しげるは角砂糖にはちみつをかけて食べていた。でもそれはギャグとしてである。
人気がありすぎてミロにミロをかける「マイロダイナソー」というメニューが存在する。追い鰹つゆ的に言うなら追いミロである。
このマイロダイナソーを頼んでみた。追いミロの効果が伝わりづらかった。氷で薄まる分の補いであろうけど、すでにミロが溶け切ってるところに追加の粉はそんなには溶けないし、ストローに追いミロがまとわりつくのはあまり良い感触ではない。
うーん、と考えてみたのだが、これはもう縁起物なんじゃないか。「威勢がいい」「景気がいい」といった類のものなんじゃないか。いくらの上に金粉散らせておくみたいなことなんじゃないかといったん納得した。
だとするとミロを金扱いしていることになる。そんなにミロが好きなのか。と、腰を手に当てる体育教師のポーズになってしまう。
電車に乗ってもやしを食べに行く
ところで旅先では長い距離を電車で移動したい。「こういう景色が続く国なんだな」と感じたいのだ。調べてみたところイポーという比較的大きな地方都市が2時間くらいで行けるみたいだ。
イポーの名物はもやしだそう。そんな抜群にうまいもやしなんてあるのだろうか。もやし目当てに人は来るのか。実際に行ってみた(ので人は来るのだろう)。
もやしが太いと人がやってくる
もやしが名物。なんて地味なところを名物にしてくるのだ。ミロを国民的ドリンクにしたりセンスが独特すぎるな……と思っていたのだが、他の国にもあった。大鰐温泉ももやしが名物なのである。むしろ英語のbean sproutで検索すると大鰐温泉のほうが先に出てくる。
あっちはたしか細長くしっかりした存在感のもやしだったかと思うが、イポーのもやしは太くて短かった。もちろんおいしいのだが、もやしはもやしであるし、実は味がしない別の理由があり……
「iPhone/Androidを探す」の準備を
というのももやしを食べているときに携帯電話をタクシーに忘れてきたことを思い出し青ざめていたのだった。
今やスマートフォンがあるから海外旅行も便利に過ごせるが、その分なくなったときのパニック度合いが大きい。名物であっても何の味もしない。
大慌てした末によく考えるとタブレットも持っていたのでWi-Fiのつながる場所で「androidを探す」を見るとあった。
Androidはイポー市内をぐるぐる移動している。弟に連絡してもらって落ち合えた。お礼をしたら多いからと観光に連れてってくれた。
マレーシアは親切な人が多かった。多民族国家だからか経済的に発展中だからか宗教的なものからか、みんな旅人に優しかった。
娘がお父さんこの携帯電話誰の?って言うんだよ。 と言うドライバーさんはパームヤシのプランテーションの会社で普段働いていて、夏休みの今ちょこっとこのUberみたいなGrabという配車サービスでバイトしてるそうだ。
同じく娘がいる筆者もここに生まれたらこういう暮らしをしていたのかなと考えたり。海外旅行が「自分探し」と言われるのはそういうところがあるからか。インド料理の何が好き?とか他愛のない話をしてお別れをした。
意味のない会話が大切に思えるのは10代20代なら好きな人との間であろうが、40代くらいになると遠い国に行かないと思えないのかもしれない。
さあ日本に帰るかとなったところでクアラルンプールの東京駅みたいな場所にYamazakiの文字のパン屋が。これはもしかしたら一度取材に行ってランチパック開発してる人たちが楽しそうだったからそれ以来ファンになったあのヤマザキじゃないんですか。
私達が旅に出る理由はだいたい100個くらいあると言われていますが……
コロナが流行って海外旅行がなくなったとき、それどころではありませんわ、あたくしそんな階層にいませんわ、と旅行代理店や航空会社に対して非常に冷たい態度をとってしまっていたことを謝りたい。どうもすみませんでした。
なぜ山崎パンがブーランジェリーを名乗ると私は写真を撮りまくって、冷やかしまくるのか。なぜミロにミロかけた瞬間にテンションがぶち上がってマイロダイナソー!と叫んで踊り狂ってしまうのか。色々なことを考えるきっかけが、彦麻呂の食う海鮮丼くらい輝き溢れてくる。
マレーシアのみなさん、日本から来た私にやさしくしていただいてありがとうございました。私もそうありたいと願い、近所の銭湯に来ていた外国人に話しかけてみました。そしたら「マッサージ機っていくらなの?」と聞かれたので「100円で3分じゃないかな」と答えました。あ、そう、と言ってた彼も実は感動して泣いてたのかもしれません。