アピールは大事 シミュレーションは駄目
日常におけるシミュレーションを見てきた。アピールの方法の一つとして地面を転がりまくるというのは、強いメッセージを放つことだけは分かっていただけただろうか。
もう泣いたり叫んだりするだけでは感情を伝えきれない!と思った際は、一度地面を転がりまくってみるのも一つの案かもしれない。
その際、嘘の気持ちで転がってるとサッカーと同じく反則行為とみなされてしまい、相手を白けた気持ちにさせてしまうので注意したい。
サッカーにおいて、相手がファウルしたことを装い、過剰に怪我のアピールする反則「シミュレーション」。
厳しい勝負の世界で絶対勝ちたいプロがおこなってしまうそれは、ときとして恥ずかしい芝居として滑稽にも映るのだが、ぼくの目には興味深く輝いて見えるのである。
そういったシミュレーションを、今日は練習しながら日常に活かしてみよう。
まずはサッカーのシミュレーションがどういうものか見てみよう。相手は木だ。木が反則行為をするはずがないので、なにか痛い思いをしてもそれは自分のせいである。
ボールもないのに何をやっているのか。でも、あれ……?
よく見てない隙に木に足元をすくわれた? バランスを崩してしまったぞ!
ころんだ! 大丈夫!?
木と競り合って、足を怪我をしてしまった藤原選手。かわいそう! PKさせてあげて!
いや、実は……。
どうだろうか。これがシミュレーションである。「当たり屋」という言葉が近いかもしれないことがよく分かる。
心の優しい読者、そして選手をよく見ていなかった審判は騙されてしまうかもしれない。
このテクニック、日常で活かすことはできないだろうか。
それではさっそく実践に……おや? お昼時なのでおにぎりを食べ始めた藤原選手。
おいしそうにおにぎりを頬張っている。具は何かな? 味噌かな?
ところが……?
突然口元を抑える藤原選手! おにぎりが腐っていたのか? それとも舌を噛んでしまったのか? 一体何が起こったというのだろうか。
もうだめだ! 水、水をちょうだい! 藤原選手かわいそう! 審判はおにぎりのファウルを取って!
なんだ演技だったのか。すこしでもかわいいと思ったぼくの気持ちを返してほしい。
おにぎりのファウルってなんだ。そんなものあるか。
これが日常におけるシミュレーションか。なにか恐ろしいものの片鱗を見た気がする。
おにぎりを食べ終えて一息ついた藤原選手。その手には缶コーヒーがある。
これはさっき自販機で買ってきた何の変哲もない缶コーヒーだから、なにも起こるはずないのだが……。
突如として口を抑える藤原選手。おもったより熱かった? え、でもまた演技なんじゃないの……?
タイム! 苦しそう、やっぱり苦しそうだよ!
背骨が折れたらふつう人は死んでしまう! 危ない! 審判は早く缶コーヒーにイエローカードを!
またしてもシミュレーションだったようだ。ほんの一瞬、だまされてしまった。だって苦しそうにしているから……。
藤原選手、彼は何を伝えたかったのか。その意味について問い続けていかないと行けないかもしれない。
もうだまされないぞ。強い意識を持って注視しよう。おや、今度はスポーツマンらしく縄跳びを始めたようだ。
思ったより気持ちよさそうに二重跳びを繰り返している。運動は体にいいらしい、その調子だぞ。
と、思っていたら……。
縄跳びの縄を激しく足首に打ち付けてしまった藤原選手。痛そうだね。大丈夫!?
ごろごろと硬い地面を転がっていて、かえってそれが痛そうだ。審判、縄にファウルを!
あれでも、これは自業自得? 縄にファウルはなし?
すべて演技であったようだ。また騙されてしまった。一瞬だけ「縄が足にあたったのは事実」ということが脳裏をよぎったから……。
ここまでサッカーでもないのに3度も騙されてしまった。シミュレーションは反スポーツ的行為であるが、スポーツでない場面での反スポーツ的行為をどう評価していいものか。はやい研究が望まれる。
そうこうしているうちに目薬をさし出した藤原選手。午後になって目が疲れちゃったのかな?
眺めていると、案の定、目を押さえ始めた!
目薬がハードなタイプでしみちゃったかな? 目がとても痛そう! 審判、私がこれから言おうとしてることわかるでしょ!?
絶対目に染みちゃったんだ! 目薬はファウル! サッカーのルールを詳しく知らないけどこれは確実にファウルのはず!
審判すみませんでした。またシミュレーションでした。
もう騙されないぞとつよい気持ちで挑んでいきたい。
おっと、今度はひざがかゆくなっちゃったようである。かゆみ止めを塗るみたいだ。
しかし、この語の展開は読めているぞ……。
膝が痛みだしたようだ。傷にかゆみ止めが染みちゃったんだ! かわいそう!
やっぱりこんなに転がるなんておかしい! これはかゆみ止めが悪い! 断言してもいいだろう!
ほら、やっぱりこんどこそ……。
ちくしょう! そんなことやっていて虚しくないのか!
こんどはメモを書き出した藤原選手。もうスポーツの要素はだいぶないからシミュレーションも不可能だろう。安心して眺めていられるだろうか。
うーん、やっぱりこれがどうシミュレーションにつながってくるかわからない。審判はほかのところを見ているといいよ。
どうやら様子がおかしい。ボールペンが書けないのか、力強くメモを書いている。これは……。
これはファウルか? ここまで転がっているということはボールペンはファウルなのでは? サッカーのことはわからないけど、ここまで転がってるということはファウルでしょ?
以上、日常におけるシミュレーションのようすでした。シミュレーションついて詳しくなれましたか?
日常におけるシミュレーションを見てきた。アピールの方法の一つとして地面を転がりまくるというのは、強いメッセージを放つことだけは分かっていただけただろうか。
もう泣いたり叫んだりするだけでは感情を伝えきれない!と思った際は、一度地面を転がりまくってみるのも一つの案かもしれない。
その際、嘘の気持ちで転がってるとサッカーと同じく反則行為とみなされてしまい、相手を白けた気持ちにさせてしまうので注意したい。
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