お食事処 三笠(那覇市)
まずはインターネットで "沖縄 すき焼き" でキーワード検索すると、ヒットする定番の大衆食堂、『お食事処 三笠』。沖縄の大衆食堂における謎メニューである「ちゃんぽん(野菜炒めの卵とじがご飯に載っている)」や「みそ汁(丼に入ったでかいみそ汁が出てくる)」などを一通り網羅しているので観光客にも人気のお店。
以前は国道沿いにあったのだが、2016年12月に2本ほど裏通りにあたる現在の場所に移転している。
さて、こちらが三笠のすき焼き 700円。
すき焼きもライスも盛り付けられているのはなにやら洋風の平皿。そしてすき焼きの皿に添えられているのはスプーン(もちろんテーブルに割り箸も置かれている)。一軒目にして、この違和感はどうだろうか。洋食扱いなのだろうか。ちなみにライスは半分で!とお願いしてこの量だった。
具材は牛肉、キャベツ、レタス、たまねぎ、春雨、豆腐、生卵。
調べてみるとすき焼きにキャベツを入れるというレシピも存在するらしいのだが、キャベツとレタスのダブル使いというのは珍しいかもしれない。
この写真では豆腐は隠れてしまっているのだが、野菜の下に大きめのものが隠れていた。沖縄で「豆腐」といえば何も断りが無い場合しっかりとした食感の島豆腐が出てくるのだが(豆腐の作り方も本土とは少し行程が異なる)、このすき焼きに入っていた豆腐はきめ細かくぷるぷるとやわらかい感じだったので島豆腐では無いのかもしれない。
全体的に甘辛い味付けだが、野菜のだしがしっかりと出ているので意外とあっさりとしている。春雨がどんどん汁気をすって膨らんでいくので、最初にやっつけておくと攻略しやすいかもしれない。
そして三笠の名物として有名なのがこちらのバター(マーガリン)。カウンターに置いてあり、自由に客が取って使うことができる。
このバターは沖縄の大衆食堂でたまにあるのだが、ご飯に乗せてバターライスにして食べる用のトッピング。今回はすき焼きにイン。汁にまろやかな甘さがプラスされて、身体に危険を感じる美味しさだった。
ゆるキャラ発見
だるま屋(西原町)
続く二店舗目は西原町にある『だるま屋』西原店。県内には2店舗ある沖縄そばとカレーが有名な大衆食堂。
安くて早くてボリューム満点という三拍子が揃った店で昼時には駐車場から車が溢れ出るほどの人気店。
だるま屋のすき焼き定食 600円。
汁物代わりのミニ沖縄そばまでついてこのお値段はすごい。彩り、盛り付けもなんだか美しさを感じる。
具材は牛肉、キャベツ、レタス、たまねぎ、長ネギ、春雨、豆腐、半熟卵。
本土のすき焼きには長ネギが欠かせないのだが、沖縄のすき焼きには長ネギが入っていることは希な気がする。ちなみに春菊が入っている事もほとんど無い。だいたいが青菜であるのも特長なのではないだろうか。
卵は完全な生卵ではなく、少し煮込んで白身が固まりかけの状態になっている。
ボリュームに圧倒されたが、しっかりめの甘辛いだしの味わいと野菜の甘み、牛肉の旨味、半熟卵のまろやかさが渾然一体となって美味。長ネギも少し食感を残したシャキシャキ具合でいい感じ。
だるま屋
沖縄県中頭郡西原町字我謝722
営業時間:10:00~22:00
TEL:098-945-5128
いちぎん食堂(那覇市)
続いては那覇市の久茂地川沿いにある「いちぎん食堂」。24時間営業で観光客から地元客まで幅広い客層が訪れる食堂。
酒を飲みながらアツい仕事の話をしているサラリーマンの横で、もくもくとステーキ定食を食べるおじいさん、その向こうは観光客が出てきた料理の写真を撮っている、みたいななんともいえない独特の雰囲気が漂っている。
メニューもかなり豊富。その中ですき焼きは630円。
いちぎん食堂のすきやき 630円。
具材はしらたき、タマネギ、青菜、えのき、椎茸、牛肉、そして豆腐は島豆腐。大きなかたまりが鎮座している。
沖縄のすき焼きはしらたきの代わりに春雨が入ることが多い気がするのだが、ここはきちんとしらたき。そして椎茸やえのきなど具材がしっかりしている気がする。
味付けも割とあっさり目の味付けが多い沖縄すき焼きの中では、ここのすき焼きは比較的しっかりと味付けられている印象。青菜も異様にシャキシャキしているのだが、なにか別の野菜だった可能性も否定できない。
付け合わせで付いてくるスープが、中華風の卵スープで食べていると中華料理なのか日本料理なのかなんだかよく分からなくなってくる。
いちぎん食堂
沖縄県那覇市久茂地2-12-3
24時間営業
TEL:098-868-1558
うちなー食堂 コザ飯(沖縄市)
沖縄市の美里にある「うちなー食堂 コザ飯」。前は単独店舗があったようだが、現在は黒猫屋という居酒屋の店舗と同じ建物で昼のみ営業している模様である。
比較的新しめの食堂だが、ここのウリはかつてあった老舗の大衆食堂「サンドイッチシャープ」の味を再現したというすき焼き(「シャープ」は「ショップ」がなまったもの。沖縄の古い大衆食堂でたまに見る表記)。値段は700円でバターか生卵かどちらかを選ぶことができるシステム。
すき焼 700円
具材は春雨、青菜、島豆腐、牛肉だけのシンプルなすき焼き。
付け合わせはバターを選択したので生卵は無し。なぜかトレイにタバスコが付いてきたのだが、怖くて使えなかった。何かの間違いだと思いたい。
このすき焼き、皿の半分はほぼ春雨。味付けはかなり甘口に仕上がっている。
甘めの味付けで飽きが来るかと思いきや、バターライスに乗せるとものすごく美味しかった。そこまで計算された味付けなのかもしれない。
うちなー食堂コザ飯
沖縄県沖縄市美里仲原町1-12
11:00~15:00(L.O.14:30)
TEL:098-939-8913
丸長食堂(沖縄市)
沖縄市にある老舗の大衆食堂「丸長食堂」。24時間営業で、深夜でもたいてい1-2人は客がいる気がする地元の人にも愛されてそうな人気店。
すき焼 650円
入っている具材は白菜、青菜、島豆腐、牛肉、春雨。生卵は別添え。
写真には写っていないのだが、かいわれ大根が入ったみそ汁も付いてくる。
スープの味がしっかりと染みこんだ春雨が美味。肉が割と多めな印象である。そして、長丸食堂でもすき焼きを始めとした定食にはバター(マーガリン)が付いてくる。
沖縄ですき焼きを頼むと、すでにすき焼きに生卵が乗った状態で出てくることが多い。いつも卵を割るタイミングに悩むのだが別添えだと内地風に溶いた卵に具材を絡めて、みたいな食べ方もできるのでちょっと嬉しい。
丸長食堂
沖縄県沖縄市美里1-24-13
24時間営業、月曜定休
TEL:098-938-8902
以上、沖縄のすき焼はいかがだっただろうか。
さて、上記のすき焼きから沖縄のすき焼きの違和感を考えてみたい。まず目につくのはしらたきが一般的なすき焼きにおいて、春雨の使用率が高いこと。恐らく注文を受けてから一皿分ずつ作っているので味が染みこみにくいしらたきよりも、短時間で味が染みこむ春雨が使われているのではないかと思われる。
また、長ネギよりもタマネギがよく使われているのと、青菜の使用率が高いのも沖縄のすき焼きの特徴だと言えると思う。沖縄では青菜はおでんにも入っている沖縄の料理の定番である。なんとなくだが使われている野菜を見ていくと、大衆食堂でよく使われている具材をすき焼き風に煮込んだだけな気もしてくる。
まだまだ沖縄にはすき焼きを提供している大衆食堂が沢山ある。食べ歩いてすき焼きを集めつつ、「沖縄のすき焼きとは何なのか」をもっと考えてみたいと思う。