「国民食」とも言われているけれど……。
カレーって、なんだか日本人に愛されすぎている気がしてならないのです。かくいうわたしも、週に3回はカレーを食べる過剰なカレー好き。だけどきっとどこかに、カレー嫌いの人だっているはず。思うところも色々あったりするじゃ。ならば是非会ってみたいし話が聞きたい。それはきっと、ある種の異文化交流。
探してみました。いろいろな嫌いのかたちが見えてきました。
1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)
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カレー嫌いな人にまだ会ったことがないな
ある日ふっと自問自答をしました。
探してみようか。でも、どうやって探そう。まあ、通信の力を借りればどうにかなるよね。なるはず。だけどちょっと探しただけで見つかるだなんて、そんなうまい話はあるのか?…否、まあ、あってほしいんですけど……
え!?!
その後も思いのほかするするとことは運び、おかげさまで4人のカレー嫌いの方にめぐり会うことができました。
いろんな「嫌い」がある
「食べ方がよくわからない。」としきりにおっしゃっていました。
やむを得ず口にしなければいけないなら、9(米):1(カレー)で食べるのがマイスタイル。もしくは、ごはんにささっとお塩をまぶす位の比率がよいんだそう。もしくは、福神漬けをごはんのおかずにして、カレーに目を向けないということも。
――なるほど、福神漬けと米って合いますよね。でも、なんでそんなにカレーを避けるんでしょうか?
「幼稚園の時に好きな食べ物を聞かれて、みんなが『カレー!』って言っていて、そこから『カレー嫌い!』って言い始めたらしいんですけども……。」
――あまのじゃくってことでしょうか?
「そうかも。」
――でも、そこから今までずっと嫌いなんですよね。
「はい。嫌いです!」
ちなみに彼女、タモリ氏のことは大好きなのでつい最近思い切ってタモリレシピのカレーを食べてみたんだそうですが、やっぱりカレーは嫌いだそうです。カレー大国インドにも行ったそうなんですが、ココでもやはり、9(ナン):1(カレー)が黄金の比率。ナンは好きなんだそうです。
ナン、美味しいですよね。
2)「旦那さんはカレーが大好物なんですけど……。」
アロマセラピストとして働く長谷川さん。
嫌いになったきっかけは、ものすごく明確です。
「幼稚園のころに体操教室の合宿に毎年行ってて。そこで出るカレーが、ものすっっっごく、不味かったんですよね。」
――不味いカレーってわりとわりとめずらしい気がしますが(ある意味で食べてみたい!)、どう不味かったんですか?
「口の中の、べろの上のほうのあたりにどうしても粉みたいな…脂みたいなものがついちゃうんですよ。それがものすっっっごくイヤでイヤで。合宿先のおばさんたちは『ほーら、カレーだよっ。』ってドヤ顔で振る舞ってくるんですけど、うわあああ!!って感じで。でも、一緒に行っていた姉は大丈夫で、ダメなのはわたしだけだったみたいですね。」
合宿のクライマックスの頃にドヤッと出てくるのが慣習だったそう。
ちなみに、旦那さまはカレーが大好物なんだそう。となると……。
――家のごはんの選択肢に、カレーはあるんですか?
「や、作ったりもするんですけども……、ルーの箱の裏を見つつホントにこの分量でいいのかなー?っていうかんじで作ってます。自分は食べないから、美味しいかはわからない。わたしは別のおかずを食べます。」
カレー好きには至福の瞬間!な「ルーを割り入れる」行程も、彼女からしたら、苦行……。
――旦那さん自らがつくる、っていう方向は?
「や、作ったりもするんですけども……、旦那さんに作ってもらうなら食べないと悪いじゃないですか。だからわたしが作ってます。自分が作ったやつなら、食べなくてもいいから。さいきんでは、旦那の家族(カレーが好き)にも、わたしのカレー嫌いはネタにされていますねー。笑」
なるほど、お互いの「好き」「きらい」が、見事に両極でありながらも、無理はせずに寄り添いあっている感じがしますね。
ちなみに、自らのことを「完全にアウェイ、どこ行ってもアウェイ」と評していた彼女ですが、大学時代の部活のメンバー12人のうち3人(4分の1!)はカレー嫌い、という非常に珍しい状況にも遭遇しているそう。
そういえばわたしも。自分を含め友人の4分の1くらいはAB型だった気がするんですが、マイノリティっていうやつはいつの間に何かの導きで招集されていたりするものなんでしょうか。
お店は、末広町駅と秋葉原駅の双方から徒歩5分くらい歩いたビルの一角。
今まで出てきたお二方と比較して、明らかに異なるのは「においもだめ!!」という点です。つまりは存在との共存はいたって困難、もうほんとうに「嫌いだ!!!」としか言いようがない。
通勤途中にカレー店のない回り道ルートを選択するなど、日常にさまざまな回避術を要するようなんですが……。
――食事をするお店も限られてくるのでは?
「ファミレスとかだったら行かなくはないんですが、うしろの席の人がカレーを頼んだ瞬間にぼくは……外に出ますね!」
――給食の時間とか、だいぶ辛かったんじゃ。
「給食のカレーは、ちょっと冷めているからか匂いもひかえめで。それなりに我慢ができていました。けど自分の分を食べ終ったらすっと即外に出てましたね。あと、カレー食べれない分食べ物が減るので『ぼくのカレーあげるからなにか他のをくれ。』って物物交換をしたりしていました。」
――なるほど。ちなみに、例えばキャンプとか、「ごはん=カレー1択」みたいな状況ってわりと産まれがちな気がするんですが、そういう時はどうしていたんですか?
「林間学校では自分だけカレーの材料で違うものつくったりしていました。焼いた肉とサラダ、みたいなかんじで。」
――小さい頃から、いろいろ工夫をして過ごしていたんですね。
「カレーがあまりにも市民権を得すぎているから、自分の方がそれに合わせていかないとダメなんですよ。率先して『カレーが嫌い!』って声をあげていかないと、そういう場はわりとすぐに産まれてしまうんです。」
以来新しく知り合う人には早めに「カレー嫌い」申告をしているんだとか。
――た、大変だ。ちなみに、カレーだけじゃなく「カレー味のする何か」っていうのも、世の中に随分ありますよね。
「ありますあります!なんの予告もなしに突然カレーの味がする、というシチュエーションは非常に多いので常に警戒してます。(コロッケのようにとつぜん内蔵されてて)においだけじゃ判別できないこともあるし……。」
た、大変だ…………。
そんな芳野さんが営むカフェでは、「さっきカレーを食べてきた」と、お客様からの申告があった場合には即ファブリーズをぶしゅっとさせていただくんだそう。もちろん、カレー&カレー味の食品の持込みは厳禁で、持っているのがわかった時点で没収だそうです。
注意書きにもしっかりと記載が。
お通し。店内の食べ物メニュー(もちろんカレーはない!)は、美味そうなものばかりでした。
おそらく。都内でいちばんカレーの匂いのしない空間て、このお店なんじゃないかな。そんな気がしてきました。
4)「きらいな食べ物があっても、別に困ったりはしない。」
不動産関係のお仕事をされてるYさん。
先ほどの、カレーを嫌いなことでだいぶ大変な思いをしていそうな芳野さんとはうって変わり「困ってはない!」と清々しくおっしゃっていました。
この世でいちばん嫌いな食べ物はバナナなんだそう。
――嫌いな食べ物、カレーとバナナの他にもあるんですか?
「はい。嫌いな食べ物はたくさんあります!」
――それで困ったりしたこと、ないですか?
「ないです!!!(さっくり)どちらかというと、食べ物より、お酒の好き嫌いのほうが困ることあるかな。ブランデーとかウイスキーが飲めなくて。人の家に行った時に『これしかない』って出されると、困ったりはします。」
――そういう時ってどうしているんですか?
「ほかの酒を買いにいきますねー。(さっくり)」
全般的に、率先して好きなものを推していくことで、嫌いなものをさっくり回避している感じでした。そんな彼女はさいきんエスニックにはまり、グリーンカレーならばいけるかも?という見解も。でも、あくまでもグリーンカレーのみだそうです。
ちなみに。その他にも、こんな理由で「嫌い」な方々もいらっしゃいました。
(以下は遠隔でプチ・インタビューをした結果)
「好きなものを食べ過ぎて嫌いになる」ほんとにあるんですね。こういう話を聞くと、50年後のわたしがカレーを好きなままとも限らないよねって気がしてきます。
医者の忠告からもう40年以上も経つのに!ずっとそれを守りつづけていることに驚愕しました。ちなみに、カレー以外の刺激物も総じて食べないそうです。
カレー嫌いな人から見た世の中
と。ここまではカレー嫌いな方の個々の意見を書いてきたんですが、ここからは皆さんにほぼ共通していた意見をまとめてみたいと思います。
避けたくても避けられない多さ。そういえば、カレーを食べるのに苦労したことってあんまりない。
製作行程の話。ルーを入れる前の「スープのような何か」みたいな状態のほうが、ずっとずっと魅力的だし美味しいんだそう。
カレー好きとしては、スパイシー感に欠けるハヤシライスの存在はうっかり忘れがち。だけど、彼らからの評価は一様にして高めです。
4) 「人生損してる」とか、「非国民」とか言われる。
5) いちばん悪しきは「THE日本のカレー」である。
どのみちカレーは嫌いなんだけど、所謂おうちのカレー的なやつはぶっちぎりで嫌い!!……なんだそうです。
……逆側から見ると、世界はこんなにも違って見えていたんですね。
皆さんの話を聞きその衝撃も覚めやらぬままボーッと街を歩いていたら、今まで目にすっと馴染んでいたカレー屋の看板に、今までには感じたことのない違和感を覚えはじめている自分に気がつきました。世界の色が違って見える瞬間が、こんなに身近に潜んでいたとは。
でも、このカレー屋ははじめて見た。
うすいカレーならわたしも
そんなわけで、カレーを嫌いな人たちと話をしてきたわけなんですけども、みなさん一様に「嫌い」との付き合い方をそれぞれに身につけていて、たくましい。そんな印象を強く持ちました。その姿勢、わたしもどこかで見習いたいです。ちなみに。「ルーをいれる前の状態のほうが美味しい」という話をうけてふと、「ルーを入れる前と後の間をとってみたら、どうなるんだろう。」と、ルーを規定量の2分の1だけ入れたカレーをつくってみたらすごく不味くてびっくりしました。
これならわたしも、胸をはって「これ嫌い」と言えます。
世の中のカレーがみんなこんなかんじだったら、世の中にカレー嫌いな人はもっと増えていたんじゃないかな。そんな気がしてます。