特集 2022年10月17日

静電気が嫌ではなくなる方法

静電気のお悩み解決します

毎年、冬は結構な確率でドアノブに触れたりスーパーで商品を手に取るときに静電気に襲われる。

静電気は存在を忘れたころに突然やってくるので驚く。

静電気の不快さの65%くらいは、びっくりすることにあるような気がする。

逆に絶対に静電気が襲ってくるとわかっていれば、不快さの65%は軽減されるのではないか?

「健やかなるときも、病めるときもアホなことだけを書くことを誓いますか?」 はい、誓います。 1974年生まれ。愛知県出身、紆余曲折の末、新潟県在住。

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静電気から逃げるのでなく攻める時代へ

今回の検証に協力いただいたのは、撮影とだけ聞いて集まってもらった以下の三名の被検者たちである。

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自分たちが被検者とは知らない被検者たち

まずは今回の検証の意図、手順を説明していくことにする。

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説明を聞く被検者たち

「えー今年も静電気のシーズンがやってきます。今回の撮影は、世の中から静電気の悩みを大幅に軽減するための実験です。」

私の説明をみんなが並んで聞いてくれるのが気持ちがいい。威厳のある学者にでもなった気分である。この調子で説明をつづけよう。

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静電気に対しては、逃げるのではなく攻める

「今回、被検者のみなさんには、静電気から逃げるのではなく、静電気に対して攻めていただきたいと思います。」

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突然被検者呼ばわりされ動揺を隠しきれないライターのトルーさん

「えー、静電気は忘れたころに突然やってきます。静電気自体の痛みよりも、突然襲ってくることへの驚きが不快さの大半をしめている可能性があります。」

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仮説「静電気の不快さの大半は〝びっくり〟である」

「私の体感では、静電気の不快さの65%ぐらいはびっくりすることであると思われます。」

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100%くる静電気は怖くないかも

「だとするならば、逆に静電気が絶対にくるとわかっていれば、ショックが減り不快さの65%程度を軽減できるのではないかと思うわけです。」

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「…」

「そこで、みなさんには絶対に来るとわかっている状態の静電気に触れていただき、不快さが軽減されたかどうかを確認していただくことになっております。」

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「でも、どうやって静電気を絶対に起こせるんですか?」

ここで、被検者である編集部の安藤さんから、そもそも絶対に静電気を起こすことができるのかという鋭い質問がでた。

どうやって、絶対に静電気を起こすのか?

答えは広告のあと!

絶対にくる静電気装置

どうやって絶対に静電気を起こすことができるのか?

正解はコチラ!

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絶対に来る静電気装置のコンデンサー

名付けて、絶対に来る静電気装置。

ちなみに小学生用のYouTubeをみて制作したものだ。

作り方はこうだ。

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ふたつのプラスチック製のコップにそれぞれアルミホイルを画像のように巻く
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一方にアルミホイルを折りたたんだ棒を入れる
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そのうえにもう一方のコップを重ねる

これで静電気をためるコンデンサーが完成した。つぎに静電気のためかたを紹介する。

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風船とフェルトを用意
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風船をフェルトで複数回こすって静電気を起こす
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次にコンデンサーに触れないように風船を近づけて静電気をためる

これを数回くりかえす。

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静電気がたまった状態のコンデンサー

この状態でコンデンサーを片手に持ち、もう一方の手でアルミ箔の棒の部分に触れると…

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※静電気を可視化するため画像を加工しています
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痛え

このように絶対に静電気が起こることになるのである。

実はこの時点で私は、静電気がうまく発生して心底ホッとしていた。

新潟在住の私は、久々の東京での撮影であったが実はバタバタしていて工作やシミュレーションする時間がなかった。

そのため撮影当日に新幹線で東京へきて、渋谷のダイソーで道具を買い、事務所近くのオープンカフェのテラス席でコンデンサーを作成、ぶっつけ本番で撮影に臨んでいたからである。

絶対に来るはずが

それでは検証に入ろう。

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風船をこすり
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コンデンサーに静電気をためていく

静電気でコンデンサーがビリビリと音をたてはじめたら準備完了。

まずは自分から試す。

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絶対に来るとわかっている状態で…

そのうえでアルミ箔に触れると

………

………

なぜか静電気おこらず。

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「あのね…」
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「え~っと」

最初のシミュレーションではうまくいったのに、なぜか二回目では静電気が起こらず。

早くも「絶対に来る」を前提とした企画が根底から覆ろうとしている。

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絶対に来るわけではないことがわかった瞬間

何が原因かはまったく見当もつかない。カメラを担当してくれていた編集長の林さんに「エアコンをドライにしてもらえますか?」「空気が乾燥していたほうが静電気は起こりやすいので」と言ってドライにしてもらった。口からでまかせである。

そのうえで不穏な空気を紛らすように慌ててもう一度試す。

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ふたたび静電気をためて

コンデンサーに風船は触れていないが静電気でコップが揺れる。あまつさえビリビリと音も鳴っている。静電気は間違いなくそこにある。

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そしてあらためてアルミ箔に触れる
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(静電気よ、来い!)

………

………

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「来ませんね」
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「あれー?」

あれか?俺はもう何回かやったので静電気が起りにくくなっているのか?静電気ってそういうものなのか?

理由はよくわからんが、人前でのシミュレーションはボロが出かねないのであまり何度もやるものではないことがわかった。

「私は汗をかいているので」などと言って、被検者である編集部の橋田さんにバトンタッチした。

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橋田さんがアルミ箔に触れると…

どうか?

………

………

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「来ません」

本格的にやばい。被検者たちからも、なんとなく冷ややかな視線を感じる。

ホワイトボード前で演説風に企画を説明していた数分前の威厳を取り戻したい。

そこで「風船の代わりに下敷きもいいんですよ」などとデイリーポータルZいちの静電気博士っぽいことを言った。

が、これは参考にしたYouTubeのコメントに書いてあったものである。

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「下敷きでもいいんですよ」
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ふたたび実験開始

どうか?

………

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「下敷きでも来ません」

さきほどまでなんとなく冷ややかだった視線が、あきらかに冷ややかな視線となって私に突き刺さる。

慌ててもう一度静電気をためて自ら試すが…

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静電気おこらず

絶対に静電気が起こる必要のある実験において、絶対に静電気が起こらない事態となった。

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偽静電気博士であることがバレた筆者

このとき私は、東京は怖いところだと自分の準備不足を棚に上げて思っていた。被検者たちは、こいつ東京まで何しに来たんだと思っていたことだろう。

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被検者たちのハートに火がついた

ここで安藤さんが「このままじゃ帰れませんよ」と言ったのをきっかけにして、被検者たちのハートに火がつき全員で静電気をためはじめた。

みんな早く帰りたかったんだろう。

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目の色がかわった被検者たちと完全に威厳を失った筆者

準備ができ、冬は静電気がよく起るという安藤さんがやってみる。

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どうか?

………

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ビリビリッ

おおおお!

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「来ました来ました!」

みごとに静電気が発生!

電気をためてからあまり時間をおかず、且つ、アルミ箔をつつくのではなく、つまむのがコツだということもわかってきた。

コツがわかったところであらためて実験をやってしまおう。そして逃げるように新潟に帰ろう。

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静電気をためることを元気玉集めると言い出す被験者たち
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あまり時間をおかずに橋田さんが触る

………

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ビリビリッ!

来た!橋田さんにも静電気が発生!

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「痛いけど…」

あとで気が付いたのだがこのとき、橋田さんが驚くべきことを言っていた。

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「うれしい!」

なんと、静電気の発生に対してうれしいと発言していたのだ。

つづいてここまで一度も静電気が発生しなかったトルーさんはどうか?

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アルミ箔をつまむように…

………

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ビリビリッ!

来た!

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「ようやく来てくれました~~~」

やり遂げた男の顔だが、冷静に考えるとただ静電気が起っただけである。

いつのまにか静電気をよろこんでいる私たち

ここへきて、あることに気がついた。

もしかして我々は静電気の発生をよろこんでいるのではないか?

もしかして快・不快を通り越して期待しているのではないか?

もしかしてPARTⅡ、小林幸子。

ということで今度は「静電気よ起こってくれ」という期待をもって実験してみることにした。

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まずは安藤さんから
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「来てくれ静電気」

………

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ビリビリッ!
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「うれしいコレ!」

やはり静電気うれしい発言!

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ガハハハハハうれしいいいい!

つづいて橋田さんは?

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「静電気来て!」

………

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ビリビリッ!
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「痛いっ!!!」
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「でもうれしい!」

林さんは?

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「静電気来い!」

………

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ビリビリッ!
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「ホントにうれしいですねえ!」

やはり、いつのまにか我々は静電気の発生をよろこんでいたのである。

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虎舞竜のこころ

予定とは違い静電気が絶対に来ると思うことは出来なかったが、期待すると静電気の発生がよろこびになるということがわかった。

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なんとか威厳を取り戻せたと思っている筆者

まとめると以下のようになる。

・静電気に期待しないで静電気が起ると不快である。①

・静電気に期待しないで静電気が起こらないとなんとも思わない。②

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そして

・静電気に期待して静電気が起こるとうれしい。③

・静電気に期待して静電気が起こらないと(今回の実験ではがっかりしたが、実生活では)それはそれでうれしい。④

つまり、これまで静電気は発生してもしなくてもプラスの感情が起ることはなかったが、期待することで静電気の発生に対してプラスの感情を持つことができる。

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この度はどうもすいませんでした

 また「静電気を期待しないで静電気が起らない」すなわちなんでもないようなことが幸せだった」という高橋ジョージのよろこびにも気づくこともできるのである(上の図の②)


ちょっとした不快を期待しよう!

静電気に限らず、短時間で過ぎ去る不快さは逆に期待することでよろこびに変わるということがわかった。

たとえば筋肉痛、苦さ、辛さなどである。

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だから我々は今後、「明日、筋肉痛になりそうでいやだなあ」と思うときは、「明日、筋肉痛きれくれー!」と期待することにしよう。

そうすることで実際に筋肉痛になったとき「筋肉痛来てくれたーー!」と思えるし、こなかったらこなかったでそれはそれでうれしいのである。

これは冗談抜きで結構な発見だと思うよ。

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