特集 2022年1月24日

南インドのピンクウォーター、パティムガムを飲んでみた

予想以上にピンク!

南インドのケーララ州にある食堂では、パティムガム(PATHIMUKAM/PATHIMUGHAM/PATHIMUKHAM)という鮮やかなピンク色の水が出てくることがあるらしい。

どんな味なのか気になったので、インドから取り寄せて試してみた。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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これが南インドのPATHIMUKAM(パティムガム)だ

下の写真は友人が南インドで撮影したもので、左上のグラスに入っているのがパティムガム。別名ピンクウォーター、見た目そのままだ。

どうやら食堂で水やお茶の代わりに出てくるサービスドリンクの一種らしい。その派手な見た目に反して、なんと味はほぼないのだとか。

味がないというか、まったく記憶に残らない味らしい。こんな色なのに。

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この色で無味ということはないと思うのだが。写真提供:ケララの風モーニング

パティムガム、すごく気になる。新大久保あたりのインド食材店にいけば買えるかなと数件回ったが、まったく見つけることができなかった。

ならばとインターネットの大海を彷徨って、アーユルヴェーダ(インド周辺諸国の伝統的医学)の通販ショップでどうにか発見。

値段は1袋300円とお手頃だが、送料が1500円となかなかのお値段。商品の5倍だ。1袋だけ取り寄せるのももったいないので、10袋のセットを1700円で購入。送料と合わせて3200円也。

注文から数日後、ムンバイから国際郵便が出発したとのメールが届き、さらに数日後、全く読めない伝票が張られた段ボールが届いた。

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オマケでサマハンとスアリンとビッコーが入っていた。謎が謎を呼ぶというやつか。

日本語のサイトだったので、日本国内の店から来るものだと思っていたら、わざわざインドからのお取り寄せとは。それなら1500円の送料も納得だ。久々にストーリー性のある買い物をした気分だ。

パティムガムはスオウの木だった

届いたパティムガムは、黄色っぽいウッドチップのようなものだった。

裏書によると、5リットルの熱湯にティースプーン1杯を入れて再沸騰させればできあがり、らしい。

この1袋でお風呂一杯分くらいのピンクウォーターが作れそうだ。10袋は明らかに買い過ぎか。一生分のパティムガムを手に入れた。

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一袋15g入り。

購入したサイトによると、パティムガムはスオウというマメ科ジャケツイバラ亜科の木。アーユルヴェーダの解釈では、これを煮出した水は抗酸化や抗菌作用に優れていて、なんやかんや体にいいらしい。

憧れのパティムガムを手にしていたら、子供の頃に彫刻刀で彫った版画、葬式で前の人を真似したお焼香の記憶が呼び起こされた。

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ちょっと黄色い木屑のようだ。スオウは布の染料にも使わるらしい。
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パティムガムを煮出してみよう

パッケージに書かれたレシピは、熱湯5リットルにティースプーン1杯。もちろん少量でも作れるのだろうが、どうせならたくさん作りたい。

そこでパティムガムの写真を見せてもらった南インド料理店に持参して、レシピ通りに作らせてもらった。

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レッツ、パティムガム!
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インドのティースプーンってどれくらいの大きさだろう。

動画でどうぞ。

熱湯に一匙分のパティムガムを投入すると、そこからアサガオの絞り汁のように鮮やかな紫色が滲みだし、すぐに鍋全体へと広がった。

お湯の量に対してパティムガムがちょっと少ないかなと思ったが、スプーン一杯で十分だった。厚削り鰹節のように長く煮込む必要もない。

インド料理というよりは、手品とか魔法を覚えたような充実感。パティムガム、買ってよかった。10袋は多かったけど。

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見事なネオンピンク!

パティムガムは本当にほぼ味がなかった

パティムガムを煮出したピンクの熱湯をコップに入れて、ちょっと冷めるのを待ってから飲んでみる。出来立ての熱いものを飲むべきか、常温に冷めてから飲むべきか、どっちが正解かよくからないが、別にどっちでもいい気はする。

さて味だが、ほぼ白湯だった。なるほど、確かに味がない。いや舌に神経を集中させると、出涸らしのジャスミン茶やウコン茶のような味がうっすらする。ルイボスティーが近いかも。

そして若干だがヒノキ風呂に入っている気分にさせる香りもある。もしヒノキの升でお湯を飲むとこんな感じだろうか。

これはちょっと木を煮たお湯だ。見た目とは裏腹に、食事の邪魔をしない穏やかな味と香りのドリンク、それがパティムガム。意外と日本でも流行るかも。

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見た目の色は、炭酸の抜けたファンタ、梅酢、こんにゃくゼリー、歌舞伎町。
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映える。ザ・色水。
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食堂でパティムガムを出す理由を考える

アーユルヴェーダ的な薬効があるにせよ、それにしてもの色である。なぜこのピンクの水をわざわざ出す食堂があるのかを勝手に考察し、一つの仮説を導き出した。

「ピンクは生水ではなく一度沸騰させた安全な水であるという証明の色」なのでは。まったく安全っぽくない色だけど。

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試しに常温の水へパティムガムを入れてみたが、色はなかなか広がらなかった。

改めてパッケージを読んでみると「BOIL IN WATER & PURIFY!」と書かれていた。これは「沸騰した水は清潔だぜ!」みたいな訴えなのでは。パティムガムを作るためには水を沸騰させる必要がある。

もっとよく読めば「HELPS PREVENT WATER-BORNE DISEASES」とも書かれていた。翻訳すると「飲料水による感染症の予防に役立ちます」というような意味だった。

パティムガムの薬効以前に、沸騰した水で作ることが重要なのだ。

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湯冷ましであることの証明、それが一番の役割なのかもしれない。

海外ではむやみに生水を飲むと、お腹を壊すとよく言われる。そこで「うちで出す水は沸騰させてある安全な水だよ」というメッセージを込めて、わざわざパティムガムを出しているのでは。

ちなみに日本のインド料理屋で、ストローの口をつける部分に包み紙が残っているのは、使いまわしじゃないという印らしいよ。

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インド食器店のアジアハンター小林さん情報だと、このスタイルは新しいストローである証明とのこと。

お酢を入れたら色が黄色くなった

パティムガムを煮出したピンク色の水、これって理科の実験で使った紫キャベツのしぼり汁にちょっと似ているかも。

ならばと酸性であるお酢をちょっと入れてみたら、見事に黄色へと変わった。これはちょっとした発見なのでは。

おもしろい!

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ピンクウォーターがイエローウォーターに!

もし店でパティムガムが出てきたら、唐揚げなどについているレモンを絞って入れてみよう。きっと黄色くなるはずだ。この原理を使って色が変わるカクテルを作ってもおもしろそう。

ちなみにアルカリ性の重曹をピンクウォーターに入れても変化はないけど、黄色くなった状態に重曹を入れたらピンクに戻りました。


久しぶりに見かけで判断できない食材と出会うことができて、とても心が躍った。せっかくたくさん買ったので、お茶代わりにパティムガムを飲んでいる。作るときに毎回おもしろいので飽きない。

いつか日常生活に刺激が欲しくなった時、これでご飯を炊いたり、そうめんを茹でてみたいと思う。

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パッケージの人、なかなかの福耳。

 

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