


砂防ダムを見る目が変わりますよ

長野県の北西の端に位置する小谷(おたり)村。周囲を山に囲まれ、冬になると多くのスキー客で賑わうこの村には、もうひとつ別の顔がある。
国内でも指折りの土砂災害多発地帯なのだ。
そんな村の生活を守るため、村内にはいたるところにいわゆる「砂防ダム」がある。そして、そんな砂防ダムをめぐるツアーが行われていた。
国内でも指折りの土砂災害多発地帯なのだ。
そんな村の生活を守るため、村内にはいたるところにいわゆる「砂防ダム」がある。そして、そんな砂防ダムをめぐるツアーが行われていた。

1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)
前の記事:もうホントどうでもいいことも練習したら上達するか
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砂防ダムだけを観てまわるツアー
8月中旬の土曜日。朝8時前に大糸線南小谷駅近くの小谷村役場に着くと、そこにはいかにも「現場」へ人々を運ぶような、車高の高い四駆のマイクロバスが停まっていた。


朝8時の小谷村役場


このバスがもう本当にすごかった

受付時間の8時になると、どこからともなくわらわらと人が集まってきた。夏休みの1日、長野までやってきて砂防ダムを観に行く面々だ。その数11名。
物好きすぎるだろう。
自分のことは棚に上げて、最初はそう思っていた。しかし、あとでこの思いはひっくり返ることになる。
受付を済ませてバスに乗り込み、いよいよ出発。最初の砂防ダムに向かって走り出した。
物好きすぎるだろう。
自分のことは棚に上げて、最初はそう思っていた。しかし、あとでこの思いはひっくり返ることになる。
受付を済ませてバスに乗り込み、いよいよ出発。最初の砂防ダムに向かって走り出した。


砂防めぐりの1日がスタート

バスには一般の参加者のほか、主催で引率の小谷観光連盟の方、そして、砂防の専門家として砂防事業に関わってこられた国交省OBの方が乗っていた。
引率の観光連盟の方は「砂防は専門じゃないので、私に質問されても答えられません!」と言っているが、聞けば「砂防ダムはひとつひとつ形が違って、見て面白いと思ったのでツアーを企画した」とのこと。
引率の観光連盟の方は「砂防は専門じゃないので、私に質問されても答えられません!」と言っているが、聞けば「砂防ダムはひとつひとつ形が違って、見て面白いと思ったのでツアーを企画した」とのこと。


受付で配られたお手製の薄い本

そうそう、お寺が多い地域は寺めぐりを見どころにすればいいし、うどん屋が多ければうどん屋めぐり、砂防ダムが多ければ砂防ダムめぐりをすればいい。テーマパークや博物館を作るのもいいけど、地域の特色を生かした見どころを開拓すれば投資も維持費も最小限で済む。
ちなみにこのツアーでは10ヶ所の砂防ダムをめぐる。砂防ダムだけ10ヶ所めぐるツアーなんて世界のどこにもないだろう。クールジャパンの最先端を行ってると思う。
村のメインストリートである川沿いの国道から山道へ入って十数分、本日最初の砂防ダムに到着。バスを降りて、正面に見える橋の上で説明を聞く。ここから見る限りごく普通の砂防ダムのようだけど...。
ちなみにこのツアーでは10ヶ所の砂防ダムをめぐる。砂防ダムだけ10ヶ所めぐるツアーなんて世界のどこにもないだろう。クールジャパンの最先端を行ってると思う。
村のメインストリートである川沿いの国道から山道へ入って十数分、本日最初の砂防ダムに到着。バスを降りて、正面に見える橋の上で説明を聞く。ここから見る限りごく普通の砂防ダムのようだけど...。


そういえばこの日の参加者は半分以上が女性だった。ク、クールジャパン!

このツアーひと味違うぞ
最初に見に来たのは、目の前に見えている砂防ダムのうち、いちばん奥のダム。「コンクリートブロック堰堤」と言って、同じ形のブロックを4000個以上積み重ねて造られている。地盤が悪くても安定する、現場での土石流を気にしながらの工事が短くて済む、といったメリットがあるそうだけど、ここからだとほかの砂防ダムと違いがよく分からない。
と思っていたら「では行ってみましょう」と川の脇の細道を登りはじめた。え!まさかダムの元へ!?
と思っていたら「では行ってみましょう」と川の脇の細道を登りはじめた。え!まさかダムの元へ!?


ダムの工事用道路を登っていく


手前の2つは以前からあった砂防ダム

列のいちばん後ろで登って行くと、先の方から興奮した声が聞こえてきた。


え、そこ入っていいの!?

なんと、全員が手前にある砂防ダムの上に乗って見学していた。たいていこういう場所は立入禁止、勝手に入ってTwitterにでも載せたら確実に炎上である。でもこのイベントは村公認。この観光連盟、本気だ。


にぎわいを見せる砂防ダム


高さ10mくらいある

ふだん入れない砂防ダムの上に立つ興奮と、柵もない絶壁の上に立つ緊張とで背中にどっと汗が出る。でも、コンクリートブロック堰堤を見るにはこの砂防ダムの上がベストポジションだった。


今週のビックリドッキリダム

ツアーがスタートして30分くらいで、いきなりいろいろな意味で非日常な体験。このツアーやばいかも知れない!
しかし忘れてはならないのは、これが現在進行形で自然とたたかう防災施設であるということ。ダムの前後には人の頭より大きな石がゴロゴロしているし、水が越える部分のブロックの削れ具合も見逃せない。
しかし忘れてはならないのは、これが現在進行形で自然とたたかう防災施設であるということ。ダムの前後には人の頭より大きな石がゴロゴロしているし、水が越える部分のブロックの削れ具合も見逃せない。


同じ形のブロックを積み上げてあるけど


水が越える部分はこの削れよう

歴史的建築物や芸術作品などと並べても引けを取らない存在感。つまり見どころとして十分である。

砂防も種類いろいろ
ふたたびバスに乗り込み、次の砂防ダムへ。10分ほどで到着したのは高い橋の上だった。場所としては最初に見た砂防ダムの上流にあたるらしい。


冷静に考えるとこれがツアーの見どころのひとつ、って凄いよね

橋の下を流れる細い沢に、ぽつんと砂防ダムが造られている。一見するとごくオーソドックスな砂防ダムに見えるけど、よく見ると縦にスリットが入っている。「コンクリートスリット堰堤」という型式らしい。


個人的にはこういう石垣風装飾はマイナス点である

砂防ダムというと、流れてくる土砂をコンクリートの壁ですべてせき止める、というイメージがある。でもそうすると川の生物の生活圏が断ち切られてしまうし、土砂が流れてこなくなると下流の川底が掘られてしまったり、河口近くの海岸の砂浜が減ったりすることもあると言われている(これは貯水ダムでも同じ)。そこで最近は、下流に流しても安全な分は流そう、というのがトレンドらしい。
そこで考えられたのがこういった、ある程度はせき止めるけど一部はそのまま流す、という砂防ダム。これ、砂防という世界のシステムとしては画期的な発明なんじゃないか。
次の砂防ダムへは、スキー場の中を抜ける細い急坂を登って行く。
そこで考えられたのがこういった、ある程度はせき止めるけど一部はそのまま流す、という砂防ダム。これ、砂防という世界のシステムとしては画期的な発明なんじゃないか。
次の砂防ダムへは、スキー場の中を抜ける細い急坂を登って行く。


このバス以外じゃ登れない未舗装の急坂


よく見るとスキー場の中!

途中にあるいくつかの砂防ダムをスルーして進むと道は行き止まりに。その目の前にそびえ立っていたのがこれだった。


一同のテンションはここで最初のピークを迎える

さっきのスリット型と同じように、細かい土砂はせき止めずに流してしまうタイプ。しかしここはスリットが大きく、そこにぶっとい鉄パイプが巨大なジャングルジムのように組まれていた。「鋼製フレーム構造堰堤」という。
これはかっこいい!砂防ダム界の花形に違いない!
全員が色めき立った次の瞬間、引率の方が言ったひと声で大人たちは我を忘れる。
「はい、自由に中に入っていただいていいですよ~」
ま、まじ!?
これはかっこいい!砂防ダム界の花形に違いない!
全員が色めき立った次の瞬間、引率の方が言ったひと声で大人たちは我を忘れる。
「はい、自由に中に入っていただいていいですよ~」
ま、まじ!?


うおおお


すげえすげえ

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砂防ダムとひとつになれる
中に入っていいと言われても、水は流れているのでみんな靴を濡らしながらスリットに入っていく。僕も転ばないように気をつけながら、でも靴の中に水が入って靴下まで濡れてからはどうでもよくなった。
これはすごい光景だ。
これはすごい光景だ。


ナウシカがオームに轢かれる直前に見た景色


砂防ダムの中に入った!(靴の中びちょびちょだけど)


ちゃんとそれなりに土砂を止めてる!


これは神殿だ、砂防の神が住む神殿

放っといたらたぶん1時間くらい誰もここから動かなかったかも知れない。
そのくらい、神殿の中は非日常で、でもいつまでも居たい空間だった。いや、雨が降ってきたら怖くて居たくないけど。
そのくらい、神殿の中は非日常で、でもいつまでも居たい空間だった。いや、雨が降ってきたら怖くて居たくないけど。

これは川ではない、滝である!
登ってきた急坂をそろりそろりと降りてバスは次の見学ポイントへ。何でもない道端で止まったと思ったら、真横にこんなのがあった。


合体して巨大な敵に対抗か

これは「階段状床固工(とこがためこう)群」と呼ばれるもの。形や構造は小さな砂防ダムそのものだけど、役割が少し違う。
この場所の場合、急傾斜で流れが速すぎて川底が削られ、両側の斜面が崩れやすくなってしまうため、コンクリートの階段にして川底と斜面が削られないようにしている。
この場所の場合、急傾斜で流れが速すぎて川底が削られ、両側の斜面が崩れやすくなってしまうため、コンクリートの階段にして川底と斜面が削られないようにしている。


下の石は上から転がってきたのだろうか

まあ、自然の川をコンクリートで固めて!と目くじらを立てる人もいるかも知れないけど、こうしないとこの場所はどんどん削られて崩れて、草木も生えない荒れ地になってしまい、下流には土石流が押し寄せる。症状をこれ以上悪化させないための手術と思えば仕方ないだろう。
何しろこの場所はもともと河床勾配が1/3、つまり3m進むと1m下がるほどの急傾斜だったのだ。もはやこれは川ではない、滝である!
何しろこの場所はもともと河床勾配が1/3、つまり3m進むと1m下がるほどの急傾斜だったのだ。もはやこれは川ではない、滝である!


というような説明を中央の砂防OBの方がしているんだろう

いや、こっちがもっと滝である!
この谷はほぼ一直線に斜面を流れくだり、バスが通る道はそれを何回も跨ぎながらつづら折りに降りて行く。
いちばん下の川沿いの国道まで降りたところでバスが停まり、ツアーの一行はまた細くて急な上り坂に案内された。場所としてはさっきの床固工のすぐ下流になるらしい。
いちばん下の川沿いの国道まで降りたところでバスが停まり、ツアーの一行はまた細くて急な上り坂に案内された。場所としてはさっきの床固工のすぐ下流になるらしい。


どう見ても工事用に作られた道を登る


なんか見えてきた!

ものすごい急坂を登り切るとちょっとした広場に出て、目の前に滝のようなものが見えてきた。やっぱさっきのなし、こっちが滝だった!


もうこの川すべて滝、ってことでいいのでは

これは「高落差流路工」。さっきの床固工の場所よりもっと河床勾配がキツく、なんと1/2、つまり2m進んで1m下がっている。角度にすると25度以上。そこで階段ではなく、石張りのコンクリート水路にして斜面を安定させている。
いやしかしこんな場所があるなんて、自然てホントにすごい。大雨のときのこの流路工を見てみたいし、もっと言えば、手つかずの状態だったときどんなだったのか見たかった。
ちなみにさっきから何度も書いてる「これは川ではない、滝である」というセリフは、明治時代に河川改修や砂防の技術者として来日したオランダ人のヨハネス・デ・レーケという人が日本の急河川を見て言ったとされる(誤訳とも言われてるけど)。
デ・レーケの功績は日本の河川や砂防の技術の基礎を築いたと言われるほどで、現在でも各地にその足跡が残っている。僕たち河川土木好きは、いつか大河ドラマで取り上げてほしいと思っている。NHKさんどうですか。
いやしかしこんな場所があるなんて、自然てホントにすごい。大雨のときのこの流路工を見てみたいし、もっと言えば、手つかずの状態だったときどんなだったのか見たかった。
ちなみにさっきから何度も書いてる「これは川ではない、滝である」というセリフは、明治時代に河川改修や砂防の技術者として来日したオランダ人のヨハネス・デ・レーケという人が日本の急河川を見て言ったとされる(誤訳とも言われてるけど)。
デ・レーケの功績は日本の河川や砂防の技術の基礎を築いたと言われるほどで、現在でも各地にその足跡が残っている。僕たち河川土木好きは、いつか大河ドラマで取り上げてほしいと思っている。NHKさんどうですか。

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そして砂防は想像を超える
さて、行程の半分も過ぎてだいぶお腹が減ってきたけどまだ昼食の時間にはならず、次の砂防現場へ向かう。何しろ8時にスタートしてまだ10時半なのだ。超健康的なツアーである。炎天下だけど。
国道から未舗装の山道に入り、車高の高いバスがぴょんぴょん跳ねるような悪路を進んで行くと工事現場になった。どうやらこの川は現在進行形で砂防工事を行っているらしい。
国道から未舗装の山道に入り、車高の高いバスがぴょんぴょん跳ねるような悪路を進んで行くと工事現場になった。どうやらこの川は現在進行形で砂防工事を行っているらしい。


工事現場の中へ入って行く


実際あちこち崩れていた

バスを降りた先に見えるのは赤くて丸い壁。何とこれも砂防ダムの一種なのだ。


これまでとはまったく違うスタイル


川は円柱の隙間を縫うように流れる

この砂防ダムは「鋼製セル堰堤」と呼ばれるもので、鋼でできた円形や四角い枠の中に現地にある土砂を詰めて、てっぺんをコンクリートで塞いでいる。円柱の直径は14mもある。
確かにこんな形でも置いてあれば土石流の勢いは抑えられそうだ。中身の土砂は以前起きた土石流でこのあたりに溜まっていたものを入れてあるという。
流れてきた土砂もまさか自分が土石流止めになるとは想像していなかっただろう。まったく砂防は想像を超えてくる。
確かにこんな形でも置いてあれば土石流の勢いは抑えられそうだ。中身の土砂は以前起きた土石流でこのあたりに溜まっていたものを入れてあるという。
流れてきた土砂もまさか自分が土石流止めになるとは想像していなかっただろう。まったく砂防は想像を超えてくる。


中に道路が通っている、というのも想像を超えている


帰り道で別の鋼製セル堰堤を上から眺めることができた

ふたたびバスがぴょんぴょん跳ねる悪路を通って山を下り、国道へ。次の目的地は国道からすぐの場所にあった。
これまですべて違う形の砂防ダムを見てきたけど、一行はここでさらに「こういうこともあるのか...」と絶句する堰堤に遭遇する。
これまですべて違う形の砂防ダムを見てきたけど、一行はここでさらに「こういうこともあるのか...」と絶句する堰堤に遭遇する。


見れば見るほど何かがおかしい

シルエットは土砂をすべてせき止める、ノーマルの砂防ダム。でも構造は一部分が土砂をある程度流す鋼製フレーム堰堤に似ている。「鋼製スクリーン堰堤」というらしい。
というのも、何とこのダム、当初はノーマルの砂防堰堤として建設が始まったものの、途中で型式が変更されてこのような形になったらしいのだ。
でもそれでも疑問は残る。見て分かる通り、鋼製スクリーンは隙間だらけなのでどこからでも水は流れ出る。なのにてっぺんに水通しの凹みがあるのはなぜなのか。あくまでシルエットは設計図通りにしたい、というこだわりがあったのだろうか。
砂防OBの方に訊いてみたのだけど「実際に手がけた人じゃないと分からない」とのことだった。やっぱり砂防は想像を超える。
というのも、何とこのダム、当初はノーマルの砂防堰堤として建設が始まったものの、途中で型式が変更されてこのような形になったらしいのだ。
でもそれでも疑問は残る。見て分かる通り、鋼製スクリーンは隙間だらけなのでどこからでも水は流れ出る。なのにてっぺんに水通しの凹みがあるのはなぜなのか。あくまでシルエットは設計図通りにしたい、というこだわりがあったのだろうか。
砂防OBの方に訊いてみたのだけど「実際に手がけた人じゃないと分からない」とのことだった。やっぱり砂防は想像を超える。


あのてっぺんの凹みいらなくない?


このくらいになるとみんなバスを置いて勝手によく見える位置に移動するようになった


ここでようやくお昼ごはん。近くの日帰り温泉施設で立派なお弁当が出た

まだまだバリエーションはある
お腹もいっぱいになって出発。続いて向かった砂防ダムも、道路際でバスを降りて少し歩くと出現。これまた、今まで見たことのない種類だった。


また新キャラが現れた


フレームの中に何かが詰まっている

この砂防ダムは「鋼製枠構造堰堤」という型式で、鋼で作られたケージのような箱の中に玉石などを詰めてある、という構造。これもブロック堰堤などと同じように地盤が悪いところでも作ることができ、工事の期間短縮にも効果があるという。
よく観察すると鋼製枠の中に詰めてある石は形や向きがキレイに揃えてあって、職人がひとつひとつ丁寧に作りました、という感じ。
よく観察すると鋼製枠の中に詰めてある石は形や向きがキレイに揃えてあって、職人がひとつひとつ丁寧に作りました、という感じ。


実に丁寧な仕事である

残す砂防ダムは2ヶ所。果たして、どんな砂防ダムが出てくるのか楽しみである。


バスが川を渡るたびにいい砂防ダムがないか探した

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スリル満点、バスのスイッチバック
次の砂防ダムに向かう道がすごかった。
またバスが跳ねまくるような未舗装の悪路のうえ、途中にあるつづら折れの道が狭すぎてバスが曲がりきれず、なんとスイッチバックで運転するのだ。
またバスが跳ねまくるような未舗装の悪路のうえ、途中にあるつづら折れの道が狭すぎてバスが曲がりきれず、なんとスイッチバックで運転するのだ。


この坂、いまバックで登っている


バックで上の道路に到達、ここから前進

細くて未舗装の急斜面を登るスイッチバックは3ヶ所もあって、そのたびにバスの中は異様な緊張感と興奮が充満した。
これ、よくここを通るツアー開催しようと決断したなあ。
そんな道をどんどん進むと、次の砂防ダムに着いた。
これ、よくここを通るツアー開催しようと決断したなあ。
そんな道をどんどん進むと、次の砂防ダムに着いた。

究極の砂防ダム


立派な砂防ダムがあるの見えるだろうか

よく見えないのでもう少し近づいてみよう。


ネット?

なんと、川の右岸と左岸にワイヤーを張って、そこからワイヤーで造られたネットを垂らしてあるのだ。つまり底引き網のような形。名前も「ワイヤーネット(リングネット)堰堤」というらしい。
確かに構造的には水分だけ逃がし、巨大な石はキャッチできるだろう。もう進化の究極形態と言えるのではないか。
確かに構造的には水分だけ逃がし、巨大な石はキャッチできるだろう。もう進化の究極形態と言えるのではないか。


そして究極的に写真に撮りづらい砂防ダムでもある

でもこんな簡単なもので本当に土石流止められるのか、と思ったけど、完成してからおよそ10年でこれまで何度も土石流を受け止め、土砂を取り除くだけで壊れることなく使えている、とのこと。
これはすごい。構造物としてはまったく萌えないけど、でもすこい。
これはすごい。構造物としてはまったく萌えないけど、でもすこい。


それほど頑丈そうには見えないんだけど


そしてこの川の上流の荒れ方がひどかった

さて、いよいよ最後の砂防ダムである。最後を飾るにふさわしい立派なものが登場するのか、それともまた、これまでにない変わり種が出てくるのか。


やや名残惜しくも最後のダムへ出発

ついに砂防ダムは橋へ
このツアーで最後に向かった砂防ダムは「スーパー暗渠堰堤」と呼ばれている。見た目はまるで沈下橋のようだけど、立派に砂防施設である。


めがね橋にも見える

このダムも通常の土砂はそのまま通し、大規模な土石流は身体を張って止めるタイプ。それほど派手さはないけど、重厚な構造で確実に仕事をしてくれる、頼れるダムだ。
ここでは堰堤の上を渡ることができた。
ここでは堰堤の上を渡ることができた。


真ん中がやや低くなっている


この穴を通る分は計算上下流に流しても安全な量

いかにも土砂が堆積してそうな川を見て「この川も荒れてるなー」なんて思っていたら、何とこの川、日本3大崩れのひとつである稗田山崩れのすぐ下流らしい。


川幅が広い割に浅くてやけに土砂が多い

そして、ツアーの締めは稗田山崩れの現場だった。

崩壊地で締めくくり
稗田山崩れは明治44年、この先にある稗田山の斜面が突然崩れて大量の土砂がこの谷を埋め、多くの死傷者を出した災害である。それだけでなく、川がせき止められていわゆる天然ダムが出現、それが後に決壊し、下流は日本海の河口まで被害が出たという。


下流の光景。やや右の一段高い部分に当時は多くの家が建っていたが決壊に伴う土石流ですべて埋まった

スーパー暗渠堰堤からバスに乗って川を遡って行くと、赤い吊り橋のところでバスを降ろされた。ここが、稗田山の崩壊地にいちばん近い場所らしい。


何やら年季の入った吊り橋にやってきた

吊り橋の上から上流の方向を見ると、ちょうどすり鉢状に山に囲まれていた。最初はよく分からなかったけど、見ているうちにどう崩れたか分かった気がする。すり鉢自体が稗田山が崩れた跡なのだろう。


橋から見た上流方向。左奥から右に伸びる山が稗田山だけど、川の左側の小山はほとんど稗田山の崩れた土砂じゃないかと思うのだ


100年以上経ったいまでも稗田山は険しい断面を露にしている

昔から何度も大きな土砂災害に見舞われてきた小谷村。砂防工事も数多く行われてきたのだけど、平成7年7月に大雨により土石流や地すべりが多発。国道やJRが寸断されるなど大きな被害が出た。
その際、国が中心となって災害復旧や砂防事業を行った。実は今回めぐった砂防ダムもそのときに造られたものが多く、このツアーはそうやって国の予算で整備された砂防ダムに対する感謝、という意味も込めているとのことだった。
今年の日程は終わってしまったけど、来年も行う予定とのことなのでぜひ行ってみてください。予備知識ゼロの状態からでも好奇心を刺激されますよ。
その際、国が中心となって災害復旧や砂防事業を行った。実は今回めぐった砂防ダムもそのときに造られたものが多く、このツアーはそうやって国の予算で整備された砂防ダムに対する感謝、という意味も込めているとのことだった。
今年の日程は終わってしまったけど、来年も行う予定とのことなのでぜひ行ってみてください。予備知識ゼロの状態からでも好奇心を刺激されますよ。













最先端の試みだと思う

1日で計10ヶ所の砂防ダムだけをめぐるバスツアーは本当に楽しかった。特に、出てくる砂防ダムの形がひとつひとつすべて違う、というルートを考えたのと、実際にそのルートを走らせてしまう熱意はすごい。
砂防ダム以外にも、全国にはまだ発見されていない見どころが眠っていると思うので、各地のいろいろなご当地ツアーが生まれたらいいなと思いました。
砂防ダム以外にも、全国にはまだ発見されていない見どころが眠っていると思うので、各地のいろいろなご当地ツアーが生まれたらいいなと思いました。


特徴のない砂防ダムは完全にスルーという潔さもいい




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