特集 2020年9月5日

今年の夏は2007年の再来だった?~月一天気

1ヶ月という長いスパンで天気の特徴や仕組みを見ていく連載です。解説はデイリーポータルZではおなじみ、気象予報士の増田雅昭さん。ついでに、ライターが気になる天気の疑問もぶつけます。

(本連載は1ヶ月の振り返りと見込みをお伝えするもので、詳しい予報は行っていません。詳しい予報が見たいかたは、ウェザーマップなどの専門サイトをどうぞ)

ここの文と対談まとめ:小野洋平(やじろべえ)

1977年滋賀生まれ。お天気キャスター。的中率、夢の9割をめざす気象予報士です。 好きな言葉は「予報当たりましたね」。株式会社ウェザーマップ所属。
ツイッターでも気象情報やってます。(動画インタビュー)

前の記事:梅雨の影響で今年の夏は猛暑? 冷夏?〜8月の天気〜

> 個人サイト ウェザーマップ・増田雅昭 ツイッター @MasudaMasaaki

今年の夏は2007年の再来?

林
まずは 8月の天気を振り返りたいと思います。8月は見事、増田さんの言う通りになりましたね。
増田
自分で言うのもアレですけど……神ってましたね。もっと、大きく言っておけばよかった……(笑)。
西村
暑くなるタイミングがドンピシャでしたよ。素人考えでは、こんなに暑くなるとは思わなかったですもん。
増田
17日に高温の日本記録に並ぶ41.1度(浜松市)が出たのもビックリでしたが、一番驚いたのは前回2007年の話を出したじゃないですか? それと全く一緒だったんですよね。
013.jpg
先月の月一天気から、増田さんが8月16日の40.9度を予言していた瞬間!
林
たしかツイートされていましたよね? 2007年と同じ動きをしているって。
増田
そうなんです。2007年の7月は冷夏気味で雨が多く、8月1日に関東の梅雨が明けました。その後、ひたすら晴れ続け、8月16日に当時の日本記録の40.9度を記録。そして、なんと今年も8月16日に40.9度を記録したんです。
加藤
全く一緒だ。
増田
日付、そして気温までピッタリだったのは、身震いしましたよ。
林
このパターンがあるんですね。
増田
実際コンピューターの予想がなかった時代は、ここ1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月の天気図で、同じようなパターンを探して季節の予報をしていましたからね。とはいえ、ここまでピッタリと当たるのは珍しいです。
002.png
▲2007年の7月〜9月。赤い部分は平年よりも気温が高いことを表している
気象庁ホームページ https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/db/longfcst/regtemp.html より
003.png
▲そしてこれが2020年の7月〜
気象庁ホームページ https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/longfcst/tenkou/hensa_temp.htmlより
林
ということは、今年の9月もこのパターンでいくのでしょうか?
増田
9月もとにかく気温は高いと思います。すぐに下がりそうな気配はないですから。
林
チベット高気圧は去ったんですか?
増田
チベット高気圧は、もう勢いはありません。しかし、いまだに太平洋高気圧はしぶとく残っています。
林
弱まらない?
増田
一旦弱まっても、すぐにピョコっと出てきてます。35度以上が続くとは思いませんが、厳しい残暑は続くでしょうね。
林
お話を伺う前に9月の天気がわかってきましたね。
増田
そうですね(笑)。9月も2007年と同じく、残暑が厳しく、台風が接近すると思います。
西村
やはり台風が上陸する可能性は高いんですか?
増田
大いにあると思います。
林
それは7月に使わなかった温かい空気が残っているから?
増田
そうです。7月のツケが大きいですね。
西村
もしかしたら、10月や11月にも台風が来るのでは?
増田
近年は10月にも当たり前のように強烈な台風が上陸しているので、今年も備えておく必要があります。しかし、11月にも来たらビックリです。
西村
もう発生しているんでしたっけ?
増田
熱帯低気圧が今日にも日本のはるか南で発生して、台風9号になりそうです。もしかしたら、31日には沖縄に来ているかもしれません。(取材は8月27日)
004.png
2020年の台風9号の経路図(気象庁ホームページ https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/route_map/bstv2020.html より)
西村
今、北朝鮮にも台風が来ていますけど、これって珍しいですよね?
増田
あまりないですね。北にいくほど、台風の形は崩れていきますからね。
加藤
仮に南から来ても韓国で引っかかってしまいますよね?
増田
そうですね。太平洋高気圧が日本列島を覆っているので、それを避けるように日本の西を北上します。
林
なるほど。ということは、韓国の台風シーズンは日本よりも早い?
増田
早いです。
西村
ちなみに975hPaですが、台風としては強いですよね?
増田
沖縄周辺だけでなく、九州の西あたりでもどんどんと発達していましたから。それだけ海水温が高いということですね。なので、これから来る台風も発達しながらやってくるでしょう。
西村
7月はめちゃくちゃ雨が降り、8月はめちゃくちゃ暑くて、9月は台風で風と雨が強いんですね。大変だ。
いったん広告です

世界各国が日本にGo To トラベル

林
今月の天気はなんとなくわかりましたが、改めて9月の登場人物を教えてください。
増田
太平洋高気圧、台風、あとは北から秋雨前線。これが下りてきてくれると、だいぶ涼しくなるんですけどね。
林
秋雨前線は梅雨前線が名前を変えて、降りてくるやつですよね。9月に現れるものなんですか?
増田
現れます。早い年では、8月に顔を出す時もあります。
林
どの辺に現れるんですか?
増田
まずは北海道の北あたり。今年はまだしっかりとは現れていないですが、近々湿気をまとって下りてきますよ。
林
ほかの登場人物はいますか?
増田
後半になると、秋の移動性高気圧ですね。カラッとした空気が大陸からやってきます。
林
大陸から来るため、湿気を含んでないんですね。
001.gif
大陸からカラっとした高気圧がやってくる。これが運動会の天気のもと
増田
そうです。秋の初物としては「秋刀魚」が代表的ですが、天気的には移動性高気圧です。これが来ると空気が秋になったなと実感します。
西村
運動会の時の天気ですよね? 日差しは強いけれど、蒸し暑くはならない。
増田
そうですね。日中は30度を超えても、朝晩はだいぶ過ごしやすいと思います。
加藤
2007年のパターンでいくと、移動性高気圧が来ていないんですか?
増田
9月の終わりに来てくれるかどうかです。
林
9月はまた天気予報が難しいんですか?
増田
難しいです。じつは、関東など東日本は梅雨より秋雨の方が降水量は多いんですよ。
つまり、雨の日が増えてくるため……ごめんさない(笑)。
林
湿気が多いと、いつ雨になるか予想するのが難しいと言ってましたもんね。
増田
そうなんですよ。だから、移動性高気圧は気象予報士にとって天使です。湿気がなければ、雨の要素もないですから。
加藤
その移動性高気圧は海を渡るときに湿気を含んだりはしないんですか?
増田
東シナ海を渡る時は多少湿ると思います。ただ、移動性高気圧は東西で1000km〜3000kmという大きさなので、全体が一気に湿ることはないですね。
西村
もしかして、今モンゴルに行けば、日本の秋みたいな気候なんですか?
増田
秋のパターンになりつつありますね。
林
あぁ〜移動してくる先に行けば、季節が先取りできる
増田
そうですね。
林
では、冬にシベリアへ行けば、寒気が先取りできちゃう?
増田
できちゃいます。12月でも常夏の南の島へ行けば台風があったりします。
林
自分は日本に居ながらにして、フィリピンとかモンゴル、シベリアが来てくれるわけですね? 天気をそういう風に考えると、ポジティブな気持ちになりますね。
005.png
話をもとに林が描いた図(増田さん承認済み)
加藤
学校の理科の授業でも最初に「日本は四季の変化が激しい」って教えますからね。
増田
言ってしまえば、日本は世界各国がGo To トラベルしてきてくれるわけですね。
西村
元々のインバウンドがあったんですね。
増田
とにかく移動性高気圧が来るまでは太平洋高気圧が粘って暑くなるか、秋雨前線が下りて涼しくなるか、南から台風が熱帯の空気を引き連れてくるか。
林
台風が来ると、その後も暑くなる?
増田
そうですね。日本の北まで来てしまうと、たとえ涼しくなってきたとしても、また暑くなります。
いったん広告です

高気圧はパワハラ上司

006.png
気象庁ホームページ より
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_s1.php?prec_no=44&block_no=47662&year=2020&month=08&day=&view=g_pre
 
加藤
8月って2日間しか雨は降っていませんよね?
増田
そうですね。東京で1ミリ以上の雨を観測したのは2日間だけです。それもたしか雷雨でしたよね?
西村
雷雨って夕立みたく降りますよね?
増田
そうですね。23日は高気圧が一時的に弱まったタイミングで雨雲の発達を許しちゃったのでしょう。
加藤
大気の不安定な日が少なかったということですか?
増田
安定しすぎていたんですね。安定というのは、空気があまり動かない状態のこと。
一方で不安定というのは、上と下の気温差がありすぎるために、空気が上下に動こうとする状態のこと。例えば、地面付近が熱くなりすぎると空気が軽いため、上に行きますよね?一方で、上空が冷たいと温度差が大きいため、空気が上下に混ざって温度差を解消しようとします。これが不安定な状態なんです。
林
そうすると雨になる?
増田
その上下の運動により上昇気流が生まれるということなので、雲が発達するんですね。そうして大きく発達したのが積乱雲。
加藤
だから今年は積乱雲を見なかったんですよ。
増田
そうだと思います。では、なぜ安定してたか。今年は地面付近が熱いため、空気が上がっていくはずだったんですが、上から太平洋高気圧とチベット高気圧が押さえつけていたんです。
林
漬物石ですね?
増田
はい。有無を言わさず、上から押さえつけ、雲の発生を許さなかったんです。
007.jpg
高気圧の押さえつけを身体で表現する増田さん
林
お〜パワハラ上司。
増田
半沢直樹の世界ですね。頭を下げたまま、上げさせないようにしているんです。
加藤
単に暑いと雷雨が発生するわけでもないんですね。
増田
高気圧に隙があれば、あっちこっちで起こっていたはず。今年は2日間しか許さなかったんです。
林
国内最高気温を記録した17日はすごく押さえつけられていた?
008.jpg
国内最高気温を記録した日の衛星画像
増田
はい。あの日はものすごく空が青かったじゃないですか? ちなみに映っているのは空高い雲です。上空ほど強い風が流れているため、1時間でかなり移動していますから。
加藤
下降気流の高気圧が二段構え(太平洋高気圧とチベット高気圧)ですもんね。
増田
組織と一緒です。上からの圧力が強ければ、強いほど……。ウチはそんなことありませんよ。風通しの良い組織ですから(笑)。

夏から秋にかけては、お別れ間近のカップル

西村
7月と比べたら全然違うんでしょうね。
009.jpg
7月の衛星画像。日本列島の上に梅雨前線がかかっている
気象人 https://kishojin.weathermap.jp/diary.php?ym=202007&sat=1 より
林
ここまで差があるのは面白いですね。
増田
ちなみに7月に日本でうねっていた雲ですが、8月7日ごろには朝鮮半島にかかっています。

010.jpg

西村
だから、8月上旬は韓国が集中豪雨だったんですね。
増田
そうです。だんだんと前線が上がっているということですね。ちなみに関東は8月1日に梅雨明けをしましたが、東北北部は梅雨明けできなかったんですよ。
西村
朝鮮半島にかかっている、ということは東北にもかかっていたんですか?
増田
その通り。東北南部、北陸はなんとか8月2日に梅雨明けしましたが、そうこうしている内に立秋を過ぎてしまいまして……。
林
立秋が基準ですか?
増田
目安ですね。
林
マラソンみたいですね。その時間までにゴールしないとダメだよって。
加藤
北海道は今、寒いってニュースが出ていたのは?
増田
秋雨前線が20日に北海道と青森の間くらいまで、一時的に下りて来ていたんです。

011.jpg

加藤
これを見ると、梅雨前線の形とそっくりですね。
増田
これが関東にまで降りてくれば、冷房をつけずに寝られるでしょうね。ただ、下りて降りてくるのは先になりそうですが。
林
徐々に秋になっていってるんですかね。
増田
夏が真っ赤だとして、秋が黄色だとしたら、一気に変わるんじゃなくて、薄い黄色が何度も上塗りされて、ちょっとずつ色が変わっていくイメージですね。
なので、まだまだ昼間は暑いですが、朝晩は過ごしやすくなってきましたよね?
西村
詩的ですね。
増田
もしくは、夏から秋にかけては、お別れ間近のカップルをイメージしてください。
西村
増田
冷めたり、ちょっと気持ちが戻って熱くなったりしつつも、結局は冷めていく。
林
秋にお別れは寂しいですね。
いったん広告です

先月のクイズの答え合わせ

Q. 今年の国内の最高気温は?

正解は41度。

林
今月はものすごい応募がありましたよ。
増田
やはり興味の対象が身近だったから、答えやすかったのかな?
林
正解者もけっこういますよ。

shiguさん、しの助さん、あきさん、とろイワシさん、メロポンさん、hasさん

増田
昔からの常連さんもいらっしゃいますね。特にメロポンさんは毎回ですし、当ててこられますね。
林
気象予報士さんじゃないといいですね。

今回もクイズです

林
今月もみなさんが答えやすいように最高気温を聞きますか?
増田
それも良いですね。もしかしたら更新するかもしれないですし。
Q. 2020年9月における国内の最高気温は?
林
ちなみに国内の9月の最高気温は?
増田
2000年の39.7度。
林
40度いったら面白いですね。締め切りはどうしましょうか?
増田
あまり遅くなると、40度が出ちゃうかもしれませんからね。7日にしましょうか? 
 

012.jpg

増田
ちなみに11日までの予報です。台風が北上したら、驚きの気温を記録するかもしれませんよ。
林
そうか。国内だから進路次第ですよね。
増田
基本的に内陸や盆地の方が暑くなりやすいのですが、今年41.1度を記録した浜松は海が近いんですよ。
ところが、この日は山からガンガンと風が吹いたため、海風を寄せ付けなかったんです。
浜松のようにフェーン現象が加わると、意外なところで高温が出るかもしれませんね。
林
僕は36度にします。理由は今月41度まで上がると思わなかったから。
西村
今月こそ37度で。
加藤
じゃあ38度!
増田
残暑が厳しそうなので、40度を超えるか興味深いですね。
小数点以下1桁までお答えください(例:41.7度)
しめきり:2020年9月7日(早いですよ~)
▽デイリーポータルZトップへ

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

デイリーポータルZを

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓

 

今日のみどころ