サラリーマンが似合う場所、似合わない場所
本編で挙げた場所以外にも行ってきたので少しだけ紹介させてください。
スーツを着たサラリーマンはかっこいい。心からそう思っている。
ジャケットをスマートに着こなすのもかっこいいし、汗水流してしわくちゃになりながら頑張る姿もかっこいい。
もうみんな平日に限らず着たらいい。おれ、先駆者になります。
誰も止めてないんだからそんなに着たけりゃ着ればいい。人間は自由である。思想も自由ならば服装も自由だ。
当然スーツを着てサラリーマンしてもいい。何の用もなくとも。
木を隠すなら森の中、スーツ姿のサラリーマンを隠すならビジネス街の中である。いや、別に隠す必要はないのだが。
私はふだんエンジニアをしているのだが、こういったビジネス街はどちらかというと営業マンとかが活躍するイメージだ。せっかくなので営業マンの気持ちでうろうろしてみよう。
しかしまあ虎ノ門には高層ビルが多い。ビジネス街自体に馴染みがないものだからそれだけで新鮮である。
せっかくなので気になるビルに片っ端から入っていきたいが、きっと警備員さんとかにしっかり怒られるんだろうな。アポないし、用もないし、営業マンでもないし。
お、便利だなあと一瞬流しかけたが、これが有効活用されるのってどういうシチュエーションなんだ。PCはあるけどスマホを会社に忘れていて、Google Driveとかに上がっている資料をPCで確認しながら取引先に公衆電話で電話するとかだろうか。まさにモーレツサラリーマンだ。
撮ってもらった写真を見て、何か営業マンぽくないな、どうもふざけている感じがするなと思ったら股が開いていた。スーツ姿の人間は股を開かないという知見である。
あとスーツ姿の人間は知らないビルの前で記念写真も撮らない。
休日もスーツを着てサラリーマンしたい。そう思ってうろうろしているが、特にやることがない。当たり前の話だがおれはただスーツを着てうろうろしているだけであって、売るべき商品があるとか、お得意先に挨拶をするとか、そういった仕事としてやるべきことが何一つないのだ。
しかしせっかくのスーツ姿である。スーツ姿のサラリーマンらしいことを一つや二つやっておきたい。
そうだ、飯だ。飯を食べよう。
私の好きなドラマに「孤独のグルメ」がある。スーツを着たサラリーマンが外で仕事をしつつ1人でご飯を食べるというドラマだ。最新のシーズン10まで観たのだが、あのドラマを参照するにサラリーマンとは「スーツで外を歩いて飯を食べる人」である。
なので外を歩いた後は飯だ。どうだ、やることがなくてもサラリーマン度が爆上がりだろう。
これがもうめちゃくちゃうまい。スーツを着てうろうろしただけでうまいんだから、きちんと仕事をしてから食べたらもっとうまいだろう。
仕事の合間にうまそうな飯屋で飯を食う。普段近くのコンビニで適当に昼飯を済ませている私にはなし得ないことである。幸せがあふれている。
さあ、エネルギーも充填完了。営業は足で稼いでナンボだ。歩くぞ〜
街の雰囲気が気持ち賑やかになってきたなと思ったら新橋まで来ていた。新橋ってなんでサラリーマンの街って言われているんだろうと思っていたが、ビジネス街から歩ける距離にあるからなのか。土地勘が無さすぎて知らなかった。
突然だが、スーツ姿のサラリーマンは行動力だけではダメだ。確かな知識と深い洞察力が、その仕事を確かなものにするのだ。根拠は全くないがきっとそうだ。
そんな知識と洞察力を鍛える施設が新橋駅近くのビルにあるという。スーツを着たからには当然行くべきだ。
ゲームとは言わば思考実験である。論理的思考力、反射神経、目標達成力などをフルに用いたシミュレーションだ。そのためこれもサラリーマンの勉強の内なのはあまりにも明白である。
休日だからか人はまばらだったが、平日ともなればおそらく鍛錬を積むスーツ姿のサラリーマンでごった返しているに違いない。「ゼビウスの1面もクリアできないようじゃアップセルなんて夢のまた夢だぞ」と部下に厳しく指導する上司が目に浮かぶようだ。
その後も別の街に赴きうろうろしたりしていたのだが、一つだけずっと我慢していたことがある。
このスーツとかいうやつ、暑すぎないか。
この最近うそみたいな暑さが続いているが、この日も例外ではない。
もちろん半袖のシャツであったり、ノーネクタイにするとかで体感温度は多少変わってくるだろう。しかしインナーにシャツ、パンツに革靴というスーツの基本構成はどのサラリーマンも同じはずだ。
おそらくやることがないばかりにずっと外にいるからだ。ちくしょう、やることさえあればな......!
私の好きなドラマに「昼のセント酒」がある。営業成績の冴えないサラリーマンがちょっと仕事をしたのちすぐに銭湯に入って酒を飲み、直帰してしまうドラマだ。あのドラマを参照すると、サラリーマンとは「スーツで外を歩いて酒を飲んで帰る人」だ。
つまり酒だ。酒を飲もう。
ここまできてふと気づいたのだが、「孤独のグルメ」も「昼のセント酒」も久住昌之さんという方が漫画版の原作を担当されている。おれの中の営業マンへのふんわりとしたイメージは完全に久住昌之さんの世界観だったのだ。人知れず謎がそっと解けたのでここに記しておきます。
思いつきでうろうろしてみたが、ビジネス街周辺は高層ビルに裏路地、渋めのゲームセンターと思いの外見所が多く、スーツ姿だと気分が乗っていっそう楽しめた気がする。ディズニーランドで浮かれた帽子やカチューシャをつけるのと多分同じシステムだ。
あー、楽しかった。
まあ、明日からは本当の仕事があるので、普通にサラリーマンとして一週間頑張ろうと思います。
本編で挙げた場所以外にも行ってきたので少しだけ紹介させてください。
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