景色からたちどころに国が分かる人がいる
Googleのストリートビューを使った場所当てゲーム「GeoGuessr(ジオゲッサー)」というものがあるのだが、そのトッププレイヤーたちのレベルが凄まじいことになっている。
先日「RTA in Japan Summer 2023」という、いろいろなゲームを全速力でクリアする大会の一種目に GeoGuessr の枠があり、プレイヤーである Daig_O さんのプレイがすごいと話題になった。
↑実際のプレイの動画
GeoGuessr にはいろいろな遊び方(モード)があるが、この大会では国を当てるモードでプレイが行われた。そのようすを少し紹介したい。
「まずはどこが出るかな・・と、これは weg っていう道路名の終わり方、これオランダになります(会場笑)」
画面中央やや左の青い看板に「Knarweg」と書かれているが、この語尾でオランダだと分かるらしい。出題されてからわずか4秒。
「これはちょっと難しいですね・・。エスワティニかな? 南アフリカか、エスワティニかな、と思うんですが・・」
「(画面中央の)この長い草が、たぶんエスワティニかなと思います。」
見事エスワティニ(アフリカ大陸の南の方の国)で正解だった。会場からは「おぉ〜」と感心した声があがる。
「あ、出ました! ケニアのシュノーケル」
ケニアのシュノーケルとは、画面中央の黒いにょきっとした部分のことである。
プレイを始める前に Daig_O さんが国の見分け方のコツをいくつか会場で教えてくれていたのだが、そのうちの1つとして、ケニアのグーグルカーは前部にシュノーケルのような黒いにょきっとしたものが出ているそうなのだ。それが実際に出題され、会場は盛り上がった。
こんな感じで、GeoGuessr のプレイヤーはその国の特有の看板や植生、文字、グーグルカーなどありとあらゆる情報を使って(覚えて)国を当てる。
とにかく Daig_O さんがあまりにもすごいということで連絡を取ったところ、ありがたいことにお話を聞かせていただくことができた。
GeoGuessr のプレイヤー、Daig_O さんにお話を聞く
ご本人は顔出しがNGとのことで、Daig_O さんがふだんアイコンとして使っているペンギンで隠させてもらった。
ーー RTA in Japan の動画を拝見しました。次元が違うなと思って言葉を失ってるところなんですけど。
ありがとうございます。
ーー Daig_O さんはいわゆるゲーマーという感じなんでしょうか。それとも GeoGuessr を専門で?
ゲームは人並みにはやってるけど、くらいですかね。ほとんど GeoGuessr しかやってないです。
ーー なるほど。GeoGuessr にはどうやってハマっていったんでしょうか?
最初は Twitter(現 ?)で知ったんです。もともと地理とかにはそこまで興味なかったんですけど、旅行はわりと好きな方で、
はじめのうちは点を取るっていうよりも、ランダムに出題される景色を見て、ああこんな所あるんだと感動してました。あと、そこのラウンド(問題)が終わっちゃうとそこにもう戻れないので、この景色見るの最後なんだなあ、っていう儚さのようなものにやみつきになってしまって。
ーー なるほど、旅情的な楽しみが強かったんですね。
最初は競技とかそういう面よりは、どちらかというと旅行気分を味わったり、いろんな場所をめぐって景色を楽しむのがメインで、はまるきっかけになりました。
ここで Daig_O さんが言っていることで感銘を受けたので、少し説明したい。
GeoGuessr は、すごい人のプレイ動画を見ている分にはたのしい。この人たちすごいなと感心してしまう。ただし、自分で解こうとすると大変だ。
出題は Google のストリートビューで行われるので、道路脇にあるあらゆるものをヒントとして国を推測することになる。そのために、たとえばボラードとよばれる車止めの、国ごとの特徴を覚えたりする。
また、ポーランドの特徴はこう、ブラジルの特徴はこう、といったように国ごとの見分けポイントをまとめたようなガイドも存在する。
ぼくも頑張ってそれらを少しだけ覚えてゲームに挑戦してみたのだが、なにせ出題範囲が全世界なので、覚えた国は出題されず、結局手も足も出ず辛い・・という感じになってしまった。ゲームを覚えたばかりなのに最初から高難度のステージしかなく死に続けるような感じだ。
GeoGuessr の強い人たちはいったいどうやってモチベーションを保ちながら入門していったのだろうか、と思っていたのだ。なので、最初は景色を見て楽しんでいた、という話にはなるほどと思った。旅を楽しむ。それで手持ちの武器でたまに解ければ嬉しい、でいいじゃないかと。
ーーまずは楽しむということですね。
点を取ろうと思ってやらない、というのは重要だと思います。まずは楽しくやる。覚えたことはいつか使えればよくて、使えたときってめちゃくちゃ嬉しいんです。そういうのを繰り返していくとやみつきになってしまう。
あとは GeoGuessr ってユーザーの作ったマップっていうのもあって、学習用にテーマを絞った、絶対に看板が出てくるみたいなのもあるんです。それで最初覚えてもいいかなと思います。
意外な国が似ていることがある(ブラジルとカンボジアなど)
つぎに RTA in Japan でのプレイについて聞いてみた。基本は解説しながらプレイしてくれたのでよく分かったのだが、とくに説明がなく超能力で解いたのかな?と思うようなラウンドもあるのだ。
ーーRTA in Japan のプレイ動画についてちょっと教えてください。
はい。
ーーこのラウンドでは、数秒で「これロシアですね」と正解していて驚いたんですが、どこを見てロシアと判断されたんでしょうか?
最初に一瞬出る横断歩道マークがあるんですけど、そこに黄色い枠がついてるっていうのがロシアでよくあるんですね。
(↑別の場所だが同じタイプの横断歩道マーク)
それと、その中を歩いている人が、ウクライナ、ロシア、リトアニアあたりにいる人なんです。
あとは住宅ですかね。ここに写っている旧ソ連の代表的な集合住宅、これがロシアとかそのあたりに多い。あとは寒そうな景色も含めて、ロシアかなと。
ーーなるほど。あまりにも一瞬で答えているので、景色をぱっと見ただけで分かっちゃうのかなと思ったんですが、そうではないと。
正直、景色だけで一つの国に絞れるっていうのは割とまれで、どこかしらに何か使えるものが映ってるはずです。攻めるときには景色だけで推測することもありますが、特にヨーロッパとかは難しいですね。
ーーでもやっぱり、ぱっと見たときに「どこっぽい」っていう感覚はあるっていうことですか?(同席した編集部石川さん)
それはあります。それでも数カ国まで絞れるくらいなんですが、たまに一カ国に絞れることもありますね。レソトとかはそうです。木がない丘というか山がどこに行っても広がってるんですね。
(↑レソトの景色の例)
なのでこの景色を見たらレソトかなというのはあります。あとは、トルコとかにも似たような場所があるんですね。そのへんも面白いポイントかなと思います。
(↑トルコ東部。確かに似ている)
ふつう想像しえないような箇所に共通点があったりするんですよね。景色でいうとですけど。レソトとトルコが似てるとか、ブラジルとカンボジアが似てるとか。たぶん普通の人は感覚としてないと思うんですけど。
(↑ブラジル)
(↑カンボジア)
確かに似ている。国ごとの違いも分かれば、似ている点も分かる。楽しそうだ。