もっとメンマを身近な物に
そもそも、デイリーポータルZのライター陣はメンマ好きが多い。
過去にも
高瀬さん、
玉置さんがメンマを自作し、
西村さんがアホほどメンマののったメンマラーメンを食べに愛知まで取材に行ってる。
ここまでメンマ記事の多い読み物サイトもないだろうし、いっそメンマポータルZでもいいんじゃないかというレベルである。
しかし、上記のメンマ自作記事を読んでもらっても分かるとおり、自作はかなり面倒なのだ。中華街なんかに行くと塩漬けのメンマが売ってるが、塩抜きして味付けして…の行程は時間がかかる。
なかなか売ってないけど、富士商会の極太メンマは美味い。
そしてスーパーでは味付け済みのメンマを売っているが、残念ながら選択肢が少ない。
となれば、やはりここは家庭で「メンマっぽいもの」を作るのが、メンマを味わうベストソリューションではないかと思うのだ。
で、準備したのがこれらの次世代メンマ候補生となる食材。
候補生は、メンマの食感である「コリコリ」または「しゃきしゃき」を再現し、かつメンマ味の染みそうな感じ、という視点でエントリーされている。
エリンギ・ごぼう・タマネギ・セロリの皆さん。この中から新世紀のメンマは生まれるか。
で、ここまで買い物してきた時点で、気が付いた。メンマってそもそもタケノコ(ハチク)なんだから、タケノコの水煮とかで作ればその時点でほぼ成功なんじゃないか。
実際、後からクックパッドでレシピ検索したら、普通のタケノコからメンマっぽいのを作るレシピがなんぼでも出てきた。
ベストソリューション宣言、いきなりの失墜である。
でもいいんだ。これはメンマを作る試みではなく、ジェネリックメンマへの挑戦なのだから。
ジェネリックメンマへの作り方
ジェネリックメンマは、かなり簡単だ。
まず食材をおおよそメンマサイズに切りそろえる。あまり丁寧にサイズ感を揃えすぎてもメンマっぽくないので、あくまでも「おおよそ」がいい。
ごぼうは長さを揃えててスライスしていけば、ほぼメンマな見た目に。
あとは、軽く炒めて火を通してから、砂糖・酒・鶏ガラスープ・醤油・オイスターソース・鷹の爪を入れて、汁気が無くなるまでそのまま炒め煮にしていけばできあがりだ。
もしあれば五香粉をちょっと足すと中華っぽさが上がるし、好みで胡椒もいい。
そうだ、がんばれ。お前は今から新しいメンマになるのだ。
調理時間はサッとやれば10分前後。
これでジェネリックメンマが作れるのであれば、メンマという食べ物がぐっと身近な存在になるはずだ。
ジェネリックメンマ(ごぼう)と、レガシーメンマ(買ってきたやつ)。
どうだろうか、この感じ。見た目的に、なにか大きな可能性を感じないだろうか。
この勢いで残りの食材もメンマになってもらおう。
次世代のメンマ、発表
さて、完成したのがこれらの5品である。
ジェネリックメンマ5種盛り。中央は比較用の本物。
さっき食材の時点でエリンギ・ごぼう・タマネギ・セロリの4品だったのが、突然に1品追加になっているのに気付かれたかもしれない。
飛び入りで「我こそ次のメンマなり」と参加してきたのは、山クラゲである。
今回のダークホースこと乾燥山クラゲ、湯戻し中。
たまに居酒屋のお通しになってたり、コンビニのおつまみコーナーに置いてあったりするのでご存知の方もいるかもしれないが、茎レタス(ステムレタス)とも呼ばれる植物の茎の部分を細切りにして乾燥させたもの。
乾物好きなうちの妻が、乾物の本に「ラーメンにのせてメンマ代わりにもなる」と書いてあったよ、と教えてくれたので、急遽取り寄せて飛び入り参加させてみたのだ。
ということで山クラゲを含めた5品のうち、ジェネリックメンマとして今後の活躍が期待できるものがあったのか、発表していきたい。
まずはエントリーナンバー1、ごぼう。
残念な結果となりましたが、今後は中華風のきんぴらとしてのご活躍をお祈りします。
評価項目の「C/S比」とは、コリコリ/シャキシャキ比のこと。メンマの歯応えに近いか、で評価している。
そして風味は、メンマの風味に近いか、ということ。これらを5段階で評価してみた。
ごぼう、残念ながらメンマじゃなかった。というか、味付けを考えたらこれどうやってもきんぴらごぼうである。オイスターソースと鶏ガラスープの働きでやや中華寄りになっているが、かたくなにきんぴら。
歯応えは強く噛み心地はシャキシャキ気持ちよいが、コリコリ感に欠ける。
とはいえ中華風きんぴらとして普通に美味いので、今後はその道を進んでもらうのがよさそうだ。
続いてエントリーナンバー2のセロリとナンバー3のタマネギ。これはもう材料切ってる時点で「違うな」と思い、炒めながら「無理だ」と感じていたのだが、まぁそうだよね。
地平線の果てまで行っても単なる中華の野菜炒めであり、メンマとは交わらない。
いわゆるセロリ炒め。
いわゆるタマネギ炒め。
そろそろ企画の危うさをダイレクトに感じ始めていたこのタイミングで、奇跡が起きた。
エントリーナンバー4、エリンギである。
まず、ルックスからじっくり見ていただきたい。
少なくとも、ものまね館キサラでメンマそっくりタレントとしてステージに出てきたら、僕なら拍手する。メンマのそっくりさんだ。
……メンマかもしれないぞ、彼。
そして食べた瞬間に「あっ、これメンマ!」と声が出た。
いや、エリンギなんだけど、かなりメンマなのだ。
C/S比もシャキシャキとした繊維の歯応えにやや欠けるものの、柔らかめのメンマだよと声高に主張されれば「…あ、そうなの?」と通してしまいそうな勢い。
きみ、今度からメンマやりなさい。
風味も、キノコの旨味風味が発酵させたハチクに寄せてきた感があり、なかなか堂々としたメンマっぷりである。たぶんラーメンに数切れ入ってる程度であれば、「ん?いまのメンマだった?」と疑問に思ってるうちに食べきってしまうだろう。
間違いない。エリンギはジェネリックメンマとして認めていい。
最後にもう一品、飛び入り参加のエントリーナンバー5、山クラゲである。
こういうダークホースが最後に評価を巻き返すって、漫画なんかだとよくある感じだろう。
ここで巻き返さないリアル。
うーん、駄目だった。
まずルックスはかなりいい線行ってるのだが、色が緑色だ。ラーメンの麺にクロレラやほうれん草を練り込んだ緑色の麺があるが、あれを見た時の違和感に近い。
あと、山クラゲ自体の風味なのか、もしかしたら戻し方が悪かったせいで乾物臭さが残ったせいなのかは分からないが、独特の風味がどうしてもメンマに重ならない。
「メンマ代わりになる」という話はなんだったのか。残念ながらジェネリックメンマとしては、ない。
今回の結論は、メンマが無いならエリンギを食べればいいじゃない、ということでいいと思う。近い将来、ハチクが絶滅したとしてもメンマは滅びないのだ。
少なくとも僕は今後、彼をジェネリックメンマとして厚く遇していきたい所存だ。
最後に、今回作ったジェネリックメンマ(になり損ねたのも含む)をラーメンにどっさりのせてみたのだが、いやー、美味いわー。
まぁ、普通に中華味の野菜炒めがたっぷり乗ったラーメンだし。
そして、やはり中でもエリンギ(ことジェネリックメンマ)が特段のメンマ感を発揮していた。うっかりすると本当にメンマと錯覚するぐらいには、メンマなのだ。
ジェネリックメンマラーメン、メンマラーメンっぽくはないけど美味い。
松茸のお吸い物(粉末)+エリンギでご飯を炊くと松茸ご飯風になる、という話もあるが、彼のものまねタレントとしてのポテンシャルに改めて驚かされた次第である。