特集 2017年1月23日

育ちすぎたタケノコでメンマを作る

育ちすぎて食べられないタケノコからメンマを作ってみました。
育ちすぎて食べられないタケノコからメンマを作ってみました。
去年の春、食べるにはちょっと硬すぎる育ちすぎたタケノコをたくさんもらってきた。ものは試しとそれでメンマを作ってみたのだが、意外とちゃんとしたものが出来上がってびっくり。

世界的なメンマ不足(産地の中国で採算面の低さから敬遠されているらしい)が解消される日は近いかもしれない。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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タケノコは収穫のタイミングが難しい

4月の久しぶりに晴れた休日、友人に連れられてタケノコ狩りへとやってきた。

ご存知の通り、竹というのは成長が早い植物。ここ数日雨が続いていたせいで、明らかに収穫のタイミングを逃したタケノコがポコポコと頭を出している。
アシックスを羽織った現代版竹取の翁に連れられてタケノコ狩りへとやってきた。
アシックスを羽織った現代版竹取の翁に連れられてタケノコ狩りへとやってきた。
収穫できるのは地面からちょこっと顔を出したくらいのタイミングまで。ベテランは足の裏の感覚で、まだ地中にあるタケノコを探し当てるとか。
収穫できるのは地面からちょこっと顔を出したくらいのタイミングまで。ベテランは足の裏の感覚で、まだ地中にあるタケノコを探し当てるとか。
掘ってみるまでどれくらいの大きさなのかわからないのが楽しいのよね。
掘ってみるまでどれくらいの大きさなのかわからないのが楽しいのよね。
ファミコンソフト『シティコネクション』の障害物のように育ったタケノコ。こうなるともう食べられない。
ファミコンソフト『シティコネクション』の障害物のように育ったタケノコ。こうなるともう食べられない。
食べられないからと放っておくと、竹の密度が濃くなりすぎたり、生えては困る場所にまで進出してしまうため、これらは折って捨ててくれとの指示があった。

その理屈はわかるが、ちょっともったいない気もする。この育ちすぎたタケノコ、もしかしたらメンマにすれば食べられるのではなかろうか。

前から一度作ってみたかったし、捨てるやつなら失敗しても痛手は少ないだろうということで、せっかくだから持ち帰ってみることにした。
メンマならこのサイズでもいけちゃう?
メンマならこのサイズでもいけちゃう?
いっそこいつも攻めてみようか。
いっそこいつも攻めてみようか。
メンマを作るといっても、本来は中国南部や台湾に生える麻竹(まちく)のタケノコから作るのだが、ここの竹は孟宗竹。

インディカ米でお餅を作る、逆を言えば餅米でパエリアを炊くくらい無理のある話なのかもしれない。

タケノコの皮をむこう

メンマの作り方なんて知らないので、検索して出てきた麻竹をメンマにする流れ(こちら)と、過去にライターの高瀬さんが書かれた記事(こちら、エイプリルフールのウソ記事ですが)を参考にしつつ、わからないところは妄想しながら独自の解釈で進めていくこととする。孟宗竹だけに。

まずタケノコと呼ぶには育ちすぎているタケノニイサンの皮をむくところからスタート。
食用サイズのタケノコと、食用不適切サイズのタケノコ。本当に食えるのかこれ。
食用サイズのタケノコと、食用不適切サイズのタケノコ。本当に食えるのかこれ。
先っぽは皮ばかりなので切り落とす。
先っぽは皮ばかりなので切り落とす。
マタギが作る鹿革の伝統的反物みたいだ。
マタギが作る鹿革の伝統的反物みたいだ。
縦に包丁を入れて、そこからメリメリと皮を剥ぐ。
縦に包丁を入れて、そこからメリメリと皮を剥ぐ。
普通サイズのタケノコが、ビニョーンと育ってこの大きさになったというのがよくわかるね。
普通サイズのタケノコが、ビニョーンと育ってこの大きさになったというのがよくわかるね。
どのサイズまで食べられるかと様々なサイズを持ち帰ってきたが、ちょっと多かったか。
どのサイズまで食べられるかと様々なサイズを持ち帰ってきたが、ちょっと多かったか。

タケノコを茹でよう

大量のタケノコはこのままだと鍋に入らないし、中空のため煮ようとするとプカプカ浮いてしまうので、これを適当なサイズに分割する。

外で作業していたために感覚がマヒしていたのだが、台所に運んでみたら量の多さに唖然とした。
パンダでも飼おうかな。
パンダでも飼おうかな。
ちなみにここまでの作業で、指先がなんだかギシギシしている。これが育ちすぎたタケノコのアクなのか。

私はこれを本当に食べ物にすることができるのだろうか。
人間が食べるには硬すぎる繊維質。
人間が食べるには硬すぎる繊維質。
ネットで調べたメンマの作り方だと、硬い節の部分を除いて蒸し煮にするとあるが、このタケノコ達だと形状的にそれは無理。とりあえず全部茹でてしまおうか。

アク抜きのおまじないとして米糠を多めに入れて、水から一時間半程茹でて、そのまま冷ましてみることにした。あってよかった33センチの寸胴鍋。
アク抜きの米糠って育ちすぎたタケノコにも効果があるのかな。
アク抜きの米糠って育ちすぎたタケノコにも効果があるのかな。
鍋が冷えたので下ろそうとしたら、重すぎて腰を痛めた。
鍋が冷えたので下ろそうとしたら、重すぎて腰を痛めた。

とりあえずまだ食えたもんじゃない

茹でたタケノコを手に取って確認してみると、部位ごとに硬さがバラバラで、食べられそうなところと、こりゃいかんだろうという場所があるようだ。

特にダメそうなのが皮の部分。試しに引っ張ったらきれいにむけたので、竹細工職人になった気分で一点ずつ確かめながら処理することにした。こういう作業は割と好きだ。
皮の部分はもはや竹なので、ぎりぎりタケノコと呼べるエリアまでむくことにした。
皮の部分はもはや竹なので、ぎりぎりタケノコと呼べるエリアまでむくことにした。
下処理を終えたタケノコを並べて水を切っておく。なんだか土器の発掘でもしている気分。
下処理を終えたタケノコを並べて水を切っておく。なんだか土器の発掘でもしている気分。
リストバンドみたいでかっこいい。
リストバンドみたいでかっこいい。
普通のタケノコならこの段階までで、もう水煮として美味しくいただけるが、さてこいつの味はどうだろう。

試しにうまそうなところを齧ってみることにした。
えぐーい。
えぐーい。
やはりダメか。硬さはそれほどでもないのだが、食用としては不適切なえぐみが全然抜けていない。

トウモロコシの芯を齧っているような甘さもうっすらあるのだが、なんだか喉の奥がピリピリと痒くなってきた。

アク抜きをしていないワラビのようだが、大丈夫かこれ。重曹でも入れるべきだったか。
一緒に茹でた食べ頃サイズのタケノコは、柔らかくてエグミもなく、とってもおいしかったです。収穫のタイミングって大切ですね。
一緒に茹でた食べ頃サイズのタケノコは、柔らかくてエグミもなく、とってもおいしかったです。収穫のタイミングって大切ですね。

塩を振って発酵させてみよう

続いては一か月以上も常温で自然発酵させるという、素人がやると絶対に失敗しそうな工程だ。

詳細まではよくわからないが、本来はなにか加えなくても竹が持っている乳酸菌の力で腐ることなく発酵してくれるっぽい。だがそれはきっと確かな知恵と熟練の技術があってこそ。

知恵も技術もない私が頼るべきは、やはり大量の塩ではなかろうか。
ドサドサと大量の塩を混ぜ込めば腐らないはず!
ドサドサと大量の塩を混ぜ込めば腐らないはず!
目指す製法が『職人が作る伝統のメンマ』から、『おばあちゃんが教えるタケノコの漬物』へと方向転換している気もするが、塩を振らずに発酵させる勇気が私にはなかった。

これをビニール袋に詰め、さらに上から季節はずれの雪のようにドサドサと塩を振り、なるべく空気を抜いて密閉。
塩の多さは不安の表れ。
塩の多さは不安の表れ。
この時点でもう不安しかないのだが、やめたらここまでの苦労がすべて水の泡。退路を断って前を向いて進んでいくしかないのだ。

時として、このように人類は傷を大きくしていくのだが。

ちゃんと発酵してくれたっぽい

しっかりと重しをして台所の隅に隠しておいた塩漬けのタケノコ。1か月くらいで次の工程へと進もうと思っていたのだが、腐っていたらどうしようとなかなか袋を開ける勇気が出ずに3か月放置。

視界の片隅にチラッと入るたびに胃がキリキリするので、早起きをした可燃ゴミの日に、勇気を振り絞って開封してみることにした。
こ、この匂いは……
こ、この匂いは……
すると袋の中から漂ってきた匂いは、嫌な腐敗臭ではなく、沢庵を漬けている糠床や、野沢菜の樽のような感じ。私は賭けに勝ったのか。

水分がたっぷりと出ていて焦ったが、どうやらしっかりと乳酸菌で発酵してくれたようで、経験上これなら問題なく食えそうだ。

さっそくチャチャチャっと水洗いして齧ってみれば、ザクザクとした歯ごたえはメンマに近く、アクもしっかりと抜けている。

だが強烈にしょっぱい。塩よりもしょっぱい。ごめん、塩抜きをするのを忘れた。
唇が腫れるほどにしょっぱいぞ。
唇が腫れるほどにしょっぱいぞ。
とりあえず腐っていないことはわかったので、今度はしっかりと塩抜きをして、メンマっぽい味に煮てみたところ、これがなかなかうまかった。
塩抜き中のタケノコが、深海から引き上げられた謎の生物みたいだった。
塩抜き中のタケノコが、深海から引き上げられた謎の生物みたいだった。
適当な大きさに切って、ラード、胡麻油、醤油、みりんなどで煮る。
適当な大きさに切って、ラード、胡麻油、醤油、みりんなどで煮る。
本物のメンマに比べると歯ごたえがちょっと弱く、タケノコとメンマの中間くらい。穂先メンマのしっかりしたやつという感じだろうか。

その味わいは普通のタケノコよりも複雑で、三か月に及ぶ乳酸発酵によって、ザーサイのような奥深さが加わっている。えぐみはほぼ無し。

私がタケノコ農家だったら、すぐに商品化を検討するだろうというレベルである。
タケノコの部位によって食感が違って楽しいんですよ。
タケノコの部位によって食感が違って楽しいんですよ。

干してこそメンマは完成する

すでに十分うまいのだが、これはまだ塩漬けのタケノコであり、ここから干すことでさらにメンマへと近づくはず。干すことで保管スペースをなるべく小さくしたいという狙いも当然ある。

干す前に塩抜きをするべきか迷ったが、やっぱり腐敗の心配が勝ったので、そのまま水分をよく拭いて、干物用のネットで天日乾燥。
塩漬けにして天日干しにするという工程、まるで梅干しづくりだな。
塩漬けにして天日干しにするという工程、まるで梅干しづくりだな。
参考にしたサイトによると、3~4日でカラカラに乾くらしいが、タケノコの厚みの問題なのか気候条件の違いなのか、ちょっと乾きが遅いようなので、様子を見ながら8日間干してみた。

カッチカチになるかと思いきや、潰した高野豆腐みたいに柔らかさのある硬さとなった。米麹のようなにおいがする。
見事なまでに正体不明。曲げればフニャッと曲がる程度の硬さ。
見事なまでに正体不明。曲げればフニャッと曲がる程度の硬さ。
これを一晩塩抜きしてみたが、まだかなり塩分が残っていたので、小さく切ってからさらに一晩の待機。手作りメンマ、どれだけスローフードなんだ。
干すことで繊維がちょっと浮き出て、さらにメンマっぽくなった気がする。
干すことで繊維がちょっと浮き出て、さらにメンマっぽくなった気がする。
気持ち程度に八角を効かせて煮てみました。
気持ち程度に八角を効かせて煮てみました。
中華っぽい味に煮てみたところ、塩漬けの状態から歯ごたえが20パーセント程アップして、さらにメンマらしい味わいに育っていた。

決して嫌な硬さではなく、しっかりとした歯ごたえ。手間をかけた分だけ美味しくなっていく嬉しさ。

これはもうメンマだ。途中であきらめなくて本当によかった。
ラーメンの具にメンマは無くてもいいかなと思っていたが、このメンマなら絶対に乗せた方がうまい。
ラーメンの具にメンマは無くてもいいかなと思っていたが、このメンマなら絶対に乗せた方がうまい。

今年は塩を入れずに挑戦だ

そんなこんなで収穫から3か月以上かけて作った孟宗竹のメンマはうまかった。発酵食品であり乾物であるからこその味わいなのだろう。

できあがったのが夏なので、あれだけ作ったメンマもあと残りわずか。こうなると今年もメンマを作るに決まっているのだが、気になるのは塩を入れなくても腐らないかどうか。次回は有塩と無塩の2パターンで作ろうと思う。
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