水を得た魚
デイリーポータルZはそもそもばかばかしさをやって十余年のサイトなのだ。
それを思い出す、なにか目が覚めるような気持ちになった5日間だった。そうだ……おれたちはばかだったんだ! と。
おのれのばかをあらためて知り、まさに水を得た魚となった。
これだけやってなんの意味もないが、生き様とはそもそもそういうものなのではないか。 来年もどうぞご期待ください。
このゴールデンウィーク、デイリーポータルZはばかばかしい記事を100本掲載した。
5日間の連休中にまいにち20本、朝11時から夜20時まで1時間に2本ずつの更新で乗せきった。
仕事や遊びでネットにはりついていた方がもしいたら、一日中ばかな記事がタイムラインから目にふれた格好だ。
内容はというと、100本を繰り出しただけにあからさまに様々。それこそ、朝起きてから夜寝るまでのすべてのひとつひとつにていねいにばかフィルタをかけたといってもいい。
いったい、どんな記事があったのか。根性で100本振り返りたい。(編集部 古賀)
とにかく量が多いので、ひとつひとつの記事はもちろん「多い!」というツッコミがまず走る様相になった。
ここから、100本の記事をふんわりとジャンルにわけて並べて振り返りたいと思う。 ざっくり分けて、以下のように分けられた。
食に好奇心をついわかすのは人情だ。寿司とピザの組み合わせなどをよく「ばかの食べ物」なんて言ったりするが、そういった食へのばかな探求心は今回も旺盛で、小分類に分けるまでに及んだ。
なかでもパンがどういうことかもてはやされた。ばかばかしさとパンは親和性が高いようだ。
パンひとつでここまでばかばかしさを探求できると思うと世ののりしろの広さに頼もしささえ感じる。
飯を箱につめる、飯をにぎる。その時点で実は可笑しみがあるだけに、弁当やおにぎりにもばかばかしさは宿った。
詰める、温める、重ねる……さまざまなアプローチにばかばかしさがある。
「ごちそう」というだけですでにどこか頭の悪さがあるわけで、どこか余裕すら感じさせるのびのびとした記事が集まった。
タピオカピザに対抗して、ナタデココ(かティラミス)ピザを作る
タイトルにすでに「うっかり間違える」が入るなど、ひょうひょうとしたばかばかしさ。チキンライスの気持ちになるなど、ごちそうにトリッキーさを持ち込むなどぬかりなしだ。
食のジャンルでも咀嚼なきものを集めた。
アルコールを嗅ぎながらウーロン茶を飲んでウーロンハイ気分になる
不思議と、気分を味わう、思いこむなど、自己催眠的な記事がある。噛まなさがよぶばかばかしさだ。
お菓子には上品なものからつっこみ待ちの駄菓子までいろいろあるが、 まんべんなくばかばかしさが発見された。
ばかばかしさを探求するうえで「我慢する」という概念が持ち込まれたのは意外だ。最後のサプリメントは菓子ではないが、糖衣させるというネタだったのでこちらに。
アボカドを完全体にする、コーンの缶詰からとうもろこしを再現するなど、神々の遊びレベルまでにばかが達したのは誇らしいことだ。
それにしてもなぜわかめが家を壊すのか。
ばかやるにあたり思慮した結果、人々がネクタイを大量に巻く、つけまつげをたくさんつける、80デニールのタイツを3枚履くなどたくさん身に着けはじめた。
ゾウのお絵描き(動物園のゾウがやる芸)をアームカバーをかぶせた腕で再現する
子どもにとってのランドセルの重さは大人にとってどれぐらいなのか
宇宙人になろうとする者が現れるなど、「ばかばかしい」の言葉の指し示す範囲の広さを思い知る。
ばかをやるのに人を巻き込むのは気が引けるため、コミュニケーションの体でひとりが暴走する記事が散見された。
居留守、対峙、顔を増やすなど、コミュニケーションらしからぬワードが並んだ。むしろ孤独だ。
そもそも家にいることの多いライター勢が、ここぞとばかり丁寧に家をいじった記事。家でここまでばかがやれると思うと生きる勇気がふるいたつ。
住まいの身近なところからネタを拾っているにもかかわらずその発想はないタイプの記事が並ぶ。
ティッシュからなぜ万国旗を出そうと思うのか。
これはばかばかしくはないのでは……? 「いいのかな?」と思ってしまったのが観察ジャンル。
ばかじゃなくていいのかしら? とはどんな贅沢な悩みか。
読み手の今後の脳をハックするようなネタがそろった。明日からみんな、目の錯覚柄の床を見たら「あ」と思うことだろう。
そもそも100本すべてがレクリエーションと言ってもいいのだ。ここに分けられた記事は言ってみれば「そのほか」だ。
そのほかの多さが、ばかばかしさのチャンスがどこにでも落ちていることを教えてくれる。
朝イチに辞書を開いて真っ先に見たワードを「ラッキーワード」とする
読んでない本にふせんを貼って読んだことにするのは、ばかばかしいのではなく「ばか」だ。
最後に由緒正しいばかがやってきた感があった。
デイリーポータルZはそもそもばかばかしさをやって十余年のサイトなのだ。
それを思い出す、なにか目が覚めるような気持ちになった5日間だった。そうだ……おれたちはばかだったんだ! と。
おのれのばかをあらためて知り、まさに水を得た魚となった。
これだけやってなんの意味もないが、生き様とはそもそもそういうものなのではないか。 来年もどうぞご期待ください。
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