特集 2018年5月21日

よその家に行って冷蔵庫にあるもので旦那に晩ごはんを作らせる

冷蔵庫の中にある物で旦那に晩ごはんを作ってもらいます。「突撃!隣りの旦那晩ごはん」。
冷蔵庫の中にある物で旦那に晩ごはんを作ってもらいます。「突撃!隣りの旦那晩ごはん」。
世のお母さん方が日々頭を悩ませるものに、毎日の晩ごはんつくりというのがあると思います。そんな毎日の晩ごはんつくりでは、これを作ると思って材料を買そろえて作る事もありますが、冷蔵庫の中にある物を見てメニューを考えてから作る事も多いのではないでしょうか。ありあわせの物でサッと作ると言うやつです。

それ、旦那にやってもらいましょう。

やってもらうと言っても、料理スキルの乏しい旦那がいきなり作るのは無理な話。私が晩ごはん前の家に突撃して、指導しながら作ってもらいます。「突撃!隣の旦那晩ごはん」です。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

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都内某所のお宅を突撃

ということで、やってきました。都内某所の静かな住宅街。突撃をかけたのはこちらのお宅。
スタジオですかというレベルのオシャレで片付いたキッチン。うちの店より道具が揃っている。
スタジオですかというレベルのオシャレで片付いたキッチン。うちの店より道具が揃っている。
デカいしゃもじを持って、冷蔵庫内を見せろ、旦那に晩ごはんをつくらせるなんて言いながら住宅街をウロウロしたら通報案件となるので、事前に友人にお願いしておきました。
柘植ご夫妻。よろしくお願いします。
柘植ご夫妻。よろしくお願いします。
友人の柘植ご夫妻です。二人とも会社勤めをされていますが、ごはん作りは奥様が担当。旦那の料理スキルは、小学校の家庭科の授業以来ほぼ料理はしたことが無いレベルだそうです。

ここ10年ぐらいで、料理が趣味とか、自分で弁当を作って持って行くなんて男性も珍しくなくなりました。とはいえ、やはりまだ少数派。

わかりました、そんなスキルでも大丈夫です。ハサミで紙が切れるぐらいの手先の器用さがあれば料理なんて作れます。修行を積んだ料理人の作る凄い料理を作れなんて言っていません。普通の晩ごはんを作ります。

組み合わせでメニューを考える

では旦那に晩ごはんを作ってもらいましょう。作る前にやっておくことがあります。
調理器具の場所は大体わかっていたそうです。
調理器具の場所は大体わかっていたそうです。
調理道具の位置の確認です。作業中に道具を探すことになると時間のロスだし、失敗の原因になります。事前に確認するか、決まった位置に並べておきます。また、この道具は肉だけに使うみたいな家庭内ルールがあるかもしれません。ちゃんと把握してから料理開始です。

そして、使用後は速やかに洗って元の場所に戻します。使った物をそのままにしておくと、その後の作業効率を下げるだけでなく、包丁を落とすなど怪我や事故の原因にもなります。整理整頓。これ大事。
メニューは論理的に考えましょう。
メニューは論理的に考えましょう。
続いてメニューを考えます。今回は冷蔵庫の中にある物で料理を作る訳ですが、料理スキルゼロでは食材を見たところで何をどうしたらいいか分からない。ということで、メニューを考えるコツを教えます。
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メニューは食材、調味料、調理法の単純な組み合わせで発想していきます。仮に肉や魚など5種類のメインとなる食材があったとします。そこに野菜類が5種類あったとして、その組み合わせは5×5で25通りです。

味付けのベースとなる調味料が5種類あったとしたら、25×5で125通りの組み合わせができます。調理法が炒める、煮るなど4種類として、最終的に500通りの組み合わせができます。実際は複数の食材や調味料を組み合わせるので、その数はもっと多くなります。

実際に味として合わない組合せもあるので、半分ぐらいが残ったとして250通り。1年分の弁当のおかずなら毎日違うものが持って行ける計算となります。
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料理を始めたばかり頃は、料理本などを見て作る物を決めてから材料を用意するという、上からおろしていく作り方をする場合が多くなります。そうすると、次に別の料理を作る時にまた新しい食材が追加され、使わなかった食材が残っていくという現象が発生します。

冷蔵庫の隅で少しの食材が朽ち果てていたとか、棚に謎のスパイス瓶が増え続けるみたいなやつです。
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料理に慣れてくると、下から積み上げてメニューを考えることができるようになります。場合によっては、思った材料がないから別のもので代用するとか、無くてもいいかとなる。

これがありあわせで作るということです。
食材充実の冷蔵庫。
食材充実の冷蔵庫。
こんな説明をしたところで、実際に冷蔵庫内をみて使用する食材を決めていきます。メインとなる炒め物、副菜の煮物、汁物を作るという想定で、肉類、それに合わせる野菜を選んでもらいました。お子様の食事は別にあるので、その部分は今回考えません。
牛スジとは割とハードルの高い食材が選ばれた。
牛スジとは割とハードルの高い食材が選ばれた。
炒め物に牛肉とチンゲン菜。煮物に牛スジとゴボウを選択。汁物は砂抜き済の冷凍アサリがあったのでそれで味噌汁とします。調味料は炒め物が味噌ベース。煮物が醤油ベースで味付けすることになりました。

牛スジは柔らかく煮るのに非常に時間がかかります。圧力鍋もありましたが、料理スキルゼロではちょっと難しいので、そこは奥様に了承を得て、短時間の調理で少し硬くてもOKとします。

料理は段取り

では、食材が決まったところで調理となりますが、ここで調理を進める上でのコツを伝授。
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複数の物を作る際、1つのものを作り終わったら次を作るのでは時間がかかってしまいます。同時進行できる作業を選び、工程の順番を考えてタイムテーブルを組みます。

料理に慣れている人は、タイムテーブルが頭の中に大体できています。これができていないのに、無理に作業を同時進行させると、不具合が起きて結局同時に進められず無駄に多くの時間がかかります。最悪、両方とも失敗してしまうということにもなりかねません。料理は段取りが大切です。

とはいえ、料理スキルゼロでこれを組めというのも無理な話。こういう事が大切、場合によっては紙に書いてからスタートということを教えつつ、私の方で工程管理して料理を進めます。
まさかの米を炊いたことがない事案発生。
まさかの米を炊いたことがない事案発生。
タイムテーブルを組んだところで調理開始。最初に時間のかかる米を炊く工程。なのですが、ここで問題発生。

旦那、米を炊いた事がないらしい。でも米のある場所と、米を研ぐことぐらいは分かるとのこと。ならば、あとは炊飯器に入れてスイッチ入れればOKと思ったら、この家には炊飯器が無い。まさかのリアル土鍋炊き。

しかも、米が5分つきの玄米。奥様、かなりハードル上げてくれましたね。
水は第一関節まで。玄米なので気持ちおお目で。
水は第一関節まで。玄米なので気持ちおお目で。
幸いこちらの家のコンロは炊飯モードがあり、米の量など設定すれば火加減は問題なし。水の量は指とか手の平をつかって計ってもらいます。あとは回数をこなせば自分好みの硬さに炊けるようになるでしょう。

便利な道具はなんでも使え

続いて煮物の仕込みに入ります。
ゴボウは食材用のたわしで洗う。皮を剥くならアルミホイルも便利です。
ゴボウは食材用のたわしで洗う。皮を剥くならアルミホイルも便利です。
野菜を洗い切り分けていきます。まずはゴボウを厚めにささがきに。私の提案で人参、生姜なども加えることにしました。
ゆっくりで構いませんよ。
ゆっくりで構いませんよ。
切るのに包丁を使いますが、不慣れで危ないと感じたらキッチンハサミなど、別の道具で切っても構いません。フードプロセッサーのような機械でもよし。

道具は作業を簡単で効率よくする為にあるもの。使う事は手抜きじゃありません。積極的に自分に合った物をつかいましょう。
肉もキッチンハサミで構わない。細胞が潰れて肉汁がとか、細かい事は最初言わなくていい。
肉もキッチンハサミで構わない。細胞が潰れて肉汁がとか、細かい事は最初言わなくていい。
多少大きさや形が不ぞろいでも構いません。確かに大きさや形がそろっている方が、加熱などの加減がそろい、食感や味、見た目もよくなります。そこは家庭の料理。そのうち出来るようになれば良しとします。

煮物は後から調整が出来るので初心者向き

材料を切り分け、牛スジをゆでこぼし、ダシを別の鍋にとっておきます。こちらの家には鰹節、昆布、トビウオと各種ダシの材料がそろっていましたが、本格的にダシをとるのはパス。だしパックもあったので、それを一度沸騰させたお湯に放り込んで終わりにしました。

ダシの取り方まで詳しくやっていると朝を迎えてしまいそうなので、ここは簡単に済ませます。
調味料は最初にそろえる。何でもいいので計量して入れる。
調味料は最初にそろえる。何でもいいので計量して入れる。
鍋に油を入れて材料をサッと炒めたらダシ汁、酒、生姜を入れ、続いて調味料を入れて味付けしていきます。醤油ベース希望ですが、醤油以外の調味料は何を入れていいかわからないので、それは私の方で選びました。

ここで大事なのは、入れる調味料は事前に手元に用意しておくこと。そして必ずスプーンなどを使い計量して入れること。
後から調整出来るので厳密でなくてよし。
後から調整出来るので厳密でなくてよし。
慣れてくれば、今までの感覚と煮汁の色の変化とかを見ながら目分量でも入れられますが、経験の乏しい最初のうちは計量して入れるのが鉄則です。別に計量スプーンを使わなくてもいいです。このサイズのスプーンで何杯入れたぐらいで構いません。

そして、これでは少ないかなと思った量よりももう一段少ない量を入れた時点で味を見ます。今回もかなり薄めの量を私が指示をして入れてもらいました。
これは薄いですねー。変化の感じを覚えてください。
これは薄いですねー。変化の感じを覚えてください。
味見をした時点で味が薄かったら、調味料を足して再度味をみます。その時も少な目に入れていき、何をどれぐらい入れたらどのように味が変わったか確認していきます。その経験を次回にいかしていけば、次回はより少ない調整で最終形にもっていけます。

煮物は調理に比較的時間がかけられ、出来上がった後からでもある程度味を修正できます。慌てずゆっくり作れるので、煮物は初心者向きです。料亭で出てくる完璧な煮物なんてものは、長年修行を積んで完成されたもの。家庭の料理で誰もそんなものを望んでいません。落ち着いて、一気に煮込まず味を調整してください。

炒め物は一発勝負

煮物、汁物を仕込んで最後は炒め物。炒め物は煮物と違い、手早く仕上げる必要があります。材料を切り分け、硬い野菜は下茹でしておく。炒めるものはできるだけ手の届く範囲にセットしておきます。
煮物と違って合わせ調味料で味付けも一発で。
煮物と違って合わせ調味料で味付けも一発で。
炒め物の場合、一つ一つの調味料を計量して入れていく時間は無いので、全部の調味料を先に混ぜて味を作っておきます。「さしすせそ」の順番で調味料を入れるというのも一応理由はあるのですが、細かい話は無し。

完璧は求められていません。近い精度の物が出来るならば、家庭なら確実性の高い方法を選択するのが安心です。
味を見て、野菜から出る水分を考慮して気持ちやや濃いめで調整。
味を見て、野菜から出る水分を考慮して気持ちやや濃いめで調整。
味噌ベースで味付けをしたいということだったので、味噌に合わせて私のほうで醤油とみりん。あと、奥様がカレーを作る時に色々なスパイスを使うそうなので、ガラムマサラとレッドペッパーも追加。

こちらも混ぜ合わせながら味を見ていきます。最終的に味噌が多めの大さじ2ぐらいに対して、醤油とみりんが各小さじ1/2程度。ガラムマサラとレッドペッパーが各小さじ1程度となりました。
フライパンは振らなくて大丈夫。慣れない人はヘラでなくトングを使うのもいい。
フライパンは振らなくて大丈夫。慣れない人はヘラでなくトングを使うのもいい。
肉、下茹でした人参、チンゲンサイと入れる順番は私の方で指示出し。9割がた炒められたところで合わせ調味料を入れて、全体に絡めていけば出来上がりです。

作ってみた感想は?

ご飯とみそ汁もできてこれで晩ごはん完成です。ちょっと予定より時間がかかりましたが、初めてにしては上出来。
牛肉とチンゲンサイのスパイス味噌炒め。 
牛肉とチンゲンサイのスパイス味噌炒め。 
牛スジとゴボウの煮物。
牛スジとゴボウの煮物。
私も試食させていただきます。
私も試食させていただきます。
出来上がりの見た目も申し分ありません。さて味の方はどうか。
自分で作ったのがこんにうまいのか!
自分で作ったのがこんにうまいのか!
想定以上に美味しかったようです。

作った感想も聞いてみました。
「料理作りは億劫ですが、組み合わせの考え方、段取りと使える道具で作れば、ストレスなく料理ができそうなことがわかりました!少し時間はかかりましたが、白米、味噌汁、炒め物、煮物が目の前に並んで本当に感動しました。自分で作ったとは思えない!」

それは良かった。興味が出たらこれからも続けてください。
美味しくできています。またやって欲しい。
美味しくできています。またやって欲しい。
奥様も旦那の初料理は美味しかったようです。スマホで撮影して各方面に送っていました。

「最初浮かない表情をしていたのが、途中で味見して「うん!おいしい!」と明るい声が聞こえたのが印象的でした。気負わず、作る楽しみ、面白さを少しでも感じてもらえたらいいな、と思いました。」

これだけできるなら大丈夫でしょう。人は楽しくなればどんどんやるはずです。
柘植ご夫妻ご協力ありがとうございました!
柘植ご夫妻ご協力ありがとうございました!
お疲れのお休みの日の突撃にお付き合いいただきありがとうございました!数か月後に旦那のスキルチェックが必要ならばまた突撃しにきます!

難しく考えずまずやってみる

私も食べてみて、炒め物は丁度いい感じに仕上がり味もよかったです。煮物も時間の関係で若干肉が硬めでしたが、問題ないレベル。初めてにしては大変よく出来ていました。これで料理することが楽しい、自分で作るのも美味しいということになれば色々やって経験を積み上げていくでしょう。作り方の情報は今時いくらでもころがっているので、調べれば大体のものはできるはずです。私も初めての料理は小学校の家庭科レベルの知識からスタートでした。

料理に限らず「できない」「無理」と言っているものの大半は、「やらない」か「やっていない」ということ多いです。まずは一度やってみる。多分最初はできません。それはしょうがないこと。

できるようになるまで失敗を重ねて頑張るもよし。詳しい人に教えてもらいながらやるもよし。やってみないとゼロのまま。やればいいにしろ、悪いにしろ何か変わります。
片付けまでが料理です。料理はしたことはないけれども、片付けはいつもやっていて得意だそうです。分業大事。 
片付けまでが料理です。料理はしたことはないけれども、片付けはいつもやっていて得意だそうです。分業大事。 
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