東京駅へ行こう
だが、残念ながら麻婆カレーはもう、松屋で販売していないとわかった。「他に置いているお店はないかな」とググってみたところ、ヒットしたのが、東京駅の八重洲地下街にある「アルプス」だった。
写真はかつカレー
「麻婆カレー」ではなく、「麻婆豆腐カレー」がメニューにあるらしい。「豆腐」のことばまできっかり入れてきたあたりに、豆腐への気合いを感じる。
ちなみに「アルプス」は、カレー屋である。その中でも、がっつり勢いよくごはんとカレーが盛り込まれているタイプの、C&Cみたいな系統のお店だ。
ところで東京駅ではいつも迷子になる。今日も迷った
迷うたびに誘惑が目の前に押し迫ってくる。歓楽街だ
わたしには心に決めた場所(アルプス)があるのに
視界に入ってくることを拒めないものばかりだ
どうにか辿り着いた!
券売機のボタンが大きい。勢いを感じる
「麻婆豆腐」の文字だけが妙に浮いている……ように見えるのは初心者だからなんだろうか
食券を提示して、しばしのあいだ待つ。店員さんのカレーの盛り方にも、勢いを感じる
丁寧に盛られた料理は丁寧に食べたくなるし、がっつりと盛られた料理は、がっつり食べたくなる。盛られている様子を見ていると、この後口いっぱいにこのカレーを食らっていく自分のすこやかな未来が見えてくる気がした。
やっと会えた!
この、フォークみたいなスプーンを選んだのは正解なんだろうか
店内は、ほぼサラリーマンに満ち満ちている。無心でただ食と向き合っていますと言わんばかりの背中ばかりだ。ますます「食べるぞ!」という気合いに、助走がかかる。
カレーと麻婆豆腐、まだ混ざっていないな
どこまでどう混ぜるのかは、自分に託されているのか
目になじむといえば目になじむ。さすが同系色だ。でも、おかしいといえば、おかしい。混ぜたらいったいここで何が起きてしまうんだろう。
カレーは海のようだ
容量的には本物の海にはまったくかなっていない。だが、ごはんという砂浜を十分に覆い尽くせるくらいのカレーがある状態は、海って思わず呼んでしまいたくなるのだ。そのくらいに、心が容量に満足している。
まずはカレーをたべてみる。わりと辛い
続いて、麻婆豆腐を。あれ、こちらは甘い!くだものの旨味が入っていそうな甘さだ(憶測)。四川風じゃない
そして両方同時に食べてみる
辛みと甘みの中和がおこった!
おいしいかまずいかと聞かれたら、迷わないで「おいしい」と答える味だ。
だけど、「おいしい」の幅は広い。どうおいしいのかについても、言及したい気持ちがある。なんだろうこれは。
わからない。何口食べても、「おいしい」以外にどう表したらいいのか、悩んでしまった。混乱って、こういうことなのだろうか。だとすればこれは、なんて楽しいだけの混乱なんだろう。
食べおわる数口前には、「おかわりしたい」という気持ちが芽生えていた
そして2皿目
よそう時にはみ出したルーが、このお店のカレーの勢いを象徴している気がする
食べていると、首のうしろを汗がつたっていくのがわかった。辛みによる刺激だ。鼻周辺でも、なにかわき出している。汗的な意味で、自分がきらきらしているのを感じて、少し恥ずかしい。
でもうまいわ
そんなことを考えながら、2皿目も完食した。おなかがずしんと重くなっていたけど、後悔はない。
違和感はほぼなかった
美味かった。これ、今後も何度となく食べるんじゃないだろうか。いや、むしろなぜ今までここに寄り道をせずに生きてこられたのだろう。
「麻婆豆腐」と名前のついたどろっとした半液体が甘かったからこそ、うまく成り立っていた気もしている。花椒たっぷりの辛い麻婆豆腐と混ぜたらどうなるのかも、知りたいなと思う。