特集 2016年1月9日

新宿屋上の神社巡り

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大人になると「いいな」と思うようになったものの中に、「神社仏閣」がある。

修学旅行は日光に京都など、歴史的建造物が数多く立ち並ぶ場所ばかり。当時は「神社仏閣とかじじくさい」なんて思った時代もあったが、今なら君の良さわかってあげられる、神社仏閣。

さて、そんな神社仏閣をわざわざそれだけを目当てに遠くまで行かなくても、ビルの屋上などでたまに見かけることがあって、その存在がずっと気になっていた。

今回はそんな「ビルの屋上神社」に絞って追いかけてみたレポである。
生まれも育ちも横浜。大人げない大人を目指し、日夜くだらないことを考えています。ちぷたそ名義でも活動しています。(動画インタビュー

前の記事:秋葉原で4700円の肉定食を食べる


ビルの屋上という場所はだいたい関係者以外立ち入り禁止の場所だ。でもビルの関係者でなくても入れる屋上がある。それはデパートだ! そこでデパートの屋上に絞って探してみることにした。

そんなデパートの屋上で見かける神社は、お稲荷さまが多いのではないかとにらんでいる。お稲荷さまというのは、商売繁盛の神だ。そしてデパートの屋上で祀る神様といえば商売繁盛であろう。

当初、「渋谷へ行けばデパートも多いし、デパートの上の神様に会えるだろう」という安直な思いで渋谷へ向かったことを、この後すぐに私は後悔することになる。

渋谷へ

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まずは流行発信の街、渋谷へ向かった。屋上神社は「昔ながらの大きめのデパート」にあると思ったからで、私の記憶の中では渋谷にはそういう建物が多いような気がしていた。
東急百貨店(渋谷駅・東横店)屋上神社なし
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東急百貨店(渋谷・本店)屋上神社なし
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西武 屋上神社なし(屋上には入れず、最上階はレストランフロアだった/写真なし)
昔ながらのデパートがあれば、絶対屋上に神社があると思ったんだけど結果はひとつも見つからず。……なんということでしょう!
見つからなさにどうしようと震えながら屋上で自撮りを撮りました
見つからなさにどうしようと震えながら屋上で自撮りを撮りました
ただ、老舗デパートに面白い共通点を発見した。地上階は海外ブランドが入り煌びやかで、建物もきれいだけど屋上部分には割と年代を感じさせる古さが漂っていたということ

「女性は首や手に年齢が出る」という話みたいだなと思った。「デパートは屋上に年齢(年代)が出る」。今年30歳を迎える自分にとっては耳の痛い話だ。
渋谷には屋上神社はなかったが、素敵な角があった
渋谷には屋上神社はなかったが、素敵な角があった
また、高いところから鳥居を探せないかと立ち寄ったヒカリエ11階にて、渋谷を一望できる素敵な角を発見。いい大人が角を楽しんでいたところ、ちびっこが後ろで順番待ちしていた。本当にごめんなさい。
ヒカリエ11階層からの眺め、泥臭いところを含めた渋谷を手中におさめた感。でも屋上神社はない
ヒカリエ11階層からの眺め、泥臭いところを含めた渋谷を手中におさめた感。でも屋上神社はない
そして高層階からも他の屋上神社は見つけられず……。ここであがいていても仕方ないと思い、渋谷での捜索はあきらめた。

渋谷屋上神社:0社(井口調べ)

新宿へ

渋谷での捜索をあきらめた私は、新宿へと場所を移して捜索を開始した。前置きが長くてすみません、ここからが「新宿屋上の神社巡り」本番です。

そして「巡り」なんて大層な名前を付けてしまったが実際に見つけることができたのは3つだけだった。

こんなに商業施設がたくさんある街渋谷・新宿で、屋上の神社を求めて駈けずり回った結果3つしか見つかられなかった。……私が思っていたよりも屋上神社のレア度は高かったようだ。
小田急百貨店
新宿駅からアクセスバツグンの小田急百貨店。こちらで第一屋上神社を発見することができた。
やっと屋上神社に出会えた。手前の棒は避雷針と思われる
やっと屋上神社に出会えた。手前の棒は避雷針と思われる
本館13階にある神社・小田急豊川稲荷だ! ひっそりと佇んでいる。
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ここの本山は、愛知県にある日本三大稲荷の豊川閣妙厳寺というところ。「稲荷」とついているもののここが鎮守としているのは正確には吒枳尼天(だきにてん)だ。吒枳尼天(だきにてん)とはインドのヒンドゥー教の神・ダーキニーに由来する神様で、日本では稲荷信仰と習合して稲荷神と同一視されている。
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ここの神様は「繁栄と社会福祉の祈念するに当たり、守護の善神として」奉祀されているということ。手を清める場所もあるし、お賽銭箱もあるし、お稲荷さんもいる。お花もきれいに咲き誇っている。必要最低限のコンパクトな神社がここにはあった。なんてスタイリッシュなんだろう! ちょっと感動した。

ここではお稲荷さまが咥えているものが気になった。左のお稲荷さまは珠のようなものをくわえており、右側のお稲荷さまは棒状の何かをくわえていた。
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これは、後で調べてみたところお稲荷さまがよくくわえているもの、それぞれには意味があり、「珠(宝珠)=霊力」「鍵=霊力を引出すカギ」「巻物=学問」を意味するらしい。知らなかったけどとっても面白い!

そして私が参拝しているとき、おじいちゃんと孫が参拝していきました。デパートの屋上神社、愛されている!
ちなみに小田急百貨店には9階に屋上広場があるのでちょっと混乱するかも。神社は13階にあるよ。
ちなみに小田急百貨店には9階に屋上広場があるのでちょっと混乱するかも。神社は13階にあるよ。
伊勢丹 新宿店
次に向かったのは新宿伊勢丹
冬の日の短さは取材の天敵。急いで向かう。
伊勢丹の屋上、冬季の開園時間は6時まで。
伊勢丹の屋上、冬季の開園時間は6時まで。
場所にもよるが、屋上はだいたい夕方で閉まってしまうのだ。
何も言わずに写真をアップしたら新宿の屋上だなんてわからないかもしれない
何も言わずに写真をアップしたら新宿の屋上だなんてわからないかもしれない
伊勢丹の屋上には芝生があり、ステージがあり、池があり、茂みがあってアベック(死語)もいっぱいいた。
そんな敷地内に佇むのが新宿伊勢丹の守り神、「朝日弁財天」だ
そんな敷地内に佇むのが新宿伊勢丹の守り神、「朝日弁財天」だ
弁財天は音楽神、福徳神、学芸神、戦勝神など幅広い性格をもっており、ここでは火災を防ぐ火伏の神様、商売繁盛の神様として祭られている。
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市ヶ谷支店から昭和8年の新宿進出の機会で祭られることになったという「朝日弁財天」。人の往来の激しい屋上広場の中で、ここだけひっそりしているのもステキ。
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参拝するときに、警備員さんが前に立っていたので「すいません、参拝していいですか……」と声をかけて参拝した。弁財天の前には池があり、鯉が泳いでいた。弁財天は水に関係する神様なのだ。
新宿高島屋
早いもので、新宿屋上巡りもこちらで最後である。最後を締めるのは新宿高島屋。
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どうでもいいけど、新宿高島屋の入口の表記が「お入口」なの、上品なマダムって感じでステキだと思う。
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屋上神社のあるテラスに到着。取材時期は12月上旬。17時台だけどだいぶ暮れかかる……。
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うわーなにこれいままでにないかんじでキラキラしております。
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神社はというと……うわー神社もイルミネーションに彩られて都会的な美しさ。

こちらは手を清める場所もないし、さい銭箱もないので前2つと比べると小規模。だけど景観に溶け込んだ、こんな都会的な寺社ははじめてみるものだった。イルミネーションが違和感ない。
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新宿高島屋が祭っているのは「熊鷹社」(くまたかしゃ)。前ふたつと違い、神社の由来等についての記載がなかったので調べてでてきたことがらのみを記しておく。

まず、「熊鷹社」というものは全国の稲荷社でよく見られるものだということ。そしてここに祭られているのは勝負事や商売繁盛の神様、「熊鷹大神」という神様だということがわかった。
やはり屋上神社は共通して商売繁盛の神様を祭っているのだね。

新宿屋上神社:3社(井口調べ)

屋上神社のススメ

デパートの上の屋上、と一口に言っても祭られる神様は実に様々だということがわかって面白かった。
祭っている神様は違えども、それぞれ商売繁盛や繁栄を願い、デパートと同様に愛されている神様ばかりであった。

買い物ついでに神社めぐりが出来る屋上神社巡り、いいかもしれない。
これから、街に行くときの楽しみとして「屋上神社を参拝する」という楽しみが増えた。

屋上神社を参拝するにあたり、一番大変だったのは「エレベーター」だった。

○側のエレベーターは○階までしか行けないから乗り換えが必要……だったり、各階で乗客が乗ってきたり、エレベーター自体がなかなか来なかったり……。必要以上に調査するのに時間がかかったのはだいたい「エレベーター」に阻まれたせいだった。

実際の神社も長い階段の上にあったり駅から離れていたりするので、これはそういうのを再現しているのだろうかと勝手に納得した。

渋谷では残念ながら屋上神社を見つけることができないというまさかの結果だったけれど、もし屋上神社の所在を知っていたらぜひ教えてください。
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