特集 2022年4月22日

テクニカルチーズトーストの伸びしろを探る

チーズトーストはテクニカルに作るとさらに美味いんすよ!という主張。

当たり前だけど、チーズトーストは美味しい。

溶けたチーズが熱くてトロトロでコッテリしてて、むしろ美味い以外の要素が無いほど。

パンにチーズをバサッと乗せて焼くだけの手軽さも、慌ただしい朝食に丁度良いんだけど……ただ、実はチーズトーストにはまだ先がありそうにも思うのだ。

もう一手間を加えてやることで、テクニカル・チーズトーストは新たなステージに到達するんじゃないか。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

溶岩の如くドゥロロロロンと流れる「超とろチーズトースト」

なんでそんなことを言い始めたかというと、きっかけは、ちょっと前にテレビで見たチーズトーストの新レシピだ。

どうやらそのレシピに従って調理すると、チーズの伸びがとんでもないことになる!と言うのである。なんだ、とんでもない伸びってどういう状態だ。気になるじゃないか。

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ちなみに今回のチーズトースティング(チーズトーストを作ること)は全てパスコの「超熟」4枚切りで行った。僕が4枚切り原理主義だから。

ちなみにそのレシピというのは、言うほど大したことをするわけじゃない。単に、焼く前のチーズ(シュレッドチーズ)にマヨネーズを和えるだけ、というもの。シンプル。

どうやら、チーズに含まれているカゼイン(タンパク質)がマヨネーズの油分に対して乳化作用を発揮し、結果的にとろとろになっちゃう、という理屈らしい。

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ボウルにシュレッドチーズ30gを入れて、マヨネーズをかける。
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マヨネーズは、混ぜたときにチーズの表面がむらなくコーティングされるぐらいの量を。ついでに胡椒もお好みで。
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あとはトースターで焼くだけ。ボウルを洗う手間があるだけで、基本的には簡単。

つまり、マヨネーズじゃなくてオリーブオイルとかごま油とかでも問題なさそう。

とにかくチーズに油っけを足してパンに乗せて焼くととすごいことになる、とだけ憶えておけばいい。

そして結局どれぐらい「とんでもない伸び」かというと、これぐらい。

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見よ、この伸び!持ち上げると溶けたチーズが滝のように流れてくる。
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従来型チーズトースト(左)と比較すると、伸びのすごさが分かるはず。どうよ、この差。

とにかくチーズが柔らかく、伸びも間違いなく従来比10倍ぐらいありそう。

『アルプスの少女ハイジ』で、ハイジが溶けたチーズの伸びに目を白黒させるシーンがあるが、まさにあの感じ。あこがれのあのチーズはマヨネーズで作れるのだ。

不用意にガブッと大きくかじると、口の中に溶けたチーズがドゥロロロロンと流れ込んできて、わりとしっかりめの火傷を負うはず。

というか、このレシピを憶えて以降、だいたい常時上あごのどこかがヒリヒリしている状態だ。でも食べちゃう。

あと、味に関しては当然ながら「マヨチーズ味」に寄るんだけど、意外とチーズが勝つ感じ。気になるなら、先述の通りオリーブオイルなど別の油にすると良いと思う。

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やー、お行儀が悪くて申し訳ない。チーズのヤツが伸びるもんだからさー。

ちょっと一手間レベルではあるが、上昇するQOLはちょっとどころではない。

だとしたら、チーズトーストには伸びしろはまだまだあるのではないだろうか。チーズだけに伸びしろが(今回これが言いたかった)。

ちなみに、具材は基本的にチーズがメイン。ベーコンとかツナとか「そりゃ足せば美味くなるだろうよ」みたいなものは加えない。ストイックにチーズトーストを高めよう、というのが主題である。

ぶどうパンチーズトーストは砂糖をドーンが重要

意外とみんな考えつくアレンジとして、ぶどうパンにチーズ乗せる、というやつがある。

実際に僕も「甘じょっぱくて美味そうかも?」とやってみたことはあるんだけど……なんか微妙に味が決まらないというか、ボヤーッとした雰囲気でそんなに美味くならない。

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そこで試してみて欲しいのが、砂糖の直がけである。

なにが悪いのかと色々トライしてみて、最終的に行き着いたのが砂糖の追加だ。

ぶどうパンにチーズを乗せて、その上からさらに砂糖を小さじ2杯ほどザラザラと均等にふりかける。で、あとはこれを普通にトーストすればいい。テクニカルといいつつ、これはかなりお手軽な感じ。

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砂糖がジュワジュワと焦げて、なかなか魅惑的なルックスになる。
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ところどころに砂糖の粒が残ってるが、これがジャリッとした歯応えでまた楽しい。シュガーバタートーストみたいな感じ。

表面の砂糖が熱でところどころ焦げた感じになると、焼き上がり。

かじってみると、容赦なく甘い!んだけど、これがチーズのコッテリした感じとイイ感じにマッチするのである。

砂糖無しの場合、チーズの塩気とぶどうパンの甘味がどっちもぼんやりしすぎて、決め手に欠けていたのだ。なので、甘味方向に砂糖でブーストしてやると、いい意味でバランスを崩して味が決まるというわけ。

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甘味を強調したことで、方向性がかなり菓子パンに近づく。血糖値上がる味だ。
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そして甘さに飽きたら、胡椒を多めに投入。ピリッと甘いぞ。

ちなみに途中の味変としてオススメなのが、たっぷりめの胡椒。

これだと、当初想定の甘じょっぱ系にちょっと近づく感じで、また美味い。

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サクサク感&とろとろ感のW食感チーズトースト

チーズトーストは基本的にチーズとろとろが魅力だが、どうだろう、ここになにかサクサクしたクリスピーさが加わるとよりステキな感じにならないだろうか?

ということで考えてみたのが、サクサク・とろとろが同時に楽しめるチーズトーストである。

これは単にトースターで焼くだけでは実現しないドリームなヤツなので、ちょっとした2面調理が必要となる。タイミングを合わせる必要もあるので、少し難易度高めかも。

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チーズトーストを焼く傍ら、スライスチーズを準備する。1枚まるまるだとレンジの加熱ムラが出るので、カットしておこう。

まず、ベースとなるチーズトーストは普通に作る。先述の超トロ仕様にしても構わない。こちらがW食感のトロ側だ。

で、焼きが進行している間にサク側も調理しよう。とろけるスライスチーズ(1/4にカットしたもの)をクッキングシートにのせて、電子レンジにかける。

表面にうっすら焦げのような色がついたら、サクサク食感のチーズせんべいが出来上がり。

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レンジの性能にもよるが、だいたい600Wで1m30sぐらいが目安。このまま食べても美味いやつだ。

あとは焼き上がったチーズトーストにサクサクのチーズせんべいを乗せてやれば、W食感が楽しめるチーズトーストが完成だ。

かじると、ザクザク!とした歯応えのすぐあとに、トロッとくる。これまた味わったことない系のチーズトーストと言える。

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これは未体験の食感。食べてる写真をうっかり撮り忘れるぐらい、サクトロサクトロの連鎖に夢中になるぞ。

ここで難しいのが、チーズトーストとチーズせんべいの焼き上がりタイミングをできるだけ揃えること。

なんせチーズせんべいは時間経過とともにどんどんサクサク感を失っていくので、タイミング的には同時焼き上がりが理想なのだ。

とはいっても、トースターと電子レンジを同時に使うとブレーカーが落ちちゃうご家庭もあると思うので、その辺りはうまく調整して欲しい。

フレンチトースト風、強チーズクリーム染み染みトースト

フレンチトーストにチーズ乗せて焼いたら、まぁそれなりに美味いだろう。

ただ、それはあくまでもチーズ・オン・フレンチトースト。せっかくなら、パンの中にチーズが染みたような、チーズ味のフレンチトーストも食べてみたい。

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まずはパン以外の材料をフライパンへ。これを混ぜながら超弱火でゆっくり温めていく。

とはいってもチーズをダイレクトにパンに染み込ませるのはかなり難しそうなので、チーズソースを作って、それをパンに染み込ませて焼く、という方向性で行こう。

まずはフライパンに牛乳50ml、チーズ30g、バター10g、塩ひとつまみを入れて、ごくごく弱火で加熱する。

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ちなみにこれがバター無し・加熱しすぎの失敗例。分離したチーズがモロモロとひどい状態になる。

ここで大事なことを伝えておこう。このとき強火にすると【死】で、あとバター入れないのも【死】だ。

加熱しすぎるとチーズの油分が分解してモロモロになるし、あとバター(油分)を入れないと乳化しないので、クリーム状にならない。冒頭の超とろチーズトーストで説明した「カゼインによる乳化現象」を利用するためには、油分が必須なのだ。

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ちゃんと材料が乳化したら、パンを投入。面倒でなければ、パンの耳は落としたほうがクリームの吸い込みがいいと思う。

うまくクリーム状になったら、ここにパンをダイレクトに浸す。

あとはパンにチーズクリームを吸わせつつ、弱火でゆっくり加熱していくという寸法だ。ちなみにこの時点でも強火にすると【死】なので、要注意。

片面5分ずつ、裏返して計10分焼けば、頃合いだろう。

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キこちらが焼き上がり。正直言うと、焼く時点でちょっと油断して火を強めたので、チーズがモロッと分離しかけてる。
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まぁ、多少ミスってもいいか、というぐらいに強くて美味いんだけど。

うおお。牛乳とバターとチーズのクリーム、めっちゃ強い。

クリームが強いってどういうことだ?と思われるかも知れないが、実際に食べたら「強いな」って思う他はない。例えて言うなら、パンが“こってり感”の概念をビショビショになるほど吸い込んだような、そんな味わいである。

食べるほどに、パンから強いチーズソースがじゅわーと染み出してくるのが美味い。

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強いチースクリームには蜂蜜の甘味もよく合う。

ちなみに、よりフレンチトーストっぽく食べたいのであれば、蜂蜜かけちゃうのもオススメだ。甘いのもまた強くて美味い。

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面倒だけど幸福感は最強のパン粥グラタンチーズトースト

さて、今回紹介するテクニカル・チーズトーストの中でもトップクラスに手間なのが、このパン粥グラタンチーズトーストである。

といっても所詮はチーズトーストの亜流なので、調理時間は15分ぐらいで済んじゃうんだけど。いや、チーズトースト1つ作るのに15分ってのが許されるのかはさておき。

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パンの耳に沿って刃を入れたら、そこきっかけで少しずつ中央に向けて削いでいく。だいたいパンの厚み半分ぐらいまでくり抜こう。
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くり抜いたパンは、裏面をトースターで1分ほど焼き固める。

まず、包丁やペティナイフを使って、食パンの表面を削ぐようにくり抜いていく。ただし底が抜けちゃうと困るので、そこはうまいこと用心して。

次に、くり抜いたパンを裏返してごく軽く(焼き色が付かない程度)トーストする。これは底の部分をカリッと焼き固めることで、パン自体の耐久性を高めるためだ。

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さっきのチーズクリームを作るのと同じような作業なので、注意事項も同じ。

この焼き固め作業と同時に、パン粥を作る。

フライパンに牛乳100cc、バター15g、チーズ40g、削いだパン、顆粒ブイヨン少々を投入し、弱火でゆっくり煮込む。とにかく弱火でじっくり、牛乳を沸騰させないぐらいの火加減でよろしく。

パンとチーズがとろけてお粥っぽい粘度になったら、塩胡椒で味を微調整。心持ち塩っ気を強めにしたほうが美味しいと思う。

あと、特に「チーズとパンだけで、他の具材無し!」みたいなこだわりがなければ、ここに刻んだタマネギとかベーコン入れるともっと美味いはず。

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できあがったパン粥(食欲がないときはこれだけ食べても美味い)を、くり抜いたパンにドロロロ…と投入。
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パン粉と粉チーズは香ばしさを演出するためのものなので、好きなだけ振ってどうぞ。

パン粥が仕上がったら、焼き固めたパンの削いだところにパン粥をそそぐ。

さらに上からパン粉と粉チーズをふって、トースターで表面に焦げ色がつくまで加熱する(5~7分ぐらい)。

すると、グッツグツでアッツアツのパン粥グラタンチーズトーストが完成!

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グツグツと焼き上がる、大迫力のパン粥グラタンチーズトースト。朝食にこれはやや激しすぎるか。

もうここまで来ると、さすがにこれチーズトーストか?という疑問も湧かなくもない。わかる。

が、材料がほぼチーズとパンだけなので、チーズトーストって言っても過言ではないんじゃないかな……と思うんだけど。どうだろう。いいんじゃないかな。

味わいは、ご想像通りのグッツグツでアッツアツでトロットロだけど、ほっこりする優しい味わいというやつ。間違いなく美味い。

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当然ながらこの直後は、口の中の皮がべろんべろんになるほど火傷してる。ほんと注意して食べて欲しい。

急いで食べないと溢れたパン粥グラタンで手を火傷しそうになるし、急いで食うと口の中を火傷しそう。

どっちにしても火傷はするので、諦めて好きなように食べて欲しい。味は優しいけど、温度は優しくないのだ。


この記事のために一週間ほど延々とテクニカル・チーズトーストを作って食べていた。

さすがにちょっと「もうチーズいいすわ」って気分になったんだけど……最後にあえてまったくのノーマルなチーズトーストを作って食べたら、これはこれで美味い。というか、まだ行けそう。

バックトゥベーシックとはこのことか、と蒙が啓かれた感じである。

チーズトースト、奥深いな。あと、結局のところ「チーズと食パン」って組み合わせを最初に考えた人が一番偉いような気もする。どうしたって美味いし。

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雑に作ったチーズトーストもなんだかんだ美味い、という結論でした。

 

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