今回はすごく興味深い観察ができたが、仏炎苞を脱がせる決断がちょっと遅く、雄花群や雌花群の咲いている状態が見られなかったのが心残り。
もしまたコンニャクに花が咲いたら、今度は仏炎苞に覗き窓を作って、じっくり観察させていただこう。
コンニャクを手作りしてみたくて、2019年の春にコンニャク芋を植えた。その年の秋にコンニャク作りの夢は無事叶ったのだが、せっかくだからと芋を育て続けた。
コンニャク芋を育て続けると、花を咲かせることがあるらしく、それを見てみたかったのだ。
芋は毎年一回りずつ大きくなり、栽培三年目にして予想外の花を咲かせた。
コンニャクはコンニャク芋から作るらしい。それくらいの知識で始めたコンニャク作りは、意外性のある展開だらけだった。
まず種イモを買おうと思ったら、生子とか一年生とか謎の種類があって迷わされる。この時点でもう楽しい。
予備知識控えめで野菜を育てると、先が読めない自分だけの物語が待っている。失敗することも多いけど。
これらの細かい喜びは「育ちすぎたタケノコでメンマを作ってみた。 実はよく知らない植物を育てる・採る・食べる」という本に書いたので、ご興味あれば読んでみてください。
そしてここからが本題である。そろそろコンニャクの花が見られるかなと、今年の春も芋を植えた。大きく育った三年生は、もう咲いてもいいころでは。
三月下旬に物置から畑へと芋を運んだのだが、植える前からすでに芽が伸びており、芋も一花咲かせようとやる気満々のようだ。秋が楽しみである。
ちなみに普通は三年生を収穫した段階でコンニャクにするので、花をみられる機会は少ないらしい。
コンニャクの花が咲く前に、コンニャクはサトイモ科ということで、2014年9月に咲いたサトイモの花を紹介しておく。
サトイモの花も咲くことはかなり珍しいようだが、当時はよくわかっていなかったのでろくに観察をしていないのが悔やまれる。この年以来、咲いてくれない。
コンニャクもこんな感じで花が咲くんだろうなーって思っていたんですよ。
ねえ、思うじゃないですか。
そして四月末、久しぶりに畑へと行くと、コンニャク芋はまっすぐ上に芽を伸ばし、大きな蕾らしきものをつけていた。
葉っぱより先に花なのか。バナナの花みたいな色をしている。
タイミング的に聖火リレーのトーチかと思った。人が集まる心配のないトーチである。
この巨大な蕾が割れて、さぞや大きな花が咲くのだろうと数日後にワクワクしながら来たのだが、あまり変化が見られない。
もしかしたら、これが満開に咲いた状態なのだろうか。
この花はどういう構造なんだろうと観察していると、タマネギが腐ったような匂いが漂ってきた。廃棄された野菜が近くにあるのかとも思ったが、発生源はこいつだった。鼻を近づけると、ちゃんと臭い。しっかり臭い。
コンニャクの花は臭いという噂を聞いたことがあるけれど、ガス漏れみたいな不快で生ぬるい匂いなのか。鼻の奥にじっくり響いてくる刺激臭だ。1メートル離れれば気にならない程度だけど、なかなかのものである。
そういえばハエがブンブン飛んでいるなとは思ったんだ。ホンオ・フェというエイを発酵させた料理を手作りしたことを久しぶりに思い出した(こちら)。
臭いの発生源らしき花の内部を覗き込むと、サトイモやミズバショウの花にもあるブツブツした部分が見えた。
コンニャクは見えないところにブツブツがあるようだ。ということは、やっぱりもう花は咲いているのか。そして臭い。
肉眼だとよくわからないので、匂いを我慢しながらデジカメやアイフォンを突っ込んで撮影して、その画像を確認したら見事なブツブツで驚いた。うわぁ。鳥肌が立ってこっちまでブツブツだ。
そしてツブツブのさらに奥には、イチヂクの実、あるいはハクション大魔王の壺みたいな形をしたものが並んでいる。なんだこれは。
コバエがたかっている様子も含めて、動画でどうぞ。
花の内部をもっとじっくり観察してみたい。でもプロレスラーが入場時に羽織るガウンみたいな部分を脱がすのはなんだか申し訳ない気もする。そんなことをずっと考えていた。
後日、どうしようかなーと悩みながら畑に行くと、コンニャクの花が強風でブワンブワンと揺れていた。このままだと折れるかも。
折れて枯れさせるくらいなら、ちょっと中身を見せてもらおうか。3つあるから経過観察用の花も残せるし。
風の影響もあり、先日よりも匂いはだいぶ弱く感じる。もう臭いのピークタイムは過ぎているのかも。
コンニャクのガウンをちょっとだけ脱がすと、そこには想像以上のツブツブが待っていた。
それでは鳥肌の準備をどうぞ。
この撮影後、タケノコ狩りにいったら虫に刺されたらしく、これにちょっと似た皮膚炎ができた。コンニャクの呪いだと思う。
いまさらながら調べたところ、コンニャクは花序(かじょ)と呼ばれる花の集まりが咲き、その独特な形状から、英語で「Devil's Tongue(悪魔の舌)」と呼ばれるとか。上のバナナは花序付属体、ガウン部分は仏炎苞(ぶつえんほう)、小さな黄色いツブツブが雄花群、その下の紫のツブツブを雌花群と呼ぶようだ。
強烈な匂いで仏炎苞の中に虫を呼び込み、出にくい構造の中を動き回らせて花粉を運ばせるのだろう。自家受粉を避けるために雄花と雌花で咲くタイミングをずらすらしく、この三株が無事に受粉できているかはわからない。
数日後にまた来てみると、コンニャクは倒れていなかった。でもここまできたらもう後には戻れないので、花序付属体も切って中身を確認してみた。
すると、そこには想像以上の無が待っていた。全力の虚無。空っぽだ。ここが詰まっていて重いと、それこそ風でも吹いたら倒れちゃうもんね。じゃあなんで花序付属体なんていう巨大な飾りが必要なのかという話だが。
肉でも詰めて焼いたらうまいいだろうか。いやでもコンニャクのアクが超強烈なのを知っているし、なんといってもあの匂いだしな。
コンニャクの花といえば、世界一大きな花とも言われるショクダイオオコンニャクは有名だが、普通のコンニャクの花も立派だし、その魅力はなかなかのものだった。なんといっても自分で育てれば自由に観察し放題、臭いだって嗅ぎ放題だ。
さて花が散った後、無事に実はできるのか。その実から種は取れるのか。種は芽をだしてくれるのか。そして花の咲いた芋はどうなっているのか。まだしばらくはコンニャクで楽しめそうだ。
今回はすごく興味深い観察ができたが、仏炎苞を脱がせる決断がちょっと遅く、雄花群や雌花群の咲いている状態が見られなかったのが心残り。
もしまたコンニャクに花が咲いたら、今度は仏炎苞に覗き窓を作って、じっくり観察させていただこう。
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