特集 2021年5月10日

マルイカとヤリイカとスルメイカを食べ比べる

三種類のイカを食べ比べました。意外と違いますよ。

日本で食用とされる主なイカといえば、細長くて筒っぽい形をしたツツイカの仲間と、ラグビーボールのような丸っこいコウイカの仲間だ。

先日マルイカ(ケンサキイカ)を釣りに行ったら、幸運にもスルメイカとヤリイカも手に入ったので、「夢の三大ツツイカ食べ比べ」をしてみた。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

前の記事:両親が子供の頃に食べたおやつの追体験をしたい(カミキリムシの幼虫を食べたい)

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マルイカを釣りに行ってきた

イカは種類や時期によって、釣れる場所や水深が違うのだが、3月中旬に船に乗ってマルイカを釣りに行ったところ、水深が100メートル前後とそこそこ深かったため、マルイカよりも深いところで釣ることが多いヤリイカとスルメイカが混ざって釣れた。

ちなみにマルイカの本名はケンサキイカ。イカは地域やサイズによって呼び名が全然違うので、地方に行くと自分が知っている名前とイカの種類がイコールにならないため、それを紐づける脳内変換が楽しい。

マルイカはスッテと呼ばれるルアーみたいなものを釣り糸にいくつか結び、それを海底付近までオモリで沈めて釣る。竿先の僅かな動きでスッテにイカが抱き着いたのを感じたら、がんばって巻き上げるのだ。

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スッテは5個つないである。
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この日は水深が100メートルもあった。軟弱なので電動リールを使用。
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生きているイカはハッとするほど美しい。

イカクイズ、これは何イカでしょうか?

突然ですがクイズの時間です。

これから釣れたイカの写真をお見せするので、それがマルイカなのかヤリイカなのかスルメイカなのかを当ててください。

そんなこと言われても、私がファッションブランドや野鳥の名前がわからないように、イカに興味がない人はピンとこないと思うので、まず3種類の違いを説明します。

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左がマルイカ、中央がヤリイカ、右がスルメイカ。

マルイカ:身が柔らかくて愛嬌のあるフォルムをしている。エンペラ(耳みたいな部分)が大きく、ゲソは太短い。

ヤリイカ:シュッと細くて尖ったフォルムがヤリっぽい。エンペラは小さめで中央寄り、ゲソは細く小さい。

スルメイカ:太くて堂々としたフォルム。エンペラは小さめで先端にあり、ゲソは長くてとても力強い。

それではクイズのスタートです

全問正解した方は、イカIQ110です。

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これは何イカ?

正解は……

ツツイカの中では丸っこいフォルム、柔らかそうな質感、太く短いゲソ、大きなエンペラ、よってマルイカ。後ろに富士山が見えますね。

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これは何イカ?

正解は……

シュっとしたフォルム、中央寄りにあるエンペラ、控えめなゲソ、よってヤリイカ。すごくヤリっぽいですね。

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これは何イカ?

正解は……

一つ上のヤリイカに似ていますが、エンペラやゲソをみればマルイカですね。

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これは何イカ?

正解は……

太く肉厚なボディ、レーシングマシンのようなエンペラ、力強いゲソ、これはお馴染みのスルメイカ。小型サイズはムギイカとも呼ばれます。

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これは何イカ?

正解は……

わかりやすいマルイカですね。エンペラの背景が透けるほどの透明感が魅力的です。

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これは何イカ?

正解は……

エンペラが見えないしサイズが小さくてわかりにくいですが、これもマルイカです。プラヅノというピカピカした疑似餌で釣れました。

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これは何イカ?

正解は……

わかりにくい角度ですが、ゲソの小ささでおわかりですね。そうです、ヤリイカです。

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これは何パン?

正解は……

マルイカかと思いきや、まるごとソーセージ。船の上で食べる惣菜パンは格別です。

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それではクイズの第二段スタートです

ここからは応用編です。全問正解した方は、イカIQ120以上です。

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これは何イカ?

正解は……

そうです、マルイカです。これは別日の私ですが、別に顔を黒く加工した訳ではなく、サングラスと日焼け防止の黒い布のせいで銀河鉄道999の車掌さんみたいになりました。

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これは何イカと何イカ?

正解は……

褐色の重量感あるボディのツープラトン、同行者がダブルで釣ったスルメイカでした。私は一匹もスルメイカを釣れませんでしたが、引きがとても強いそうです。

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これは何イカと何イカと何イカ?

正解は……

左からスルメイカ、スルメイカ、マルイカ。最後だけ体に対するエンペラの比率が違います。

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これは何イカと何イカと何イカ?

正解は……

細長いからヤリイカと思いきや、左からスルメイカとスルメイカとマルイカ。実は一つ上のイカを連写したものですが、色も形も全然違いますね。

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これは何イカ?

正解は……

雰囲気で感じ取りましょう、マルイカです。色のついた丸い細胞が大きくなったり小さくなったりすることで、体の色が変わります。

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これは何イカ?

正解は……

バケツに入れたマルイカです。かっこいい!

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これは何イカと何イカと何イカ?

正解は……

左からヤリイカ、ヤリイカ、マルイカ。太陽の光が当たると綺麗ですね。

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これは何イカと何イカと何イカと何イカと何イカと何イカ何イカと何イカと何イカと何イカ?

正解は……

上で横向きなのがマルイカ、下で横向きなのもマルイカ、残りは左から小さいマルイカ、マルイカ、ヤリイカ、ヤリイカ、マルイカ、ヤリイカ、スルメイカ、スルメイカ。

水中のマルイカは白っぽい色をしていることが多いようです。生きているスルメイカは背中に黒い縦の筋が見えます。

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これは何イカ?

正解は……

スルメイカの口です。おっかいないですね。中央にある黒いクチバシみたいな部分で噛まれると、すごく痛いので気をつけましょう。

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生きたスルメイカを開こうと思ったら、武器を奪われて逆襲されそうになりました。スルメイカはヤリイカやマルイカに比べて、圧倒的に戦闘力が高いので舐めたらいけません。
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船上干しにしました。

以上、ツツイカクイズでした。

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三種類のイカを開いてみる

こうして三種類のツツイカの仲間が、同じ場所かつ同じ鮮度という比較しやすい状態で手に入ったので、捌いて食べ比べてみよう。

分類上では、マルイカ(ケンサイキイカ)はヤリイカ科ケンサキイカ属なのでヤリイカの仲間。対してスルメイカはアカイカ科スルメイカ属なので、ちょっと遠い存在だ。この差は味にでるだろうか。

どのイカも何度か釣って食べたことがあるけれど、こうして同時に並べるのは初めて。寿司通が白身魚の微妙な違いを楽しむように、私はイカの違いを喜べるだろうか。

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マルイカ:身がとても柔らかく、透明感が一番ある。二本の触腕(エサをとる腕)がしっかりしている。アイシャドーは派手でクリっとした瞳。
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ヤリイカ:身は薄いけれど適度な張りがあり、透明感はなかなか。ゲソがとても小さく触腕もどれだかわからないほど短い。アイシャドーは派手でキリっとした瞳。
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スルメイカ:身は厚くてしっかりしていて、肝が圧倒的に大きい。透明度は薄く乳白色が濃い。力強いゲソは触腕は長く、吸盤も固くて大きい。アイシャドーは薄く瞳はつぶら。

ところで新鮮なイカは、ずっと細胞が動いている。なんかすごい。

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色のついた細胞がドクドクと動いているんですよ。

帰宅後、点滅する細胞の様子を撮影してみました。


イカ刺し食べ比べ

捌いたイカの寄生虫(アニサキス)チェックをしっかりして、皮をむいて、だいたい同じ大きさに切ってみた。

どれがどのイカか、わかるだろうか。

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一番上がスルメイカ、右下がマルイカ、左下がヤリイカでした。

米粒をみて稲の品種を当てるみたいな難しさだが、釣るところから捌くところまで自分でやったばかりなので、この状態でも微妙な色や弾力の差でなんとなくわかってくる。目がイカに慣れてきた。

それでは、はりきって食べ比べてみよう!

マルイカの刺身

どのイカよりも柔らかく、ねっとりして甘みが強い。

これは素晴らしいイカだ。

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まずはマルイカから。
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そりゃもうフンニャリと柔らかいんですよ。

ヤリイカの刺身

身が薄いながらも、歯が喜ぶ心地よいハリがある。

僅かに酸味を感じさせる爽やかな旨味と甘味を持っている。

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続いてヤリイカ。
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しっかりパッキリしている。

スルメイカの刺身

こうして比べると、身の厚みが圧倒的だ。

この切り方だとボリュームがありすぎるので、隠し包丁を入れるか、細く切るイカそうめん型がいいかな。よく知っているイカの味。

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最後はスルメイカ。
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厚みのあるネッチョリした食感だ。

これまでなんとなく感じていた味や食感の違いが、こうして食べ比べることで、よりはっきりと理解できた。 キハダマグロとビンチョウマグロとメバチマグロくらい違う。

せっかくの機会なので、ウコギを混ぜたご飯に盛り付けて、『イカだらけの海鮮丼』という、わかりにくい贅沢をしてみた。白い三連星によるジェットストリームアタック丼だ。食べてみると口に入ったイカがどれなのか、わかるくらいに味覚が鍛えられたことが実感できる。

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左上がヤリ、右上がマル、下がスルメのはず。食べればはっきりわかるが写真だと若干怪しい。わさびだと刺激が強すぎるので、山わさび(ホースラディッシュ)を乗せた。これが合うんだ。

フンニャリ、パッキリ、ネッチョリ。みんな違ってみんないい。

イカだけに食べた感想は以下同文、とはならないのである。

塩辛でまとめてみよう

スルメイカにあって、マルイカやヤリイカにはないもの。それはボリューム感のある肝。

この肝を使って(船上干しを作ったのでたくさんある)、マルヤリスルメによる三身一体の塩辛を作ってみた。

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スルメイカの肝にたっぷりの塩を振って水分を抜き、マルとヤリとスルメの刺身を混ぜて冷蔵庫で数日熟成させる。
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「マルイカです、スルメイカです、ヤリイカです。三匹合わせた塩辛です!(Perfumeの挨拶みたいに)」

これがすごくうまかった。スルメイカだけで作ってもうまいのだが、そこに柔らかいマルイカ、パリっとしたヤリイカが加わることで、食感に遊びが生まれる。また微妙な味の違いが、濃厚な肝の裏で静かに主張してくる。

これは素晴らしい塩辛だ。

それぞれの違いを楽しみました

こうして食べ比べたあとは、それぞれの特性を生かしていただいた。見た目はかなり似ているけれど、やっぱり違うイカである。適材適所、無理に同じ食べ方で比較をする必要などないのだ。

いやそれを勝手にやっていたのは私なのだが。イカっておいしいですね。

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スルメイカの船上干しが最高なんですよ。適度に水分が抜けた厚い身の歯ごたえは、このイカだからこそ味わい。スルメは刺身よりも火を通した方が好きかな。
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トンビと呼ばれる口の周りにある筋肉もうまいんだ。
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マルイカも干してみたのだが、やっぱり干しても柔らかさは健在で、すごく上品に仕上がった。ヤリイカも試せばよかったな。
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ヤリイカは丸ごとオリーブオイルで焼いて、パスタにするとうまい。
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スルメイカを丸焼きにすると、切ったときに肝が出てきてカレーみたいになるよ。

どのイカが一番好きか、推しのイカを決めようと思ってチャレンジした食べ比べだったが、案の定というか言わんこっちゃないというか、結局順位を決めることはできなかった。私の仕掛けで釣れてくれたイカだもの(もらいもの含む)、みんなかわいいよ。

イカの味の違いは見た目以上に意外とある。次はスミイカ、モンゴウイカ、シリヤケイカなど、コウイカの仲間で食べ比べをやってみたいが、いっぺんに釣れる日はくるのだろうか。

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