「バイバーイ」
なんとなくこの記事は「バイバーイ」の画像で終わるのかなとか思っていただが、成り行き上そうならなかった。「バイバーイ」って面と向かってほとんど言ったことがないのだけど、ビデオレターだとしっくりきますね。それではまた。

結婚や出産など喜ばしいイベントが友人にあった時、メールの文面だけで「おめでとう」と言うのが物足りなくなってきた。忙しい相手にとって僕が物足りないかどうかなんて本当にどうでもいいことなのだけど、祝うサイドとしても悔いの無い「おめでとう」を言いたい。
そんな理由で、最近ビデオレターを送っている。友人個人に宛てた「おめでとう」と言うためだけの純粋なビデオレターである。
みんな優しいので朗らかに喜んでくれるが、やるこちらはと言うとスリリングでとても楽しい。「おめでとう」なんて5文字で済む言葉でも、動画でちょっと挨拶などを交えてしゃべるとすぐ数十MBのデータ容量になる。この膨大な情報を一気に相手に送ってしまう取り返しのつかなさがとてもハラハラして楽しい。結局自分が楽しいからやってるのだ。みんなごめん、という気持ちである。
楽しいので普段の事務的なメールもビデオレターにしてはどうだろうか。
ちょうど先日、編集部の橋田さんから個人番号が分かる書類を提出して欲しいというメールを頂いていた。運営会社が変わった関係で改めて必要になったのだ。
ではビデオレターで返事をしたらどうなるだろう。撮ってみた。こちらの動画のようなことになりました。(このあと画像でしつこく紹介するので見なくても大丈夫です)
この動画を、メールをくれた橋田さん、担当編集の藤原さんと一緒にZoomで見た。動画を撮り、編集し、二人と日程を調整してZoomで会ってお疲れ様でーすとか言ったのちに再生したのだ。もう橋田さんに書類を手渡しできるくらいの手間をかけている。
こんな感想が出た。
僕も橋田さんと一緒に見て初めて気がついたのだけど本当にくどい。これから画像で振り返るのだけど、必要だと思うので最初に言っておきます。本当にくどいのだ。敢えて一字一句そのまま、くどく紹介します。
ここまではメールと同じだ。ここまではいい。そしてこう続く。
早くもくどい。最初の「いかがお過ごしでしょうか」だけでいい。でも効率ではないのだ、ビデオレターは。相手を気遣いたい気持ちがあるなら内容が薄くても言うのだ。
そして次から用件である書類の提出である。
見えない。藤原さんが口に出して「見えないですね…」と言っていた。
僕も撮る前までは、カードをカメラの近くに持って行ったりするのかなと思っていたのだが、なんだか恐ろしくてできなかった。撮影用に大事な部分は隠してあるのだが、それでも怖かった。橋田さんにはこれで見てもらうしかない。
「ではこれで、書類の提出は以上になります。
…僕はもう最近ですね、」
「しゃべるの!?」という空気がZoomで伝わってきた。Zoomは色んなことを伝えてくれる。藤原さんが動画の再生バーを見て「あと1分ありますよ」と言った。ビデオレターってそうじゃないか。最後ちょっとしゃべるじゃないか。
とにかく長く感じた。ビジネスのメールにビデオレターは向かないだろう。でも橋田さんは「ただの書類に温もりを感じた」と言ってくれた。書類、見えなかったけど。
このようになんの役にも立たないが温もりだけはあるのだ。パソコンのモニターが映らなくなったら裏側を触って同じことを言うんだろう。
温もりだけしかないのならば、特に用件の無いメールには向いているのではないか。
ちょっと悩みを聞いて欲しいという時にも送りそうだが、今回は本当に何もなくてただ構って欲しい時に送る「今、暇?」で考えて欲しい。
それをビデオレターにしたらこうなった。
さっきみたいに全部振り返るとさすがにくどすぎるので、今度は話した内容を箇条書きにしました。
以上である。長くて中身のない箇条書きになった。ちょっと驚いている。「今、暇?」で2分のビデオレターを作ると裏にあったニュアンスを全部しゃべることになり、こんなにモゴモゴしたことになるのだ。
今度はなんだか伝わりすぎる感じがした。構って欲しいけど迷惑と思われたくないという整理されていない気持ちが見えすぎて重い。
用件のないメールのビデオレターは、温もりが質量を持って重さになった。あたたか〜い鉛だ。
ここまで分かると普通のビデオレターから離れたくなり、
「ビデオレターなのか?」と撮りながら思ったし、見てくれた橋田さんと藤原さんも言っていた。こちらが何かの役になりきってしまうことで見る方のスタンスも変わってきてしまうので、ビデオレターを撮りたいのだとしたら自分として、自分の気持ちをまっすぐ伝えた方がいい。ふざけちゃダメなんだ。
でも犯人のやつは作っていて楽しかったので動画を下に貼ります。
というわけで、ビデオレターの暑苦しさ、重さが際立つ試みとなった。そもそも今まで友人を祝うビデオレターも相当に暑苦しかったのかもしれないと今さら不安になってきた。
でももう送っちゃったものはしょうがないし、誰かをクールに祝うなんてそんな難しいことできるわけない。人を祝う気持ちというのは暑苦しいものなのだ。
なんとなくこの記事は「バイバーイ」の画像で終わるのかなとか思っていただが、成り行き上そうならなかった。「バイバーイ」って面と向かってほとんど言ったことがないのだけど、ビデオレターだとしっくりきますね。それではまた。
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