高級レストランでとんがりコーン出されたらどうする?
とんがりコーンは指にはめて食べるものである。と、同時に指が粉で汚れるという問題も確かに存在する。子どもの時は気にならなかったことが、大人になってから気になるようになるのはちょっと悲しいけれど、しょうがない。
指にはめて食べることがマナーであると同時に、やっぱりそれはちょっと子供っぽさがある。例えば、高級レストランのデザートでとんがりコーンがでてきたとしよう。我々は指にはめて食べるだろうか。いや、食べないでしょう。ナイフとフォークで頑張って食べると思う。しかし、想像してみるとナイフとフォークではとんがりコーンを食べることは難しそうである。
とんがりコーンは何かに"すっぽりと"はめて食べたいという欲求。それに対する、大人になってしまった私たちの小さいけれど心の大部分を占める問題。
そうか、大人になった私たちに必要なのは「とんがりコーン専用のカトラリー」ではないだろうか。
モデリングをしよう
ということで、「とんがりコーン専用のカトラリー」を作っていきたいと思う。今回は、Fusion360というCADソフトを使ってモデリングし、それを3Dプリントして作っていく。
Fusion360のフォームという機能を使うと、感覚的にモデリングができるのでオススメです。
スプーンに似た形状を作り、その先端をとんがりコーンがハマるような円錐型にしていく。
ということで、とんがりコーンの内径が何センチなのかを測った。だいたい内径が8mmで、30mmくらいの高さの円錐をつくればとんがりコーンがぴったりハマることがわかったので、その円錐を作り、先ほどの柄の部分と合体させる。ただ合体させるだけだとデザイン的にどうなんだと思ったので、5mmの段差みたいなものを作った。数年前は段ボール切って貼って完成みたいな工作していた私がデザインうんぬんとか言うの、めちゃめちゃ成長した感じがする。
こちらで完成です。
3Dプリントをしよう
モデリングができたので、今度は3Dプリンターでプリントをし、実物の使い心地を試してみたいと思う。モデリングは結局、仮想空間での出来事であり、実物を触ることで「なんかここおかしい!」ということに気づくことができるのである。
今回は、enderというamazonで3万円くらいで購入できる3Dプリンターを使って出力していく。3万円だけど、ふつうに使えるすぐれもの。キャリブレーションが不安定だが、クセに慣れるとそこまで苦ではない。人生と一緒。でも、高いプリンターをつかうと「断然こっちのほうがいいやんけ!」となる。人生と一緒です。
1時間半くらいで出力できた。サポートを取って少しやすりがけして形を整えてみる。
おお! すごくよいぞ!!
とんがりコーンをすくってみると、
かなりいい感じにすくえた。
よい形だ!
金属で作ろう
これでオッケーな気もするが、冒頭で言った通り、私は高級レストランでとんがりコーンがでてきた時に使えるカトラリーを製作したいのだ。プラスチックだとやっぱりどこか安っぽい感じがする。なので、このデータを元に金属で作っていきたい。
ただ、私の作業場には金属を加工する系の機材はないし、町工場とかに「あの、とんがりコーン用のカトラリーを作っているんですけど」とお願いしにいくのもどうなんだ。日本が誇る町工場の技術をそんなしょうもないことに使ってくれるのだろうか。あと、金属の切削とかはめっちゃ高いイメージだ。
そこで、DMMが提供している3Dプリントサービスを使うことにした。なんと、3Dプリントの素材(フィラメント という)で金属がラインナップに並んでいたのである。一番安いチタンを選んで、ついでに磨きのオプションもお願いすることにした。これで、高級感のあるカトラリーが手に入るはずだ!
一週間くらい経ち、DMMからプリント品が届いた。
すごい! 3Dプリントとは思えないくらい綺麗だ。
チタン製のこれは、けっこう重くてピカピカしている。
とんがりコーン用カトラリーの完成
ということで、完成しました。「とんがりコーン用カトラリー」だ。
これで高級レストランでとんがりコーンをだされてもお上品に食べることができそうだ。とんがりコーンをだしている高級レストランがあったら教えてください。
指も汚れないし、お上品だし、なかなか便利なものを作ってしまった。「いや、箸で食べればよくね」というコメントは胸の内にしまっておいてください。
人類の進化には道具がつきものだ
人類というのは道具を作ることで進化してきた。今回わたしはとんがりコーンを食べる道具を作ることに成功した。つまり、人類が進化に近づいたということかもしれない。ちがうかもしれない。
おしらせ:「無駄なマシーンを発明しよう!」を出版しました
無駄なマシーンを発明しよう! ~独創性を育むはじめてのエンジニアリング(技術評論社)
私は「無駄づくり」といって無駄かもしれないけれど頭の中にあるイメージを形にする活動をずっと続けているのですが、このたび「無駄なマシーンを発明しよう! ~独創性を育むはじめてのエンジニアリング」という本を出版しました。「くっつけてものをつくる」「マシーンを分解して新しいマシーンをつくる」「Arduinoを使って電子工作とプログラミングをしてみる」といった物づくりの段階を体系的にまとめていて、夏休みにぴったりの一冊になっています。
私は工作が下手ですが、「無駄づくり」をはじめてから自分の大雑把な部分とか下手な部分を認めて、それによって物づくりがとても楽しくなりました。物を作ることは、私たちの生活にとても密接に関わることです。ぜひこの無駄づくりの精神を感じてくれたらうれしいです! ご購入はamazonなどのECサイトや、各書店でおねがいします。発明しようぜ!