鍋スープっていつからこんなに増えたんだっけ
私は鍋料理がとにかく好きで、冬とかどうとか関係なく一年中食べている。ザクザクっと切った野菜、肉と豆腐などをグツグツ煮ていけばほぼ確実に美味しい。中に入れる具材も味付けもその時々の気分で自由自在。雑炊にしたり麺を入れたり、締めまで楽しい。
楽で美味しくて野菜もたっぷり食べられて栄養バランス的にもよさそうだ。グツグツと沸き立つ鍋の中を見ていると賑やかな気分にもなれる。いいことづくめが過ぎるというものである。
水炊き鍋をポン酢で食べる王道のやり方が私は好きだけど、とにかく頻繁に食べるのでたまに味付けを変えたくなる。そういう時に力を借りるのが「鍋スープ」だ。
棚を見ていて一番目立つのは「ストレートタイプ」と表示された、希釈せずにそのまま鍋に入れるだけで使えるというもの。700mlから750mlほどの量が入って「3~4人前」と表示されているものがほとんどだ。
今のように多くのメーカーから色々な種類の鍋スープが売り出されるようになったのっていつからなんだろう。ここ数年でバリエーションがやたら増えた気がするのだがどうだろう。
自分の手でダシをとってじっくりと美味しい鍋に仕上げていくのもやりがいがあるけど、なかなか大変でもある。鍋スープを使えばそこらへんの時間のかかる行程を一気にショートカットして美味しい鍋にありつける。
きっと当初はその手軽さをウリとして開発されたんじゃないだろうか。そしてその手軽さは今や当たり前になり、個性的な味付けのものも人気を集めるようになった。と、そんな流れで今のように種類が豊富になっていったんじゃないかと思うのである。
鍋スープは鍋以外にだって使えるんじゃないか
先日、夕飯におでんを作って食べようと考えた時があった。ちくわや大根などの具材を買い、粉末タイプの「おでんの素」を一緒に購入した。
で、その「おでんの素」が並んでいたのが鍋スープのコーナーのすぐそばだったのだが、視界に入ってくる鍋スープを見て「このスープでおでんを作ったっていいかもな」と思った。仕事に疲れ、会社とは逆方向の電車にふと飛び乗るみたいな感覚で、鍋スープも一緒に買い物カゴに放り込んだ。
その時に買ったのが先ほどの写真の「地鶏だし塩鍋つゆ(ヤマキ)」である。
そして私は「おでんの素」を使った普通のおでんと、鍋スープを使った「地鶏だし塩鍋つゆ味のおでん」を同時進行で作ってみることにしたのだった。
大きめの鍋を2つ使い、2種類のフレイバーのおでんを作る。こんなに作って食べ切れるだろうかと不安になったが、おでんは多少作り置きがきくから大丈夫だろう。
こうして写真に撮ってみて思ったのだが、おでんの具のセレクトってなんだか自分の内面をさらけ出すようで恥ずかしいですね。私の具材選びにはポリシーがなくて雑な感じがする。そこは勘弁してください。
小1時間ほどグツグツと煮込み続けてできあがり。当然のことだが普通のおでんの方は普通にできた。
地鶏だし塩鍋つゆ味の方のおでんは、元のスープが白濁したような色だったので、色味に若干の違いがある感じに。
地鶏だし塩鍋つゆ味のおでん、食べてみると美味しかった。そもそも鍋スープ自体が美味しくて、そこに野菜や肉を入れただけなのだからそりゃ美味しいか。鍋物にはあまり入らなそうな玉子も、ちゃんと味が沁みて美味しかった。
手羽元も大根もちくわもごぼう天も全部うまい。もちろんベーシックなおでんの方が「おでんを食べたなー」という気持ちになるけど、もしどこかの居酒屋でおでんを注文して「今日は地鶏だし塩鍋つゆ味なんですよー」って言われたら「おっ!いいねぇ!」と喜んでしまいそうな味わいである。
「これはいいぞ」と思った。私が鍋好きであることはすでに書いた通りだが、鍋ものの美味しさには「加熱しつつあるものをそのまま食べる」という点が大きく作用していると個人的に思う。グツグツでアツアツであることが美味しさを支えていて、卓上コンロの火を止めると途端に寂しい見た目になってしまったりする。鍋にはライブ感が重要なのだ。
それに比べ、おでんは作り置いたものを食べる際に温めれば十分美味しい。昨晩作った鍋の残りを翌日に食べるというのはなんとなく気が進まないけど、おでんなら全然アリ。むしろ2日目の方が味が沁み込んで美味しい。好きな味の鍋スープを買ってきて具材を適当に入れ、2日ぐらいに渡ってじっくり煮込んで食べていくというスタイル、いいじゃないか。
つまり、おでんに転用することで、私は鍋スープをライブの世界から解放することに成功したのである!どうしても家族の食事の時間がバラバラになってしまうというご家庭でも安心。
他の鍋スープでもおでんを作ってみることにした
気をよくした私は他の鍋スープをベースにしたおでんも作ることにした。鍋スープというものは、言ってしまえば「うまい汁」である。様々な味のうまい汁でおでんの具材を煮込む。どう考えてもそれが美味しくならないわけがない。
たとえばこれである。
どちらもそのまま鍋に使えば確実に美味しくなるであろうスープだが、これでおでんを作ってみる。
おでんらしからぬ香りが台所に立ち込める。しかし当然のことながらどちらもいい匂いである。
あとは具材をグツグツ煮込んで待つだけ。食べる直前に春菊をサッと茹でてできあがりだ。
スープ自体が美味しいんだから絶対美味しいことはわかっているんだが、食べてみた。やっぱり美味しい!特にキムチ鍋つゆ味の方。キムチのピリ辛具合がこんなにおでんの具材と合うとは知らなかった。ちくわや平天といった練り物との相性も最高。
残ったおでんは翌日に持ち越し。具材にどんどんスープの味がしみていく。とり野菜みそ鍋スープにはうどんを入れ、キムチ鍋つゆには乾麺を入れて残らず食べ切った。
どんなスープでもだいたいうまくいくことがわかった
失敗するおそれのないチャレンジ、という感じだが、さらに続けてみることにした。今度は普段の鍋ものではあまり使ったことのない変わり種系の2種をチョイス。
「甘熟トマト鍋スープ」からは酸味を感じるトマトの香りが、「クアトロチーズ鍋スープ」からは濃厚なチーズの香りが漂う。もし自分が実家にいて、台所からこの2つの匂いが同時にしてきたら「え、今日の晩御飯、何?」と覗きに行ってしまうかもしれない。
何回も繰り返してきて、私ももう慣れたものだ。大根が柔らかくなる頃合いまで煮込んでできあがり。顔色ひとつ変えず皿に盛り付ける。
これがもう、変わり種おでんの可能性をしっかり感じさせてくれる美味しさ。おでんの進化に立ち会っているかのような気分になった。
いや、というか、このスープを使って食べる鍋ってどんなものになるんだろう。そっちを試さずにいきなりおでんに使ってしまってなんだか申し訳ない。
鍋スープの中でもちょっと変わったものを選んだつもりだったが、これもまた普通に美味しくできてしまった。「これ、たぶん、どれでやっても美味しくなる」と私は確信した。今後も美味しい鍋スープを見つけ次第、おでんに転用していこうと思う。
うまい汁でおでんの具材を煮たらうまかった。終始「自分は当たり前のことをしているだけなのでは?」という不安につきまとわれた今回の試みだった。
鍋スープおでん、みなさん絶対美味しいので安心して試して欲しい。今回試したものでは特にキムチ風味がおすすめです!
とにかく、今回のおでんへの応用に限らず、鍋スープというものの可能性がまだまだ開発されきっていないのは確かなはず。きっと思いもよらない使い道があるんだろうな。いいアイデアがあったら教えてください!
ちなみに今、私は一周まわって普通のおでんが食べたくなっている。