黒板を買ってくるだけ
以前、同じくデイリーポータルの記事で飲み会の本質は共感であると見つけ出した。
参考 『究極を言うなら飲み会はもう誰かのオーダーに対して「ああいいね」だけで成立する』
それ以来お店に行ってみると一番楽しい時間とは黒板を見てる時間であり、なんならお酒よりも黒板が好きなんじゃないかと思い始めた。なら黒板だけを作ってみてはどうだろうか。
黒板を買ってきた、ここにチョークで書く。そんなことして楽しいの?と思われるかもしれないが、これがあなどれない結果を生む…!
各々の理想の黒板メニューを書く
ホームセンターで黒板を買い、各々が理想だと思う黒板メニューを作った。集まったのはライターの張江浩司、デザイナーのよシまるシン、デイリー編集部の藤原浩一、と筆者という明日のアーという舞台をよくやってる面々である。
一人ずつ理想的な黒板メニューを書く。まず張江さんから
じゃあ黒板見ましょう。張江さんは過去に居酒屋で働いていたりして今回のメンバーでは一番信頼がおけそうですが。
張江作の黒板。今日はテキストを主にお楽しみください
書いた本人の張江も含めて居酒屋に来た感に包まれる
黒板メニューならではのツボがある
4人だと盛り合わせですかね。さっきの大間のマグロが入ってるんだろうし。
シュウマイかあ~。こういうところでシュウマイ単品に来てることは。なんかちょっと美味しいのかもな…
このトラップにかかってくれたの、めちゃくちゃ気持ちいいですね! こういうところのシュウマイってうまそうだなって思っちゃうんですよね。
黒板メニューなんでこれとは別に卓上のメニューもあるじゃないですか
カキフライを見てくださいと
ぐわ~!! 刺し身で食べられるものをカキフライでってことか~!
いや~、あるなあ、黒板メニューに込められたメッセージが。……(低い声で)いいですねえ
うっとり恍惚の表情を浮かべる参加者たち
安すぎても不信感がある
全体的にリーズナブルなのでもしかしたら量が少ないかもしれないですね。
そう見るとなんとなく陰ってくるな。いやいや、でも一品来てから判断しよう。
参加者には温かいおしぼりが手渡されている。これがなぜか居酒屋感を劇的に高める
注文を考えると心が躍る
何にしよっかな、刺身盛り合わせと…生牡蠣、なめろう、ラムのポトフ絶対美味しいですね。あーでもなあ! カキフライ美味しいのか~!!(立ち上がる)
チャーシューエッグって多分ハムエッグのハムがチャーシューになってるやつだと思うんですけど。
なにが「せっかく」なんだ。たぬきに化かされた宴会みたいになってるのに…(笑)
お待ちかねのオーダータイムである。共感の嵐が巻きおこる
よシまるさん! それはないでしょう! こんな美味しそうなお店にそれはない!
ほんとに居酒屋に行ったような気分
これやるだけでちょっと酒飲んだような感覚ありますね。結構満足しますね。何年かしたら本当にこの4人でラムのポトフ食べたような記憶があるかもしれない。
気持ちが温かくなったところで黒板のメニューへ
大北のメニュー。張江:この「聞いてください」ってやつありますよねえ(笑)
安く珍しい、むしのいいメニュー表
きゅうりの沼漬け!? 浅漬けってのはあるけど沼漬け!?
バターめんつゆごま油…全部調味料だ。なめるのかな。
Twitterに流れてくるようなメニューが出てきますよ。
あの憧れのサムゲタンが多分ちょこっと食べれるんでしょうね。
実際IQが高いお客さんに対しては、 商品の良くないところも伝えた方が買ってくれるらしいんですよ。そういう意味ではすごい客層がいいんじゃないかっていう(笑)
信頼性がゆらぐ
ちょろぎって1.2個おせちに入ってるものですかね。やみつきってことはけっこうな量を食うことになるのか…
どういうことなんだろうな…。こう見るとナスの揚げ浸たし、280円 だけが本当であと全部嘘に見える。

そうなんです。やっぱり新規性だと思うんですよね、我々は一回居酒屋に飽きててその後のもの。ワタミの後のミライザカみたいな。
※ワタミの新業態ミライザカは料理がひと工夫されがち
新しいことをやろうとしてるっていうだけで評価しますよ。

やみつきチョロギ、頼むだろうな…やっぱ380円ですし、話の種っていうか
その意味ではきゅうり沼漬けもなんだろうって頼みますね。
安いし。でも「沼にハマる」みたいなネットスラング的な「沼」漬けだったら絶対頼まないです。
「TKG」って書いてたら絶対頼まない、みたいな(笑)
※たまごかけごはんのこと
そう(笑)まさに先日、私はあの居酒屋選ぶ時に、店頭のメニューに「TKG」って書いてあったんで、やめました。
人によって理想は全然ちがう
やっぱりいいメニューってありますよね。いい店来たなって。張江さんの思うそれと私の思うそれは全然違うこともわかりました。
産地とかちょっと嬉しいじゃないですか。アジって書いてあるよりも「千葉のアジ」の方がなんかおおっと。
新規性と信頼性のバランスが必要
新しいポテトフライを絶対に頼まない人っていると思うんですよ。わかんないから。でも同時にわかんないから頼む人もいると思うので。
食に関してはすごく保守的な人とそうじゃない人、分かれそうですよね。
食べたことないからって理由で食べない人いますよね。
まずおしぼりがびしゃびしゃ
びちょびちょ! おしぼりが信じられないくらいびちょびちょだ!
おしぼりは黒板担当者が用意してくるのだが、おそろしくびしゃびしゃであった
サイゼリヤ的メニューからはじまる
なんか刺さってるやつですかね。あ、キャベツのペペロンチーノ
サイゼリヤとアルプスインスパイア
あっ! わさび巻きってあの新宿にあるアルプスグループの!?(笑)
※生ビールが100円近くだったりするチェーン店。
寿司屋のポテンシャルはわさび巻きを頼むとわかると聞いたことありますよ。
でもこのラインナップだとアルプスグループのわさび漬けの強いやつが入ったやつだと思うんだよなー。
アルプスグループの(笑)。これ入口にアジが泳いでる可能性がありますよ。
ビールの安い居酒屋を思い出してしまう
オーギョーチ、台湾の黄色いゼリーか。なんで居酒屋に…?
お菓子作りが上手で開発したのかな。でもなんかお菓子上手な人がただこんなおしぼりべちゃべちゃにするかな!?
寿司もちゃんと握ってないんでしょうね。べちょべちょ寿司。
オーダーするも納得感がない
ブロッコリーのクタクタとキャベツのペペロンチーノ頼もうかな
アルプスを感じさせるわさび巻き
やっぱアルプスが頭をよぎりますね。生ビールいくらなんですか?
アルプス(笑)歌舞伎町か渋谷にあるんですよね(笑)
グラフィックデザイナーでもあるよシまるさん理想のメニューがこちら
「本ずわい」ってズワイガニをカニクリームコロッケにしたのかな。そのまま食いたい(泣)
そこに納豆がついてきちゃいますからね(笑)納豆の力が強すぎる
頼みたいものはいっぱいあるんですよね。刺盛りも7点頼みたいし、パリパリサラダもいいし、ソーミンチャンプルーも入れると納豆3つかあ…
(笑)3つかあ。まとめて1皿で来るのかな。納豆がドーンって。
よシまるがもっさん像を語り始める
黒板で店主をイメージ作る
もっさん誰なんだろうなあ。店長さんがなんかやっぱり
マスターの名前がついたカレーってあるよなと思って。逆算して、もっさんが出てきました。多分最初はカレー屋やってて、ちょっと厳しくなってきて、居酒屋にしちゃったパターン
居酒屋になっちゃったじゃんみたいな意見も多分あるんですよ。でももっさんらしさは失ってませんよっていうところが多分その納豆なんです。納豆を使ったカレーだったんでしょうね。
これで納豆外しちゃうとただの居酒屋かなって、なんか色々葛藤があったと思うんですよね。
大北:ここまでを踏まえて一回理想形がなんなのか喋りながら考えてみましょうか
ここまでを踏まえて一回理想形がなんなのか喋りながら考えてみましょうか
悩みたいんですよね、単品でいくか盛り合わせでいくか。
そうですね。それで結局盛り合わせいっちゃうみたいな。
盛り合わせいいな。ほどほどに悩みたくないんですよね。
単品でちょっと釣られといて、結局盛り合わせ頼もうかなとなって見たときに、この盛り合わせが……580円!
合議制によって書いていく
店の名前を入れると新規性が出る
バーニャカウダとかちょっと変わったメニューあるじゃないですか。新規性みたいなのをどこで訴えますか。
それこそモッさんポテサラみたいな名前に固有性がついてると、なんか違うのかなって気持ちになりますよね。それで微妙にちょっと高いとなんか逆に期待感があったり。
それはだめだ(笑)カスカスって料理についたら全部美味しくなさそう
適当な名前、ケーズキッチンとかでもいいんですよね。

ボルシチ級の変わったメニューは今までを踏まえると2個ぐらいしかやったらいけない気がしました。
たしかに大北さんの居酒屋新規性がありすぎて全部嘘みたいになりました。
信頼度っていうのがあるんですよね、黒板に対しては。
いいんじゃないですか。もうちょっと高くなるといい。
ジビエとか言ってるとチャラさが出ますか。やっぱりアヒージョとかがある居酒屋にイマイチ信頼感がなく。
どうでもいいことながら真剣に話し合っている
ちょっと鍋っぽいのが何個かあってもいいかもしれないです。湯豆腐と。
理想がありそうになっていく
安定した人気のやつなにかないかなー。さっきのシュウマイよかったですね。
今はまりましたね。580円で目玉焼き付き。おトク!
できてきました。でもやっぱ、あんま冒険しないですよね。理想を書いていくとありそうな店が出来上がってきた。
ハライチのラジオで理想のフードコートを作ろうって言って、本当にありそうな感じのフードコートになってました。
理想って「ありそう」になっていくのか、面白いですね。カレーとかあるといいのかなー。
僕バイトした店にスパイスカレーってあって、すげえ出ますよ。匂いもすごいから。
確かにスパイスカレーって書かれてたら頼みそう。できました。
あーいいんじゃないですか。一回置いてみましょうか。
完成、これが私達の理想の黒板メニューである
「あ、こっちの通常メニューに刺し身盛り合わせなかったけど、あるわ。」
ほどよく、新規性もあり、ちゃんと抑えるとこは抑えて。
あまりにもいいからもう一回載せよう
でもここに変なメニューを置けないですね。カキフライとか湯豆腐の定番メニューに挟まれてるから新規性のある鹿肉を置けるけど。
鹿肉のすき焼きを前面に押してこられても、ちょっとなあって。
新規性とチャラさとの戦いでもあるんですかね。いいメニュー難しいなあ。
ロールキャベツとかすごいいいもん。スパイスカレーとかもね、フー!
もう来ないと思ったろう。来るんだ。
1人で来たらまず湯豆腐と瓶ビール。それで湯豆腐食べながらこの黒板見てます。
実際、スパイスカリーを頼むかっていうとわからないんですけど。うん、あるんだなって。
黒板に見惚れる時間がつづく
いやあ、確かにいいメニューはなんかこう惚れ惚れするね。
眺めたいんですかね。 今度からちょっといいメニューだなっていうのは、写真撮りたいですね。
もしかしたら結局いい居酒屋ってメニューがいいんですかね。
たしかに高い食材を適切に料理すればおいしいものが出てくるわけで。
実際、こっから50代、60代になってって胃とか荒れていって、油ものとかしんどくなってくると、本当にきゅうりとかかじって黒板眺めてるだけなんだろうな…。あ、涙が(笑)
だまされたと思って一回やってみてほしい
人間は集団で暮らしてきた生き物なので、共感が気持ち良いように作られている。一人が楽だけどもたまに居酒屋に集って「そうだよ、それだよ」と共感をし合う。
ただ黒板書いてるだけじゃないか。と思われるかもしれないが、やってみてほしい。結局居酒屋でやってることも共感を感じる会なのだ。アルコールがなくても食べ物を分かち合わなくても、本質はそれほど変わらないのである。
飲み会をやらなくても黒板を書くだけでも共感は味わえる。いや、どんどん関係性が希薄になっていく世の中で、私たちはもっと共感をしないといけないのである。都会で暮らす人は特に。「いい天気ですね」とお散歩してる人に言えれば居酒屋なんてなくてもいい。
と言いつつも結局飲み会に行ってしまうので現代の病は根深い。
ライターからのお知らせ
3月28日から浅草木馬亭にて明日のアーの新喜劇をやります。ラディカルなコントを作ってたんですが、これもう新喜劇なんじゃないかなと思いまして。2月中旬チケット発売します。