和菓子を考えたときに栗まんじゅうは出てきますか
同じドラえもんに登場するどら焼きは人気の和菓子だ。アイドルグループで言ったらセンター格である。塩大福やみたらしだんごもセンターかな。草餅や水まんじゅう、季節性のあるものもいいよね。すあまや若鮎なんてレアなのも忘れちゃいけない……。
そんなふうにして好きな和菓子について思いを巡らせたとき、出てこないのが栗まんじゅうである。「栗」と「まんじゅう」という人気者の二人を組み合わせたのに阿佐ヶ谷姉妹になってない。この喩えは適当だっただろうか。
(今回は僕の印象で書いているので、栗まんじゅう大好きな人はここを読み飛ばしてこの後の栗まんじゅうの写真をご覧ください)
きっと美味しい栗まんじゅうが日本のどこかにあるはずだ。ぜんぜん違うね!といつか自分の視野の狭さを恥じる日が来る。
突然そう思って先月から出かけるたびに栗まんじゅうを買う生活が始まった。
赤坂・青野
調べると、赤坂と乃木坂のあいだにある老舗和菓子屋の栗まんじゅうが有名らしい。ウェザーマップで増田さんの話を聞いたあとに寄ってみた。
なるほど、これは栗まんじゅうだ。ただ、ぜんぜん違うね!という感じではない。あんこも皮も軽くて食べやすく、なかには栗が1個ごろっと入っていた。よく知ってる栗まんじゅうが今日はちょっとおしゃれしてきた、という感じだ。
おだんごなのに歯切れがよく、あんこも軽い。サクッとしているわけないのにサクッとしてるような錯覚をした。
団子を食べて思ったのは、栗まんじゅうのメリハリのなさだ。「なんともいえない皮」「白あん」「栗」という要素が全体をベージュでコーディネートしたような印象がある。ような、というか色そのままだ。
上板橋・石田屋
池袋で仕事が早く終わったので上板橋まで足を伸ばした。マイホームタウンである。上板橋でお菓子といえばヨロイヅカでもダロワイヨでもなく石田屋である。本当に有名店でおいしい。
皮がしっとりしていて、あんこはきちんと甘い。栗は最初のひと噛みがカリッとしているのにほくほくしている。上に塗った羊羹もべったりしていて美味しい。
おいしい栗まんじゅうだ。だけど、やっぱり栗まんじゅうのメリハリのなさは存在している。
このぼんやりした甘さの三重奏こそ栗まんじゅうなのかもしれない。
そんなことを考えるようになってきた。
伊勢丹で栗まんじゅうはありますかと聞く
新宿に出る用事があったので当然帰りに栗まんじゅうを買った。伊勢丹の受付で聞くと、たねやにあるかもしれないとのことだった。
以前、伊勢丹の受付で「ここで一番甘いまんじゅうはなんですか?」と聞いたら教えてくれたことがあり、それ以来、なんでも受付に聞くようにしている。
皮にしっとりハリがあり、歯ごたえが愉快だ。栗は丸ごとではなく、細かく砕いた栗が入っている。それが白あんとマッチしている。「栗丸ごと!」という派手さではなく、あんこと一緒に食べたときの完成度を優先させている。
これは栗まんじゅうの最適解かもしれない。もちろん、甘さが渾然一体としてやってくる栗まんじゅう感は変わらない。
栗まんじゅうにパラダイムシフトを期待するのではなく、いまの延長線上においしい栗まんじゅうがあるのかもしれない。