絵文字の進化と弁当の不安化
話が変わるが、いつのまにか、絵文字がリアルになっている。私がケータイを使っていた頃は、もっとシンプルなものだった気がする。当時は、他機種の携帯電話に絵文字を送ると、種類によっては全く違う絵文字に変換されてしまったり、掲示板でうっかり絵文字を使うと、「機種依存文字やめてください!」とレスで怒られたものだ。
そんな時代がとうに過ぎ去り、なにやらUnicodeという国際的なあれに絵文字が登録されたことで、日本の文化である「絵文字」が、国際的な「Emoji」になったらしい。そして、機種やWebサービスごとに絵文字が設定されているので、以前のように文字化けしたりはしない。こうして便利になっていくのだなあ。絵文字は世界に誇る日本文化の一つだ。
しかし、ワールドワイドになったことで、おかしなことになっているのだ。それは、「弁当の絵文字」である。
独自の概念が生まれているEmoji弁当の世界
海外にも弁当という文化はあるけれど、絵文字の弁当は、2015年に「Bento Box」という名前でEmoji1.0に追加された。名前の通り、日本の”弁当”をモチーフにした絵文字である。
まずは、日本の携帯会社の絵文字を見ていただきたい。これは、softbankのEmojiだ。梅干しにご飯、ウインナーに卵焼き、赤いアレにブロッコリー。とてもポジティブに考えて、赤いアレをプチトマトだと仮定すると、完璧なお弁当ではないだろうか。
Softbankの「Japanese Bento Box」を作るとこうなる。
卵焼きが人に見せるレベルに達していないものの、美味しいお弁当ができた。赤いウインナーが入っているだけで、満点のお弁当になる。
しかし、他のウェブサービスやハードウェアのEmojiを見てほしい。
四角い箱に食べ物が入っている。その姿は弁当である。しかし、弁当であるのはそれだけで、その中身をじっと見てみると、だんだん不安になってくるではないか。
寿司、カレー、全く得体の知れない何か。Emojiの世界の弁当は、私たちが学生時代に食べていたお弁当と何かがズレている。私はその「Emoji弁当」の不安を探るために、この絵文字を元にした弁当を作ってみようと思った。
様々な機種の絵文字が網羅されているEmojipedia というサイトに登録されているのは、先ほど紹介したsoftbankを除いて13個ある。1日2食をEmoji弁当に置き換えれば、1週間で全て作ることができそうだ。全ては不安を形にするため。がんばるぞ。
google
中身(想像):ご飯/梅干し/コロッケ/ゆで卵/きゅうり/アンパンマンカレー
まずは、googleのEmoji弁当から作ることにした。弁当というより、雑な社食のようだ。
確かに、「お弁当にカレーが入っていたらいいなあ」と思ったことはある。実行しなかったのは、お弁当に雑にカレーを入れてしまうと、どうなるかの想像が容易いからだ。
カレーは、アンパンマンカレーを使った。アンパンマンカレーは、普通のレトルトカレーの4分の1くらいの量のパックになっている。甘くて美味しい。一時期、ハマって毎日のようにスーパーで買っていた。茹でたうどんにかけると美味しい。アンパンマンカレーのことなら、なんでも私に聞いてください。
Whats app
中身(想像):茹でた海老/寿司(サーモン+巻き寿司)/サラダ
日本ではあまり馴染みがないけれど、世界大手のメッセンジャーアプリ「Whats app」のEmoji弁当だ。なるほど。弁当の定番である「白いご飯」を排除して、その代わりに寿司がインされている。食中毒なんてものは、Emojiの世界にはないのだ。
「茹でた海老が6尾」
こんなにもそそらない字面が今までにあっただろうか。できた弁当自体も、全く食べたいと思わせないものになってしまった。美味しいけれど、そそらない。
apple の絵文字弁当
中身(想像):ご飯/梅干し/コロッケ/サラダ/寿司(サーモンと巻き寿司)
Whats appを見て「白いご飯が排除されて寿司が代わりに入った」と思ったが、白いご飯の代わりに入ったのは茹でた海老6尾のほうだったかもしれない。
初めて白いご飯と寿司を一緒に食べた。別にこれといって変な感じはしないけれど、特に良い感じもしない。”無”である。
左上は、初めて作ったコロッケである。見た目はゴミみたいだけれど、味はちゃんと美味しかった。
Samsung
中身(想像):ご飯/梅干し/ハンバーグ(にパプリカがのっている)/巻き寿司(きゅうりとたくあん)/味噌
一見、弁当感があるけれど、よく見ると全ておかしい。私は騙されない。騙されませんよ。ハンバーグの上に何かがのっているように見える。私は、その色合いからパプリカだと思った。パプリカ。弁当に入れない食材ナンバーワンだが、そうとしかみえない。
カレー、寿司、茹でた海老が続き、私の体力がだいぶ落ちてきた。
右端にある黒い器に茶色いものが一体何なのか。全く頭が回らない。冷蔵庫を開けると味噌が目に飛び込んだため、スプーンですくった。ハンバーグに味噌をつけたら、意外とおいしかった。
Twitter
中身(想像):ご飯/いんげん/かぼちゃ/ナゲット
全てが分からない。
なので、冷蔵庫にあったもので当てはめていくことにした。
弁当から悲壮感を感じたことが、今まであっただろうか。
私はいつも家で作業しているのだが、この日は外に用事があったのだ。コワーキングスペースで近くにいる人に見られないように隠しながらこのお弁当を食べた。学生時代、母親が作った全体的に茶色い弁当を隠しながら食べていたときを思い出した。
facebook
中身(想像):ご飯(ごましお)/エビフライ/コロッケ/サラダ
久しぶりのまともな弁当だ。明らかにハンバーグなものをコロッケにしたのは、この前作ったやつが余っていたからである。
まともだ。いや、まともだろうか。
Microsoft
中身(想像):ご飯/梅干し/野菜/ハンバーグ/錠剤(パブロン)
私は疲れた。このデフォルメされた弁当の食材を考えることが、もはやできなくなってきた。Emoji弁当の制作は、体力と心が削られる。それだけは、知っておいてほしい。
ハンバーグ、サラダ。そこまでは分かったけれど、左上の黄色い2つの物体が何か全く分からない。
鼻水が止まらない。巷ではインフルエンザが流行っている。薬を飲もうと、パブロンを手に取ったとき、「これだ」と思った。色が一緒だったからだ。ちなみにパブロンは一回3錠だ。
Emojione
中身(想像):ご飯/梅干し/にんじんとピーマンの炒め物/寿司(巻き寿司とサーモン)
Emojiの世界ではご飯と寿司を同時に食べることがコモンセンスだ。郷に入っては郷に従え。Emoji弁当を食べるときはEmojiの世界に従わなくてはいけない。
そして、寿司を握るのがだんだん上手くなってきた。
emojidex
中身(想像):ご飯/梅干し/ナゲット/卵焼き/トマト/きゅうり/鮭
見た瞬間に「ありがとう」と、こぼした。豪華で栄養満点、生ものが入っていない。
私が作ると、色味が悪くなるのはなぜだろう。しかし、美味しかった。
Messenger
中身(想像):ご飯/エビフライ/さやえんどう
シンプルだ。エビフライって、弁当で定番のおかずなのだろうか。
うー。だめだー。この2つのおかずは、全く白いご飯に合わない。せめて、梅干しをいただきたい。
Emoji弁当を作っているうちに疑問が浮かんだ。弁当の絵文字をデザインする前にgoogleとかで「Bento」と検索しなかったのだろうか。私がもし「ナチョスの絵を書いて」と言われたら、とりあえず一回はGoogleで「ナチョス」と調べる。
気になって、「Japanese bento box」で調べてみた。
チラチラと寿司の姿が見える結果だった。
Emojipediaの説明文を見ると、
「A Japanese bento, a lunch box divided into portions of rice, vegetables, and meat or seafood, such as sushi or fried shrimp.」と書いてあって、弁当の主なおかずとして、エビフライや寿司をあげられている。
もしや、Wikipediaがおかしいのかと思い、Bentoのページを読んでみたが、「日本料理」と書いてあるだけで寿司を入れるという記述はなかった。ただ、最下位にある弁当の画像に、ジャカルタの日本料理レストランの弁当写真が掲載されており、そこに巻き寿司と刺身が入れてあった。
たまに、料亭で「季節の弁当」みたいな感じで、弁当がメニューにあるときがある。その弁当と、ランチボックスとしての弁当はちょっと違う弁当なのだけれど、そこと混同しているのかもしれない……。
LG
中身(想像):ご飯/サラダ/明太子/エビフライ
なんとなくEmoji弁当の不安の根源が分かってきたところで、LGのお弁当を作っていきたい。真ん中のものは、明太子だろうか。マグロの寿司の気もするが、もうご飯と寿司の組み合わせは飽きたので、明太子であってほしい。
ご飯に合うおかずがきて、ちょっとテンションがあがったものの、やはり3つは多いです。
HTC
中身(想像):ご飯/まんじゅう2種
このEmoji弁当生活も終盤になったところで、ふざけたものがきた。
「ミートボール」と「つみれ」とも思ったが、スーパーに行く時間がなく、家にあったお菓子で再現することにした。
「食べ物で遊ぶな」という声が聞こえて来そうですが、おいしかった。白いご飯とデザートだと考えれば、全く問題はなかった。
Mozilla
中身(想像):ご飯/あつあげ/巻き寿司/うぐいす豆の山/パスタ
これでEmoji弁当生活も最後である。最終日の夜に食べるのは、このデフォルメされすぎて、全く分からないEmoji弁当だ。
緑色の山がある。そこに2本の黄色い棒が刺さっている。ご飯に箸を刺すのはテーブルマナーとしていかがなものだろうか。これはきっと、箸ではなくてパスタだ。
うぐいす豆が食べたかったので、うぐいす豆で山を作った。パスタを食べてみたら、固くて口の中を切った。厚揚げは醤油と砂糖で煮たので、かなりご飯に合う。おいしかった。
ごちそうさまでした
こうして1週間かけて全てを食べ終わった。Emoji弁当が原因かは分からないが、お腹の調子がずっと悪かった。生ものはお弁当に入れてはいけない。これが今回の教訓である。いや、もともと知っていたことだけれど。
しかし、弁当に入っている具材はシンプルなものばかりなので、「明日の弁当どうしようかしら」と悩んでいる方は、Emojiを参考に作ってみるのもいいのではないだろうか。よくないか。
大阪でイベントをやります
11月に「無駄なことを続けるために」という本を出版し、その記念イベントを大阪でやるので、ぜひお越しください。情報商材みたいなタイトルをつけましたが、ちゃんとしたイベントです。
「無駄なものを作るだけで月収◯◯円♪ 知ってる人は100%稼いでいます!」
日時:2月21日 19:30〜
場所:ロフトプラスワンウエスト(大阪)
料金:前売り2500円 /当日2800円 ※要1オーダー¥500以上
出演:藤原麻里菜 / 株式会社人間・花岡、山根
「歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン」「Twitterでバーベキューと呟かれるたびに藁人形に五寸釘が打ち付けられるデバイス」…そんな《無駄づくり》をネットを使って仕事に変えた藤原麻里菜による、全く身にならないインターネットビジネスセミナーです。株式会社人間も交えての「マジのインターネットビジネス」についてのトークも有り。
胡散臭いインターネットビジネスが蔓延する世の中で、胡散臭さゼロのイベントです。