脱脂綿
大人になるとフーセンガムをあまり噛まなくなるが、あのふわふわとした噛みごこちはチューインガムにはない独特の楽しさがあった。
ふわふわしたものといえば、綿だ。脱脂綿ガムのふわふわ感はフーセンガムを超えるか?
寸評: 頭に浮かぶのは先週行った歯医者のこと。歯の脇に脱脂綿を詰められたときと同じ感覚。数少ない、医療機関の思い出を詰め込んだガムだ。 場所が場所だけに苦手な人も多いだろうが、虫歯が痛む時に、すがるように噛んでみるのも一興か。
ティッシュ
考えてみればティッシュとは鼻をかむものではなく、やわらかく水分を吸う薄い紙なのだ。特定の用途を持っていないのにここまで生活に浸透しているという時点でティッシュの何にでも使える地肩の強さを思いやられる。当然ガムにもグーだ。
寸評: 口中の水分を一気に持っていかれた。砂漠をらくだに乗って旅していて、やっと目の前にオアシスが現れたと思ったら、上空から巨大なティッシュが出てきて水を全部吸ってどこかへ行ってしまった。そんな味のガム。水を吸ってからは予想外に硬い。
ウレタンスポンジ
このフカフカ感。さぞかし噛み心地がいいのではないか。
加えてなんだか色もポップで、おいしいかもしれない。
寸評: このガムは化学の味だ。高校のころ、人一倍やる気のなかった化学の先生。「こんな仕事そろそろやめたいんだけど」と授業中ことあるごとに漏らしていたあの先生は、まだあの調子でやる気なく教師を続けているだろうか。 そんなことを考えて郷愁に浸る味。
EVAスポンジ板
家に置くならちょっとしたコースターなんかに使うのだろうか。スポンジ素材といってもなかなかに硬い。しっかりしたガムである。
寸評: 予想に反してけっこういける口。噛み応えはしっかり力を入れても歯ざわりの柔らかさを残して芯ではね返してくれるフガフガ加減。 恋人にフラれて窓辺の月でも見ながらただフガフガしたい夜には最高のガム。
サランラップ
素材系が続くが、中でも立ち位置的に食品に近いと思われるガムがこれ。キッチンにあるからだ。
ゆるく丸めてフカフカにしたら、確かにこれはガムか。
寸評: スポンジに続き化学系の味。物自体のイメージは家庭科室だが、ガム的には理科室だった。2つの部屋を結ぶ意外なかけ橋だ。 そういえば食塩は理科室にも家庭科室にもあるよね、あ、ガスバーナーもそうだね、そんな頭の体操にぴったりのガム。
ゴム
ガムに一番近いものとされているのはやはりゴムではないだろうか。その伸縮性、耐久性を顧みても、ゴムが食べ物であればガムの隣に位置することだろう。
寸評: オートバックスのタイヤ売り場である。「タイヤ売り場味」ではなくタイヤ売り場そのものであると言っていいだろう。そこには店員さんがいる。bearとロゴの入った白いダウンを着たお客もいる。ただ一つ残念なのは、私には車がなく、タイヤ売り場に用がないということだろうか。いや、悪くはない。ただ「用がない」味だ。
軽量ソルボセイン
1976年イギリスで開発された衝撃吸収材を、軽量化したもの。
スポーツ等で威力を発揮と書いてある。野球選手はよくガムを噛んでいるが、たぶんそういうことなんだろう。
寸評: ひと噛みひと噛み、しっかり受け止めてくれるこの包容力。偶然かもしれないが、名前にある「ソル」は、スペイン語で太陽を指す。このガムの包容力はすべての生命の成長を見守る太陽のようだ。つらいことがあったとき、学校を抜け出してひなたぼっこしながら、グッと噛みしめたい。
スーパーゲル
ガム界へようこそ「限りなく液体に近い固体」選手!現役メジャーリーガーが草野球の助っ人に来たかのような格の違い。何てったって衝撃吸収率94%以上である。打率9割4分の打者は伝説を超えて、あいつなしで野球やろうぜ、の世界なのだ。
寸評: 最高の噛み心地。夢見心地という表現があるが、夢を噛んでいるようなドリーム体験。まさにフィールド・オブ・ドリームス!そしてケビン・コスナー!夢はつかむものでなく噛むものである、ということを初めて知った。
ばね
ガムの弾力性をひたすら追い求めた寸評、最高のガムはばねではないかという結論にいたった。
寸評: 味はどうかと聞かれて返した答えは「痛い。」だ。弾力性は文句なし。歯にひっかけてうまくグイグイ伸び縮みすることもできた。しかし縮んだ状態のバネが歯から外れた瞬間に口の中で勢いよくジャンプ。口壁に当たり痛さにうずくまる。これほんとにガムか?
痛い!バネは痛い!
ガムの代わりとしてある意味究極だと思ったバネだが結果は全然ダメ。今までやってきたことがすべて否定されてしまった気分だ。これにはさすがに落胆を隠せない。
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