特集 2018年11月30日

沖縄の島ぞうりはビーチサンダルであってビーチサンダルではない

沖縄県には「島ぞうり(方言では島サバ)」と呼ばれるビーチサンダルがある。スーパーなどでも通年販売されており、恐らく県民誰もがひとり一足は持っているくらいの普及率である。「島ぞうり」と「ビーチサンダル」の違いはなんだろう。話を聞きに行ってきた。

新潟出身。沖縄に来てそろそろ15年くらい経つのに泳げないため全然沖縄を満喫できていない気がする。最近の悩みは高血圧。

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「元祖 島ぞうり」を販売している沖縄月星株式会社

というわけで島ぞうりの話である。沖縄県では白色に赤・青・黄色などの鼻緒をつけたビーチサンダルを島ぞうりと称しており県民の履き物として普及している。

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どれくらい普及しているかは上の写真を見て欲しい。親戚の集まりごとや地元の行事などがあると玄関には島ぞうりがあふれかえり、親戚の家に行ったら買ったばかりの島ぞうりを誰かに履かれていってしまった…そんな嘆きを歌った「さばぬにゃーん」という歌があるほどである。たしかに温暖な沖縄の気候には島ぞうりはよくあっていると思う。私も家からちょっとコンビニまで、みたいな状況ではだいたい島ぞうりだ。

デイリーでも2006年の記事で安藤さんが島ぞうりの普及について触れている。12年経った今でも多少変わってきているものの、やはり島ぞうりを履いた人は多い。

さて、沖縄県民に愛されるこの島ぞうり。普通のビーチサンダルとは何が違うのだろうか。

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その名の通り沖縄月星株式会社は沖縄におけるムーンスターブランドの代理店でもある

今回は「元祖 島ぞうり SKYWAY」という商品を販売している沖縄月星株式会社にて島ぞうりとはいったい何なのかについてお話を聞いてみた。

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ずっと県民の足を守ってきた島ぞうり

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今回お話をうかがったのは沖縄月星株式会社 専務取締役 営業本部長の與那原良光さん。島ぞうりとは何なのでしょうか。

― 本日はよろしくお願いします。まずは島ぞうりの歴史についておうかがいしたいのですが。

島ぞうりについて発祥はよく分かっていないのですが、元々は戦後にあちこちに散らばった瓦礫などから足を守るために古いタイヤを使って作られたサンダルがルーツであると言われています。

我々の年代50代、60代くらいが子供の頃にはすでに今の形の島ぞうりがありました。色は赤、青、黄色の三色で女性は赤、男性は青か黄色を履いていたイメージでしたね。僕も小さい頃は島ぞうりをずっと履いていましたよ。なかなか靴なんて買えない時代だったんです。

― その頃から「島ぞうり」と呼ばれていたのでしょうか?

そのころは「しまさばぐゎー」「さばぐゎー」と言ってましたね。会話のニュアンス的には島ぞうりという感じの言葉はありました。

― 御社ではどのような経緯で島ぞうりを販売するようになったのでしょうか

弊社ですが、もともとは松本商会という履き物を扱う会社だったんです。1950年の創業で、お店は那覇市の国際通りの第一勧銀(現みずほ銀行)の隣にありました。

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松本商会の写真。よく見るとみんなが着ているのは月星の法被。

当時、那覇市安謝で島ぞうりを作っていた人がいたんですが、事業がうまくいかずに失敗してしまったんですよね。それを僕らが引き継いで始めたという経緯があります。1960年代くらいからでしょうか。最初は商品名など何も書いていない「サンダル」という形で販売していました。

そして13年くらい前ですかね。我々が最初に「島ぞうり」という文字を袋に入れて販売しました。色も当初3色だったのを、色々試作していってオリジナルカラーを作っていったんですよ。今は13色くらいありますね。

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今はカラーバリエーションが豊富
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島ぞうりのいま

― 商品に「元祖」と入ってますが、これはなぜですか?

当初は僕たちが沖縄で唯一の生産、卸で販売していた島ぞうりですが、徐々に各社が同じような商品を出してきたんですよね。ですのでこちらは「元祖」と入れています。

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彫刻された島ぞうり

僕らの商品はインドネシアで生産しているんですよ。こだわりはゴムの配合です。ほどよく柔らかくて、彫刻などの加工もしやすいです。最近出回っている島ぞうりの中には彫刻などの加工がうまくできないものもあるので、そういった商品と棲み分けするためにも「元祖 島ぞうり SKYWAY」というブランドで販売を行うようになったんです。

今は国産で島ぞうりを作っている所もあるのですが、島ぞうりの上の白いゴムが国産だとなかなか作れないんですよ。

― 先ほど彫刻の話がでました。島ぞうりの彫刻は昔からおこなわれていたんでしょうか?

彫るのはここ10年くらいでしょうか。ただ、昔は線香を使って僕らは自分の名前を彫ってましたよ。

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ここ5年前くらいかプリント島ぞうりというのも作っています。大手のスーパーさんから島ぞうりに龍神マブヤー(注:沖縄のローカルヒーロー)をプリントして欲しいという依頼がありまして、それが始まりですね。

― 島ぞうりの売り上げは年々上がってるのでしょうか

年々売れてますね。先にも出ましたが島ぞうりは加工ができるじゃないですか。なので学校の授業なんかでも使われているようになったりもしているらしいです。他にも諸説ありますが島ぞうりは鼻緒を指で挟んで歩くので、幼児の足のアーチ作りにすごく良いということで幼稚園なんかでも履かれるようになっているみたいです。

― 島ぞうり、今は沢山色がありますが色によって売れ筋はありますか

赤・青、黄色の基本カラーはもちろんですが、全体的に売れているイメージですね。最近は白黒だったり黒黒だったりと白系、黒系も売れています。

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島ぞうりのこれから

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― 島ぞうり、これからの展開はありますか?

そうですね。今は新しいカラーバリエーションを色々と試作している段階です。

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セレクトショップに並んでいそうなオシャレな島ぞうり

新しい色は作れはするのですが、発注のロットが大きいのでなかなか沢山のバリエーションは作れないんです。とりあえず試作を重ねてこれから色々とやっていきたいですね。

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こちらも試作品の厚底島ぞうり

他にもネットショップも現在はやっていないので、いずれはインターネットでも事業をやって島ぞうりを全国に広めていきたいと思っています。

― ありがとうございました!島ぞうりって結局何なのでしょうか?

そうですね。安いし可愛いし、健康にもよい。安いので無くなっても壊れてもそこまでショックじゃ無い(笑)。島ぞうりってビーチサンダルであって、そうじゃない。沖縄の生活に根付いた履き物だと思います。


これからも島ぞうり

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以上島ぞうりについてのインタビューだったがいかがだっただろうか。ぱっと見は普通のビーチサンダルなのだが、島ぞうりには長い歴史が存在する。まさに沖縄県民にとってはソウルフードならぬソウルシューズだったのだ。沖縄県に旅行でいらした際は記念にぜひ島ぞうりを一足買い求めてはいかがだろうか。個人的には島ぞうりはものすごい楽ちんなのでぜひ便所サンダルみたいに全国的に広まって欲しいところである。

取材協力:
沖縄月星株式会社
沖縄県豊見城市字与根510番地1
098-840-2121
http://www.okinawatsukihoshi.com

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