その土地に根付いた独特の食べ物を指す言葉として、「ローカルフード」という言い方がある。「名物」というよりもう少しB級感のある響きも含めて魅力があると思う。
今回訪れたのは、千葉県浦安市。東京ディズニーリゾートがあるところとして有名だが、そんな浦安にもローカルフードがあるらしい。
その食べ物の名は「たまごフライ」。玉子のフライ……なのか?
それなら普通に食べたことがある、と思うかもしれないが、たぶん想像とは別のものだと思います。実際に食べてきたレポートです。
(小野法師丸)
この「たまごフライ」、縁日などのときに出店で売られるような食べ物であるらしい。そういうわけで普段いつでも食べられるものではないのだが、ある特定の日のみ、月一回は食べることができるのだ。
やってきたのは浦安市内の「猫実」という町。「猫実」と書いて「ねこざね」と読む。漢字としても音の響きとしてもかわいらしい町だ。
毎月25日は、猫実にある庚申様をおまつりする日とのこと。その日には食べられるらしいのだ。
ポーズも表情も味わい深い申の像もある。ちんまりしつつも時間の重みが感じられる庚申様だが、特別にぎやかに出店が出ているわけではなさそうだ。
「たまごフライ」、ほんとにあるのか?と思って、道のすぐ先を見ると、ちゃんとアピールされていた。
もっと地味でひっそりとしたローカルフードだと思っていたので、のぼりまで立っているとは意外だった。これならちゃんとありつけそうだ。
地元自治会のみなさんが作っているという「たまごフライ」。全国各地に有名になったローカルフードは多いが、こんな風に提供されているという例はあまりないと思う。
この「たまごフライ」、小麦粉・玉ねぎ・山芋、そして卵を練ったものにパン粉をつけて揚げるというものだ。
さあ、あつあつに揚がったものを……
ソースを「かける」のではなく、ソースに「漬ける」。なんともダイナミック、うまそうだ。
それはそうとこの「たまごフライ」、うすべったくてパッと見には平たいコロッケという感じ。ネーミングからたまごがメインの揚げ物と思っていたので意外だった。
売っているみなさんに「これ、どうしてたまごフライって言うんですか?」と、何か特別な意味があるのかと期待して聞いてみた。
返答は、「そりゃ、たまご使ってるからだよ」。
まあ、それはそうだけど…。
答えが事実と異なっているわけではない。ただ、ネーミングでたまごを前面に押してきていることとの整合性には、微妙な疑問符がつくのは否めないとも思う。
1枚80円、5枚買って食べてみた。かじりついてみる。
……うん、うまい。たまごの味がするかどうかはともかく、とにかくうまい。
ドボンとソースにつけたにも関わらず、ころものサクサクとした感じもしっかり残っている。噛むとジュワっとソースが染み出てくるのもおいしい。
断面を見ても中身がはっきりわからないくらいにぺったんこなのだが、そこに悲しみはない。ビッグカツ的なうまさ、とでも言えばよいだろうか。
そういう意味でも、子供に、あるいは子供だった大人に、愛されるローカルフードなのではないかと思う。
というわけで、たまごフライについての記事はここまでで終わりです。ただ、あまりに普通のレポートということもあり、まったく関係ない別の話をしたいと思います。
とりあえずたまごフライのことは忘れたことにして、続けます。
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