縁もゆかりもない土地でも、地元の人に案内されるとなぜか見たことがあるような気がしてきます。そんな錯覚を味わってもらうストリートビュー地元案内。
今日は長崎編、案内はライター平坂寛さんです。
林:今回は平坂さんです
西垣:肩書きとしては「怪魚ハンター」なんですか?
林:テレビなんかに出るときは「怪魚ハンター」と言われてたりしてますかね
西垣:デイリーポータルZではなんとかライターみたいなものはあるんですか?
林:とくにないんですよ。デイリーポータルZって肩書きとかつけないんですよ。伊藤さんが「毒ライター」って名乗ってるくらいですかね
西垣:「情熱大陸」で見ましたよ。あれで実家出てたのかな?
林:おれもあれ見ましたよ。知り合いが情熱大陸出るって、こんなことないですよね
西垣:すごいですよね
(平坂さん登場)
西垣:では、平坂さんお願いします
平坂:はーい、「怪魚ハンター」です
林:怪魚ハンターっていう肩書きで良いんですか?
平坂:いや、絶対に良くないですね。ただの物書きなんで
西垣:あははは
平坂:テレビ出るときにだいたい「肩書きどうすればいいですか」って聞かれるんですよ
林:はい
平坂:「ライターで」っていうと「え?」ってなるんですよね
西垣:ふーん
平坂:じゃぁ「好きなように書いてください」って言うと「怪魚ハンター」とか「深海魚イーター」とか「珍魚ハンター」とか、番組によって全然違うんですよ
西垣:「深海魚イーター」いいですね
平坂:「黒いさかなクン」とか…大丈夫なの?って思いますよ
西垣:へー
平坂:ぼくはただのライターです。デイリーがライターデビューだったんですけど、ちょうど今年の3月で10年です
林:10年かー
西垣:実家は長崎ですか?
平坂:そうです。生まれは長崎市です
(Googleストリートビューで長崎をみる)
西垣:すげー長崎っぽいな
林:そんなに、すごい大自然の中で生まれたわけじゃないんですね
平坂:すごく中途半端なんですよ。ど真ん中じゃないけど、すごい便利ですよね
林:へーそうなんだ
平坂:車庫があって、路面電車あるんですよ。いわゆるチンチン電車
林:へ~
平坂:すごく古い型の電車も停まってて
西垣:ふーん
平坂:ときどき鉄道ファンの方が、わざわざその電車を撮影しにこの車庫に来てますよ
林:あの車庫の手前にいる青のシャツのおじさんはあんなところにいていいんですかね
平坂:これは職員さんですね
林:あ、職員か
平坂:うちはすぐにあるんですけど、長崎の特徴でものすごく道が狭いか勾配が急になってるんですよ
西垣:この「けたに注意」ってなんですか?
平坂:けたに注意わかんないですか?高さに注意って意味です
林:橋げたの「けた」じゃないですか?
平坂:だと思います
西垣:橋げたの「けた」か
平坂:長崎は立体的な町なので交差してる場所が多いんですよ
西垣:なるほど
平坂:奥の方に斜面になってるんですけど
林:すげー長崎っぽい
平坂:あー懐かしいな。もうずっと行ってないんで。それこそ情熱大陸のときに久しぶりに帰って
林:あ、そうなんですね
平坂:全部カットされましたけど
西垣:おいしいところなのにね
平坂:そういう生まれ育った町とかはいいです。みたいな
平坂:あ、見えてきた。真ん中の一番上の建物が僕が住んでいたマンションです
林:へー
平坂:あ、ここまでしかストリートビュー行かれないですね
林:ストリートビューも車で行かれないのか
平坂:ここまでしか車がはいれないですね。こういうときはどうしたらいいですかね
林:ここで断念するしかないですね
平坂:階段上ったとっころに公園があるんですよ
林:ええ
平坂:ここで「公園とかグラウンドに落ちてるワカメみたいなアレを食べる」の記事にでたワカメを取ったところです
林:あーあれね
平坂:グランドとか公園の隅になぜかワカメ落ちてるじゃないですか。このワカメはなんなんだろうと、学校の図書館とかで調べて「イシクラベ」っていうんだーって。
平坂:そして20年後にデイリーに書くと
林:あれは衝撃でしたね。あれ食べちゃうんだ、って
平坂:そうですね。食べていいんだって
■道が狭いためゴミ置き場が折り畳み式
平坂:僕が通ってた小学校です。汚いまんまだな
西垣:ゴミ置き場に「蛍光管入れ」ってありますね
平坂:「蛍光管入れ」はないですか?
林:ないですね。はじめて見ましたよ
平坂:あと、右側の黒い網のゴミボックスなんですけど
林:ええ
平坂:いまたたまれているんですけど、広げるとタタミ1畳よりもっと広いです
林:へー
平坂:回収日の朝、いちばん最初に捨てに来た人が開いて、ゴミを捨てていくんです
林:へー
平坂:で、回収が終わったら邪魔にならないようにたたんで。たぶん道が狭いからという配慮だと思うんですよね
林:そうかたたんでおくんだ
西垣:なるほどねー
■マムシが出てきたら反射的に捕まえようと思う
平坂:この山が「岩屋山」という山で、長崎市の中では稲佐山に次ぐ知名度です
西垣:へー
平坂:かといって観光地があるわけでものなく、ただのホントの「ザ・山」なんです
西垣:この山に行ってたんですか?
平坂:この山で育ちましたね
西垣:お!
平坂:夏休みとかになると、毎日毎朝行ってましたね。この辺はイノシシが多くて
林:イノシシが出るような山なんだ
平坂:長崎は、イノシシが出るが九州の中でも特別多いんですよ
林:普通の市街地じゃないですか
平坂:あとはねマムシとか
西垣:マムシは捕まえもするんですか?
平坂:あー、捕まえてましたね。何するわけでもないんですけど
西垣:何するわけでもなく捕まえるんですね
平坂:目の前にマムシ出てきたら反射的に捕まえません?
西垣:いやー、わかんないっすね
林:マムシいそうですよね
平坂:意外とそんなにいは多くないですよ
林:そうなんですね
平坂:マムシは水がないとダメなんですよ、沢とか
西垣:へー
平坂:この辺そんなに水が多くないので、蛇系はそんなに多くないです
林:平坂さんと景色見てると解説があるから、いちいち理由があって面白いですね。水がないとマムシがいないとか
平坂:こういう場所もあんまりないですよね
林:のり面っていうんですか?
平坂:斜面の上に家が建っているという
西垣:はいはい
平坂:住んでるとこんなもの当たり前の光景で、何がめずらしいかわからないんですけどワッフル状の柵の角度とかおかしいですよね
西垣:ほんとだ
林:平行四辺形の柵ですね
林:こんな柵あるんだ
平坂:なんかほかになかったのかな?とは思いますね
林:よく既製品であったな
平坂:ここまで寄れるストリートビューすごいですね
西垣:ほんとだ
平坂:Googleの人も面白かったんですかね
林:こんな景色ないなと思ったでしょうね
西垣:解像度高いですね
■へんなものを食べ始めてから耐性がついた
林:へんなもの食べて腹こわしたりしました?子どもの頃
平坂:子どもの頃ですか?いや、ないですね
林:そうなんだ
平坂:逆にね、長崎にいた頃はものすごく胃腸が弱くて
西垣:え?
平坂:1年のほとんどお腹痛かったんですよ
林:へー
平坂:逆に変なものを積極的に食べ始めてから、耐性がついたというか丈夫になりました
西垣:へー
平坂:今、逆に何食べてもお腹壊さないんで
林:それ、今の発言「個人の感想です」ってつけないとダメなやつですね
平坂:言ったら怒られるかな。インスタントラーメンが好きなんですけど、あれ食べると百発百中動けないくらいお腹痛くなります
林:えー、今も?
平坂:今もです。次の日休みとかじゃないと食べられない
西垣:結構なリスクですね
平坂:アンナチュラルなものへの耐性がどんどん落ちてる感じがします
林:バラムツとかはいいのに?
平坂:バラムツは大丈夫ですね
■アマゾンでは弓道が出る幕はなかった
平坂:ここが僕が通ってた高校ですね。なんでモザイクかかってるんだろう
西垣:ほんとだ
林:学校がGoogleに映すなって言ったんじゃないですかね
西垣:部活何やってたんですか?
平坂:弓道部でした。青いトタン張りの施設が道場になってました
西垣:へー
平坂:ここで弓を引いたりしてました。いつかアマゾンとか行ったときに弓で狩ることもあるだろうという目論見で入ったんですけど
西垣:最初からそういうことを志してたんですか?
平坂:密かにね。さすがに堂々と言えないですけど。いつか動いてる獲物を!というよこしまな気持ちでやってました
林:その夢はかなったんですか?
平坂:いや、かなってないですね。まだ
林:アマゾンまでは行ったのにね
平坂:次元が違いすぎてマネできない
西垣:ほう?
平坂:やらせて、って言えないような
林:弓が強いんですか?
平坂:それもあるんですけど。獲物が見えないんんですよ
西垣:へー
平坂:あそこにいるって言われて、打ってるんですけど夜なんですよ
西垣:はいはい
平坂:夜に藪のなかの何かをうってるんです。何がいたかもわからないけど「ピー」みたいな鳴き声だけは聞こえて、駆け寄ると矢がささってる。みたいな
林:へー
平坂:ちょっと高校の道場で的だけうってたやつが出る幕はなかったですね
林:でも、高校のときにそういうビジョンはあったんですね
平坂:生物関係の仕事と本を書くっていうのは目標にあったので
西垣:アマゾンへ行ってもお腹は壊さないんですか?
平坂:ないですね
西垣:そうなんですね
■ライフワークとして「外国へ行ったら現地の生水を飲む」
平坂:ライフワークとして「外国へ行ったら一回は現地の生水を飲む」っていうのをやってて
西垣:いちばんやっちゃダメなやつじゃないですか
平坂:おおかたの用事を済ませた後「やっとくかー」という感じで飲んだりしますけど、派手に壊したことなないですね
西垣:毒の体験は恐怖にはならないですか?体がしびれるとか
平坂:なりますけどね
西垣:え
平坂:痛いとか苦しいというのは、体がそれ以上やったら死んだりのっぴきならない状況になるよということを知らせるサインなんで
林:はい
平坂:サインまではいいかなと。受け入れてもいいかなと
西垣:なるほど
平坂:アラームが鳴るまではセーフみたいな
林:じゃ、そこで引く、止めるんですね
平坂:そうですね。危険信号だけは味わうけど
西垣:なるほど。でも、アラームはうるさくないですか?
平坂:うるさいです。でもうるささを知りたいんですよね
林:すごいな
平坂:どのくらい本気で警告してくるんだろう
西垣:はははは
平坂:図鑑とかみるとすごい濁して書いてあるんですよ「毒がある」とか
林:うんうん
平坂:「かまれると危険」とか
西垣:はいはい
平坂:そんなもん毒がなくても痛みますよね。具体的にどうなるんだろうというのを知りたくて、刺されたりとか食べられてみたりだとかします
■下調べをして安全ラインを自分の中で確保する
平坂:マネはしてほしくないんですけど
西垣:それこそ、まさにデッドラインというかアラーム越えはどうやって知るんですか?ど
平坂:いろいろですね。下調べをして、致死量がこんなで、とか、過去にこういう食べ方をして亡くなったケースがあるとか調べて、安全ラインを自分の中で確保してるんですどよ
西垣:ふーん
平坂:当然、一気にガブっといくんでなく、少しずつ毒を食べるんです
西垣:ふんふん
平坂:一口食べて半日様子をみるとか
西垣:は~なるほど
平坂:神経毒とかの恐れがある場合は口の中でしばらく転がしたりだとか噛んだりして、舌とか頬っぺたが麻痺しないかどうかとか
林:へー
平坂:セルフ人体実験みたいな話しですよね
林:そういう慎重にやりましたみたいな部分が描いてないから、食べてるところだけを見てたのか
西垣:本当に危ない毒ってフグとかですか?
平坂:だったり、あとコブラの毒を飲むとか
西垣:コブラの毒を飲む…
林:コブラの毒を飲むって…。そんなイニシエーションみたいなことやったんですか?
平坂:蛇の毒って噛まれて筋肉や血管の中に流れ込んで初めて効果を発揮するものなんです
西垣:はい
平坂:口の中をケガしてなければ舐めたり飲んだりしても大丈夫みたいな話があって
西垣:はいはい
平坂:でも、コブラは口しびれましたね
西垣:アラームがなってますね
平坂:本来ならないはずだったんですけど
林:そうですよね
平坂:あれは本当にこわかったです
林:コブラの毒ってどこで手に入れるんですか
平坂:タイで捕まえたやつを絞って
林:しぼって…。テレビでよくみる口をおさえて牙から出す?
平坂:そうですね。なので注意があるんですけど
平坂:コブラでもハブでもそうなんですけど
林:はい
平坂:捕まえるときに首根っこをおさえて尻尾を足でおさえると安全なんですけど、
西垣:はい
平坂:あんまり長いことおさえると絞れちゃって、毒が全部出ちゃうんですよ
林:へー
平坂:だから毒を飲みたい場合はあんまり首をおさえずにしたほうがいいですよ
西垣:そっちの危険性なんですね
林:いい話がいっぱい聞けるなー
平坂:長崎の町みてもらってなんとなくわかったと思うんですけど
林:うん
平坂:半端なんですよ自然が
西垣:ふんふん
平坂:川がこんな感じなんですよ
平坂:全部コンクリートでびたーって固められちゃって
林:はい
平坂:長崎は急こう配の坂の町なんで、川も当然急なんですね
西垣:はい
平坂:自然のままの砂利の川にしてると鉄砲水になって水害がおこる
林:なるほど
平坂:それを防ぐために徹底的にコンクリートで固めて穏やかな川にしちゃってるんです
林:へー
平坂:魚が全然いないんですよ
林:はい
平坂:だから魚とか海の生き物とかいろいろ見たいのに見られない鬱憤がたまって、「もういい!沖縄行く」って沖縄の大学へ行ったんですよ
林:へー
平坂:しょうもなドブみたいな川のおかげで大人になるまで興味を保てたっていうのはありますね
林:はずみがついたんですね
(長崎の景色を見ながら)
平坂:長崎の人は自然を打倒する力がすごいですね
林:自然を愛するとかじゃなくて、自然を支配したいんですね
平坂:共存とか生ぬるいこと言ってると、死ぬので
西垣:なるほど
平坂:コンクリートミキサー車を長崎にいるころ毎日見てたけど、最近みないなと気づきました
林:へー
平坂:それほどコンクリートを使いまくってたんでしょうね
実際の様子は動画「地元長崎を案内してもらいながらコブラの毒を飲む話を聞きました 〜地元観光案内〜【デイリーポータルZライター 平坂寛】」で確認してください。
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